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59.王国とエミリー


ランド王国の襲撃も無事クリアし、ニアの町でゆっくりしている今日この頃。

朝起きると一通の手紙を受け取った。

勇者からだ。

>>>拝啓タケオ君へ (要約) >>>

お元気ですか。ニアの町では助けてくれてありがとう。

こちらは大変困ってます。

今、教皇国アウンスの近隣の村で謎の殺人事件が起きています。

原因、犯人もあまり手掛かりがなく大変困っています。

友達の少ない僕では、こんな時に頼れる人が勇者教信者1号のタケオ君しか居ません。

どうか、糸口だけでも一緒に探って貰えないでしょうか。

場所の地図を同封いたします。

PS.遂に普段でも限界突破できるようになりました。

貴方の信ずる勇者ハヤトより

>>>>>

俺はお前の使い走りじゃねーんだよ。

誰が行くか、教皇国は、遠いんだよ。何時かは行こうと思うが今じゃない。

勇者の使い走りしたって何の得にもならないし、近くにいたら怪獣大戦争に巻き込まれちゃうだろ。

とにかく今日はギルドに呼び出されて忙しい

頑張れ勇者、炬燵でみかん食いながらお茶飲んで応援してるからね。

―ー勇者殿は、遠きにありて、思うものーーー

自分は何もしないで、炬燵でミカン食べながら勇者の武勇伝を聞くのって良いよね。・・・自分達だけ平和でいいのかな?

◇ランド王国謁見の間

「こーの、バカチンがー」

「ひー、すみません」

「すみませんで済むか―、ニアの町は、死者もなく無傷で、こちらは全員殺されたと報告が来たぞ。

ああ、訂正する。無傷ではなかったか、死人をいっーぱい見ちゃったお爺ちゃんが1名心臓麻痺であの世へ逝っちゃったそうだ。

古今東西、戦争をこちらが仕掛けて、相手の損耗ゼロなど有り得るか普通、いや、役立たずの爺さんが一人減ったから相手は、得したかもな。どうやったら出来るか聞きたいものだわ。」

「それが、相手にバルト将軍が居たようで、こちらの作戦が筒抜けだったのではないかと」


「そんな言い訳通じるか、宰相、マケラ皇帝継承は、つつがなく終了して良かったな。」

「その、何と言いましょうか、一枚岩で出来たマケラ帝国は中々崩しがたく」

「後、お前の奥さんが巷に怒りの怨嗟をばら撒いて、多くの貴族からどうにかしてくれと陳情があってな。妾に邸宅買ってあげたそうだが、奥さんから何時も借金だらけでそんな金は何処にもないのにどうして妾の為なら金が湧いてくるのかと他の貴族達に愚痴をばら撒いているそうだ。この頃羽振りが良いが何処の金かな。」

”ぼちょぼちょぼちょぼちょぼちょぼちょ”

脂汗が既に滝となって落ちていく。


「・・・・・ちょっとお借りしただけでして」


「お前ら二人は、ひき肉にしてオークに食わせてやりたい。」

「「ひいー」」

「バット、だが、しかーし、お前たちに貢献が無かった訳でもない、そこで最後の逆転のチャンスをやろう」

「ありがとうございます。ありがとうございます。」


「お前たちは、子飼の兵が合わせて1000程いたな、それと合わせて義勇兵3000近くを与える。これで大森林に入りマケラ帝国を攪乱せよ。いいか2年間作戦が実行出来たら恩赦で帰ることを許す。いいな」

