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48.修羅場は忘れた頃にやってくる


このニアの町に来てから半年が経つ。

午後の少し経った頃、俺とテンコはギルドにいた。

オークの納品である。

ギルドの受付を出ようと出口に行こうとしたら、スイングドアが開いた。

そこには、まごうことなき絶世の美女が立っていた。

「フラウ・・・フラウ!」

俺は迷わず、飛び付き抱き付いた。

「タケオ、タケオ会いたかったわ」

二人は暫く抱き合った。

「どうしたんだい。俺もそろそろ里に行こうと思っていたんだ」

タケオは、テンコの事が有ってどうやって説明しようか考えあぐねていて、行けなかったのだ。


ーーー本当に情けないったらありゃしない。ーーー


「貴方に変な虫が付かない様見張りに来たの」

・・・・・・・・・目を合わせられない。

「マスター、そろそろ紹介して下さいです」

「ああ、愛しの妻のフラウだ。」


「僕は、テンコです。マスターのミートゥです」


え?ここで言う。ちょっと人通りのない所に行こうと・・


「フラウ説明する。実は、その手違いがあって、、その」

「タケオそんなに狼狽えなくてもいいのよ。タケオにお嫁さんが出来た事を知って来たの。」

「え?何で知ってるの」

「だって、耳族ネットに登録したでしょ。近所の奥さんが教えてくれたの。”タケオに虫が付いたって”」


フラウとテンコの周りには風が”ふゅーー”と舞い上がる。

張り詰めた空気は、”バチッ バチッ”と音が聞こえるようだ


>>これって修羅場ってやつじゃないんですか。


考えが他人事のようになってきている。逃避だ。逃避しかない

。逃避は頭皮に悪い。抜ける。抜ける。


俺は、どうしたらいいのか分からない。

もうどうすることも、”愛ちゃん納豆”(アイキャンノットの逃避型)を注文する。


二人を見守るのか、いったい何から見守るんだよ。

手が出せない。愛ちゃん早く納豆持ってきてくれよ。愛ちゃんって誰だよ。何処に注文したんだよ。


ーーー最早、タケオは壊れかけている。

 ここで終わるのか、タケオここで終わるのかーーーー

脂汗を流しながらあたふたしていると


「なあんてね。テンコちゃん宜しくね。これからは私もこっちで暮らすから」

「はい、マスターの愛するフラウさんは、大歓迎です。マスターの事色々教えてください。」

二人は抱き合って嬉しそうにしていた。


ほっとため息をつくと、前髪が”パサッ”・・・あ、髪が・


フラウ「タケオ、でもね半年で妻が出来るなんて早すぎるでしょ。私も耳族ネットに登録するから準構成員の人連れてきたの。早く登録お願いね」

こうして、また絶対強制的に女尊男碑のSNSに登録されたタケオは、大きな鎖が心にのしかかるのであった。

宿に戻ったが、別の部屋を一つ追加した。

 テンコは、タケオに助けられ、今まで生きてこれたことを話し、フラウもタケオとの馴れ初めを語り二人は仲良くなっていく。すると大型爆弾が投下された。

「もうお嫁さんは流石にいないわよね。」

「いる訳ないだろ。きっといる訳ないよ。人はいない」

ジト目で見つめる二人。視線が痛い。魔獣は振り切って来たので大丈夫なはずだ。

「何か怪しい。・・・でも流石に半年で2人は無いでしょう」

ああ、半年はな。

「大丈夫です。マスターは夜テンコにくっ付いて離れません。悪い虫は付いていません。

寝ている時に必ずフラウって言いながら胸を揉んできますです」

はずかしい情報は流すな。くそ狐。


今日はテンコが遠慮して別の部屋に泊った。

久しぶりの二人に会話は必要なかった。

・・

チュン・チュン

ああ、いい朝だ。横にはフラウがいる。頭の上にふさふさした何かがある。朝方潜り込んできたのだろう。

ああ、この感触は、俺はその耳に齧り付いた。

「はうう」

ああ、気持ちいい。


「フラウ、ここに住むなら手狭だし家借りるか」

俺たちは、ギルド不動産の案内で家を見に来たが、ここは、4部屋、居間、台所付きで月金貨20枚になります。

結構高い。

「治安がいい処で金貨20枚は格安物件ですよ」

「治安が悪い処ってどんなところですか」

「一般的にはスラムの近くだったり良からぬ組織の近くですね」

暫く考え、今の宿の大部屋(6人部屋)を一つ借りる事にした

これで銀貨3枚なので月金貨9枚だ。

ただ泊るだけだが、ここを拠点にするか悩んでいたのでもう少し様子見する事にした。


3人でパーティーを組み、今日はワイルドバッファロー狩りに来ている。

暫くぶりなのでフラウに天弓の腕を見せて貰うことにした。

左腕を天にあげると虚空(収納)から弓が現れる。

弦のない弓に弦が現れ、矢が出現する。

200m先、ワイルドバッファローは気づいていない。

フラウは、首のつけねの急所を狙う。

「ふっ」

”シューー” ”スパン”

