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73.コロシアムの町


◇コロシアム

 コロシアムは剣闘の町である。

その歴史は古く、教皇国か建国する前に遡る。

この町を作ったのは、数千年前の王国時代の国王である。闘い好きの国王は、色々な部族から最強の戦士を集め殺し合いをさせて、酒に女に興じ、快楽と暴力を求めて作られたのが、コロシアムの町と言われている。

 教皇国のような神を信じる国が、なぜこのコロシアムを認めているのかが問題である。そこには深い歴史の闇がある。初代教皇は、この地を統治するため色々な地域に援軍要請をした。しかし、時の混沌の中では何処も要請には応じなかった。そこにコロシアムの町は、剣闘士を援軍として送り、教都の周りを制圧したため、教皇国が樹立できたと言っても過言ではない。

 こう見れば英雄の町のように聞こえるが、裏では別の密約があった。それは、建国後、独立自治権を認める事だった。

以来、教皇国は、違法奴隷、麻薬、暗殺、殺人など誰が見ても犯罪者であっても、不可侵であるコロシアムに逃げられると手を出す事が出来なくなった。しかし、コロシアムの町だけでは、全ての食料や物品調達は難しい。

この町では、元老と呼ばれる6人の顔役がいて、教皇国との折衝などに当たっている。彼らが条件を出して引き渡しをするか決めるのである。

当然、コロシアムの町でも殺人や麻薬などは罪になるが、町以外は別と言う訳である。

教皇国は、引き渡し条約を結ぼうとするが、町にとって何の旨味も無い条件は、当然受ける気がない。


 ここは、コロシアムであり、剣闘士の町だ。剣闘には。一攫千金もあれば合法的に人が死んでいく町でもあるが、人は名誉なのか金なのか世界中から引切り無しに集まってくる。

変わった古今東西の品も集まったりするので、市場としても活気が他とは違う。

教皇は頭を悩めているが、国民もみんな知っている事実であり、今はどうする事も出来ないのだ。

クーガ、フーミンを送り出し、俺達はてんこ盛りの荷車を4台牽き、コロシアムの町の門に来ている。

俺とフラウは20匹のオークを載せ、テンコとオーキは、10匹づつのワイルドバッファローを載せている。

荷台を長くして沢山積めるようにしたのだ。

門番はびっくりした様子はない。

ここでは、コロシアムに出場するような力自慢が多数いるからだろう。

オーキも特に呼び止められる訳でもなく門を通過した。

小さな声で「オーガ族は力だけはあるからな」と少し蔑んだ笑いが聞こえる。


冒険者ギルドの場所を聞き、何時もの様に代金を受け取った。

この町では、オークが1匹金貨3枚、バッファローは金貨6枚だったので、計金貨240枚、税引き後168枚となった。

嫁達は、一人金貨10枚のお小遣いである。


今日は、闘技場を見学する事にした。

円形をしていて、直径は100mに近い大きさだ。

闘技場に入るには、入場料は、普段大銅貨2枚一律だが、剣闘王戦の時だけ、一般大銅貨2枚、B席銀貨1枚、一番近いA席銀貨3枚で収容人数は、1万人は入りそうだ。

貴族席のような所も10か所あり、10人位が座れる大きさで金貨5枚もする。

入場門の近くでは、勝敗の賭けが行われ、締め切るとオッズが貼り出される。

胴元は絶対に損はしない仕様になっている。

闘技場の周りは、食べ物、アクセサリー、その他諸々の屋台が軒を並べている。

賭けの胴元に竜人族の男を聞いてみると、一人しかいなかった。

入場券売り場で、竜人族の者が出る日と時間を教えて貰おうとしたのだが、今は無いと言われた。


 その理由なのだが、クーガを甚振って殺した時から昨日まで3戦したが、その戦い方が異常だった。

相手が”まいった”と言ったら終了しなければならないルールの筈なのだが、彼は最初に相手の喉を潰し、呻き声しか出せないようにしてから甚振るのだ。

泣きじゃくる相手を少しづつ膾切りにして動けなくなるまで攻め続ける。

審判が動かない事を確認すると終了となる。

余りの残酷さに対戦を受けるものがいなくなった。


オーキが申し込もうとしたが、当人が1週間町には戻らないと聞いて断念したようだ。

1週間後、コロシアムでは年に一度開かれる剣闘王トーナメントが行われる。

そこに参加するようだ。オーキもそれに参加すると言ってきた。

「オーキ、相手の手の内も分からず闘うのは無謀としか言えないぞ」

「タケオ、これはオーガ族の誇りの問題だ。相手が格上でも種族を虚仮にされれば、闘うしかねーだ。おらは、戦闘民族オーガ族のオーキだ。闘技場での平等な場所で逃げる訳にいかねーだ。」