「「は、」」

「それから、軍資金は、宰相の妾の家を売って作れ、金貨一万枚の豪邸らしいから事足りるだろう。

元々国の金だ。大事に使えよ。


あと義勇軍だが、狂暴な奴が多いからな、マケラ側の森に入るまで手枷足枷は外すなよ。また狂暴犯が国に戻ってしまうからな」

こうして、カリス将軍と宰相は、手持ちの1000と全国の凶悪犯3000を率いて大森林に入りランド王国マケラ帝国攪乱軍として活動するのであった。

そしてバルト領軍と対戦する事となる。


「王太子、もうお前しか頼れるものがいない。頼んだぞ」

「はい父上、レベルを上げさせ最強軍団にしますので少々時間が掛かりますが、お待ちください。」

「2年間は、時間稼ぎに攪乱部隊に頑張って貰うさ」

こうして王太子が最強軍団を作るべくレベル上げに精を出し軍の立て直しをしていくのだった。


その後、財務大臣からの進言があった。

「陛下、最早我が国の借金は、3年前の災害復旧で大幅に増え、年の税金を大幅に上回っております。金利支払いだけでも国の税金の3割に匹敵しております。

これ以上の借金は、国自体が崩壊してしまいます。軍備増強などお金がございません。どうか御再考を」

「何を言っておる。国民が川の補強をして欲しいと言うから自由に使わせってやっただけだ。足りないなら言った国民から獲ればいい。借金など侵略すれば返ってくる。

財務大臣は儂が必要な金を集めて来るのが仕事だろう。子や孫の事などどうでもいい。今乗り越えなければ明日などないのだ。出来ぬなら、お前の一族郎党城門に吊り下げるぞ。

分かったな」

渋々、財務大臣は、家に帰って行くのだった。

「この国は、侵略でしか成り立たないどうしようもない国家である事は、百も承知だったが、自分だけ甘い汁を吸えれば良かったんだが限界と言うものがある。最早これまでか」

 国の借金を子、孫に払わせる為政者が何処にいる。やれ、優秀な子を増やせとか言うが、金のある奴は、この国に残ろうなど誰も思わんのに誰も子を国の為に産もうなどと考える訳がない。


まあ、平和とか言って何もしないで滅びる国よりはいいか。


そう言って、財務大臣は、荷物をまとめ愛人と二人で国外逃亡を図るのであった。



その頃、タケオ達はギルドにいた。

「ですから、昨日もお爺さんの隣の家の牛の息子が産気づいて駄目でしたよね」

「いやあ、母親の夫の一人息子が死んじゃってさ。お葬式に行くところなんだよ。」

。。「それって貴方の事でしょ」

「あれ、父親の嫁だったかな」

「相手は、領主様ですよ。これ以上いい加減な態度は、私が天に変わってお仕置きしますよ」

タケオは、近頃手に入れた甘味(魔ギ酸の甘味)の小瓶を受付嬢の袖の下に”スー”と滑り込ました。(昨日も滑り込ませた)

