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第9話:原作ヒロイン&ヒーロー登場(後編)

そして、遂にソフィーリア王女がここ、辺境伯領へ来る日になった。

ここ、辺境伯領での追加の護衛として指名された俺は、ソフィーリア王女が到着した事で団長に呼び出された。


……団長は相変わらずリシテアの側で執務をしているから呼び出し先は教会内のリシテアの治療スペースだ。



「お呼びですか、団長。」


「おう。早馬で今日の午後にはソフィーリア王女殿下一行が到着すると連絡があったからな。

到着し次第、お前も、と言うかリシテアちゃんがソフィーリア王女殿下付きになる。

お前はまぁ、リシテアちゃんのオマケだな。」


「………ハッキリ言いますね?」


「まぁ、追加で来た詳細な指示書を読む限り、向こうさんの指定は天使族であるリシテアちゃんだからな。」


「では、ジルバートは?」


「は?ジルバートォ?アイツは確かに天使族と見間違う程の美形だし治癒術も人並み外れた実力だが、人間だろうが。なんでアイツが出てくるんだ??」


「…そうですか。」



どうやらジルバートは自分の正体を隠しているらしい。

いや違うな。あいつの事だから『え?ボクは『ふふっ…どうでしょうね?』としか言ってないよ☆』とか言いそうだ。



「ともかく、ソフィーリア王女殿下の事を頼むぞアラスウェル。

お前が何かやらかせば俺が、延いては辺境伯家が被害を被る事を忘れるな。」


「ハッ!心得ております団長!!」


「良い返事だ。

まぁ、お前も公爵家の者だ。

対応を間違えるとは思ってないさ。

特に相手は王女殿下とは言え1()0()()だ、いつも通りやれば良い。」


「承知しました。」



………ん?なんか今違和感があったな??



やがて、辺境伯家の屋敷にソフィーリア王女殿下ご一行の到着を知らせる伝令が団長にもたらされ、何時でも動ける様に兼リシテアの護衛兼お手伝いで教会につめていた俺は、リシテアと共に教会、辺境騎士団を後にしたのだった。


















……すぅぅ………はぁぁぁ…………よし。」


「ドキドキしますねラスさん…!」


「あぁ。だがそこまで身構えなくても良いぞ。」

(流石にいきなり斬られたりはしないとは思いたいが……。)



辺境伯の屋敷に来た俺達は、執事に案内されて辺境伯と王女達が居る部屋に来た。

そして、執事が扉を開けると……?



「あっ…!」


「どうかしましたか、ソフィー様。」


「かなたん!りしぃたん!りしぃたんだよぉ〜!!」


「私はロイドですよソフィー様。

それはそれとして…そうですね、彼らはこれからお世話になるリシテアさんとアラスウェルさんですね。」


「あらしゅぇぅ?」


「ア ラ ス ウェ ル さんですよ。ソフィー様。」


「あらちぃ?」


「…………。

とりあえず後にしましょうか、ソフィー様。」



な、なんだこの緩い空気…?

ともかく、気を取り直して挨拶をしないとな。



「…ソフィーリア王女殿下、並びに近衛騎士ロイド様。

お初にお目にかかります。私はラッシュエッジ公爵家が長男、アラスウェル・ラッシュエッジと申します。

本日より王女殿下の護衛に加わらせていただきます。」


「わたしはアラスウェル様の従魔で天使族のリシテアと申します。よろしくお願いいたします。」


「…うん、君達の事は話に聞いているよ。

仮とはいえこれからは同僚だ、私には気軽に接してくれて構わないよ。アラスウェルさん、リシテー


「りしぃたぁん♪」


「っ!?…殿下?」


「わたしのおなまえは“でんか”じゃないよぉ〜!

わたしは“まな”だよぉ!!」


「はい…?マナ様…?

えっ、あなた様はソフィーリア王女殿下、ですよね?えっ?えっ…??」



ロイドの話をぶった切ってリシテアに抱きつき、突然意味不明な事を言い出す殿下に困惑するリシテア。

当然だな。

だが、ソフィーリア王女殿下はどうやら原作よりも無邪気で……その、頭がざんねんな様だ。

もしや、転生者か??

いや、転生者だな、自分の事を“マナ”だと名乗ったし。

中身が本当に10歳児なのかもしれん。

身体の見た目年齢も合わせて10歳児、となっているのかもな。

………そうか、違和感の正体はそれか。俺が16歳の今、2歳年下のソフィーリア王女殿下は14歳のはずだからな。



「落ち着けリシテア。

…お戯れはよしてくださいソフィーリア王女殿下、リシテアが困っています、どうか1度お離れを。」


「いやっ!あらしゅー?はうるさいの!!」


「………ロイド殿?」


「とりあえず離れましょうかソフィー様!」


「やぁぁんっ!かなたんやめぇ〜!!」


「私は“かなたん”ではなくロイドですよソフィー様!」


「ちがうもん!わたしはそふぃ?なんてなまえじゃないもん!まなだもん!!

それよりはなしてよかなた〜ん!!」


「…………馬車の中であれほど言い聞かせたのが水の泡だ………勘弁してくれ………。」



俺が困惑した視線を向けると、ロイドがソフィーリア王女を抱き抱えてリシテアから引き離した…が、ソフィーリア王女は手足をばたつかせてリシテアにしがみつこうとする……



「えっと…はい……?」


「良いのですかリシテアさん…?」


「はい、どうぞロイド様。」


「すみません、リシテアさん。」

(種族もだけど原作通り『マジ天使』だなリシテアさんは……と言うか両手を広げながら首を傾げるとかあざとかわいいな?)