オーキは、純粋な奴だし、もう応援するしかないな。

オーキは、参加料金貨1枚を渡し301番の札を貰った。

1週間あるので、対策を考える事になった。

竜人族の特徴、性格、信条などの文献確認。

情報としては、相手の戦い方を直接見た事がないので、膾切りにされたクーガの傷跡を分析すること。

黒狼族の若者が2試合見ていたので、その情報を加味して、戦い方、動き、得意分野を割り出していく事にした。


竜人族の特徴は、竜が棲む地域を外敵から守る為に存在するとある。竜山や海竜などの棲み処の近くに住んでいて人里には滅多に降りてこない。性格は、一言で戦闘狂と言っていい。強いは正義の証しと思っている。一説には、竜の血を飲み進化したとされていて、竜の子供ではない。

体長は、2m前後、肌は、竜燐で覆われ、黒く硬い。目が赤く、赤さが増せば増すほど攻撃的になる。

身体能力がずば抜けて優れていて、特に筋密度が異様に高い、人類の種族では最強と自他ともに認める存在。

 才能値で見ると、基礎力が高い為、灰色の1であっても通常の人類の10倍の伸び率がある。

才能がシロの場合、人間種の約3倍程度の伸び率がある。例えば、レベル50で通常人類が魔攻500に対して1500になる事になる。もうひと一つの特徴は、体を覆う竜燐が通常時でも鋼鉄並みの耐久力があり、身体強化を使うとミスリル以上の耐久性になる。魔耐を考えると1500でも750しか使えない一般の人類に対し、基礎力、特に元々耐久力の高い竜人は、1000以上使え、セオリーを無視する。

人類が一対一で闘う場合、才能だけ見れば、ほぼ無敵状態だ。

 弱点は無いのだが、強いてあげれば、破壊力重視なのか俊敏性は高いはずなのに、伸び率がややマイナスになる。

竜人より強いものとは、それは竜人である。竜人同士の戦いは、相手を懐に入れないようにし、最強の一撃を放つ。その武器が槍と言う訳だ。

独特の竜槍術を熟厚させ、牙突を生み出した。高速で何回も繰り出す総牙突と一撃必殺の閃牙突が、世界最高術技の一つと呼ばれている。

 体術は、優れているというより力任せだ。耐久力の高い肉体と攻撃力の高い筋力を兼ね備えているので生半可な攻撃は通じない。彼らに体術で上回るには、高俊敏性を生かし急所である関節技を決めていくしかない。


 もうひとつ、彼らは、牙に絶対の信頼があり、絶対折れないと思っている。もし折れた場合は、病気若しくは竜人ではないとされ、集落から追い出される。

武器:長槍(一本槍)


 さて、オーキの方だが、パワー、俊敏性は、竜人でも手が出せない領域になったはずだ。但し、彼女は今まで最強剣士と対峙したことがない。魔獣ばかりなのでどうしてもパワー重視できてしまった。狭い空間での体捌きや細かい動きの対処などは苦手に入るだろう。

 今から鍛錬しても相手の修業年数を考えると付焼刃は通用しない。

槍と薙刀の場合、同じように見えるが刃の大きさ、薙ぐため柄が槍に比べて太いので、重さが違う。

剣との対決には、間合いの遠さを生かせば分があるが、突きに徹した槍の場合、対人戦の一対一は、経験がものを言う。

薙刀は、突けば槍だが、一対一の対戦の場合、槍に比べ重いので速度が落ちれば突き負ける。横薙が出来るがそんな隙は見せてくれないだろう。


時間の無いのと相性の悪い相手だ。


これらを加味して、家族総出で作戦を立てる事にした。

少ない対戦実績からの推察だが、総牙突タイプの戦士と見ていい筈だ。

今から薙刀のサイズを対人戦仕様に軽く短くしても間に合わない。

一つ目は、躱しきる事。

連撃の槍を躱すには、まず軌道予測が重要である。

刺された傷を思い出すと柄が柔らかく20cm曲がりながらも突いている。黒狼族の話から1秒間に5回以上刺突している。

あまり威力は無いようだ。これが膾切りにする理由かも知れない。

これには、危険察知レベルを上げるのが有効と判断した。

オーキは、薙刀を持たずひたすら躱す訓練だ。

最大のウイークポイントは、オーキがデカすぎて的が大きいということだ。こればかりは、どうにもならない。

槍のさす方向から半身の体制を取り、相手が突いてくる面積を少しでも減らしながら躱す。

テンコ、フラウ、俺で前方から連続で突くのを躱す訓練をした。次に不可視の弾丸にゴム弾を入れ四方八方から連撃する。

これは、俊敏性の中での体感訓練で、不意の一撃も体制を崩さず捌くためだ。


そして、天元の薙刀は、収納にありながらオーキが呼ぶと自由自在に手に飛んでくる。イメージ次第で色々な位置に顕現させられるし、瞬間移動のような速さで手に戻って来る。

これを生かさない手はない。

こうして、俺達はオーキの底力を上げるため、1週間を費やすのであった。





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