「いけません。いけません。これは禁じ手です。こんな事、こんな事、私は正義の受付嬢。絶対受け取り・・・・・。

そうですね。自分が死んじゃったら会えませんものね。」


そこに、エミリーが現れた。


「何バカなことやっているのですか、ちょっとその賄賂寄こしなさい」

「あ、それは」

小瓶を獲られた受付嬢の口惜しそうな顔ったら。

「甘―ーい、こんな甘いもの貴族でも食べた事無いですわよ。

フーフー、貴方、女の落とし方良く知っておりますわね。これじゃあ受付嬢如き瞬殺ね。」

エミリーは、タケオ達に手招きをした。

「こっちに来なさい。私が領主のエミリーよ」

「これはこれは、領主様、お初にお目にかかります。F級冒険者のタケオと申します。以後お見知りおきを」

そう言って立ち去ろうとすると、エミリーはタケオの腕をぐっと掴んだ。

「私の所に来いと言ったでしょ。来ないから私から来ちゃったじゃない。失礼ではないかしら」

捕まえられた腕を強引に引き剥がした。

「いえいえ、私田舎者でして、礼儀作法も知りません。何か失礼をして打ち首獄門になるのはご勘弁願いたくご辞退致したい訳です。」

しつこい奴だな。俺は貴族がだ大嫌いなんだよ。

この世界の貴族は、何時も横柄で、何かあったら殴る、切る、金を出せの強盗殺人犯と変わらない奴ばかりだ。


ーータケオの貴族感情は、ランド王国基準であるーー


そんな所に態々行くなんて自殺行為なんだよ。


「ちょっと受付の方、会議室あるでしょ。案内しなさい、貴方達も来るのよ。」

無理やり執事に会議室にドナドナ(連行)された。

「貴方達に聞きたい事が有るのよ。勇者様達とファイアーアントの調査をしたわよね。大河に縄が張ってあったのがどうなっていたか知ってるわよね。」

こいつ、何で縄が張ってあった事知ってんだ。

ランド王国の者しか知り得ない情報を知っているという事は、全容が分かっていると見た方がいい。

「知りません。私たちは、勇者様からファイアアントがいるかどうか見てきてくれと頼まれただけで周りを見に行っただけです。そのような場所は知りません」

「それはあり得ないんじゃない。だって真直ぐ大河まで行くと縄の張ってあった場所に行きつくはずよ。」

いや、真直ぐ行くと300m程ズレて大河に達っした。

この人、話すのが上手い、鎌掛けたな。


一瞬、テンコとオーキがビクンとした。・・まずい

「さあ、そんな物は在りませんでしたよ。真っすぐ行ったら崖でしたよ」

「惚ける気ね。・・・そっちのお嬢さん達も同意見かしら」

エミリーは、オーキとテンコの一瞬の動きを見逃す筈がない。


「じゃあ、そこの大きい素敵なお嬢さん。オーガってどう吠えるの」

オーキは、両手を頬にあて、まんざらでもない顔をする。

「素敵なお嬢さんだなんてまあ、そりゃ、おめー、ガオーガオーだべよ。もう何でも聞いてえーだ」


「じゃあ、そこのかわいい美人の狐耳のお嬢さん、狐ってなんて鳴くの」

テンコは、もう目が潤々している。

「かわいい、僕可愛い、美人、それは、コーン・コーンです。もっと言って、もっと言って何でも答えるから」

最早二人は、自白剤を100個呑み込んだような入れ食い状態。

ちっ、普段あまり褒めなかったのが、ここで仇になった。

これからは、もうちょっとだけ褒めちゃおう。

ちょっと恥ずかしいけど。


エミリーは、”ふーーん”と右手の親指と人差し指を顎に当てた。


「ランド王国の兵士がコーンと聞いたらしいのだけど、可愛いテンコさん、コーンと狐は鳴かないわよ。」

「え?僕はてっきりそう鳴くと”かっか”(母)に言われたからあの時そう鳴いたです。」

「あの時って?きっと超可愛い鳴き声だったんでしょうねえ」

「もう、超可愛いだなんて、兵隊さんがいっぱい居た森の中です」

あ、バカ狐。

「オーキさんも大河の所の整地大変だったでしょう。こんなお奇麗な方が手が汚れてしまうわ」

「お奇麗な方だなんて、あっただ大河の端っこの杭なんて、おらに掛かれば簡単だっただ。タケオも頑張ってたし」

本当、バカ魔物とバカ狐。ちょっと可愛いとか奇麗って言われただけで。

「決まりね、町の救世主さん」


もう開き直るしかない。相手の方が2枚は上手だ。

「だから何だ。何が狙いだ」

「そりゃあ、決まってるでしょ。領民の為にここまでしてくれたのだし、私の参謀になって頂戴。報酬は望みのまま払うわ」

「悪いがそういうものには興味がないんでね。俺達に火の粉がかかったから払っただけだ。領民の為ならあんた達がすればいい。俺の家族には関係ない」

「そう、セバス条件が揃ったわ」

「いえ、お嬢様、イケメン・高身長が揃っておりません」

「いいのよ、顔は、うーん・・きっと慣れるわ。身長はシークレットブーツがあるでしょ。」

「貴族を唸らせる貢物が出来る能力。

千の軍隊を損害無く退ける明晰な頭脳。

民の為なら数人でも立ち向かう勇気。

もう100点満点で1万点よ」

何だこの生き物は、偉い高飛車だな。お貴族様ってやつか。

「何を言ってるか知らないが、俺達には関係ない。」

「じゃあ、知らない振りしてあげるから、この書類にサインして頂戴。私のサインの右横にお願いね」


>>>宣誓書>>>

今回のファイアーアント及びランド王国千人隊の襲撃

に関して一切の行動は、秘密とし、

・・・・うんぬん・かんぬん・・

—————————————————————————

  サイン エミリー     サイン

>>>>

なんで態々こんな書類を作るんだ。意味が分からん

タケオは、書類をジーと見つめる。セバスが紙の両端を押えている。

よーく見るとサインの上に線がある?分かりにくいが段差?


”ぺりぺり”


