88.王家の谷周辺②
朝、早めに食事をし、古の神殿跡地を見る事にした。
石で出来た、丸い円柱の柱が40本ほど立っているだけで何もない。
石柱は約10m位の高さだろうか、下が埋まっているので昔はもっと高かったのだろう。直径は1mもある円柱である。
「メーミ、石柱が立っているだけで神殿とは、意味不明だな」
「みゅ、この柱を上り、石柱の真上に、祈りを捧げる7人の巫女の文様があるんです。
遠い数千年前から、風雨に晒され、太陽の陽を浴び続けても文様が消えないんです。
柱も数千年たっても朽ちる様子がないので、これは神の奇跡の成せる技だと、なので神殿ではないかとされた訳です。」
半永久的に朽ちない柱は、自動MPチャージと自動修復機能の魔導回路だ。
これは面白いと、皆で石柱の上に乗って見た。
しかし模様がない。
柱の上から下にいるメーミに話し掛ける。
「メーミ、模様などないぞー」
メーミが下から口に手を添え、大きな声で、
「表面を水で洗うか、布で拭いてください」
一個一個ウオータージェットの魔法で奇麗にすると乙女が祈る姿が浮かび上がって来た。
全部の石柱に姿がある訳ではない。ランダムに7本の柱で巫女が祈っている。その祈っている向きも7本ともバラバラなのだ。
不思議なのが、丸に線がついて光の玉のように見える。それに向って祈っているのだが、光の玉が1個の巫女が2人いて、後は2個、3,4,5,6個の光の玉を祈っている者が1人づつなのだ。
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俺は、錬金ノートを出し、正確に柱の位置を書き出した。
次に巫女の柱を赤くして、祈っている方向に矢印を書いて行った。
特にお宝がある訳でもないので、皆で頭を?にしながら遺跡を後にした。
まあ、2連続でアプローチに失敗したので、頭の体操でもしてリラックスするのもいいだろう。
今日は、早めに夕食にして温泉に入って寝る事になった。
俺は一人ソファーで、今日の神殿について考えていた。
あれが何の意味も無いとは考えにくい。
それから、今になって思い出したが、ドラゴンがウインドカッターを飛ばしているような絵が所々の柱に書いてあった。
絵のドラゴンが牢獄のような檻に入れられているようにも見える。
あの盾とも関係ありそうだし、しかし因果関係が全く分からないんだよな。数千年前だしな。
難しい事を考えると人間、若いうちは眠くなる。
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翌朝、タケオは、思いついた事があり全員で話す事にした。
「次のアプローチ位置だが、神殿から真っすぐ北西の位置にしたい。理由は何となくなのでその場所の石柱を確認したいんだ」
「みゅ、北西ですと谷の傾斜がきついのと、ここからは、私も来たことはありませんので、下に何が居るかわかりません。少し東に向ってから斜めに降りるでは駄目ですか」
「ああ、構わないよ、北西の位置の石柱を調べたいだけだから」
俺達は、ルート通り進むことになった。
渓谷を降り、暫く進むと沼地になった。
ここからは、ガイドも知らない地帯なので、取り合えず俺が一人で調査する事になった。
何故かと言うと全身ゴムタイツがあるので、歩いて行けるからだ。調査してみたが、殆ど膝下しか水はなく、魔物の気配はしても本当に極小さい者なので問題ないと判断した。
安全が確認できたので、ズボンを巻くって皆で渡る事になった。
30m位入った所で、メーミが騒ぎ出した。
「みゅみゅ、これは、イレーザーイールです。滅多にいない希少なウナギなのに、ここに5匹いるんです。皆さん動かないで下さい。一匹で金貨が沢山貰えるんですーー」
メーミが服を脱ぎだし、うなぎを必死になってすくおうとしている。もう目が金貨マークだ。こちらの女性は普段ブラなどしない。もう必死にすくう姿にブルンブルン胸が踊る。
なりふり構わず、必死に追いかけるが、ヌルヌルしていて上手く捕まえられない。
「皆さん、手伝ってください。もうガイド料なんていりません。このウナギを捕まえれば数年は家族全員食べれます。」
フラウもテンコもオーキも参戦した。
「おらの周りには10匹位いるだよ」
「僕の所も沢山いるです」
手で捕まえようとしても指の間からヌルヌル逃げる。
メーミは、何とか服の中に2匹捕まえる事に成功した。、、、のだが、ぼとぼとと二匹とも川に落ちた。
服を見ると穴が開いている。
「これは、このうなぎ、服を溶かしますーー気負付けて獲ってください」
気負付けろってどう気負付けんだよ。
布を溶かすウナギをどう捕まえるか皆で試案し始めたが答えが出ず、ぼーっと立ち尽くした。・・・・・
その間にも、段々とイレーザーイールが集まり始めた。
テンコ「ひゃうーー、何かズボンの中に入ってきたです」
フラウ「いやーん」
フラウは、内股になり、もぞもぞしている。
メーミ「みゅん、そこは、まだ誰にもあげてないとこなの。やめてー」
オーキ「こりゃなんだべ、ケツの穴に何かが」
「「「「「「きゃーーーーーー」」」」」
”ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、ばしゃっ、”
滅多にいない筈のウナギが物凄い大群で4人の女の子を襲っている。
「全員退避ーーー」
みんな必死に川岸に戻った時には、一糸まとわぬ4人の姿があった。
皆、胸など気にせず下の方を、大事なところに入って来ない様一生懸命に手で押さえていた。
メーミ「みゅ、タケオ様こっち見ないで」
仕方がないので、全員にマントを被せた。下にウナギがぴちぴち跳ねている。
「メーミ、これ食えるのか」
「これは、蒲焼が最高なのですが、夏の暑い時に夏バテ防止で食べる食材です。ハッキリ言ってイレーザーイールは、超希少種と言われ、幻と言われています。滅多に獲れないので私もパワークロコスがいる川で一回跳ねた所しか見ていません。これ一匹売るだけでうちの家族が3年暮らせます。」
よし、捕獲しなければなるまい。とにかくその辺に落ちてるのを頭を落として収納に仕舞った。
おれが渡った時は何も反応しないのに何故だろうか。
こいつ女好き?
