第8話:原作ヒロイン&ヒーロー登場(前編)
今回は2話一気に更新です。
あれから、美少女バレしたリシテアは(ださい)メガネを止めた。
が。メガネ自体は気に入ったというかクセになったらしく、今でもメガネをかけたままで治癒術師をこなしている。
が、リシテアが男共に囲まれる、なんて自体は起こっていない。
何故なら…………
「あのぅ…ガイウス叔父様?何もここでお仕事をされなくても……
「む?リシテアちゃんはワシが側に居たら嫌か?」
「いえいえ!叔父様がいるのは安心感もあって嬉しいですよ!?」
「そうだろう、そうだろう。
なら問題は無いな!!」
リシテアの担当スペースでは団長が執務を行いつつ目を光らせる様になったからだ。
これが、団長の言っていた別の対策……まぁ、つまり『あまりにも酷い様なら団長自らが監視役を務める』
っていう、力技だ。
ただ、そのお陰でリシテアが治療に奔走する事も、リシテアに会う為にクダラナイ怪我で尋ねてくる奴も居なくなったし、間接的に俺への嫌がらせもなりを潜めた。
まぁ、俺だけ異常に怪我が多かったのも、ソレをやっていたのが誰だったのかも、既に団長も知る所だから今更止めても無意味なんだがな?
当然の様にソイツらは団長からの『嫉妬でくだらない事をする程に元気が有り余っている様だな?』との声掛けと共に特別メニューが課された。
まぁ、良かったのは。そのお陰で俺はより強くなれた側面がなくはなかった、って所だが………
そんな日々を過ごしもうこの世界の元となった物語の事も忘れた頃に事件はやって来た。
ーは?
今、なんと…?」
「ア?分からんかったのか??
ならもう一度言うが、
ソフィーリア王女殿下がこの辺境伯領へお越しくださるんだよ。
だからその護衛として唯一の女性型従魔持ちであるお前が指名されたんだ。」
「何故ですか!?この騎士団には少ないとは言え女性騎士も居ますよね!?」
「ああ居るな。」
「では何故ッ!?」
「俺が知るかよ。王妃様のご指名だからな。」
「王妃様の…?」
「大方、お前が公爵家の人間だからじゃないのか?」
例の女性向けライトノベルにおける、悪役王妃。
ソフィーリア王女を疎んでいる王妃は、事ある毎にソフィーリア王女を虐めて、虐めて、虐め抜く。
そうゆうキャラクターだ。
だからこの現実世界でも中身が転生者にでもならない限り、似た様な人物になるとは予測してなかった訳じゃないが………
まさか、俺が逃げてもソフィーリア王女をコチラへよこすとは…!!
それの示す所はつまり………
「では、近衛であるロイド…様もいらっしゃるので…?」
「まぁ、そうなるだろうな?
ロイド殿はソフィーリア王女殿下の唯一の近衛騎士だし。」
「あぁあぁあぁあぁあ………
「どうしたアラスウェル。もしやロイド殿と何か因縁でもあるのか??」
「いえ…………
今のところは、無い。
何故なら俺は、ソフィーリア王女ともロイドとも接点は無いからだ。
それに、団長の口からソフィーリア王女を俺の婚約者にするという話は今も聞かなかった。
まぁ、当然だな。
辺境伯領へ来て半年近く経った今、俺には既に天使族の婚約者が居るのは周知の事実だから。
そう。婚約者が 天 使 族 、と言うのがミソだ。
「ただ、先輩騎士としての彼の事を、騎士学校で聞いたことがあるので。」
(これは本当の事だ。ロイドは冷遇王女に自ら仕えに行った馬鹿な騎士として有名だからな。)
「ああ、ロイド殿は自らソフィーリア王女殿下の近衛になった事で有名だからな。」
…何故なら、天使族は聖教会における偶像だ。
そんな天使族が婚約者である俺にソフィーリア王女を宛てがい、リシテアを廃せば聖教会が黙っちゃいない。
そして知っての通り聖教会は治外法権。
例え相手が国王であろうが容赦なく粛清するしそれが出来る。
だから王妃と言えど迂闊に俺へソフィーリア王女を押し付ける訳には行かないんだ。
まぁ、そもそも今の俺は次期公爵じゃないから王妃としても引き込む事に旨味がないしな。
「ところで、何故王女がこの辺境伯領に?」
「療養、だとさ。
ほら、ココにはリシテアちゃんも、ジルバート君も居るだろう?」
「…なるほど。なら俺が選ばれたのはリシテア目当て、の可能性がありますね?」
(表向きは、な。)
弟に関しては心配してない。
あいつは頭脳派だし、それに婚約者がコレまた強力な軍事家門であるハーレスト家の者だしな。
下手に手を出して敵に回せば、王妃であろうが反逆されるだろう。
そうでなくとも、ハーレスト家の心象を悪くしたら国王に処罰されるし。
……気になるのはジルバートの奴も妙にロイドを気にしている事だが…。
理由を訊けば話してくれそうだな?