そこを爪で突いて破くと二枚目に

>>>婚姻届け>>>


XXXX年XX月XX日

夫 タケオ 妻 エミリー・ケニス・マケラ


・・・・うんぬん・かんぬん・・


  サイン エミリー     サイン

>>>>

「なんじゃこれ、上はダミーじゃねーか」

”ちっ” エミリーは舌打ちした。

今度は、腕に柔らかいものが押し付けられる。このホールドは、健康的な男子が絶対外せない無敵の片腕胸当てしゅきしゅきホールド。

「くっ」タケオには外すことが出来ない。なぜなら猿だから。


「仕方ないわね。町を救ってくれたのに何の褒美もあげないのは領主の恥なの。この指輪をあげるわ」

無理やりホールドされた左腕の薬指に指輪を嵌めようとする。

そこに、フラウがタケオの手を握って阻止する。

「領主様、あまり冗談はお辞め頂けますか」

「エルフさん鋭いのね。嫁が4人になっても良いでしょ。私達楽しくやれると思うの。ねえお姉さま」

「無理やりエンゲージリングは、いただけないわね。タケオの気持ち次第でしょ」

ーーーー

この世界のエンゲージリングは、そのまま婚約指輪である。但し、この世界のこれは、絶対の誓いの指輪であり隷属の指輪と同じである。対になる指輪を両方が嵌めれば、両方が勝手に恋焦がれ外せば死ぬ呪いが掛かっている恐ろしい指輪なのだ。

ーーーー

油断も隙も無い。この世界には何でこんな男を狩るような誓約、掟、アイテムなどがわんさか湧いてくる。幾つあるのだろうか本当恐ろしい。タケオは震えが止まらなくなった。


こいつイカレてるのか。

「婿になる訳ないだろうが、初対面で常識のかけらもない奴の嫁など誰もいらんわ」

エミリーは、刺繡の入った奇麗なハンカチを涙を拭く振りをしながら、タケオを下から見上げるような姿勢で目は潤々させながら見つめた。

「タケオさん、誤解なの。見た瞬間に電気が走ってもう逃がしたくないって女の本能が働いたの。だって、お嫁さんになれば私の領守ってくれると思ったから。だから許してお願い。もう二度とこんな強引な事はしないわ」


・・・その割には用意周到だよな。演技派だし。ちょっと美人だし、あの金髪くりくり縦長の髪凄いな。

演技だろうけど可愛い感じかな。

領民思いで好感持てるしな。

・・・・・

俺には、領主様を無碍にできる程の胆力はない。

「はい、分かりました。もう二度としないで下さい。俺には3人の嫁もいますので、お気持ちは嬉しいのですがこれ以上は考えておりませんので残念です」


嫁の小言が聞こえる。

「お気持ちは嬉しいって嫌いじゃねーって事だべ」

「違うです。マスターは優柔不断で女の子大好きで隙あればつまみ食いしちゃおうなんて思ってるです。それでしっぺ返しを喰らうタイプの浮気男です。嫁として情けないです。」

「本当ね。ここはびしっと嫁は3人しか要りませんと言うべきよ。本当優柔不断だわ」

そこまで言わなくても、相手は領主だよ。余り遺恨を残さずやんわりと行かないと。ね。ね。


俺達は危険を感じそそくさとその場から逃げ出した。

次の日の朝、宿の前の道の奥の方に豪華な馬車が停まっている。もう完全にばればれだ。

フラウが言うには、偶然会った風を装う気だろうと。

きっと出て行ったら罠がてんこ盛りに出てきて、いつの間にか婿にされるだろうと。

出るに出られず、

そんな時、勇者の手紙を思い出した。

何か大変ご都合が良すぎる懸念は拭えないが。

―ーー作者:すみませんーーー

まあ、この状況じゃ活動がしずらいし。


父さん訓:相手のフィールドで戦うのは一番の悪手


相手が領主じゃ、何処で罠を仕掛けられるか分かったもんじゃない。

だったらほとぼりが冷めるまで行ってみるか教皇国。

どっちみちいろんな所に行ってみたいから冒険者に成ったんだ。


俺達は夜この町を抜け出した

さよならニアの町。


領主宛に一通の手紙が届いた。

エミリーは徐にペーパーナイフで封を切る。


>>>

拝啓、親愛なる領主様

この度、教皇国の勇者様から緊急の呼び出しを頂きました。

世界の為に奔走する勇者様の依頼は、断り切れず緊急で赴くこととなりました。

付きましては、そちらで何かが起こってもこちらで対応することは叶わず帰る事は無いと思って諦めてください。

領主様のご多幸をお祈りしております。

PS.ギルドには報告してあります。信じられなくて確認したければ教皇国勇者様にお尋ねください。

BY タケオ

>>>

「お嬢様、逃げられましたね。」

「何言ってるの。私の初恋よ。まだチャンスは絶対来るはずよ」

「初恋って、叔父さんの時も言ってませんでしたっけ」

「煩い、領地に役立つ人材は、皆恋人よ。初めて会ったら初恋なの」

「そんな無茶苦茶な」

頭はいいが、思考回路がちょっと変わったお嬢様だった。



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