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5 新たな気づき2

あのランチを終えて、リリーはアリサとモニカと共に教室に戻った。アリサとモニカが2人で楽しそうに話すのを、リリーは横で聞いているだけに徹した。


教室に入り、自分の席に着くと、リリーは全身にどっと疲れが押し寄せるのを感じた。


「(ルークと関わらないって決めたのに、昔みたいな話し方をしてしまった…)」


ルークとはずっとそうだったのだから仕方がない、仕方がないけれど、2回目の人生をやり直そうというやる気を、また入れ直さなくてはいけない、とリリーは思った。

リリーは机に伏して、おでこを擦り付けた。その様子に、隣の席の女子生徒から、お加減がよろしくないのですか、と心配されたので、いえ、持病がありまして、とリリーは返した。

リリーは机に頬を付けて、ぼんやりと床を見た。


「(…でも、楽しかったな…)」


リリーは、ルークとしたやりとりを思い出す。昔はありふれた他愛もないやりとりだったけれど、今になってみれば宝物みたいに輝いていて、またとない貴重なことだったのだと気が付く。リリーはまた机に顔を伏せた。


「(2度目の人生は、ルークとこういうことができない人生なんだ。そうしないと、1回目よりもいい人生にはならない。だから仕方ない)」


リリーは、この楽しい記憶をなかったことにしてまで変えたい未来はなんなのだろうとふと思ったけれど、それでも、1度目の人生がああなってしまった以上は変えなくてはいけないのだと思い直す。



昼食後の眠気が強い授業を終えて、次の授業までの休み時間になった。お手洗いに行こうかと席を立ったとき、教室にエリックがやってきていたのが見えた。エリックはリリーに気が付くと、よっ、と手を振った。リリーは、どうも、と会釈を返す。


「アリサいるか?」

「アリサ?いるけれど」


リリーは、アリサの席に近づき、隣の席の女子生徒と話していたアリサを呼ぶ。エリックが呼んでいることをリリーが伝えると、アリサは、ありがとうございます、と言うと、エリックのいるドアの側に近づいた。リリーは、お手洗いに行こうかと歩き出そうとすると、リリーと話していた女子生徒が、ねえ、とリリーに話しかけてきた。リリーがそちらを見ると、女子生徒はなにやら楽しそうな顔をしてリリーの方を見ていた。


「(この人は…サーシャ・ベル…だったわよね)」


リリーは記憶を手繰り寄せるが、前世でもさほど親しくしていなかったので、彼女に対してあまり印象がなかった。そこまで目立つタイプでも、かといって大人しいわけでもなかったとはず、とリリーは思い出す。銀髪のくせっ毛で、そばかすが印象的な女子生徒である。


「えっと、なにかしら」

「エリックって、やっぱりアリサが好きなの?」

「ええ?」


リリーは間抜けな声が出た。リリーとサーシャの会話に、サーシャの友人が数人集まってきた。


「やっぱりそうなのよね?」

「エリックがアリサかあ…。男性ってああいう、守ってあげたくなるタイプがどうして好きなのかしらね」

「ねー、本当よね」

「ちょ、ちょっと待って、私は何も知らないわ」

「そうなの?」


サーシャたちはきょとんとした顔をした。リリーは、ほんとうよ、と念を押した。


「ルークたちと仲良くしてるじゃない。そのときに気が付かない?」

「気が付かない…っていうか、仲良くないし…」

「ええ!ルークはあなたのボーイフレンドでしょ?」

「そんなわけないじゃない…」


リリーは呆れたようにため息をつく。そんなリリーに、サーシャたちが顔を見合わせる。


「でも、みんな言ってるわよ」

「お似合いだしいいじゃない。美男美女、絵になるわよー」

「待って待って、変な誤解が生まれているわ。私はそもそもルーク達とは親しくないから」

「そういう噂が立ってるってば」

「なら本人が違うって今認めるから、そう言ってたって噂を流しておいて」


リリーが言うと、なんだつまんない、とサーシャたちはリリーの側から離れていった。でも、ルークに相手がいないならそれはそれで良かった、とも笑いながら話している。そんな彼女たちを見ながら、リリーはため息をつく。


「(…ルークのせいであらぬ誤解が…)」


そう考えながら、ふと、楽しそうに話すアリサとエリックをリリーは見た。リリーとルークの話も虚偽なのだから、アリサとエリックのことも単なる噂なのだろうか、そう思いながらも、アリサと嬉しそうに頬を染めて話すエリックを見ると、単なる噂には思えなかった。


「(もしかして、前世の時もエリックってアリサのことが好きだったのかしら)」


そんな気づきに、リリーは知らなかった、と今さら驚く。2度目の人生にしてこんな事実を知るなんて。リリーは、他にも自分が気がついていない事がたくさんあるんだろうな、と心の中で呟いた。


エリックとの話が終わり、アリサが席に戻ってきた。そんなアリサの側に、リリーは向かった。


「エリック、なんの用だったの?」

「エリックですか?ほら、私が移動教室で迷ったってランチの時間に話していましたでしょう?それを聞いて、今度学校の探索をしないかって」


アリサの言葉に、リリーは、ほんとにエリックってアリサのことが…と疑いが確信に変わった。リリーは平静を装って、そうなんだ、と返す。


「それで、学校探索はするの?」

「はい!ぜひ、ルーク様たちもお誘いして探索しましょう、って言いました」


にこり、と微笑むアリサ。リリーは、エリックはおそらくアリサと2人で行きたかったのだろうな、と思いながら、エリックに同情した。


「(…エリックはアリサと2人で行きたいんだと思う、って教えてあげようか…、いや、でもアリサはルークが好きだし、ルークと結ばれるのだから、変なことはしないほうがいいか…)」


そんなことを考えながら、まさかエリックが自分と同じ叶わぬ恋をしているのだという事実に、リリーはエリックに対して親近感が湧いた。


「お姉様もご一緒しませんか?」


アリサがおずおずとリリーに尋ねた。いつも誘いを断る姉を、断られると分かっていて誘ってくれるアリサの優しさに、リリーは胸が痛む。リリーは、遠慮するわ、とやっぱり断った。アリサは、ですわよね、と苦笑いを返した。

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