代打逆転サヨナラ満塁ホームラン
2032年MLBワールドシリーズ。ヤンキース、ドジャース両者3勝3敗で迎えた最終第7戦。野球世界一を決める最高峰の舞台に二人の侍がいた。一人は言わずと知れた二刀流•大谷翔平。
この緊迫した最終戦でも九回途中無失点の完璧な投球内容できていた。しかし、ここでようやくヤンキース打線が大谷に牙を剥く。九回表ヤンキースの攻撃は二死一二塁としてバッターはアーロン・ジャッジ。
大谷のスイーパーを待っていましたといわんばかりの如く、特大アーチで3対0としてゲームを決定づける一打を決めてしまった。
冷静さを失ったドジャースファンが球場から飛び降り、ヤンキースベンチにカチコミに行った。現場は騒然とし、両軍入り乱れる大乱闘になった。その模様は古代ローマのコロシアムを彷彿とさせる凄まじい光景だった。一瞬の出来事だった。急に妙な静けさと共に起きた目の前の現実はあまりに残酷なものだった。大谷が倒れていた。チームの中心選手を失ったドジャースの選手陣は口を揃えて次の言葉を呟き出した。
『ラストサムライ』と。
そう、もう一人の侍がベンチ前で力強く素振りをしていた。試合を諦めていない侍に感化されたドジャースナインはそこから見事に息を吹き返し、9回裏3-0ではあるものの、二死満塁という最高の舞台を作り上げてみせた。この究極の場面で代打として打席に送り出されたのはもちろんもう1人の侍だった。いち人間の体には耐え兼ねる程の凄まじいプレッシャーを背負った彼はある1つの考えが頭に浮かんでいた。カーブが来ると。相手投手の球種の中にカーブはなかったが、ゾーンに入ってる彼は何故か必ずカーブが来ると睨んでいた。しかし、カーブは1球も来ることなくに2球ともストレートでバットを振ることなく追い込まれてしまった。絶体絶命のこの状況でも彼は1ミリもブレなかった。カーブが来ると。そして運命の3球目、究極のプレッシャーが導き出した奇妙な予測は見事に当たり、待っていたカーブが来た。とてつもないスイングスピードで一心不乱にバットを振った。狙い球が来て力みに力んだ結果気づけば彼はスリーバウンドした鬼グソボールを降っていた。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」
そう言い残した彼の腹部には自身のバットが深く突き刺さっていた。切腹だ。
壮絶な幕切れとなったこの試合によって2人の侍を失ったドジャースはこれから長い暗黒期に突入する。やまない雨がないように暗黒期もいつかきっとやむことがあるだろう。諸行無常の響きありとはよく言ったものだ。結果にとらわれるのではなく諦めない姿勢こそがその人の人生を彩るのだ。