「わぁい♪りしぃたん!!にへぇ〜♪」



見かねたリシテアが両手を広げて受け入れる体制になると、ロイドも半ば諦め気味にソフィーリア王女を床に置く、合わせてリシテアもしゃがんだ。

するとソフィーリア王女はすぐさまリシテアに抱き着いたのでリシテアは彼女を抱えて立ち上がった。



「あのぅ……ロイド様。

わたし達、どこかでお会いしましたか…??」


「いえ、初対面です。」

(この世界ではね。)


「まなね!りしぃたんをみたことあるの!!

はねだして!はね!!」


「ソフィー様は本当に少しお口を閉ざしてください!?

あの、リシテアさんはお気になさらず!?」

(あぁもう!滅茶苦茶だ!!)


「はぁ…?わかり、ました…?」


「りしぃたん!はね!!まなはりしぃたんのはねがみたいの!!」


「マジで落ち着いてくれないですかねソフィー様!?」

(こっちは天使(ソフィー)の皮を被った悪魔かっ!?)



うん。

ソフィーリア王女は、幼少期からの冷遇で、栄養不足からの発育不良な為、原作では登場時点で16歳にも関わらず低身長で見た目が10歳前後、精神も未熟で子供の様に無邪気、なのは知っている。

が、この殿下は無邪気過ぎる。まだ14歳で、物語開始2年前だとしてもコレは酷すぎる。

なにより、ロイドも殿下から“かなたん”と呼ばれていた。

これの指す所はつまり。



「…………さては、君達も転生者だな?」

(そして恐らくだが原作を知ってるな?)


「っ…!?」



警戒してたのが馬鹿らしくなってもうロイドにだけ聞こえるように直球でぶん投げた。

すると、相手も半ば予想してたらしく、一瞬だけ反応すると直ぐに態度を崩し、あちらも俺にだけ聞こえる様に返してきた。



「……その言い方からするにやはり君もか?」


「おう。俺は君達と違って前世の自分自身の事は知らないがな。」


「そうか…なら、リシテアさんは?」


「リシテアは現地人だ。」


「そうか…そうか………いや、そんな気はしてたんだ。

アラスウェルが辺境送りになるのはもっと先のはずなのに既に辺境騎士団入りしてるし、リシテアと婚約してるって話だしさ。」


「おう。そっちは………なんか、大変な事になってるな??」


「ああ………ソフィー…いや、中身は妹、なんだが……はまだ子供なんだよ……そして、ろくな教育を受けさせて貰えなかったから、精神年齢が5歳のまま、身体だけが14歳になってしまった……見た目は10歳児だが。」


「最悪だな。」



つまり、転生時点で5歳児だったのか、中の人…マナ、とやらは。

そして、秘匿された王女だったから公表時に年齢を偽った訳だ。

王家としても王女虐待の事実を広められるのは困るだろうしな。



「ロイド殿、それじゃあ君はいつから“ロイド”と“ソフィーリア”をしているんだ?」


「私達は……そうだな、ソフィー様が5歳くらいの時からだからもう9年になるのか……


「なに…?」



それじゃあ、ロイドがそばに居なかった期間が2年ほどはあるじゃないか……!



「大丈夫だったのか…?」


「大丈夫な訳が無いだろう?

ソフィー様付きの近衛になったのは7年前だが、私がソフィー様付きになるまでの間、ソフィー様は気が触れた王女として益々冷遇されていて、毎日泣き暮らしていたんだから。」


「………。」



酷い話だがよく死ななかったな?とは口に出せなかった。

ロイドは本当に悔しそうにしていたから。



「私が卒業後すぐに王女付きの近衛になった話は有名だと思うけど、理由は一先ず原作にそって話を進めておこうと思ったからだ。」


「そうか……



あ、て言うかここには辺境伯様も居るんだった!!

………って。



「わぁ〜♪おじいたんおひげさんたぁ〜♪」


「はわわっ…!申し訳ありません叔父様ぁ〜!!」


「ははは、良い良い、気にするなリシテアちゃん。

殿下は元気ですなぁ〜?」


「わたしはまなだよぉ〜?」


「愛称ですかな?それにしてはおかしいですなぁ。」


「まなは、まななの!!」


「えっと…??」


「ふむ……リシテアちゃんや、名前なぞ記号じゃ。

気にするでない。」

(どうやら、ソフィーリア王女殿下は御身の名前すら知らない程に冷遇されていたようじゃなぁ……?)


「はい……?えっと、ガーランド叔父様がそう仰るなら……?」


「リシテアちゃんも何時ものように“おじい様”と呼んで、気軽に接してくれても良いのじゃよ?」


「あ……ごめんね?おじい様。」


「ほっほっ♪」



おい辺境伯……ガーランド叔父さん!?

どさくさに紛れてリシテア孫化計画進めんなや!?

いやまぁリシテアがそれでいいなら良いけどさ!!



「はぁ……………


「君も苦労人だな?ロイド殿。」


「君もね、アラスウェルさん。」


「「……………。」」

ガシィッ!!(固い握手)



結論。

原作ヒロインは幼女、原作ヒーローはただの苦労人のお兄ちゃんだった。まる。



原作どこいった???


………ロイドくんとソフィーちゃん、作者の予定とも違う行動し出して別人になりました。

えっ?なにこれ??(困惑)

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