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53.ファイアーアントとの死闘


クイーン・ファイアアントが大河を渡ってしまった。


俺たち4人は、300m先のロープの張ってあった地点へ急行した。

オークが、物凄い魔力を足に集中させ大ジャンプし、二枚のマントを広げ滑空している。

 あいつ我々の中で一番重い癖に、・・・かっこいい。

そこには、300匹ものファイアアントが居た。

”ドゴン”・・オーキが着地した。

何か地上走る俺達と時間が変わらないな。

距離が短かったので到着時間は俺達と変わらなかった。オーキが大薙刀を振るい一度に3,4匹を切り飛ばす。魔ギ酸は、マントで防ぎながら前に進んでいく。

フラウが、多天弓を使い矢を放つが、魔ギ酸の吐き出しに相殺されている。当たっても魔法耐性が異常に高く、ダメージがあまりないように見える。

フラウは、両刀に切り替え、真空刃で切り裂いていく。魔ギ酸は、腹に巻いたユグ糸を盾に使い、凌いでいく。

テンコが9尾になり、雷を落とし始めた。

”ピシャン・ドドーン・ドドーン・ドドーン・ドドーン”

直撃したファイアアントは地面に打ち付けられるが、起き上がってくる。

テンコもユグ糸を伸ばした爪の攻撃に切り替えた。

魔ギ酸は、9尾のユグ糸をくっ付けて盾に使って凌いでいる。


俺は、ウインドスクレイバー、ファイアーボールが全く通用しないので、弾丸を撃ち続ける。魔鉱弾が有効だったので、両手を広げ2発同時発射で撃ち続ける。

”ズドドドドーーー”

「フラウ不可視の弾丸を使え、通用するぞ、使い切っても構わん」

”ズドドドドーーー・ズドドドドーーー・ズドドドドーーー”

兵隊蟻のファイアーアントの数百は倒した。残りはクイーンの回りにいる数十。

ん?今までとは違う。残り30になった所で、3mクラスのファイアアントが出て来た。

外骨格に鎧を来たような風貌。

これは、ソルジャーだ。クイーン親衛隊のお出ましか。

この情報は無かったな、千年前に情報だから欠落部分もあるのは普通と考える。動揺してはいけない。・・・冷静に。

「能力探知」

レベル 不明 魔攻 不明 MP10000

これは、能力探知できない。ファイアアントに初めて探知したが不明とは、そう言えば、悪魔王が暗闇の森から連れてきたと言っていたな。やはり、こちらにいる魔物とは違うのかも知れない。

「タケオ、ユグ糸が段々短くなって使えなくなったわ」

「僕もです。盾に使っていた糸は、もう役に立ちません」

「おらのマントはもうボロボロで穴空いてる」

ユグ糸が駄目にされたのは初めてだ。

魔ギ酸は、恐ろしい分解能力を持ってるし、個々で考えたら俺達より格上に間違いない。

「皆、早く予備装備に切り替えろ。もっと強い奴が来るぞ。

フォーメーションは俺・テンコ、オーキ・フラウのダブルだ。

弱点は、裏側のお尻と鎧の境目。

各組、下がりながら一体ずつ、ダメージと決め技のコンボで撃破だ」

「「了解」」

俺達は、2組に分かれ、誘導者と必殺攻撃の2人態勢に移行した。このフォーメーションは、格上が来た時どうするか皆で考えて練習したんだ。家族の絆を深めるために一生懸命練習したんだ、簡単には負けない。


俺は、魔鉱弾を打ち込んだが、鎧に軽々と弾かれた。

彼らの攻撃武器は、魔ギ酸と顎の牙だ。

蟻の弱点は、裏側からお尻と鎧の境目だが、絶対見せてこない。


では、どうするか。

オーキは、後ろに下がりながら相手の口をちくちくついて行く。格上相手にはとにかく逃げて一対二に持ち込むしかない。

しかし、相手もスピードが速い、観察すると横への動きは速いが、前方向は、やや遅い、後ろは苦手のようだ。

上を飛び越えられるのが苦手のようだ。

魔ギ酸を吐く時は、必ず停止する。

仮説としては、魔ギ酸を作るのは、吐き出す瞬間なのではと推察する。何種類かの液と魔力を混合噴射することで出来るのではないか、魔ギ酸が体内にあれば自分自身にも負担が大きいはずと仮説を立てる。


フラウが見えない。

”ひゃっほう”   ・・オーキがアップダウンの上を通る。

”ボシュ”

そう、アップダウンの下でフラウが弩弓を構え待っていたのだ。いかに固い鎧でも、腹の部分は柔らかい。またこの至近距離では威力もそうだが、不意の一撃は、魔耐を上げる余裕もない。

腹に矢が刺さり動かなくなったアントにオーキが上から止めを刺す。

オーキがちくちく口を刺していたのは、自分にヘイトを集め、蟻の気を逸らし、フラウの気配を分からなくするためだった。


俺とテンコのチームは、テンコが攪乱する。テンコも尻尾のユグ糸で口の周りをちくちくする。アントの触覚の感覚を鈍らせるためだ。

逃げながらだと、アントは、魔ギ酸を吐き出す時止まるので、距離が自然とできて逃げやすい。

吐き出し終わって、走り出す時、アントの前に行き成りミスリルの盾を斜めに二枚出す。

アントは勢いで腹を剝き出しにする。

そこに、14mm魔鉱弾(攻撃力600)を打ち込む。

”バッシューン”

