41 .死神ジョー再び
朝、手紙を書いて厨房に置いておいた。
<>手紙要約
町を出て帝国に行く事、またいつか遊びに来ると。
餞別に解毒石、消毒石を置いて行った。
手紙に取り扱い説明を書いておいた。
食べ物屋だから食中毒など起きたら潰れちゃうからと。
ミキちゃんには、いい男が出来たら紹介してねと。
兄よりと追記しておいた。
<>
朝、最初に向かったのは、冒険者ギルドだ。
受付嬢の所に行くと、
「よう、久しぶりだな。元気だったか」
受付嬢は、びっくりしたまま固まっている。
「何で、何であんたが」
「ああ、暇だったんでな。旅行に行ってたんだ。しかしここは、大分変ったな。もうクロの俺には住む事も出来なさそうだ。
今日は、町を出ようと思ってな。お世話になった人へ挨拶回りしていたんだ。
じゃあな、色々と世話になったな。」
小さな声で耳元に「腰抜けジョーと仲良くな」
俺はゆっくりギルドを出て行った。
次に行くのは、ミケの薬屋だ。
※20.ドクドク・ドクドクを参照
おかずに毎回通わせて貰った御礼だ。
オークの玉が在庫が履け切れないので、最期にちょっと多めに20組売った。
彼女は、いつも通り虫眼鏡を出して確認しながらモミモミして弾力を確かめながら匂いを嗅ぐ
こちらから見ると胸の谷間が大きなクレパスになっているその前でモミモミしながら鼻を近づけ匂いを嗅いでいるのだ。
久々に見たが、やっぱり福眼、福眼。俺の大好きな街のお姉さんだ。
オーキのスイカも捨てがたいが、やっぱり見えるか見えないかのこのスリリングな感覚。
「うーん、癖になる。」
「何か言ったか。エロガキ」
もう既にバレバレの仲なのだ。
「今日は、キュアストーン3個も売るよ」
「凄いの持って来たな。見せてみな」
解毒石が20個位あるので試しに売ってみた。
”ドス”
「金貨94枚だ」
なんとキュアストーンは、1個金貨30枚だった。
「キュアストーンなんて暫く見てないよ。毒沼の大きい毒魔物しか持ってないから滅多に出回らないんだ。」
「ちなみに、ハイキュア、エクストラキュアって幾ら位するの」
「それは、オークションにしか出ないからはっきり分からないけどハイキュアで金貨1000枚、エクストラなんて国宝だから判らんし、この国にしか無いと言われているが不明な程だ」
どうしよう。ハイキュア持ってんだけど。
大毒沼なんてゴムタイツなきゃ誰もいけないよな。どんな達人だって、大魔導士だって毒沼泳げないし、そういえば飛んでる鳥が近づくと皆落ちてたもんな。
「俺、この町出るんだ。今までありがとう。相談に乗って呉れたり、・・たり、これは、餞別にあげる」
そう言ってキュアストーンを只であげた。
ミケさんは、「一揉みしていくか」と胸を出して来たが、3秒考えて断腸の思いで断った。
ここで、感触を知ってしまうと、良かった場合は、ここから離れるのにもっと触りたくなって忘れられなくなる。悪かった場合は、今までの自分が悲しくなる。
俺は人生で、揉んでいい事がない時があることを初めて知った。覗いて想像するのは、最高だ。だって自分にとって最高の感覚を想像できるから。
いい勉強だった。
ーーーただの覗き魔だろーーー
さて、お昼近くになったので、串焼き屋に挨拶して時間を潰す。いよいよお出ましだ。
俺は、何食わぬ顔をして(串焼き食ってるけどね)、町を出た。
門番にも才能がクロだから出て行く事を告げた。
森に入り、暫くすると
「おい、お前何で生きてんだ、殺したはずだろ。
それに僕は臆病者じゃない」
「あれ、俺は、腰抜けって言ったんだけどな。剣聖の所で修行落第したんだろ」
