プロローグ:俺が悪役令息…ねぇ…?
またもや、新たなる物語を始めてしまいました。
なお、天使リシテアは前作の聖女エルーナさんの話にでてきたリシテアちゃんとは関係ないです。
天使ですがエルーナさんとも関係ありません。
世界観的にはエルーナさんの話に近いというか、同じ世界の違う時代の話、の様なものではありますが。
さてさて、今回はどんなお話になるのやら…………
2023/12/17…アラスウェルの挿絵追加(カスタムキャストにて作成)
12/19…設定に矛盾が出たのでソフィーリア王女の年齢を変更(18歳↘16歳)
突然だが、君達は悪役令嬢転生モノを知っているだろうか?
いや、メタい話、コレを読んでいる君達ならよくご存知だろう。
かくいう俺もよぉくご存知だ。
何故なら、俺は女性向けライトノベルも大好きでよく読んでいたからだ。
その流れで悪役令嬢転生モノもよく知っている。
そんな俺が……まさか悪役令息に転生するとはーーーーーーーーー
悪役令息に転生した俺は従魔の天使に恋をする
悪役令嬢転生モノってよくあるよな?
中世ヨーロッパ風だったり、中華風だったり、現代日本風だったりの差異はあるが、そんな恋愛小説の悪役令嬢に転生してしまうっていう、アレだ。
中には俺みたいな乙女男子が、悪役令嬢に転生しちまうってパターンもあるな。
だが、俺は転生先も男性だった様だ………が、当然、目を覚ましたら豪華なベッドで寝ていたから驚き、姿見を見て更に驚いた。
そらそうだろ?女体化した訳じゃないにしたって見知らぬ場所に居て、見知らぬ男になっていたんだからな。
まぁ、直ぐに俺が一体誰になったのか、は分かったんだが。
「………アラスウェル、か。」
【アラスウェル・ラッシュエッジ】18歳
俺が読んでいた女性向けライトノベルの1つ、中世ヨーロッパ風な世界観の『虐げられた妾腹王女は清廉騎士に溺愛される』に登場する主人公、【ソフィーリア・フォン=ウィル=アルカディア】(16歳)の婚約者にして、彼女を虐げる者の1人、ラッシュエッジ公爵家の嫡男、だ。
白銀の髪に赤い瞳の俺様系イケメンではあるのだが………
噂を鵜呑みにし、正妃から煙たがられているソフィーリアを婚約した当初から冷遇し続け、最後には正妃共々メインヒーローである清廉潔白なイケメン騎士ロイドくん(24歳、実は現国王とかなり年の離れた王弟(王位継承権第1位)な黒髪碧眼のクール系)に断罪される役どころだ。
まぁ、妾腹の子であるソフィーリア王女の事が嫌いな正妃と結託して王女を虐めていたし、裏では色々ヤバイ事してたしな。
そのヤバイ事をやり始める切っ掛けが王女との婚約のせいで正妃に逆らえなくなった、ってのもあったから、原因となったソフィーリア王女を恨んでた、ってのも理由の1つだが。
だがな、俺(や読者)からしたらそらお門違いだろ?
恨むべきはクズな正妃であり、ソフィーリアにはなんの瑕疵もねぇだろうが!!
と、作中でもロイドくんに言われてた(まぁ、ロイドくんの口調は丁寧だが)。
が、このアラスウェル。
実は戦闘能力が滅茶苦茶高い。
この世界には召喚獣と従魔って設定もあるのだが、ロイドくんの従魔はドラゴンだったんだ。
そのドラゴンを単身で殺し、ドラゴンスレイヤーの称号を貰って賞賛されたってシーンがある。
勿論、仕組んだのは正妃だ。
ソフィーリア王女と仲良くしているロイドくんが気に入らなかったからその嫌がらせだ。
正妃はアラスウェルならドラゴンを余裕で殺せると知っていたし、手駒でもあるアラスウェルにドラゴンスレイヤーの称号を与えるいいきっかけだったしな。
そんな最悪の出来事があったし、昔からソフィーリア王女の事が好きだったのにアラスウェルが横からかっさらって、しかも全く愛さないし大事にもしなかったからロイドくんからは大分、かなり、深ぁく恨まれていた。
だから物語の最後、やっと想い人と結ばれたロイドくんやソフィーリア王女に対するお祝いのコメントが沢山あった。
(と、あとがきに記されていた。)
と言うか、このアラスウェル。
クソ野郎にも関わらず、婚約者が健気で儚げな美少女であるソフィーリア王女で、しかも従魔がゆるふわ系美少女天使とか、悪役なのに優遇されすぎで読者から顰蹙を買ってたキャラでもある。
そんな読者の声をロイドくんが代弁しまくりではあったけど。
(と、作者はあとがきで語ってた)
ちなみにアラスウェルの従魔であった天使ちゃんことリシテアちゃん。