”ドスン”

耐久力の高いバッファローが一撃で倒れる。

「お見事」

「凄いです。こんな遠くから、あの大きなバッファローが一撃です。」

「そんなに褒めないで。未だ全然だから」

ワイルドバッファローを3体仕留め、町に戻るのだった。

俺は、一番の疑問をフラウにぶつけた。

「フラウ、何も言わないが、ユグドシアルを守るのが天弓士の務めじゃないのかい。居てくれるのは嬉しいけど、俺が不甲斐無いのも申し訳ないが本当に大丈夫なのかい」

フラウは真剣な顔で話始めた。

「全員が揃うまで話すのは控ようと思ったけど、流石に不思議に思うよね。」

そう言って、テンコも聞いて欲しいとの事で結界を張り防音にした中で3人で話した。

「実は私、ユグドシアルの使いでここに来たの。エルフはユグドシアルの心を夢で見るのだけれど、それをビジョンと呼んでいるわ。

そのビジョンが、タケオとその仲間2人と世界を闇に引きづり込む凶悪な悪魔と戦うものだったの。

戦士の二人は、白い妖狐9尾の狐と魔獣オーガだったわ。

妖狐はユグドシアルの繊維で作った糸で有象無象の悪魔の全てを薙ぎ払い、天候を操り雷を落としていたわ。きっとテンコちゃんの事だと思う。

魔獣オーガは、オリハルコンの刃を持つ2mの薙刀が5mの大薙刀に変わり、ユグドシアルの繊維で作った2枚のマントを靡かせて巨大なドラゴンと戦っていたわ。

そして私は、タケオからユグドシアルの繊維で作った弦を腕に纏ながら真弦で弓を引いて戦うの。

ビジョンが終わった後、2振りの弓と宝具が置かれていたわ」

フラウが収納から出した弓の1振り目は、3mはあるどでかい弓で足を入れる所があるので超豪土天弓と言ったところか。

もう一振りは、2つに分かれていて、二刀の細木の刀だった。二つの柄の部分をくっ付けると弓に成り多天弓にも精天弓にもなるビジョンだったそうだ。

ビジョンの中で、完成させるために刀の中空に粘性の糸の元を入れる絵が出て来たようだ。

それから、オーガが使う薙刀の柄をユグドシアルから授かったそうだ。これも中に粘性の糸を注入するそうだ


テンコにもお尻の付け根に付けるものを授かって来たと言っていた。これでユグドシアルの繊維が9尾にくっ付き、その威力を何十倍にもしてくれるそうだ。

フラウは、なぜテンコが9尾だと分かったのだろう。ビジョンの顔がテンコそっくりだったのかな。


俺にお土産は、と聞いたら効能は分からないが額当てに付ける三日月の木をくれた。

しょぼいな。

「ねえタケオ、魔獣に心当たりない?」

「さあ」


そんなの、ありまくりに決まってるだろ。


この流れはやばい。

だが、会う事はない。あいつカッペ村出身だぞ。

ここに居る事が分かる訳ない。

あいつに危うく殺されそうになったし、もう男知っちゃったから我慢できずに新しいムークが出来てるはずさ。


 残念だったなユグのオッサン、そこまで思い通りには世の中行かないのさ。


 ここで、ハッキリさせたい事が有る。

俺は、そんな怪獣大戦争には参加しないし、英雄になったりしない。火の粉がかかるから払ってきただけで、殺されそうだから何とか頑張っただけだ。

そんな凄い事は、俺TUEEE奴が、俺は勇者だ世界を救うぞ。って言ってやってくれるはずだ。

 俺は、そこそこ冒険が出来てそこそこの暮らしが出来ればいい。

 ただ、ハーレムなんて望んでないのに行きがかり上、嫁が二人出来てしまった。将来ダースで子供が出来ちゃうとお父さん頑張って働かないといけなくなってしまっただけだ。

 長生きして近くに住む孫の顔見ながら小遣いちょっと渡して昔の冒険譚を脚色しまくりで語るのが俺の夢なのだ。

本当に凄い冒険なんかしたら、お爺ちゃん墓石になっとるわい。


 ユグドシアルが外堀埋めたって絶対やらないからな。

石橋は叩いて叩いて叩き割って渡ったりしない。

 しかし、そこは異世界人。世界を守るユグドシアルがやれと言うなら恰好だけは付ける。まあ、長いものには巻かれる振りをしないと。寄らば大樹のおこぼれ狙い。

 タケオ改め、忖度ん(そんた君)と呼んでも結構です。

プライドなんてフライにしてスライムに食わせちゃったからね。


 だって生き残ることを最優先にと父さんと母さんに約束したんだ。

 ただ、俺の大切な人を苦しめる奴だけは死んだってやっつけてやる。絶対に許さない。

もう二度と大切な人が死んでいくのを見たくない。


だからフラウ、物騒なことはやめてくれ。


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