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サトルクス級センル-1002

「総員、出撃だ。輸送トラックでシャトルベイに向かうぞ」



歓声が落ち着いたタイミングで大隊長が指示を出す。



「トラックの用意はもうできてる。とっとと乗り込め」



その指示に従い、次々とトラックに乗り込む。

シャトルベイまでおよそ30分。

特に大きな問題もなく移動が始まった。

トラックから外の様子を見ているとあることに気がついた。


「いつもより人が少なくないか?」

「当たり前だろ。俺らの大隊だけじゃなくてこの基地ほとんどの部隊が出撃するんだ」

「当然人も少なくなる」

「なるほどな…それにしてもここまで人が少ないと違和感がすごいな」

「だな、俺もこんなこと初めてだから違和感が半端ない」


そんな中身のない会話をしているうちにシャトルベイに到着した。


「結構高いから気をつけろよ」

「おう、分かってる」


マーセルがトラックから飛び降りようとしていたので注意したが、結局彼はコケた。

全く、出撃したばっかなのに何してるんだか…


「ったくあいつら笑いやがって…後で覚えてろよ」


マーセルが腰を抑えながらこちらに駆け寄ってきた。


「お前が飛び降りたのが悪いんだろ。ここで止まってたら上官に怒られるし早く行こうぜ」

「へいへい」


シャトルベイには大量の宇宙港行きのシャトルが並んでいた。次々とシャトルが離発着していくのが待機スペースの窓から見える。


「シャトルが到着したら小隊ごとに乗り込め!シャトルは20人乗れる!後ろからまだどんどんくるから詰まらせるんじゃないぞ!」


大隊長の指示のもと、次々と搭乗を開始する。

俺の乗る予定のシャトルもすぐにやって来た。

シャトルはおよそ40メートル程度で中央の通路の両側に座席が2列ずつ並んでいた。


「奥から詰めて座り、シートベルトをつけろ」

「かなり揺れるから舌を噛み切るなよ!俺は最後に向かう、上で待っていろ!」


そう言って大隊長に送り出された。


「揺れるってどれくらいだろうな?」


隣に座っているマーセルは窓から外の様子を見ている。


「さあ?まあいつもの大隊長の冗談じゃないか?」


まあ、人を乗せてるしそこまで揺れないだろ


そうして話しているうちにシャトルは離陸路まで到着した。


《これより本機は離陸します。カタパルトでの発進を行うので揺れにご注意ください》


そんなに揺れるのかな?なんてことを考えつつマーセルと一緒に外を見ていると、シャトルが停止した。


「は?え、何止まった?故障?」


困惑した直後、凄まじいエンジン音がし、外の景色が急に後方へ去っていったと思ったら凄まじいGが俺たちを椅子に押し付けた。

クソが…人乗せてるのにこんな荒い運転してるんじゃねえよ…

こうして俺たちが死にかけている間もシャトルは空に向かって飛び続けている。

揺れは離陸時に比べて収まったものの、相変わらず身動きを取ることはできない。


ー30分後ー


「ウオェ、死ぬかと思ったわ」


シャトルが宇宙港に到着し、ハッチが開いた。

離陸から到着まで、揺れとGに苦しめられ続けた。

おかげさまで、惑星との別れもまともにできなかった。


「クソッあのシャトル設計したやつ絶対ぶん殴る」


そう言いながら後ろから追いついて来たのはマーセルだ。


「もしその機会あったら俺も絶対殴る。てか殴らせろ」


流石にこの設計したやつを許すことはできない。

下手したら死ぬぞ。


「あ?まだ揺れてんのか?世界が回ってるぞ」

「それはただのシャトル酔いだ」


マーセルは肩を回しながら言う。


「マジでシャトル酔いとか初めてなんだが」

「ッハ体幹雑魚じゃん」

「うるせえそう言うお前だって腰震えてるじゃねえか」


見渡すと、同じようにふらついている兵士があちこちにいた。

中には壁にもたれかかって深呼吸している奴もいる。

どうやら被害者は俺たち以外にもいるらしい。


「うし、全員到着したな。おい中隊長早く整列させろ!何回も言うが後ろがつっかえるぞ」


背後から声が聞こえて振り返ったら大隊長が元気よく歩いて来ながら指示を出していた。


「な、なんで大隊長はあんなピンピンしてるんだよ…」

「知らねえよそれより早く動かないと後ろが詰まるだとよ」


