お菓子にのせる想い
8年ぶりに祖父母に会いに行ったのは、久しぶりに祖父と電話で話した際に祖父が従兄弟の名前をド忘れしたからだった。
母の話によると1週間に1回以上は会っているはずの従兄弟の名前が出てこなくなった祖父が私の名前を覚えている間に会っておこうと思ったのだ。
当日、祖父に言われた通り電車の到着時刻とバスの発車時刻を電話で知らせると、家で待っていてと再三伝えたにも関わらず祖父はバス停に迎えに来た。
杖が無いと歩けないと聞いていたけれど「ここまでだったら(近いから)歩ける」と手ぶらで来た祖父は、一歩一歩地面を踏み締めるように歩く。
私は寒くて本当は一刻も早く室内に入りたかったけれど、それをなるべく表情に出さないようにしながら祖父のペースに合わせてゆっくりと脚を動かす。
徒歩5分の距離を体感15分以上かかってやっと祖父母の家に到着した。
暖かい家の中、食卓テーブルの上にお菓子が皿に盛られていた。
一緒に食べようと予告通り私が持参した手土産を受け取った祖母は、手土産ではなく皿に盛ったお菓子を勧めてくる。
小学生の頃、夏休みに来る度用意してくれていたそれは地域限定の銘菓だ。
地域限定とはいえ頻繁に帰省する母が毎度お土産に買ってくるそれは、美味しいけれど私にとってそれほど珍しいお菓子ではない。
それでも「ここでしか食べられないでしょ」と言う祖母と私の反応を待っている祖父に、私は精一杯喜んで見せた。
自宅から一人では出られない祖母と、バス停から歩くだけで物凄く時間がかかった祖父。
バスと電車を乗り継がないと買いに行けないそのお菓子。
「買いに行くの大変だったでしょ」と聞くと、「おじいちゃんが買ってきてくれたの」と祖母は言った。
小学生の頃は両手でないと持てないほど大きな箱に沢山詰め込まれていて、大人数で沢山食べても余っていたお菓子。
今は掌サイズの皿に複数個盛られていて、祖父母は最初食べようとしなかったけれど、「一緒に食べよう」と言って皆で少しずつ大事に食べた。




