39 .オークキングとの戦い
いよいよ、オークキングとの戦いだ。
今、オークキングの扉を開ける。
”ギーー” 10年間、誰も挑戦者のいない孤高の存在。
中に入ると扉が自動的に締まる。広さは50m四方の平らな石畳の上だった。天井の高さは20mある。
一番奥に3匹の魔物がいた。
左右にオークプリンス
右 剣士 薙刀3m
レベル80 魔攻700 MP450/450 攻100 耐300
身長 3m
左 魔術士 杖2m
レベル88 魔攻580 MP1600/1800 攻100 耐400
身長2.5m
キング
レベル132 魔攻1000 MP720/720 攻0 耐0
身長1.6m
キングは、こちらを見て笑っている。俺の能力が分かるのだろう。
俺は レベル70 魔攻249 MP350
格上3匹とは聞いていなかった。今まで誰も帰って来なかったので様相が伝わらなかったのだろう。
”チュドーン”
俺の後ろが爆発する。ファイアーボムだ。既に入るときにプリンス魔術士が仕掛けてきたのだ。
・・・・
もう一つ改良した物がある。
タイツを履いてから、役に立たなくなってしまった為、改造したのだ。
命名:クモワラジーブーツ
膝は、膝リングがつている膝当てが付いているが材質をジャイアントスパイダーの足の甲羅を使った。内側にタイツと同じ材質の布を張り、足裏にはタイツの布が付いている。オリハルコンのスパイクピンと板が付いている。超ぜいたく品だ。
関節部分はジャイアントスパイダーの太い糸を使って防水加工とクッションにしている。
足裏前面にジェット発射(超速)の回路4基搭載。
前傾姿勢での突進に使う補助
足裏踵面にジェット発射(超)4基。
踵蹴りインパクト、跳躍補助
フォジック固定(超)2基
停止補助
である。
・・・
ただ歩いているように進むが、一瞬ブーツのジェットで前へ2mズレた。
プリンス魔術士は、頭にファイアーボール10個浮かべている。
プリンス剣士(薙刀)のサポートだろう。
相殺できるがキングが動かないのでちょっと今までの成果を試すか。
剣士が突進してくる。スピードが上がる。加速を載せてリーチの長い横薙が来る。
ジョーよりは早いのかな。4か月前まではまるで見えなかった。ただ、スタートから到達する距離が分かった程度だ。
2発のファイアーボールが来る。
接敵ポイントのやや左上に一発はジャンプして躱すのを阻止するため。
接敵ポイントの足元に一発は、下を潜るのを防ぐため。
リーチの長い攻撃は、後ろに下がると態勢が崩れ易い。遅れてもう一発後ろにファイアーボールを打つつもりだろう。
薙刀で右に避けるのはリーチが長い刃が追ってくるので悪手だ。駒が揃ったので、ゼロスピードから前に爆発加速する。横薙が真横になった時点で俺は彼の前にいる。
プリンス魔術士との射線上に横蹴りを入れる。
この瞬間、タイツは硬化し、踏ん張る右足踵のジェット発射(超)、プリンス剣士の腹に左足踵の圧力+ジェット発射(超)で蹴る。
”フォボーーーー”
プリンス剣士は、物凄い勢いでプリンス魔術士に激突する。
”バコーーン”
二人は、何と言うか、粉々になって壁の染みになった。
レベルが71に上がった。
・
驚いた顔のキングだったが、強敵と認識し、魔力を練り始める。
「集中、危機感知2分割」ジャイアントスパイダーで覚えたレベル差上位用危機感知能力だ。
黒いオーラが全身を覆う。
「お、お前も誘閃黒風斬を使えるのか?」
160cmの小柄なキングが物凄いスピードで突進してくる。さすがにプリンスの何倍も速い。
「こいつも刀を持っているな」
刀の柄に手を載せているが、抜かない。
右腕に物凄い魔力オーラを集中している。
「こいつ、鞘の方に魔道具が付いてるな」
これは、長老が言っていた居合一閃だ。
添える手の角度を変える事で横薙、切り上げ、前刺しなど直前まで判らない。
なぜ、魔獣が使えるんだ。こいつ一度対戦した相手の動きをここで待ってる間に何十年も修行したって事か。
・・厄介だ・・
向って右に刀を差している。咄嗟に黒魔路改を出し、鞘から出す瞬間左に飛び刀を縦にして防いだ。
”ガキン”
”ズザザザー”
キングは向き直ると、刀を鞘に納める。
「ジョーの誘閃黒風斬なんて足元にも及ばない」
キングは、防がれたことに驚いたようだ。
二人は、相手の間合いぎりぎりで対峙する。
初撃の太刀は最大の武器だったはずだが、臆してはいないようだ。
この世界では魔法がある為、本当に間合いが正しいのかは、怪しい。
俺は、右横薙の位置に刀を構える。
キングは、左に周りながら危機感知で動き全体を読む。
すり足をしながら、相手の遅れ、勇み足など魔力の循環の淀みの隙を見つけているのが分かる。
少しキングが右に集中を移動するが乗って切り込んだりしない。
これは誘いだ。
二人は、わずかなオーラの動きで、頭の中で幾度となく来る斬撃を躱し切り込むのシュミレーションを繰り返す。
どのくらい経ったのだろうか、キングは悟ったのだ。
・・・勝てないと・・・
キングが駆け引きのない一撃を繰り出してきた
俺は、キングの手が溜めに入る刹那、キングの横を通り過ぎた。キングの首がポロリと床に転がった。
・・残身・・
なぜ俺が勝ったのかは、初撃を防いだ時に決まっていた。俺の魔力循環は、言うなれば明鏡止水。
相手が淀みを読みたくても何も見えないのだ。
それをこの刹那で知ったキングも凄いと思う。
俺がクロであり繊細な魔力循環が出来ることが刹那の攻防では絶対的に有利である事にダンジョンの修行で知った。
相当な手練れであっても魔力循環のレベルは、熱が出る手前だ。
俺は、無のレベルになっている。ここまで鍛えた人がいないのとレベル1の時クロの才能でこの域までいかないと到達できない。これは、魔力量と魔攻が1しかないから出来たが偶然だ。本にも何も書かれていなかった。
※6.5年間の成果①参照
しかし、これが達人の域まで来ると大事な訓練だったとは誰も知らないだろう。
レベルが78に上がった。
魔攻281 MP390
「何か鉱石が落ちてるぞ。ドロップアイテムか?」
「ええええええ、これオリハルコンじゃん」
30kg有る。ちょーラッキー。
早速俺は収納に仕舞った。
今まで、回路に使ってきたが、とにかく微細にして一個100gの超小さいのばっかり作って来た。
それでも、10kgぐらい減ってしまったのだ。
ここでのアイテムはありがたい。
・
ここは中ボス部屋で先があるようだが、俺は行く事はない。
俺の目標は、死神ジョーに勝つことでバトルジャンキーじゃない。
勝手に降りかかってくる火の粉を払いたいだけだ。
いよいよ、オーガの里ともお別れだ。