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78.剣闘王大会③


昨日の破れた結界は、奇麗に修復され強化されたようだ。

竜人の戦いの翌日、大会3回戦の第5試合から第8試合の4試合が午前ニ試合、午後二試合行われる。オーキの出場するのは、最後の試合だ。


 第5試合は、イケメンアドバイザーのボクネエさんが、毒霧で退場させられた金ぴか鎧とボクネエさんより強いという戦士との戦いである。

◇金ぴか鎧

 ランド王国 アナホール男爵家次男、ワイローと言う。

ワイローは、バトルロイアル戦で5人の冒険者を金で雇い、勝ち抜いたセコイ奴である。

才能は、オール白で、現在ランド王国軍のエリート幹部候補生になっている。

今、ランド王国では、マケラ帝国への侵略戦争の準備をしている関係上、優秀なものは、簡単に出世のチャンスがある。

今回の剣闘王等の大会で優秀な成績を修めれば大抜擢のチャンスになる。

ランド王国の貴族から他にも何人かが出場した中の一人である。

ランド王国貴族で、ここまで勝ち残ったのは、彼一人である。

トーナメント3回戦出場でも相当の箔が付くのだが、当然準決勝、決勝、もし優勝などしたら王太子の参謀か大隊の隊長クラスは間違いない。ひょっとすると将軍・・ワイロー将軍。

凄っげー美人も、初恋のマ、マ、マリーだって、、、

”ぐふぇふぇふぇ”

ひとり、捕らぬ狸の皮算用ならぬ、獲らぬワイローの皮被り。

 ただし、戦わずして敗れれば、敵前逃亡と見なされ、評価はマイナスになる。

その為、負けるにしても戦わずにここで終わりには出来ない。

ワイローは、対戦相手を買収しようとしたが、

「我は偶然勝ったに過ぎぬ故、お主のような強者に負かされるのを待っているのだ。強者と対戦できるだけで至上の喜び、金銭など受け取れぬ。」

と突っぱねられてしまった。

ワイローは、「さもありなん、然もありなん。」

こいつ、俺の事が良ーく分かっている。

トリプル白の私に挑める事自体が名誉なのだ。ここは軽く捻って俺の太鼓持ちにしてやろうかと思う優しい自分に身震いした。

◇ボクネエさんより強い戦士

彼の名前は、ムサイシ。東の国から来た剣豪だ。

2mを超える二刀流の達人で毛むくじゃらで風呂にいつ入ったか分からない。

剣の修業に明け暮れ、野山を駆け巡り野獣の様に生きた。

彼に一般常識は通用しない、と言うより分かっていない。


彼は、東の国の剣豪コシローを思い出していた。

コシローは、せこい奴で決闘時にも権力者をバックに付け優位に進めようとしてきた。勝つための彼の兵法なのだろう。

しかし、彼は今まで戦った相手で最強だった。

彼の長剣からの腰巻返しは、剣の残像が腰巻の様に大事な処を隠すように残る為、返す刀の軌跡が予想できない卑猥な名前だが必殺の剣だった。

船の櫓を削り、間合いを長くして勝ったが、紙一重の勝負だった。それ以来、ムサイシは、せこい奴ほど必殺技を隠し持っていると思っている。

要は、せこい奴程強いと思っているのだ。

せこさは、コシローに匹敵するワイローを見て強敵と判断したようだ。

いよいよ、二人の試合が始まった。

二人は剣士である。

ワイローは、ムサイシに「怪我さしちゃったら御免ね」と声をかけた。

ムサイシは、右手にだらーんと剣を持っている。

初手は、ワイローの八相右斜めからの切り下げだった。

「うっ」 ムサイシの剣が太陽に反射し目に入った。

良く分からずムサイシを通り過ぎたワイローだったが、ちょっと背中に痛みが走る。

背中には”一”の字が書かれていた。

「鋭い踏み込みですなー、流石最強剣士」

ワイローは、きっと間違いで剣が当たったんだろうと剣を横に左脇構えにし、左から横なぎに。

「うっ」 また、ムサイシの剣が太陽に反射し目に入った。

良く分からずムサイシを通り過ぎたワイローだったが、

また、背中に痛みが走る。

背中には”T”の字が書かれていた。

3回目は”下”の字になり、5回目には、”正”の字になった。

「何か背中が痛いんだけど。君、卑怯な事してるでしょ、さっきからピカピカ剣を光らせるし」

「ええ、剣士殿が本気を出さない回数を刻んでるんですよ。6回目からは指にしましょうか。私も気が長い方じゃないんで、そろそろ必殺技お願いします。最強剣士殿」

ワイローは、彼の他に誰かが攻撃していると感じた。

「審判、背中に他から攻撃受けてんですけど、彼を反則負けにして下さい」

審判「いや、外からは誰も攻撃していない」

タケオ「ボクネエさん、あれは、技なんですか」

「木漏れ日と言う技ですな。周りから見れば、通り過ぎた相手に一閃しているだけに見えますが、対戦相手は、一瞬太陽の光を反射され、周りが何も見えていないで剣を振るっているんです。だから気が付かない。