「ふー、ふー、どうだ終わったか」

フラウ「こちらは、終わったけど。ユグ糸の予備はもう無いわ」

オーキ「おらも、もう最後の装備だ」

テンコ「僕も限界、追ってくる奴はいなくなったです」

やはり、無傷では済まなかった。俺もタイツが少し穴が開いている所が出て来た。俺は、身体能力をこのタイツに依存しているので、今後の戦いに致命的になりそうだ。

俺も予備のタイツを履き替えた。

 400万のMPつぎ込むのに3か月掛かるんだよな。この予備一着しかない。

森中に魔ギ酸まき散らすし、トドメさす時も飛び散るし、本当厄介極まりない。

しかし、ユグ糸にこんな弱点があったとは、生き延びられたら改良するしかない。


クイーンの所まで戻った。

親衛隊が5匹残っている。おそらくこの5匹は、クイーンの近くを離れないのだろう。

前に3匹、両脇に1匹づつ。

接敵まで30m、これでは、不意にも近寄れない。

突然、前の3匹が横にずれた。

「即時撤退!」

クイーンから物凄い量の魔ギ酸が吐き出された。

早くて逃げ切れない。広範囲過ぎて横にも避け切れない。

今までの戦いで、何となく間合いが30mだと思い込んでいた。何たる失態。

「ミスリルの盾、ウオータージェット、多重スパイダーシールド10連」

「オーキ、マントを皆に被せろ」

”ブシャーーーーーー”

物凄い量の魔ギ酸が、全員に襲い掛かった。

酸のスコールが終わる。

「オーキ、マントを脱ぎ棄てろ。全員森の中に撤退」

オーキの背中は、背中の筋肉の繊維が見えている。

オーキが全員の上に被さり、防いだのだ。

もう助からないかも知れない。


悲しみの気持ちより怒りが込み上げてきた。いつも何で自分より皆を守ろうとするん。それは俺の役目だろ。何でお前はそうなんだよ。生きて帰れたら、牙が溶けるまで舐めまわしてやる。


「オーキ」、「オーキさん」、「オーキ姉さん」

俺は、ウオーターの魔法で背中を流し、治癒シップを貼ろうと・・

フラウ「タケオ、ユグドシアルの葉を持ってるでしょ」

「あ、」

エルフの里でユグドシアルの葉を百枚以上持って来たのを今まで忘れていた。

大きなユグの葉をオーキの背中に数枚貼った。

「ユグドシアルよ、このものを癒し、戦士として甦らせよ」

フラウは、優しい波動で葉に魔力を流していく。

青い葉は、段々茶色に変わっていく。

ユグの葉が枯れ落ちるとそこには背中が奇麗に再生されたオーキがいた。

「大丈夫かオーキ」

「・・・・ああ、大丈夫だ。おらまだ戦えるだ」

体が治ってもダメージは変わらない。このまま戦闘なんて体が動く訳ない。

「馬鹿野郎、戦えるわけねーだろ。また、皆の為に犠牲になって、何でお前はもっと利口になれないんだよ。お前のこんな姿見れないよ。この大馬鹿野郎」

「でも、タケオ一人じゃあの化け物には」

「今から、最終決戦に臨む。フラウは、オーキを担いで全速力で森を降り、町に事態を説明すること。魔力は大丈夫か」

「魔力は大丈夫よ。オーキさんくらい全然平気」


今日のフラウは、今までで一番の笑顔を見せてくれた。


行こうとしないオーキに、牙をべろべろ舐めてやった。


「オーキ、帰ったら寝かせないからな。早く体を治さないと気持ちよくないぞ」

フラウに吸い付くようにキスををして

「町への報告頼んだぞ、俺とテンコで最大火力を打ち込んで俺達も逃げるから、フラウとオーキを構ってられない。だから今から全速力で逃げてくれ」

じゃあ、と言って俺たちは、クイーンの元に向った。


「テンコ、この前出来るようになったテンペスト全力で撃てるか。」

「やれるです」

「打ち込んだら最速で逃げろ、俺はそこに、全火力を打ち込む。あいつらは、未だ崖からそんなに離れていない。大河まで吹き飛ばしてやる。

俺もその後逃げるから、巻き込まれる前に全速で逃げろ。俺もお前を気にしながら逃げる余裕はない。いいな」


テンコは、輝くばかりの満面の笑みを見せてくれた。



クイーンまで50m。

テンコの周りに黒い渦が巻き始める。9尾は天まで届きそうな黒い渦が舞い始める。

「テンペスト」

黒い雲が広がり竜巻が起き始める。竜巻がファイアアントを襲う。

テンペストは、竜巻の大嵐だ。いかなクイーンでもその場に立つのは簡単ではない。

「テンコ逃げろ」

「でも、マスター僕も手伝いたい」

テンコの頭を押えて、思いっきりキスした。

「お前がいると心配で全力が使えない。早くいけ」


「!全リング転送魔法陣展開!」

今、俺のリングには、

右手

 薬指14mm超ロングポイント魔鉱弾(攻撃力600)