下級天使だった故に彼女もアラスウェルから冷遇されていた。
アラスウェルからしたら公爵家嫡男である自分には相応しくないって事らしい。
まぁ、そうやって最初の状態だけを見て見限ってる時点でコイツは無能だな。
このリシテアちゃん、終盤ではロイドくんやソフィーリア王女から愛された事で本当の力に覚醒して、ドラゴンを単身で倒せたアラスウェルですら2人を傷付ける事が出来なくなる程の加護を与える守護天使となるのだから。
無能の癖に本人がやたら強いせいで、『伯爵家出身のロイドの従魔がドラゴンとか生意気なんだよ!』と殺せてしまったのが最悪だ。
それで、ソフィーリアに惚れていたからこそアラスウェルに刃向かって、大切な相棒であるドラゴンも見せしめに殺されて恨みを募らせていったロイドくんに暗部を暴かれ、更に『俺こそが次代の王だ!』と名乗りを上げられて正妃共々断罪され、
虐げていたから自身の従魔の天使ちゃんにも裏切られてロイドくんに奪われ、ソフィーリア王女もロイドくんに寝盗られてしまうんだから本当に、どうしようもない奴だよ、アラスウェルって奴は。
ちなみに、ロイドくんはソフィーリア王女やリシテアちゃんと密かに会って親密になっていった描写がある。
ロイドくんと無自覚焦れったイチャイチャしてるシーンも。
リシテアちゃんサイドの描写でも『早くこの2人が恋人同士になれたら良いのに…』ってあった。
まぁソフィーリア王女が主人公だからな。
当然、ロイドくんとの密会も描写されてるし、心優しいリシテアちゃんはいつも、主であるアラスウェルより気質が近いし同じくアラスウェルから虐げられているソフィーリア王女と一緒に居たから当然の様に2人ともロイドくんに惹かれていくんだけどな。
それもあって最後は2人ともロイドくんの側に付くってわけだ。
当たり前だな…………ロイドくんからしたら奪われた者を取り返しただけだし。
とまぁ、長々と語ったが、俺が転生してしまったアラスウェルって奴はそんな奴なんだ。
…………てか、原作より幼く見えるな?
もしやコレ、まだ話が始まる前か??
……アラスウェルとしての記憶をふりかえってみる。
…うん、どうやら今はまだ15歳。
俺の身分は成人したての新人騎士、だな。
ふむ、どうやら悪役令嬢転生モノのテンプレみたいな展開らしい。
まだ原作が始まってないから断罪回避しよう、ってやつ。
けどまぁ………良いや。
俺は断罪回避なんて意識せず、好きな様にやらせてもらう。
幸い、アラスウェルはよくある“暴君で周りの人から嫌われてる”ってタイプの悪役じゃないからな。
まぁ、それでも粗暴な奴ではあったから、皆から慕われてる訳でも無いが。
元々のアラスウェルは公爵家嫡男らしくプライドはかなり高かったし。
それでも自ら望んで騎士を目指す程度の良心はある、ぶっきらぼうだが根はいい奴、みたいな感じではあった。
ともかく、
『婚約者があのソフィーリア王女になるって最高じゃん?
だったらとことん愛でるだけ、強制力で断罪されるなら致し方無し。』
って訳。
だって俺はソフィーリア王女が本当はどんな女の子なのか知っている。
噂なんか気にしないし、正妃からの圧力は物理でねじ伏せれる。
(実の所、毒は耐性があるし、暗殺は筋肉で弾けるからあんまし効かないからな。アラスウェルは。)
ロイドくんの相棒であるドラゴンを殺す理由も無いし敵対する理由もない。
まぁ、それでも相手は(秘密の)王弟でメインヒーロー様だ。
もしかしたら、ソフィーリア王女の事が昔から好きだったロイドくんから何かしらの理由が付けられて俺は断罪されるかもしれないし、
そもそも、悪役令息である俺は見た目が怖い(※)から、気弱なソフィーリア王女から嫌われてしまうかもしれないが…………
※本人の感覚では
まぁ、そんなまだ分からない未来やあるかも分からない強制力なんかに怯えて過ごすのはゴメンだし、
転生した以上、ここは現実世界だし、ちゃんと地に足をつけて生きていこう。
…………というか、普通に考えてソフィーリア王女を助けたい。
ロイドくんからしたら好きだった女を王命とは言えかっさらってた俺が憎いかもしれないが…………王命である以上、俺は逆らえないから許してくれ。
いや、婚約回避って選択肢もあるか…?
もうこの時点で自ら志願して辺境騎士団に行くとか。
いや、メインヒーローであるロイドくんから余計な恨みを買いたくないからそうしよう。
と、この時の俺は気楽に考えていた。