「な、何でお前が知ってるんだ。王都に行ったのか」
「いや、知り合いに聞いてな。誘閃黒風斬の一の太刀で挫折したんだって」
「一の太刀は完成したんだ、間違いなく出来たんだ。ただ剣聖が認めて呉れなかっただけだ。あんな依怙贔屓する所はこっちから辞めてやったんだよ」
「知り合いから聞いたら、もし完璧な太刀だったら俺は生きていないそうだ。」
「違う、あの時は火山ガスで間合いが合わなかっただけだ」
「で、ここまで出張ってきて何しに来たんだ」
「当然、お前を殺すためだよ」
ジョーの周りから一気に黒いオーラが吹き出してくる。
一気に俺に向かって突進してくる。
「え?」
切った感触がない。ジョーは、単に通り過ぎていた。
いったい何が起こったか理解できない。
あいつと戦った時確かミスリルの盾が瞬時に現れ消えた。
「お前、伝説のテレポートが使えるのか」
「使える訳ないだろ」
いや、待てよ。今の魔力量なら使えるな。
いつか作ってみよう。
「ただ避けただけだ」
タケオの危機感知能力は常人では分からない微細な違いも手に取るように判別できる。
ジョーのように横薙しか出来ない誘閃黒風斬で、二度見た間合いである。
彼が自分の限界スピードで突進する刹那、体を開いて向って右にズレ始めた時、刃が首を捉えようと角度が上がる瞬間に前屈みになりジェット発射で1m程前に進み止まっただけである。
彼にとってみれば、自分が進む速度が目で追える限界なのに瞬間に1m進まれるスピードが加わると全く追えない。
彼にとっては一瞬消えたように見えたのだ。
彼は今まで殆ど止まった相手としか対峙してこなかった。格下相手だからまさか突っ込んでくる奴などいなかったのである。
「く、今日は調子が悪い」
ジョーは、走り出した。あいつは、俺の前で完全に消えた。今一度対峙すれば切られる。これは、経験の高い剣士の感である。自分が見切れない相手に無謀に立ち向かうような奴はすぐ死ぬのは、どの世界も一緒だ。これはゲームではない。
前回対峙する前、森を走ったが、走力は俺の方が上だ。逃げ切る自信はある。
俺が後ろから、
「ジョーは走るの早いな」
横に並んでショルダータックルだ。
”バキバキバキー”
「ううう」
ジョーは転げながら止まった。
「良かったな。大きい木が無くて、お前、全然絶好調だな」
「剣士が4か月でこんなに上達する訳ないだろ」
「俺、魔術士だから」
俺は、虚空から黒魔路改を取り出した。
ジョーとの対決の為せっかく剣の腕を磨いたのだ。
「刀でお相手しよう」
ジョーは立ち直り、正眼に構えた。最早逃げられないと悟ったのだろう。後ろに下がりながら10mの間合いを取った。やはり、自分の最高技は、誘閃黒風斬なのだろう。
俺は、下段左下に刃を上に向け構える。
”フュン”・”フュ”
二人は瞬間に交錯した。
”ドスン”
俺は、残身した。
必殺技を使う上位剣士との勝負は、一瞬だ。
横薙が左から来るのが分かってるし。何の策もない。
相手が初動から加速する前に右横にズレながら下段から腹を切った。
彼が殺しに来なければ、こんな事にはならなかった。
前回あと数センチ前だったら死んでいたのは俺だ。
当然容赦はしないが、理由はどうあれ自分を強くしてくれたことは確かだ。その部分は感謝しよう。
だから今自分の出来る最速の技で倒した。
魔術だけを極めて行っても接近戦では分が悪い。上位剣士は魔法を避けるし、動作が早い。だが、剣士は多対一だと分が悪い。決して極める為じゃない。
俺は生き残るために腕を上げる。