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13 あなたなしでは2

テラー家に行った翌週、ワグナー家にリリーとシリウスは訪れて、2人は結婚についての了承を得た。家の応接室でシリウスの両親と顔を合わせたけれど、会った瞬間から2人は祝福ムードだった。

シリウスの家は、テラー家よりも小さいけれどとても綺麗にされていて、使用人たちも気配りが良く行き届く人たちばかりだった。シリウスの両親は、本当にシリウスの親だろうかと思うほどよく喋り、よく笑う2人だった。シリウスの祖父母と曾祖父母にも挨拶したけれど、シリウスと同じような性格なのは、曾祖父くらいのものだった。この家にきたら、きっと楽しいのだろうなと、リリーは予感した。


お互いの両親から快く了承を得て、リリーとシリウスは卒業後に結婚することが決まった。





学校では、カトレアたち友人にシリウスとの婚約を報告した。友人たちは皆喜んで、祝福してくれた。


「…カトレアの台本のおかげよ。ありがとう」


リリーがカトレアに感謝すると、カトレアは、ふふ、と笑った。


「そう言われたら作者冥利につきるけれど、でも、全部あなたの力よ。おめでとう。近くであなたたちを見てきたから、本当にうれしい」


カトレアの言葉に、リリーは、ありがとう、とまた伝えた。


「なになになに、あなたたち、やっぱりだったの…??」 


騒ぎを聞きつけたサーシャが、リリーたちの傍にやってきた。リリーとカトレアは二人で顔を見合わせて、くすくすと笑った。カトレアは、サーシャの方を見て口を開いた。


「ねえ、やっぱり、ってなに?」

「リリーとシリウスに決まってるじゃない。婚約したんでしょ?まあ、私はずーっと怪しいと思ってたのよね。2人仲良しじゃない?私はこんな日が来るってにらんでたわ」


サーシャは得意げに笑う。リリーは、そんなサーシャに笑う。


「さすがね、勘が鋭いわ」 

「ええもちろん!とにかく、おめでとう!…でも、幸せオーラをまき散らすと、不機嫌になる人もいるから気をつけて」


小声で話し出すサーシャに、え、とリリーは首を傾げるが、教室の一角で、いつもの友人たちと一緒に固まって話しているモニカの方に視線がいき、リリーは何となく察した。ルークに想いを告げたという噂以降、モニカたちがルークと一緒にいるところを見なくなった。モニカはいつも不機嫌そうにしており、早く卒業したいと文句をよく言っている。ルークに告白して玉砕したという噂がまわり、プライドが傷つけられたようだ。

そして、モニカが振られたという噂が回ったあと、ルークに告白する女子がなぜか増えたらしい。卒業間近ということもあるし、今までモニカに遠慮していた層が、モニカが振られたのならもういいだろう、と想いを告げにいっているらしい。そしてルークは、そのどれにも了承していない。前世ではルークはリリーのことが好きだったけれど、本来のルークの運命の人はアリサなのだ。だからきっと、彼は誰の告白もうけないだろう。おそらく彼らはもうすでに、リリーのあずかり知らぬところで出会っているだろうし、恋に落ちているのだろう。

リリーは、サーシャの方を見て、そうね、と返した。


「ご忠告ありがとう。火に油を注がないようにするわ」

「ふふっ、おめでとう、なんだかんだ私も嬉しいわ」


サーシャはそう言ってウインクすると、彼女の友人たちの輪のもとへ帰っていった。






リリーは、1人で図書館へ向かった。借りた本を返して、新しく本を借りるためである。

本を返却して、それから、本を探しに行く前に、シリウスがいないかと、自習室をちらりとのぞいた。すると、シリウスはいなかったけれど、マークがいた。マークはリリーに気が付くと、あっ、と声を漏らし、そして、話せるところに行こう、と笑顔でリリーを誘った。



声を出せる自習室に移動して、リリーはマークの隣りに座った。


「聞いたよ聞いたよ、おめでと〜」


マークは朗らかに笑った。リリーは、そんなマークに、照れくさい気持ちになりながら、ありがとう、と微笑んだ。


「前に、マークには気を使わせてしまって…」


思い返せば、あの日のマークはわざとらしかった。2人のことを知っていたから彼は2人きりにしてくれたのだろう。マークは、そんなのいいよ〜と笑った。


「(前世も今世も、マークには助けてもらってばっかりだわ)」

「シリウスは本当に優しい人だよ。ぜったいにリリーを幸せにすると思う」


マークはそう言って優しく笑った。リリーはそんなマークを見て、小さく微笑んだ。


「なんだか、マークがそんなに人を褒めるのって珍しいわよね」


リリーの言葉に、そうかな、とマークは首を傾げた。


「ケーキのことはいつも手放しで褒めるのにね」

「あはは。それはリリーも一緒でしょ」

「ふふ。…さみしくなるわね、もうすぐこうやって、みんなで集まってケーキを食べたり、お話をしたりできなくなるなんて」

「ケーキ食べてたのは僕とリリーだけだったけどね」

「確かに」


リリーが大真面目にそう言うと、マークは笑った。そんなマークを見て、リリーはつられるように笑った。



「結婚式にはぜひ呼んでほしいな」

「ええ、もちろん」


マークは、それじゃあね、と言うと席を立った。リリーは、そんなマークを見送った後、本を探すために立ち上がった。





そして、リリーは3度目の卒業式を迎えた。

卒業後は、リリーは慌ただしい日々を送った。シリウスとの結婚のために、色々とやることがあり、叔父や叔母と一緒になって毎日ばたばたとしていた。叔母は、忙しいおかげで、リリーが結婚する寂しさが紛れるわね、と笑っていた。

シリウスの家にはリリーは何度も足を運んだ。リリーのことをシリウスの家族は歓迎してくれた。そしてもちろん、シリウスもリリーのことをいつも大切にしてくれた。この人と結婚するのだと実感が湧くたびに、リリーは、きっと幸せになれると、そう感じていた。

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