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69.悪魔族ナイカブラ決戦②


奇襲で何とか撃退には成功したが、予断を許す状況ではない。


悪魔族ナイカブラは、霧化が暫くできないようだ。

俺達は、ナイカブラを追い、悪魔信徒アジトへ走り出した。


勇者が質問してきた。

「タケオ君、世界が滅びるって言ってたけどどいう事だい」

皆も走りながらこちらを見ている。

「最後まで騙されてしまいました。

この複数の魔法陣について1番から4番目までは説明しましたよね。」

※64.勇者登場 参照

1個目が魔法陣起動魔法で10m上空に魔法陣展開

2個目が霧散型魔力吸収魔法陣で村を殲滅

3個目が大型魔導砲で教都殲滅

4個目がテレポートで暗黒の森から大型魔獣召喚

5個目が固定待機魔法で複合魔法に利用

6個目が不明

「この5個までが全てフェイクだったんです。3個目までは普通の魔法陣に精通する魔導士ならギリギリ分かるかも知れない魔法陣です。4個目は余程精通した魔法陣研究家でないと分からない。

5個目は特殊で魔法陣研究家でも専門分野の人しか知らない。

しかし、専門家でなくとも起動するための道順は、魔法陣を知る魔導士なら、ある程度解析できれば、黒狼族の人達が泥沼にした地点に回路が無いと起動しないはずと結論付けるでしょう。


つまり、その点を守ればこちらの勝ちと思わせたのです。


 しかし、実際は最後の6個目が狙いだったんです。

アジトから今回設置した赤い染みへ真っすぐ伸びて魔法陣の6割が逆に展開すると、全く違った魔法陣になる。

、、、、、

それは、遠隔解呪空間移送召喚魔法です。


我々には場所は分かりませんが、ナイカブラが遠隔で指定した地点の呪詛又は封印を解き、もう一つの障害となる封印した箱や聖遺骸などの物理封印を空間移送魔法で外に出します。

空間移送には、聖遺骸等に囲まれると莫大な魔力を使うので障壁の前まででも相当の巨大魔法陣が必要だったんです。

最後は、その者をここに召喚して完了です。」

「「「それって、、、、」」」

皆が、走りながら目を見開いた。

「そう、この魔法陣が完成するまで見破られる訳にはいかなかったんです。

 雨の日もフェイクです。この赤い染みは、本物と偽物があるはずです。本物は、上だけが赤い染みで下側の杭が地下に相当深く埋まっているはずです。まず気付かないでしょう。


華々しく魔法陣が浮き上がり、村が殲滅、教都が壊滅、大魔獣襲来と見せかけた。ところが真に狙う魔法陣の完成には少々陣形が足りなかった。そこで待機魔法を匂わせる魔法陣に見せかけ、6番目の魔法陣の足りない部分を補った。わざと弱点を作り完成されないと何もできない風を装い、途中でも一個ぐらいなら壊せると思わせて、全てを完成させたのです。


