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86.トレジャーマウンテン


メーミンばー様を帰し、メーミをガイドにトレジャーマウンテンに向かう事にした。

少なからずも人が出入りしている所から探すことにした。

数日歩くと、ぼこぼこと100m位の小山の麓に着いた。

所々に穴が開き、1mから3m位の岩がゴロゴロと行く手を阻むなか、メーミが赤いゴーグルを装着し、先頭を歩く。

タケオは唸った。昨日は気付かなかったのだが、あのゴーグルどっかで見た事がある。どこだっけなー、うーん。


突然、メーミは、手を横に広げ、全員を制止させる。

10m先にある2m程の大岩を指差した。

「みゅ、ギガントモールです。あの大きさですと1m以内に近づいてはいけません」


やっと思い出した。

収納から、マケラ帝国の盗賊から押収した赤いゴーグルを出す。

 参照:60.教皇国への道程

メーミが持っているゴーグルと瓜二つだ。

ゴーグル越しに岩を見ると他の岩と比べ、少し白っぽい。

5個押収していたので、嫁に配った。

「みゅ、皆ゴーグル持ってたんですか。これは、王家の谷の出土品です。今は希少になってきてますので人に見せない方がいいです」

「ああ、前に盗賊から押収してな。使い道が分からなかったんだよ。まあ気負付けよう」


それと、丁度使い道がなった大振りの剣(1.5m)があった。

 参照:72.コロシアムの町まで少し

「せい!」

”ガガン”

ワゴンセール品なので、気兼ねなく遠間からギガントモールを叩いてみた。剣は壊れないが、ギガントモールのダメージもなさそうだ。

針が”びしゅ”っと伸びたがぎりぎりこちらには届かなかった。

フラウとテンコが自分にもやらせろと手を出して来た。

丁度二本買ったので、前に出すと勝手に二人の手にくっ付いて行った。

「「え?」」

フラウは、ちょっと気になりながらも、ギガントモールを叩こうとしたら、急に刃が伸び3mの大剣となった。

”スカ”

「え?」

”スカスカ”

ギガントモールは、4つの輪切りになった。

テンコも別のギガントモールに剣を振りかぶると3mの大鉈になった。

”スカスカ”

「ほえ?」

やっぱり、ギガントモールは、3つの輪切りになった。

「「「「えーーー」」」」

5人全員で驚きまくった。

メーミは小刻みに震えていた。

「みゅみゅみゅ、あんた達何者ですか、ギガントモールが輪切りになったの初めて見ました。ミスリルの剣でも外殻は壊せないです。普通は、裏返して腹を狙うんです」

フラウ「私達もびっくり仰天、ちょっとちびちゃったわよ。

タケオ!これはどういう訳」

「俺にも分からん、俺が使った時は鈍ら刀だったのに二人が使うと豆腐を切るようになるなんて考えられない。

ちょっと見せてくれ」

すると、剣はするすると形を変え、

フラウには、手甲と膝当てになり、手に巻いていたユグ糸の下に滑り込んだ。一瞬ユグ糸が黒くなったが透明に戻った。

テンコは、手甲と尻尾にあるユグドラシルの板にくっ付いた。

やはり糸が一瞬黒くなった。

外そうと思えば、元の切れない剣に戻った。

装備しようと思うと、収納に入れても勝手に出てきて装備される。

俺が持ってもオーキが持っても何も起きない。

これは、得体は知れないが二人のアイテムらしい。

MPが激減したり、体調にも支障が無いようだ。

暫く使って問題ないか検証するしかないので、取り合えず寝る時以外は付けて置く事になった。


「凄いです。このアイテム付けると枝毛が無くなったです」

「あ、ホントだ。髪がさらさらね」

「おら、羨ましいだ。タケオおらにも何かねーだか」

どうでもいい情報なのだが、健康にいいからいいのか判断に困る。

「分かった、分かった、見つかったら直ぐ渡すからな。」

オーキの頭をなでなで、牙をちゅっちゅっ。

ここで、嫁平等主義に反する行為は、御法度である。

以外にこういう細かい事を蔑ろにすると家庭不和の原因になるのだ。父さんが最も熱く語った説。くわばらくわばら。


このギガントモールの外殻の黒い岩みたいな物は、盗賊の奥の扉が全く魔力を感じない材質の物と同じに見える。

盗賊の洞穴で押収した魔力がない壁を出し、外殻と比較してみた。いや、よく見ると外殻の方が岩に近い。微量に魔力を通すから、このゴーグルでも外殻と岩の差は、並べないと分からないが、魔力がない壁は全く違うものに映る。これ、岩に下手糞に擬態しているのかも知れない。調査すればひょとして絶対にばれない擬態が出来る可能性がある。