知っていれば、剣を光に合わせ相手に逆反射させるのですが、木漏れ日の技自体が小手先なので、余程の格下にでないと決まらない技でござる」

遂に怒ったワイローは、身体強化して、魔攻を上げムサイシに飛び込んでいった。

「やはり、早いではないですか。最初から本気でやってくださいよ。でも雑念が多過ぎるようでござる」

”しゅぴん”

”ぽと”

「ぐああーーー、小指がー」

ワイローは、右手を胸に宛て、右手で剣を持ちながら庇った。

「そんな恰好じゃあ、首が飛びますよ最強剣士殿」

「いだいー、いだーいーよー、まい”シュピン”ばーー」

ワイローの舌が宙を舞った。

「まだ早いでしょうに。貴方の実力出し切ってないでしょう」

これは、殺されると思ったワイローは、身体強化MAXで場外へ逃げ出そうとした。

”ガツン”

”ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ”

「簡へんひへふれ」(勘弁してくれ)

「拙僧には、もうこれ以上の力は無いのかね。それだけの俊敏さと耐久力があるのに何で本気出さないんだろう。

拙者などよりよっぽど凄いはずなのだが」

ムサイシは、剣を振り上げワイローの顔の前に剣を振った。

所謂寸止めだ。

ワイローは、失禁して気絶した。

審判「戦意喪失により、東洋の剣士の勝利」

ムサイシは、ゆっくり控室に帰って行った。


「最強剣士は、最初から最後まで真ともに剣を構えませんが、あれはどうしてですか」

「あれは、無構えですね。構えが無いんです。無構えの構えではないので注意してください。私が習った地域の剣術では、達人の域に達すると自然の位置にある全てが構えであり攻撃防御の体勢であると解いています。あの域まで達っしていない私では、解説できませんが」

「これ、本当にオーキは勝てるんですかね」

「私では無理ですが、オーキさんなら簡単だと思いますよ」

「へ?」

「だって彼、魔力循環しか知らないですし、それもお粗末なレベルと見受けました。魔法について何も知らないと見て良いでしょう。

今日見て確信しました。彼は、全く身体強化しないで戦ってるでござる。

私の魔攻では、優位に立っても引っ繰り返されます。耐性を上げても、首や指、腋の下など魔力循環が滞る部分は、余り耐性が上がりませんから急所になってそこを狙われます。オーキさんレベルの魔力だと傷一つ付けるのも難しいんじゃ無いですかね。だから相手が逃げる時、足を切らずに引っ掛けてたでござる」

そんな馬鹿な。俺は久しく使わなくなった能力感知をして去り行く彼を探知したら、魔攻 200しかない。魔力循環も子供以下だ。これじゃあ、身体強化などほぼ使えていない。


・・・身体強化の仕方を知らないんだ。・・・


この世界で、身体強化を知らない人を初めて見た。

「おそらく、東の国でも蝦夷の方に住んでらっしゃるのでしょう。あちらは極寒で、魔物があまり生息しない地域ですから」

「でも、身体強化を使わないであの技量は、とんでもないな。こいつに、魔力循環と身体強化を習得させたら剣聖だって笑いながら倒しゃうぞ。」

「拙者が思うにそれは無いと思うでござる。実際には魔法も動体視力など色々と関係するので、剣聖には、まず勝てないでござる。魔法が無いなら無敵でしょうが。魔法を知っていて組み上げられた剣術とでは、比べる事は叶わず、今から身に付いた物を修正するのは最初から修行し直しと言っているようなものでござる」

そうだよな。一朝一夕でこのレベルまでにするのは不可能だ。体に刷り込まれた日々の鍛錬の賜物だろうし、だけど知って損することは無いような気がする。

人間一番大事なのは、本気で強さを追求するなら、気付いたら何時でも学ぶ事だ。知るは一時の恥、知らぬは一生の恥と同じだと思う。

子供と一緒に学び直せばいい。

それを面倒だと思うならそこまでの人間だと思った方がいい。

よし、オーキとの戦いが終わったら教えてあげよう。

俺は前向きな奴には教える主義だ。俺ルールだ。

「じゃあ、オーキは勝てそうだな」

「拙者が思うにこのままでは負けるでしょう。」

「さっき、オーキには傷はつけられないって言ってなかたっけ」

「それは、この闘技場ではない一般のフィールドだったらでござる。

オーキさん、このフィールドで魔力全開したらどうなります?」

「おらが、魔力全開したら跡形もねーべな」

「そう、闘技場のルールに則たら、今のままでは力の一割も使えないでござる。そこで闘技場でも使える槍術や彼が身体強化できない弱点を突く方法を伝授すれば、数日の付焼刃ですが役に立つと思うでござる」