ここまで、大がかりな魔法陣が必要であったこと。

精密な魔法を展開するため、この地域この地区が最も強固な地盤が必要であったこと。

数か月もかけて莫大な魔力を貯えなければならなかったこと。

雨に弱そうに見せたり、必須ポイントが分かるように作ったり、実際に稼働できるフェイクの魔法陣まで作って最後まで絶対に知らせる訳にはいかなかったこと。

そこまでして絶対に呼び出したい存在とは、

それは、・・・悪魔王・召喚・・・」


表面では、完全なる魔法陣に見せかけ、逆から起動されると全く違う魔法陣になるには、相当のアルゴリズムの計算が必要になる。この悪魔は、相当の頭脳の持ち主である。

用意周到、頭脳明晰、こいつはここで封印又は滅殺しなければ何時どこで何を起こされるか堪ったものじゃあない。

最早,誰も喋ろうとは思わないが、ここは何事にも勇者である。


「タケオ君、何か方策はあるかな。」

「無いです。さっき分かったばかりで、走りながら考えて閃く程優秀だったら妻達に怒られたりしません。

ハッキリ言って俺程度が彼の頭脳と比べたら、猿です。ビシ!」

ーーーきっぱり言い切る猿ーーうーん男らしいぞーーー

「それじゃあ、僕たちだったらダンゴムシだって言うのかい」

「そんな、ミジンコなんて言ってませんよ」

「いや、ダンゴ・・・」

とりあえず、阿保同士が話しても先に進まないので、


今は、とにかく発動を止めないと人類が滅亡してしまう。

・・これってこの前ファイアーアントの時も言ったような。


とほほほ。勇者に巻き込まれると本当、早死に決定だよ。


俺達は、やっと悪魔信仰アジトに着いた。

既に悪魔は、魔法陣の起動をしている。

「遅かったね。人類の諸君。君たちの拙い知能では、到底我に抗う事など出来はしないのだよ。

もう既に魔法陣は発動した。最早誰にも止める事はアイキャンノットだよ。

無能が騒ぐのは、愉快愉快。

ゆっくり人類が滅亡するのを楽しもうじゃないか。あはははは」


魔法陣は、魔力を吸収しながら6番目の軌道を伸びていく。

「我は、悪魔族でも最弱の悪魔でね。頭だけは良かったんで魔王様親衛隊四天王の一人なんだ。我に勝てても魔王様に勝てる者はもうこの世界にはいないよ。」


大魔導士メディエ、賢者トウアスは、魔法を唱え魔法陣にぶつけ様とするが、強力な魔法陣には魔法自体が霧散してしまう。


「世界が滅びるのを見るがいい。お前ら虫けらが何もできず消し飛ぶ様を。。。。はあーはっはっはっはーー」


勇者は思った。悪魔王が召喚されたら、このメンバーでは5秒と持たないだろう。

人類が滅亡する前に悪あがきでも何でもいい一秒でも抗いたい。理不尽なんて許す奴の気が知れない。

何があったって抵抗してやる。

・・・

そう思いたいが、現実的には無理だろう。誰かが世界に知らせ少しでも抗う術を模索すべきだ。

バット、バット、だがしかし、俺は勇者、俺がやらずに誰がやる。


この世界の主人公は俺だ。負けるはずがない。


「よし、タケオ君。先ずその悪魔を倒そう。」

「いや、ちょっと待ってください。

黒狼族の方達は、1km先で待機。もし我々が負けたら教都に伝えてください。」

「いや、我々も戦う。人類存亡の危機に逃げるなど出来ない。」

「そう言う意味ではないです。我々より強い人を探して欲しんです。その時戦ってください。今全世界が不意打ちされれば一縷の望みも無くなるんです。それとちょっと策もあるので勇者様が居れば何とかなるかも知れません」

そういう事ならと黒狼族は下がっていった。

物分かりが良くて助かる。

まあハッキリ言って、俺達で勝ち目は無いと踏んだのだろう。


「それから、勇者パーティーの皆さんも黒狼族の方と一緒にお願いします」

「そんな、私達は勇者パーティーよ。ここで引く事なんて出来る筈ないでしょ」

「この人類の存亡を掛けた戦いに、この後に貴方達が必要なんです。黒狼族の人達が教都へ行って誰が信用しますか。勇者が倒れた事実を誰が教皇に伝え信用して貰えますか。

それに勇者は、人類最強に頑丈です。そう簡単に死にません。どうかこの役割を果たしてください。

最終的には、貴方達こそが人類の希望なんです」


上手い!、何て上手いんだ!自分で言ってて本当に人を丸め込むのが上手くなったな。

こんなの奥さん達への言い訳よりチョロイぜ。

いつも奥さん達への言い訳考えているうちに悪知恵だけは超高回転で廻るようになった。

・・・・・人間訓練だな。(しみじみ)


 なぜ、タケオは、みんなを下がらせたのかだが、ナイカブラが、地下に杭を打っている姿を見てこいつは地中も移動できる事は簡単に予想できた。

危機感知を訓練してきた我々には大した問題にはならない。

我々だけなら、相手も使ってこないだろうが、そこに無防備な連中に立たれるとこちらは攻撃が出来ず、精神感応の格好の的にされてしまう。

”お前ら的になって邪魔だ”とは言いにくいので上手く下がってもらった。

これは、夫婦円満になるための処世術から滲み出たベターなコミュニケーション力である。 BY タケオ


勇者は何で必要かって?勇者は、弾避けに決まってるだろ。頑丈だから放っておいてもGより平気だ。


勇者「皆頼む、希望は最後まで残したいんだ。君たちがその懸け橋になってくれ。最後に皆、”ちゅっ” 愛してるよ」

あれ?みんな、顔の目のあたりに黒い縦線が入ってるぞ。相思相愛のハーレムパーティーじゃないの。


そして、聖女達も1km引き下がった。

ナイカブラが天に大きく手を広げ、恍惚の表情で語り出した。

「ふふふ、ああ、魔法陣が段々と光を増し?