体が回復しないうちに次の指示が出る。


「しょ、小隊ごとにせ、整列せよ」


明らかに疲れ切っている声だったが、命令が出た途端皆体を無理やり動かして整列を始める。

通路を進んで広場に整列し、大隊長の指示を待つ。


「これより、輸送艦への乗艦を始める」

「俺たち185大隊はサトルクス級輸送艦センル-1002に搭乗する」


え、サトルクス級って言ったら連邦最新鋭の輸送艦だよな?

聞いたところによるととにかくでかいらしいが…

周りも少しざわついている。


「黙れ!お前らの感想などどうでもいい!指示はまだ終わってないぞ!」


直後、皆静かになる。

大隊長は普段は冗談を言うが、このような場では真面目だ。


「輸送艦の搭乗口で戦時用の専用端末を受け取れる」

「端末を受け取ったら自身のIDを打ち込め!ログインできれば必要な情報は全てそこに入っている」

「以上、指示終わり!移動を開始しろ!」


大隊長の指示に従い、列が動き始める。


「相変わらずうちの大隊長は指示が雑だな」

「だな、まああれでも200年近く前線で戦って来たらしいから実力は確かなんだろうな」


そうして歩き始めて5分ほど経っただろうか?

前の方を歩いている兵士たちが移動通路の展望ガラスの外を指さしている。

何かあるのか?

先ほど兵士たちが気にしていた場所に俺たちも到着すると、彼らが何を指さしていたのか、一瞬で理解した。


そこには俺たちが乗り込む輸送艦、サトルクス級があった。

灰色に塗装された艦艇側面にはセンル工廠の紋章と1002の数字が描かれていた.


「で、でけぇ…」


あっけに取られて思わず足を止めてしまう。


「おいレオン!早く歩け!後少しで到着だぞ」

「あぁ悪い、めちゃくちゃでかい輸送艦がいたからそれ見てたわ」

「サトルクス級か…確か1500メートルだっけ?とにかくでかいっていうのは聞くよな」

「え、マジで?1500メートルってなんかの都市かよ」


そんなに巨大なのか…


「何人ぐらい乗れるんだろ?」

「さあ?俺はそんなことよりも居住環境と飯が気になる」

「お前…こんな時まで何言ってんだよ…」


くだらないことを話している間にも列は進んでいく。

歩き始めてから20分ほどで185大隊はサトルクス級センル-1002の搭乗口に到着した。


「これから搭乗を開始する。搭乗前に必ず端末を受け取るようにしろ」


大隊長の指示で再び移動が始まる。

搭乗口には端末を持った係員が端末を配っている。

俺も端末を受け取る。


「端末を受け取り次第、上階から詰めて廊下の壁にある座席に座ってください」


係員に端末を受け取ると同時に指示を受ける。

端末をポケットにしまい、サトルクス級の搭乗用通路に入る。

通路を少し進むと、突如窓からサトルクス級の巨大な船体が現れた。

サトルクス級は俺たちの進行方向に巨大な壁のように存在していた。

また、搭乗口は今いるこの通路だけでなく、他にも複数存在しているようで数本の搭乗口がサトルクス級の横腹に伸びていた。

そうして引き続き進み続け、俺はついにサトルクス級に乗艦した。


サトルクス級はとにかく大きかった。

階段をひたすら登り続けたものの、いつまで経っても自分たちの座ることになる階に辿り着けない。

そして23階でようやく廊下に入ることができた。


「ここからは23階だ。廊下で奥から詰めて座れ」


その指示と共にに廊下に通される。


「この廊下はおよそ200メートルで突き当たりだ後少しだから頑張れ」


そう係員に励まされる。


「はい、あ…ありがとうございます」


重い足を引きずって廊下を進むと、ようやく廊下の奥が見えて来た。

自分の座る座席を倒し、荷物を下にしまい、装備を肩に立てかける状態で膝に置く。

そして、シートベルトを装着し、背もたれにどっしりともたれかかった。


ー15分後ー


席に到着してからしばらく経ち、疲れが少し取れて来たところでアナウンスが流れた。


《本官はサトルクス級センル-1002艦長だ。今後の行動予定を発表する》


途端に周りの会話が止まる。


《輸送予定の全員が搭乗を完了したため、これより発艦する》

《今から20分後に本輸送艦隊8隻は対共和国前線惑星基地、惑星ヘルデラに向かう》


共和国、ということはフロッセルド共和国が最初の侵攻先か!