「フラウ、テンコ、500体位採取してくれ」

俺達は、さくさくとギガントモールを狩っていった。

「みゅみゅ、タケオさんさっきからギガントモールが消えていくのですが、粉にして飛ばしてるんですか」

しまった、メーミの事忘れてた。今更、誤魔化せそうもないが、だからと言って率先して教える程の仲でもない。

「メーミ、他言無用だ。全てを消す特殊な魔法だ。理由は聞くな」

メーミはコクコクと頷いた。

山は穴だらけで、中に入るとギガントモールがわらわら出て来る。フラウとテンコに任せて探索する事半日、向こうから5人組が歩いてきた。


「おいおい、お前ら新参者だろ。ここは、許可証の無いものは入れねーぞ。

見逃してやるから、赤いゴーグルと女二人置いてどっかに行きな。俺達は優しいから、今なら命が保証されるぞ。」


こう言う奴は何処にでもいる。いちいち相手するのも面倒だ。


「メーミ、こう言う奴は、どうするんだ」

「みゅ、直ぐ逃げましょ。危険な冒険者です。穴に入ればこっちのものです」

逃げようとするメーミを手で制し聞いてみた

「俺は、降ってくる火の粉は払う主義だが、今だったら、”逃げてもいいよキャンペーン”中だから見逃してやるぞ。それからここの領主から許可証を貰っている。

お前らこそ持ってなかったら只で済むと思うなよ」


逆に不味いと思ったのか、いきなり剣を抜く冒険者たち。

「何、みんなやっちまえ」

有無を言わさず斬りかかって来るムサイ男たち。

「手加減を覚えたオーキさん、やっておしまなさい。ふお、ほっほっほっほ」

”ぽーい、ぽーい、ぽーい、ぽーい、ぽーい”

”あーーー、あああ、あああーーー”

ミミちゃん援助資金になりそうもなかったので、深そうな穴に"ぽーい"。

「みゅ、オーキさん強いんですね」

「相手が弱いだけだ。先に行くぞ」

暫く歩くと、大きな川なのかちょっと淀みがあり、沼のようなところに出くわした。

「みゅ、ここからは、注意してください。パワークロコスの群生地に入ります。静かにお願いしますね」


”ばしゃ、ばしゃ、ばしゃ”

「水は気持ちええだな」

「冷たくて、気持ちいいです」

「みゅ!、だから静かにしてくださいって言ってるでしょ。食べられちゃいますよ。タケオさんも注意してください」

タケオは、大きな声で叫んだ。

「オーキ!、テンコ!静かにしろって言われてんだろ」

その時、水面から大きなパワークロコスが口を開けて飛んできた。

「みゅーーー!」メーミは、叫び出す。

思わずオーキがパンチを繰り出す。

”ドゴン”

7,8mはあるパワークロコスが宙を舞い、岩肌に激突する。

”ドッカーン”

テンコの前にも10mはあるパワークロコスが口を開けて飛んでくる。

思わずテンコの飛び蹴りが炸裂する。

”ズゴン”

”ドッカーン”

オーキが飛ばしたパワークロコスの上に転がったパワークロコス。

その後も次々とやって来るパワークロコスの群れ。

”ズゴン”・”バゴン”→”ドッカーン、ドッカーン”

”ズゴン”・”バゴン”→”ドッカーン、ドッカーン”

”ズゴン”・”バゴン”→”ドッカーン、ドッカーン”

”ズゴン”・”バゴン”→”ドッカーン、ドッカーン”

”ズゴン”・”バゴン”→”ドッカーン、ドッカーン”

・・

タケオは、素早くフォジックで横に除け、10段づつ積み上げる。

暫くするとパワークロコスは、襲ってこなくなった。

周りには居なくなったのだろう。

「結構いい運動になったです。」

「おらも、楽しかっただ。パワー系は気分が晴れるべ」

「みゅ、みゅ、これ、私などガイドに必要ないのでは・・・

ギガントモール、パワークロコスの方に逃げろと言うべきじゃ・・・」

ぼーっと呟くメーミだった。


「メーミ、ぶつぶつ言ってないで、パワークロコスは、何かの役に立つのか」


「は!みゅ、パワークロコスは、そのまま焼いて良し、干し肉にして保存するも良しの食材です。ミーアニャンコ族では逆に捕食されてしまうので、川岸に流れついた死肉しか食べた事無いですが、非常に美味です」

