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第12話:ロイドとアリシア

朝食後、日課の訓練をする為に着替えてから修練場に来るとロイドも既に素振りをしていた。


ん?近くにマナが居ないし、好都合じゃないのかコレ。



「よう、ロイド殿。」


「おや、アラスウェルさんですか。」


「マナの護衛は良いのか?」


「今は別の者に任せています。

騎士たる者、鍛錬も欠かせませんからね。」


「そうだな。」



言いながら俺も隣で素振りを始める。

騎士段仕込みの型にハマった剣技だ。


が、となりのロイドは少し違った。



「………ロイド殿?」


「なんですかアラスウェルさん。」


「君の剣技は少し違うようだが……


「ああ…我流が混ざっているんですよ。」



我流…?

剣道の太刀筋に見えるが………

前世で剣道には関わりがなかったからあまり詳しくは知らないが。

ただ、ドラマやアニメでたまに見る剣道回でこんな動きをしていた様な気がする。

……俺はこの世界に来てから学んだ騎士剣術しか知らんから、所詮は前世の素人知識だが。

まぁ、そんな事より、だ。



「ロイド殿、相談があるんだが、良いか?」


「はい?なんでしょうかアラスウェルさん。」


「これは、リシテアからの頼みでもあるんだがな?

マナのあの態度にリシテアは辟易としている。」


「すみません……


「謝って欲しい訳じゃないしロイド殿が悪い訳では無い。」


「ありがとうございます…?」


「ああ。

そこで、ものは相談なんだが………リシテアの“裏人格”……【アリシア】にマナの教育をさせて貰えないか、と思ってな。」


「えっ…?」


「だから1度、アリシアと会ってみてくれないか?」


「裏人格?アリシア??えっと……それは構いませんが……


「そうか、助かる。」



いくら転生者とは言え、いきなり裏人格だなんだと言われても困惑するだろうと思ったが…やはりか。

が、立ち直りは早かった。

ロイドは直ぐにいつもの爽やかスマイルに戻った。



「それはコチラの台詞ですよ。

正直、私だけではマナの教育が上手くいかなくて………前世ではあんなにワガママでは無かったのですが。」


「そうか………ともかくそれならばアリシアをここへ呼ぼうと思う。」


「はい。お願いします。」


「分かった……『サモン、アリシア。』」


『は〜い!お呼びですかマスター♪』


「アリシア、ロイド殿に話は通した。

それにここには俺とロイド殿しか居ない。

素で話してくれて構わないぞアリシア。」


「承知しましたマスター。」


「!?」



目の前でスンって無表情になるのを見せられたら驚くくらいはするか………



「ロイド殿、彼女がリシテアの裏人格であるアリシアだ。」


「目の前で見せられたら信じるしかないですが……リシテアさんに裏人格なんて設定、原作にありましたっけ??」


「いや、無いな。コレは俺のせいでもあるが…まぁ今は割愛する。」


「………後で話してくださいよ?」


「気が向いたらな?」


「はぁ………まぁ、それより今はマナですね。」



ロイドは納得はしていないが無理やり飲み込んだ、といった様子で表情を引きしめたようだ。

切り替える頭がある奴で良かった。話せば長くなるからな。



「はい、私については今は気にしないでくださいロイド様。

それで、私がマナ様を教育するにあたって、予め私という天使じんぶつを把握しておいて下さると話が円滑に進むと判断したのでこうしてマスターに頼みました。」


「………分かりました。

貴女はリシテアさんとは随分雰囲気が違うのですね?」


「はい、私はアレと違って兵器ですので。」


「……確かに、冷たく重い雰囲気ですが…それでも貴女も可憐な天使様ですよ、アリシアさん。」


「そうですか、ありがとうございますロイド様。」


「………無表情、ですか。」


「それがアリシアだからな。」


「ふむ…?」



ん?なんだ、今ロイドの表情が一瞬歪んだ様な…?

が、本当に一瞬だったし、見間違いかもしれないな。

俺にはロイドは敵って思い込みがあった訳だし。


思案顔からパッといつもの爽やかスマイルになったロイドは、おもむろにアリシアの手を掴み握手をした。



「では、マナの事をよろしくお願いします。アリシアさん。」


「………。はい、承知しましたロイド様。」


「…アリシア?」



どうしたんだ?様子が変だけど。

もしや、さっきのロイドの顔は見間違いじゃなかったのか??



《マスター、後でお話があります。》



っ!?

頭に直接!?



《何を今更。念話も天使の基本スキルですよマスター。

ただ、今まで使う必要が無かっただけです。》



マジか。



「おや?どうしましたか、アラスウェルさん。」


「いや、何でもない。

ともかく、後でアリシアとマナを会わせてみよう。」


「はい、お待ちしていますね。アラスウェルさん、アリシアさん。」


「ああ。」


「はい。ロイド様。

それではマスター、コチラに。」


「おや。鍛錬はもういいのですか?アラスウェルさん。」


「ああ。アリシアが俺に用事があるらしい。」


「…?ここでは駄目なのですか?」


「………。」



まただ。またあの顔だ。

もしかしなくてもコイツ………まさか……!!

いや、だとしたら何故分かりやすく……



「マスター。」


「ああ、今行く。」



ともかく、アリシアの話とやらを聞こう。


アリシアに連れられてきたのは辺境伯家の聖堂だった。

どうやら辺境伯家内にもこうゆう場所があるらしい。

政治不介入な割には人々の生活と密接に関わっているな、聖教会。


アリシアはそんな聖堂内の成人男性程の大きさをした十字架のモニュメントの前に立つと、防音結界を施した上で念話で話しかけてきた。



《マスターはロイド様の違和感に気付きましたか。》


《ああ、やはり気の所為じゃ無かったのか。》


《はい、あの者からは私やジルバート先輩と同じ気配……二重人格者の気配がします。》


《なに?》


《あの者は……カナタ様は確かに見た目通りの性格()しているのでしょう。

ですが、同時に本人も知らない人格を持っています。》


《厄介な…!まさかそれって…!》


《貴方で言う所の【原作ロイド】、とやらですね。》


《っ…!?気付いていたのか?》


《私は気付いていましたよ、転生者アラスウェル。

いえ、名も無き転生者様。》


《………………まじかー。》



そんな素振り見せなかった……ってもアリシアは無表情がデフォだし、俺が分かる訳がないか。

にしても転生者って概念をすんなり受け入れてるのはなんなんだ。

と思っていたのが伝わったのかアリシアはサラリと返してきた。



《お忘れの様ですが、アリシアとしての人格は熾天使クラスの上位天使ですよ。

転生者の概念を識る者であるどころか、直接転生者を扱った事もあります。》


《そっかぁー………



じゃあいままで気を使って話さなかった意味無くね??



《反対にアレは貴方が転生者だとは知りません。》


《リシテアさんマジ天然。》


《ここまで来るといくら下級天使とは言え、馬鹿でマヌケと言えますけどね、アレは。》


《いくら本人だからってリシテアを悪くいうな。》



《不毛な議論です、流しなさいマスター。》


《…………チッ。》


《ともかく、あの者からは得体の知れないモノを感じました。

カナタ様との区別がつかないのであれば、ゆめゆめ油断なさらない様に。》


《分かったよアリシア。》


《はい。それではマナ様の元へ向かいましょうか、マスター。》


《ああ。》



そして、俺とアリシアは聖堂を後にしてマナの元へ向かったのだった。


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