そのアナウンスを聞き、周りも少しざわついている。


《皆混乱しているだろうが落ち着いて聞くように、一度しか説明しないからな》

《今から20分後に我々はワープを行う。その後、通常航行に移行して惑星ヘルデラへと向かう》

《ワープが完了したら端末に入っている情報を元に各自の部屋に向かうように》

《惑星ヘルデラまでおよそ2日、それまでに艦内生活には慣れておけ》

《以上、これより発艦する。総員、揺れに気をつけろ》


直後、大きな振動が起きる。

始まった…本当に戦場に向かうんだ。

もう帰れない。そんなことは昨日の時点でわかっていた。

今更考えても仕方がない。

隣を見ると、マーセルは座席に深く座り、目をつぶっていた。

それをみて少し気分が楽になった。

生き残れるかどうかはわからない。

だが、少なくとも簡単に死ぬつもりはない。


《これより港外へと出る》


体が左に置いていかれる感覚がある。

発艦したか。

ここら辺には窓がないため、外の様子を知ることはできない。

だが、この艦が進んでいることは確実にわかった。

その後も静かな廊下にエンジンの振動音が響く。


《これよりワープシーケンスに入る》

《本艦に異常なし、ワープ開始》


そのアナウンスと共に艦のスピードが速くなるのを感じる。

直後、世界がひっくり返ったと思ったら、自分以外が全て無になるような感覚になった。

しかし、その感覚はすぐに終わり、元に戻ってきた。


《ワープ完了、これより通常航行に移行する。各自部屋に移動し、惑星ヘルデラ到着まで自由時間だ》


アナウンスが終わり、廊下に再び会話が起きる。

俺は端末に兵籍IDを打ち込み、ログインする。

そうすると、少しロードしたのちに、さまざまな情報が出てきた。

艦内の構造、自分の所属、予定航路、艦内での現在地などなど…

たくさんある項目の中から部屋割りを見つける。

タップして開くと情報が提示された。



第12管区方面軍第18師団第185大隊 レオン=ベルゲン 187歳


サトルクス級のセンル-1002 12階第3区画C-12


俺は場所案内機能を起動し、マップを見た。

俺はこの情報を見て天井を見上げる。


「ハハ…真逆の区画じゃねえか…また歩くのかよ…」


絶望していると隣からマーセルが俺の端末を覗き込んできた。


「お!お前も同じ部屋か」


マーセルは俺の腕を掴んで立ち上がる。


「行こうぜ」

「…あぁ」


どうやら小隊ごとに部屋が割り振られているらしく、俺たちは小隊で集合して部屋に向かうことにした。


「小隊長、1つの部屋に1小隊って絶対狭いですよ」

「いや、これだけでかいんだ。最低限身動きが取れる程度には部屋あるだろ」

「知らん、俺に聞くな。俺は早く部屋に入って荷物を置きたいんだ」


小隊長は俺たちの質問をめんどくさそうにあしらう。

エレベーターに乗って12階まで降り、第3区画まで歩いて向かう。


「えーと…C-12、C-12はどーこだ!」

「うん?あ!C-12あった」


部屋のドアの横にある装置に端末を近づけると、プシューという排気音と共にドアが開く。

部屋は意外と広く、部屋の幅は15メートルほどあり、想像より広かった。

ベッドは2段ベッドが部屋の両側に2つ、部屋の中央にはテーブルが固定されていた。

ロッカーは1人ひとつ、装備のラックまで揃えられていた。

思っていたよりは悪くない。なんなら小隊で一部屋という点を除けば基地よりも良い生活環境だった。


ようやく休める。腰を下ろして俺はベッドに寝っ転がり、出撃後初めての休みを手に入れた。


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