 そうして時間は過ぎ、いよいよオーキのトーナメント3回戦が始まった。

俺は当然、オーキに金貨100枚賭けた。オッズは8:2で100倍から4倍まで人気が上がったようだ。

オーキが登場すると、今まで見向きもしなかった観衆の一部が、「オーガのねーちゃん頑張れよー。お前に全財産賭けたからな死んだら殺すぞ。」

前回は、罵声も無い完全無視状態だったが、声援がちらほらと聞こえるようになった。


いよいよ、トーナメント3回戦の最終試合だ。

相手は、熊獣人の男で身長は4m越えてるな。全身をフルプレートの鎧で固めている。武器は鎧に付いた突起らしい。


タケオは思う。これ、熊で良いんじゃないか、きっと普通の熊よりよっぽど強いと思うぞ。


オーキはと言うと、透明なユグ糸を胴と腕に巻いている。腰に刃渡り20cmのナイフを二本差している。

肩にはショルダーガードを付けているだけだ。ユグ糸のマントも着けていない。

何でこうなったかと言うと天元の大薙刀は、オーバースペック過ぎて使えないのだ。

何故か墨を付けた筆を持っていた。


両者が闘技台に上がり、対峙したが、4m越えはオーキより数倍デカく感じる。開始の合図と共に熊獣人は、20m後ろに下がった。

こちらに突進するため、四つん這いになった。

「身体強化、俊足発動」

”ばふっ”・”ダダ、ダダ”

頭の角をオーキに向け突進!その歩数20mを3歩の勢いだ。

熊獣人の角が刺さる刹那、既にオーキは、相手の居た場所に移動していた。

「がー、染みる―」

熊獣人は、右目を痛がっている。どうも墨汁が目に入ったようだ。

「ボクネエさん、やっぱり目の周りを丸く塗るのは難しいだ。本当にこれが役立つだかねえ」


目を擦りながら再度オーキに突進!その歩数20mを2歩半の勢いだ。さっきより頑張った。

熊獣人の角が刺さる刹那、既にオーキは、相手の居た場所にまた、移動していた。

今度は左目の周りが黒くなった。痛がっていない。

「やっただ。おら上手くできただ」

人間何でも成功すると無性に嬉しいものだ。


「お前、俺を馬鹿にしてるのか、、、殺す」

熊獣人は、オーキの前で立ち上がり、熊の爪攻撃を仕掛けてきた。右腕を横に振り、また左腕を振り攻撃する様は、体長4mを超える大きさから振り出されると突風が起こるほどで、当たったら上半身が吹き飛ぶ勢いである。

”バフーン・バフーン”

オーキは、避けながら熊獣人の手の甲にバツ印を付けた。

「おおー、上手くできただ。おら何だって器用にできるだ」

もう、何か知らないがオーキはウキウキ大喜びだ。


「お前、避けてばかりで戦う気はあるのか。

審判こいつ戦意がないだろ。

失格にしろ」

・審判団が競技し始めた。

「301番オーガ族の人、これ以上攻撃が無い場合は、失格とします」

「そっただ事言われても、もう少し訓練するノルマがあるだ。

次はナイフでチクチクと鎧を剥がす事が出来無くなるだ」

何言ってるか?マークの審判たちだった。

「とにかく、この後攻撃しなければ戦意が無いと見なし失格にする」

オーキは、両手を広げ、しょうがないと言ったポーズをボクネエさんに見せた。

熊獣人が仕切り直しとばかり、20mほど下がった。

オーキは、右手の人差し指を自分の方に”クイクイ”と曲げ、かかって来いのポーズをとる。


その仕草に激高した熊獣人が突進してきた。

”がしっ”

オーキは右手を前に出し、掌で熊獣人の突進してくる頭を押えた。

熊獣人は、身長が1m縮んだ様に止まり、ふらふらと立ち上がった。

「頭殴ったら、無くなっちまうだからな」

そう言って立ち上がった熊獣人の胴に腕を回した。

”ギューーー” 所謂ベアハッグである。

「あ、あ、止めろー、腹が潰れるー、肋が・・・」

「ちょっとビール腹が凹んで丁度いいシェイプアップになるだよ」

”メキメキメキ・バキバキッ”

熊獣人は、口から泡を噴き出し目がぐるぐると回り始めた。

下からは、出てはいけないものが。

「臭せ、また鼻への攻撃だか、コロシアムに来る奴は、下が緩いだな。便秘症も解決だべ」

「ま、参った」

オーキが腕を広げるとちょっとスリムになった熊獣人が膝立ちで固まって気絶していた。

「勝者、オーガ族のもの」

”ドスン”

審判のコールと共に熊獣人は倒れた。

医療班は、洗濯ばさみを鼻に挟み、そそくさと熊獣人を運んで行った。

こうして、剣闘王トーナメント3回戦は終了した。



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