「メーミ、このウナギ10匹持って帰れるとしたらやるか」
「みゅ?、やるって何をやるんです」
「沼を走って帰って来るだけだよ」
「みゅ、絶対やりません。ねー皆さんエッチ―なウナギは大嫌いですよね」
「おーい、フラウ、オーキ、テンコどうする」
「「「やるに決まってんでしょ」んだ」です」
ここまで虚仮にされて黙っていられるような嫁はいない。
リベンジは食べて返す。 嫁ルールだ。
もう3人は服など着ていない。さすがに誰も見ていなくても、すっぽんぽんは抵抗があるようで、晒しを破り胸に巻き、晒しを越中ふんどしみたいに腰に巻いて準備万端だ。
メーミもやっぱり参加するようだ。
4人の胴に縄を巻きつけた。これは、もしも帰って来れなかった時の保険だ。危ないと思ったら俺が引っ張り出す。
スタート地点にクラウチング。
「いいか、笛を吹いたらUターンだぞ、
・・・レディー、ゴー!」
4人は沼を疾走する。100mを過ぎたところで、タケオが
”ぴーーーーー”
”ざざーーーー”一気に反転帰って来る。
”どどどどどどーーーー”
おおー、なんということでしょう。エチエチうなぎは、津波のように押し寄せたが、間一髪届かずに陸に上がってしまったではないですか、そこには匠の技が、、、無いわい。
越中ふんどしのひらひらに三十匹はくっ付いている。
すっぽんぽんにされたみんなにマントを渡し、俺はウナギの頭を落とし収納に入れる。
みなさんお着換え室に入って行く。
>ハッキリ言ってすっぽんぽんになってるから意味ないような気がするが、そこはそれ、乙女の神秘を暴いてはいけない。
また、意味もなく晒しを巻いて第2ラウンド突入だ。
メーミは、3セット体力限界で終了。
他3選手は、6セット目迄行った。
・・・ふふふ、3千匹は確実に超えたな。
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ミスリルハウスを出し、温泉に入って今日は、ウナギの塩焼きだ。
炭火で焼くとジュワーと脂が落ちる。
香ばしくて、脂がのってて超美味しい。
次は、捌いたウナギを蒸気で蒸し、教都で買った醤油があったので、魔ギ酸の甘味を少々加えてタレにして食べる。
これもそれなりには旨いが、もっと濃厚な方がいいかな。
メーミのばー様秘伝のタレがあるそうなので、帰りに少し分けて貰う事にしよう。
タレは、焼き肉用もあるそうなので、味噌の作り方と一緒に教わろう。
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しかし、思わぬエチエチ騒動でまた突破できなかった。
ここは、強行突破も有りなのだが、きっと怒るだろうな。
仕方がないもう一個のルートを行こう。
夜、ミスリルハウスのリビングでもう一つのルートを提示した。
「みゅ、タケオ様は、何で入る場所の指定が出来るんですか」
「確信がある訳ではないんだが、古の神殿で巫女の祈る絵があったろ、あの7人の巫女の石柱が立ってる位置が、谷の石柱の通り道を指しているんじゃないだろうかと思ってね。
上から見た時の攻略ルートだと思うんだ。光の玉の数が順番で、祈ってる方向が進む方向とするとすんなり頭に入るんだよ。
入り口は2か所あって、もう一つが今度行く所なんだ。
もし、此処も入れないとなると強行突破しかなくなるな。」
外側からしか見ていないと石柱しか見えない。あれは内側がくっ付いていて迷路になっているのでは無いかと思う。
数千年前に攻略出来なかったが、迷路になっている事は、誰かが解いたのではないかと仮説を立てた。
つまり、古の神殿ではなく、後世に経路を残すために作ったモニュメントだったのではないかと思ったのだ。
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朝、谷底の沼地を迂回し草原を北に移動した。
沼から川に変わり、暫く北上すると渓谷の上から滝が出来ていた。その手前を西に進み、やっと石柱に辿り着いた。石柱の一本に巫女の印を発見した。今のところ仮説は合っているようだ。
入口から5kmほど東に戻り、未だ夕方だが、ミスリルハウスでゆっくりする事にした。
今日は、英気を養い明日に備えよう。