2 記憶
*久*■夏 追*れる遺■整理
『私は一体、なにをしたいのか。
あの日見た現実が今でも記憶の奥底でくすぶっていました。
今年で三十歳になる私の二十代は、お金を稼ぐために消費し続けられました。
昼は看護師として働き、夜は疲労と事情を抱えたサラリーマンの愚痴を聞いて酒を汲む。
そういう日々に、私は私という存在を見失い、いよいよ心の底から笑うことを忘れてしまったのだと思います。
しなければならないことを行動に移し、夜少しの睡眠をとって、また同じ日常を繰り返しました。
私は、一体なんのために生きているのだろう。
私は、燃え尽きた後の灰のような存在なのだと、そう思いました。
遺品整理に、疲労、笑顔、笑顔、笑顔、それでもまだ笑顔、皮肉、笑顔。
私はきっと、他人に笑いかけるだけのロボットなのかもしれません。
嫌だとか、苦痛だとか、そういう感情に向き合うだけの時間を神様は与えてくれませんでしたから』
佐久*■夏 終■ら*い日常
映像のなかに、直接入っているような感覚が残っていた。
気づけば、そこはただの病院の裏口の、高層ビル群の群れの中であり、日差しがうなじを焼いている。
「なん、なの。今のは一体」
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