アレだ、ジルバートの性格的に『訊かれなかったから話さなかっただけだよ?』ってやつかもな。
「なんだ、自分で予測出来てるじゃないか。」
「いえ、今団長から療養目的でココにいらっしゃると聞いた事で推測したにすぎません。」
「フハハッ。
まぁいいだろう?跡継ぎでは無くなっても、お前は公爵家の人間だ。
王命には絶対服従。そうだろ?」
「まぁそうですが…
(天使族であるリシテアはその限りじゃないんだよな。)
「ともかく!王女殿下の護衛はお前とリシテアちゃんに任せる。
…ぬかるなよ?」
「すみません、生意気なのは承知ですが約束しかねます。
…相手はあのロイド…様なので。」
「ほぅ…?根は真面目であるお前にしては妙な言い回しだな??
やはり因縁があるのか?」
「ええ、単なる予測ですが……恐らくリシテア絡みで。」
「なに?」
これは本当にただの予測だ。
もしもロイド、もしくはソフィーリア王女が転生者だった場合、別の意味でリシテア目当てでここへ来る可能性は捨てきれない。
なにしろ、健気でドジっ子、ゆるふわ系天使ちゃんであるリシテアは人気キャラクターだったからな。
同じくロイドに惚れるヒロインとしてのキャラクターにも関わらず、最後まで恋敵であるはずのソフィーリア王女の味方で在り続けたし、2人の仲を本気で応援する健気な子だったから………
その分、ちゃんと二人から愛されて幸せそうな描写もあり、報われていたし。
「団長は気にしないでください。
コレは本当に、超個人的な見解であり、ただの予想でしかないので。」
考え過ぎ、な線もあるけど、こうゆう時、大抵は原作主人公が転生者である事が多々あるからな。
例に漏れず、原作通りに進まない世界に違和感を感じて悪役令息である俺に会いに来た可能性だってある。
なにせ悪役令息が天使リシテアを大切にしてる、なんて原作ではありえない展開だからな。
ロイドが転生者だった場合、早々にソフィーリア王女を娶りそうな気もするが………
ともかく、よくある展開なら『悪役令息であるアラスウェルは潔く死ね』って話かもな。
リシテアの為にも死んでやるつもりはサラサラないが。
てかリシテアには話しておくか。
ロイドに騙されて奪われない様にする為にも、
アイツらは俺を殺しに来た敵だっていう警戒心を持たしておくのはアリかもしれない。
「…では団長、俺はこれにて失礼します。
リシテアにも話しておきたいので。」
「分かった、とにかく、ソフィーリア王女殿下の件は頼んだぞ。」
「はい。」
ーえっ?ラスさんが殺される!?」
「ああ。あくまで可能性の話だがな。」
俺は早速、休憩に入ったリシテアに改めて話をした。
多分そばに居たからちらほらは聞こえていたとは思うが。
「でもでもっ!そのロイドって人がラスさんを殺さないにしても、危害を加えてくるかもしれないんですよね!?
しかも、自らの欲の為にわたしを攫いに来るって…!!」
「あくまでも俺の予想でしかないし確定では無いが、警戒はしておいてくれ。」
「はい…!!」
原作通りのロイドだとしても、アイツは優男の仮面を着けた腹黒策士だ。
ソフィーリア王女を手に入れる為なら何でもするだろうよ。
もしソフィーリア王女の方が転生者だとしたら、原作のソフィーリアに戻す為に行動しそうだしな。
その為には、天使族であるリシテアの力を欲するはずだ。
下級天使とは言え、リシテアの身体は魔術的な素材としてはかなりの物だしな。
元のソフィーリアに戻す為の手段にされそうだ。
出来れば、ソフィーリア王女は現地人、ロイドは味方側の転生者であって欲しいが………
期待はしないでおこう。