・・・・・・光を?

・・あれ?・

何だ、何が起こっている。

あれ?発動が・・・止まった・・」

ナイカブラは、混乱している。

 そんな完璧なはずなのに。こいつらが知ったのはつい先ほどの筈。なぜ、・・・・


ぼーっと目が点になって固まるナイカブラ


俺とテンコは、ハイタッチしてニコっと笑った。


「お前ら何した。何時何をした」

「ええ、もう種明かししちゃう。ここまで引っ張ったんだから実は次の手が、

何て言わないんだね。

自分は今まで手の内見せなかった癖に自分がされると怒る奴っているよなー。なあテンコ」

テンコは、クスクスと笑う。


ナイカブラは、激オコのようだ。目が赤くなって、歯が割れる程歯を食いしばっている。


「もう暫く起動しないよ。そうだね2か月は待たないと、だってここに魔力貯めるのに2か月掛かったんでしょ。いやーお金と一緒で貯めるのは時間かかるけど、使うのは一瞬だね」


「まさか、貯蓄魔法に何かしたのか」

「折角大掛かりなMPチャージャーがあったから、逆流させたらあの膨大な魔力も数時間でほぼ吐き出したね。

だいたい、大規模魔法陣を展開するなら魔力供給が肝なのに、そこを離れても平気だと思う、そんなお間抜け野郎は、世界でお前位しかいないんじゃないの」


「ぐぬぬぬぬ。この無知蒙昧の下等生物の分際で。我を愚弄する・・・」


勇者が小さな声で聞いてきたのでひそひそ話をした。

「タケオ君、そんな手があったら皆を遠ざけなくても良かったんじゃないのかね」

「勇者様、これだけ知恵の廻る奴です。狙える奴が居れば何をして来るか分かりません。待機させたメンバーは、彼の精神感応には、成す術が無い者達です。どうかご理解ください」

「いや、だったら僕も危ないと思うんだけど」

「そこは、それ、その世界を救う勇者でしょ。敵に後ろは見せられんでしょうが。勇者が全面で一点突破です。信じてます勇者様、ここは、勇者教第一信者のこの私の前で華々しくやっちゃってください」

とにかくこいつは丈夫な盾だ。頭が少しおかしくなったって何とかなるだろ。

だって勇者だし。


全く策は無い。実際通用しそうなのは、勇者の頑強さ位しかないのだ。


ただ、戦ってみて分かる感触がある。

仮説が正しければ、上手く行けば、何とか封印位は出来るかも知れない。


タケオは、とにかくナイカブラを煽る。

「ほんとに詰めの甘い奴だな。お前悪魔王の側近何て嘘だろ。

ナイちゃんは、本当は悪魔王のお笑い担当だろ。

力も無いんだったら、そこで裸踊りでもすれば、俺達も油断するかもな。あはは」


もう、ナイカブラは、怒り心頭なのが、震える体で分かる。


生死を分ける戦いにわざといい加減な振る舞いをするタケオである。

とにかく、ナイカブラに冷静になられると頭脳勝負では勝ち目がない。クロの才能の俺は、村で皆に馬鹿にされ続けた。

その中で学んだ事がある。

頭がいいとプライドのある奴ほど、自分の策が失敗した時に冷静さを失い易い。絶対ではないが、その時の動揺は抑えられない。もし、それすら跳ねのける胆力の持ち主なら打つ手がないのが現実だ。

相手に力技を使わせて対抗する形しか勝機は巡って来ない。

「ふー、まあいい。君たちを始末して最初からやり直すか

どうせ誰にも見つからない所に行けば良いだけだし。

だがな、我を馬鹿にしたお前達は許すことは出来ぬ。

笑った事をそのまま恐怖の顔にして皮を引き剥がしコレクションにしてやるわい」

物凄い魔力が膨れ上がる。これは前回の比ではない量だ。

揺動は、成功したようだ。


「全員、盾防御。勇者様は俺の後ろに」

”バフューーー” ナイカブラの魔力が爆発する。

しかし、勇者は間に合わない。

「ぐおー」

盾で防いだ俺達も10m吹き飛ばされた。

”ザザザザザー”

これで、最弱の悪魔族の力なんだよね、他はどれだけ強いんだ。

勇者は、壁に張り付き、ぺったんこ。

やはり、最弱でも悪魔族、とんでもなく強い。


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