適当な横穴を見つけ、皆を呼んだ。

「よーし解体だ。燻製肉を作るぞ」

まず、洞窟の中に乾いた雑木をぶち込み火を付けて中を燃やす。

中に虫などが居た場合の処置である。

その間に、女性たちは、今回の収穫の3割程度のパワークロコス50匹分の肉を300g位のスライスした肉片にして大きな鉄で作った柵に干していく。

洞窟の中が燃え終わり、炭火になった所に桜の木のチップを満遍なくばら撒く、急いで肉片を干した鉄策を中に運び入れ、緩い風の魔法で煽り、煙が満遍なく出始めたら、空気穴を開けて入口を塞ぐ。

後は一日待つばかりである。

「今日は、ここで寝るぞ」

「みゅ、ここは、パワークロコスがでる・・・

・・・何でもないです」

もう、豪に入っては豪に従え、持ってけどろどろどろだんごだ。

既に考えるのを辞め始めたメーミだった。

朝起きると、まだ沢山のパワークロコスが積み上げらていた筈なのに跡形もなくなっていた。

フラウさんが、川で顔を洗っている。そこにパワークロコスが。

メーミ「フラ!」

一瞬で、パワークロコスの首が糸のような物で切られ、虚空に消えた。

「どうしたのメーミさん。顔が固まってるわよ。私がマッサージしてあげるわね」

フラウが両手で”ぐにぐに”とメーミの顔を優しく揉んでいた。


「ちょっと、お花摘みに・・・・・いえ洗濯に行ってきます」

・・・乙女の秘密は、暴いてはいけない。かしこかしこ。


「おーし、窯を開けるぞ。」

タケオが洞窟を塞いだ土を除けると煙は無くなっていた。

嫁達は、そそくさと干し肉を片づけた。

朝飯は、干し肉をさっと炙って野菜スープに浸して食べた。

「「「「旨い」」」」

フラウ「やっぱり、桜の香りが決め手ね」

「燻製は、半生の香り付きにすると病み付きになるだべ」

「僕は、この淡白な脂ののった肉が桜の香りと共にスープに移って、それを飲むのが最高です。天罰コースです」

メーミは、思った。パワークロコスの肉自体滅多に食べられないのに、それをこんな美味しく食べたら、お天道様が西から登ってしまうと。

朝食を食べ終わり、そろそろ谷に降りようとした所で穴を掘っている冒険者に出くわした。

二人は、60は過ぎた男女の老人だった。

タケオは折角なので声を掛ける事にした。

「こんにちわ、どうですか稼げますか」

穴に頭を突っ込んでいた男性が顔を出した。

「おお、珍しいな。新入りかい。」

「いえ、教都から調査に来ただけです。」

一期一会、人の良さそうなお爺ちゃんだったので、お茶にする事にした。

キャンプ用の小さい魔導コンロをリュックから出し、皆で紅茶を飲んだ。話を聞きたいので

マケラ帝国で買ったクッキーも付けた。

「爺さんクッキーなど何十年ぶりかのー、お金持ちの方でしたか」

大変喜んで貰えたので、発掘の状況を聞いてみた。


二人は夫婦で、古物商をしていたが息子が継いだので、10年前から道楽で発掘を始めたそうだ。

近くに掘っ立て小屋を立て、2週間掘っては、2週間村に戻る生活をしている。

 出て来るものは、ガラクタばかりで大したものは出て来ないそうだ。特に槍とか剣、盾ばかりで型は古いし、錆びてたり腐ってたりで殆ど金にならない。

元々道楽なので気にしていないが、一攫千金は、子供の頃からのロマンなのだそうだ。

 大した話は聞けなかったので、席を立ち先に行こうと思ったのだが、ふと掘っていた穴を覗いて金属探知をしてみると何かがありそうだ。

掘った穴の右下を1m掘ると錆びついた四角い箱が出て来た。

穴から取り出したが、鍵がかかっている。錆びついているので、剣の柄で叩き壊し中を開けると、そこには燻んだ茶色い大きな貨幣が千枚は入っていた。

その箱の中にウオーターの魔法で水をじゃぶじゃぶ出すとそれは、大金貨だった。

「ひえー、お宝だ!」

爺さんが腰を抜かし、婆さんの入れ歯が爺さんのハゲ頭に嚙みついた。