 中指8mm魔鉱弾(攻撃力200)

 薬指8mm鉄ギザギザ・ホローポイント弾(攻撃力50)

 小指ウオータージェット

      (出力最大 MP100 攻撃力200)

 親指 エアーハンマー

      (出力最大 MP100 攻撃力350)

左手

 薬指12mmロングポイント魔鉱弾(攻撃力400)

 中指8mm鋼鉄弾(攻撃力100)

 薬指8mm鋼鉄弾(攻撃力100)

 小指ウオータージェット

      (出力最大 MP100 攻撃力200)

 親指 エアーハンマー

      (出力最大 MP100 攻撃力350)

右腕 アームガトリング 

    30mm鋼鉄爆裂弾(攻撃力 120 範囲30m)

左腕 アームガトリング 

    30mm低品質魔鉱弾(攻撃力 100 範囲10m)

      爆散し、魔力を急速に吸い取る。

ショルダーパット

 ウインドスクレイバー 10基同時浮遊起動

「全弾発射!!」

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

テンペストの中にぶち込む。

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

もう、在庫一掃大セールだ。

3分後、5匹のソルジャーは、跡形もなくなった。

テンペストは終わり、そこにはクイーンがいた。

「くそ、これでも倒れないのかよ」

予想はしていた。


俺、きっと死ぬだろうな。

だが、だがだ、俺は往生際が超悪いんだよ!


”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

クイーンは、魔ギ酸をバリアにして防いでいる。

「あれは、反則だろ」

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

「もう駄目だ」

さすがに魔法陣が歪み始めた。魔導回路を冷やさないと指が焼け落ちる。

熱いのなんて分かってる。

一度全魔法陣を閉じた。ウオーターで水を全身に浴びる。

”ジューーーー”


クイーンから、魔ギ酸が飛んでくる。

”ブシャーーー”

俺は盾で防ぐ。


そんな盾何処にあるかって?

オリハルコンのインゴットさ。


体育座りすれば、隠れるぐらいのオリハルコンの残量はある。

屋根には、練習で作った使い道のないオリハルコンの剣を置いた。回り込んでくる細かい魔ギ酸の水滴は、エアハンマーで外に押し出す。


「やっぱり全部は防ぎきれないか」

タイツが大分破けてる。

これでは、俊敏性も相当落ちてるな。逃げ切るのも無理か。


指も腕も火傷で感覚がないや。

「よし、行くぞ」

タケオは、最後の気力を振り絞る。

「全リング魔法陣展開」

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ズガン・ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ガン・ガン・ズドドドー”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ガン・ガン”・”バフュン・ブシュ・ズガンガンガン”

”ガン・ガン”・”バフュン・ブシュ・ガンガンガン”

もう鋼鉄弾とエアハンマー・ウオーターしか出ていない。


在庫一掃もうすぐ完売御礼だ。


クイーンは、もう目の前にいる。

しっかし、全火力を使っても傷一つ付けられないのかよ。

さすがにこれは無理か。


ミミちゃんやっと会えるね。父さん母さん御免長生きできなかった。

「フラウ、オーキ、テンコ 未亡人にしてすまない」

ああ、クイーンが魔ギ酸を吐くのが見える。

へー、やっぱり2つの液を口の前で混ぜて魔力で前へ飛ばしてるんだ。


死ぬ間際ってゆっくり見えるんだな。


”ガキン”・”バシュ”・”バチバチバチ”

クイーンは一瞬怯んだが、こちらに打つ手はない。

そこには、フラウ・オーキ・テンコがいた。

「何で、逃げなかったんだよ」

「だって当たり前じゃない。私たち夫婦なのよ」

「んだ。いつも一緒にいないと浮気が心配だ」

「マスター僕は地獄だってついて行きますよ」

 フラウと最初会った時、こんな絶世の美女を見る事が出来るなんてきっと生まれて死ぬまでの間にこの一回切りかも知れないって思って、優しくて、笑顔が素敵で、必死にアタックしてお嫁さんになってくれたんだよなあ。


 オーキに会った時は、フラウと間違えていたけど、オーガよりオーガらしくて逃げたのに追ってきて、何時も自分より俺を守ろうと本当いい奴で、優しくて、段々好きになって牙も可愛く見えるようになって、大好きになったんだよなあ。


 テンコは、欠食児童で何の魅力もなく、ちょっとお馬鹿な男と思ってたのに、何時でも付いて来て、何時でも傍にいて、いつの間にか居ないと落ち着かなくなって、仕草が可愛くて、尻尾も耳も全部可愛くて、居るのが当たり前になってもう離れられない存在になったんだよなあ。


死ぬの分かっているのに付いて来て、本当にバカ達だ。大馬鹿だ。本当に、本当に俺は幸せ者だ。

・・・みんな大好きだよ。・・・


クイーンは、最後に特大の魔ギ酸を吐き出した。



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