タケオが老夫婦に声を掛けた。

「良かったですね。十年が報われましたね」

「いや、あんた、これあんたが掘ったんだぞ。我々のものではないぞ」

この二人は、人が頗る良いようだ。俺は良い奴は助ける男だ。

いらないと言っても受け取らないので、仕方なく100枚受け取った。9割掘ったのは、二人なんだから俺の取り分はこんな所と言っても納得しないようだ。

仕方がないので、自分は骨董品が大好きなので、今まで掘ったもので、欲しい物があったらそれを貰うという事で決着をつけた。

本当は、ガラクタなんて欲しくないが仕方がない。”これは凄い”とか適当に言ってランプでも貰っておこう。

 山の中腹にある掘っ立て小屋に行き、掘り出した骨董品を漁って見たが、ガラクタだらけだ。欠けたランプや燭台などなど。

見えない様に”はー”とため息を吐きながら、長椅子に座るとちょっと反りがあり座りにくい。

上に置いてある長布団を捲ってみると、それは立派な盾だった。長さは2m、横幅1.5mで意匠がされており、ドラゴンがウインドウカッターをしているのを弾き返している絵だった。

下の方には、盾を貫通して首が落ちる絵が書いてあり、思わず金属感知をしたが、オリハルコンや高密度ミスリルが使われ、それ以外にも色々な未知の物質が使われていた。

盾を持つ部分に古代文字で何かが書かれている。

フラウ博士に聞くと、風のドラゴン、真空波動斬を遮る盾オウゲンスと書かれていた。

思わずこれは歴史的価値があると言い切って頂くことにした。金属の値段でも金貨1000枚では買えないだろう。

爺さん婆さんも運ぶのに大変で1枚だけ持って来たが、未だ埋まっているので掘るかと聞かれ、これは掘るでしょ。

地中に5m程掘った先にあったそうだ。

穴を降り、周りを鉱物探知すると幾つかの盾、剣が見つかった。

洞穴から上に揚げ、水で洗ってみた。

 また、古代語だったので、フラウ名誉教授に翻訳を依頼した結果、聖盾アキレウソ、聖剣デュラン・デュラン、キルトーの杖が出て来た。


うーん面倒だが、聖剣、聖盾、杖は、暇になったら勇者に送ろう。

俺達には、意味がないが、怪獣大戦争に挑む勇者パーティーには必要だろう。

今日は、二人の掘っ立て小屋の前でキャンプした。

二人はあと5日は此処に居るそうだ。

俺達は、今後の行動をメーミと打ち合わせした。

メーミは、簡単な地図を地面に書いた。

「これが現在地ですが、ここからパワークロコスが棲む川の横を遠巻きに降ります。この位置が一番緩やかに谷の下に降りられる経路になります。次に川を渡るのですが、上流で渡るとパワークロコスが大量にいるので、少し下り、川幅が狭くなったところを渡ろうと思うのですが、その近くには魔毛ガニが居ますが大丈夫でしょうか」

「魔毛ガニってどんな魔物なの」

「魔毛ガニは、負けクラブとも言われ、甲羅にバッテンがついています。体長20cmから50㎝位の蟹で、攻撃は単純でハサミでの魔強化攻撃のみです。なので単体でしたら私でも倒せます。

ただ、問題なのは少し数が多いかなと。」

「メーミが倒せて少し数が多い程度なら何とかなるか。その蟹食べれるの?」

「大変美味しくて、ばー様が作る味噌スープに入れると絶品でミーアニャンコ族の正月の贅沢品です。教都では1杯金貨1枚で売られていると聞きました」

「そこ通ることでいいかな」

皆もコクコク凄い勢いで頷いた。

「その後川を渡って、石柱に到達します。そこでどういうものか確認して下さい。中に入るのは絶対お勧めしませんし、私は、ミーアニャンコ族の掟で絶対入れません」

メーミンばー様の話から、かなり危険なのだろう。

という事で、明日朝早くから出かける事になった。

翌朝、老夫婦と別れ、谷を降りる事になった。



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