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33 .オーガのオーキ


俺は今、フラウとベッドで寝ている。

フラウの胸は、決して大きくない

165cmのスレンダーなボディーに真っ白な肌。

ああ、フラウ

フラウは、大きなスイカが二つ甘くて大きい。

思わず吸い付く。

フラウは、2mを超える長身に褐色の肌、大きなお尻。

ああ、フラウがキスをしてくる。口の中に水を流し飲まされる。

大好きなフラウは、今日は牙を生やしている。思わず牙をぺろぺろ舐めてみた。

牙?大きなスイカ?

「ああーん、牙を舐められちゃったら、おらは、おらは」

「あぎゃあぎゃーーーー俺のフラウが魔物に」

俺は飛び起きた。いったい何が起こっているんだ!。

腹が”ズキン”と痛い。右太腿も痛い。足に力が入らず飛び起きたつもりが床に転がった。


そこには、2mを超す褐色の大きなスイカを揺らす、すっごく揺らす、10cmはありそうな牙が生えた魔物がいた。

「あ、起きただか、おめえ10日も寝てたぞ」

「ヒーー、魔物って喋るの?」

「何言ってるだ。おら、オーガ人族のオーキだ。魔物じゃねーだぞ。おらは、立派なレデー16才だ。おめえ、オーガ族は魔物のオーガとは何の関係もねえだよ。似ているだけの呼び名だ」


 こいつ、何言ってんだ。誰が人に見えるって言うんだ。

だが、今の俺は満身創痍。抗うことはアイ・キャン・ノット

魔獣でも何でも取り合えず助けてくれたようだ。これは丁寧にご挨拶しなければなるまい。

「すみません。失礼いたしました。助けていただき本当に感謝します」

「おめー、あっただ火山ガスが出る山で瀕死だったども良く生き残れただな」

「あー、偶々です。それよりレデーさんでしたか、目のやり場に困るのでその素晴らしい物を仕舞って頂けませんでしょうか。その魔物だから服とか着ないのなら仕方が無いですけど」

「だから魔物じゃねーと言ってるだ。おめーが死にそうだったから10日間、裸で温めていたんだど。だけんどレデーさんってこっぱずかしー」

これは、命の恩魔物だったとは、何と恩知らずな俺としか言いようがない。

しかし、生き残ったのか、さすが異世界、ハイポーション凄過ぎだ。

いや、ぎりぎりだった。何か奇麗な川があって、川の向こうで確かに母さんが手招きしてたし、ミミちゃんが抱き付きたくて手を広げていた。でもフラウが行っちゃいけないと後ろから涙目で抱き付いてきたから川を渡らなかったんだ。

危ない危ない。まだ俺には早い。フラウともっと楽しい未来があるんだ。


”ぐーーー”

「あのー、腹が減ってしまって何かありますか」

オーキは、ジャガイモを蒸かし塩をほんの少々振って持ってきた。

「ずっと不作だでな。こっただ物しか無ーだが、腹には溜まるだ。食べてくんろ」

・・・

「ちょっと後ろ向いてて貰えます。」

・・オーキは後ろを向いた・・

タケオは、収納からオーク肉、ちび魔導コンロを出し焼き始めた。

「何だー、どっからそんな物が、おめーそれ肉だか。この辺じゃー魔物もいねーから久しく食ってねーだ」

涎を垂らすオーキに

「魔物同士で食い合うのはよくある事ですよね。食べます?」

「だから、魔物でねーって言ってるだろ。食べるに決まってる」

何だかんだ言ってるが、こいつ殆どレアのステーキを10枚食いやがった。ナイフなんていらない。あの牙で切り裂いて食べてる姿はどう見たって魔物だろ。

「ああー、食っただ。食っただ。ありがとう えーと」

「ああ、俺はタケオと言います」

「タケオ、あんがとな。こっただ食ったのは半年ぶりだ。」

「オーキさんは、お一人でこちらにお住まいですか」

「んだ、とっちゃ(父)と かっちゃ(母)は、10才の時魔物に食われた。それから一人で住んでる。長老が面倒見てくれてるだ。タケオ、さん付けはいらね。こっそばゆくて勘弁してくんろ」

俺と同じく10才で一人暮らしとは、ちょっと共感するところがあるが、相手は魔物だ。もろに弱肉強食だもんな。

「オーキ、長老と言ったか、ここは集落なのか」

「ああ、50人位の集落だ。ここ数年ある魔物が来た頃から作物が育たず、狩りをしようにもそいつが強すぎて何も近づかねえ

長老もこの村はもう持たねえって言ってるだ」

とりあえず、チョウロウと呼ばれるボスモンスターには挨拶しておかないと何時食われるか分からん。

俺は受けた恩義は絶対返す主義だ。さっき作った俺ルールだ。

「オーキ、ボスモンスターのチョウロウに会わせてくれ」

「だから、魔物でねーって、おめーしつけーな。ムークでも終いには怒っぞ。」

モンスター界では人間をムークと言いらしい。

「はいはい、ムークはオーキに従います。怒らせません」

「おら、こっぱずかしいー」

オーキは、何かしおらしくなり、黒い顔なので良く分からないが顔を手で隠した。

・何だろう。

チョウロウに会った。3mはあろうか顔には立派な牙(だが、オーキほど長くない)と深い皴、斜めに大きな切り傷があった。

彼は歴戦の戦士そのままだ。

「おお、一時は駄目かと思ったが、よくぞ生き残ったものだ。傷口を見たが達人クラスと戦い、体の前側に傷を残すとは億す事無き剣士とお見受けした。相手が達人で切り口が奇麗だったのが生へ逆に導いたのじゃろう」

あれ、この人、人間だよ。何でオーキだけやたら魔物っぽいんだ。

「私は、タケオと申します。それで、あのー、なぜオーキだけ喋り方が違うし、その何と言うか」

「ああ、オーキは、ここからまた深い森でほぼ野生の暮らしをしていたカッペ村の出身だ。6年前にジャイアントスパイダーに全滅させられた生き残りじゃ」

そうか、あいつ究極的に魔物に近い人間だったんだ。

人間に近い魔物の方がよっぽど人間に近いよな。ゴブリンのほうがかわいく見えるもんな。

「長老、おら牙舐められただ。何回も何回もぺろぺろと」

「おおー、それは目出たい、めでたい。」

そう言えば、寝ぼけてフラウの牙をべろんべろん舐めたな。

「これは、オーガ族2千年の歴史上のルール。誰も破ってはならねー究極の掟だ。」

分かった、分かった。溜めが大きいぞ。何が2千年だ早く言え。

「ああ、オーガ族3千年の掟、オーキのムーク決定だな。」

 千年増えたぞ、だからムークって何なんだ。ムーミX谷の新しい住人かよ。

「村のものも怖くて3m以内に近寄れなかったオーキが、わしは、嬉しいぞ。」

やっぱり、オーガ一族が怖がる奴なんて、ほぼ魔物決定だろ。

「ああ、タケオは料理も旨ーし、おらをレデーさんと言っただよ」

だから、自分で言ったんでしょ。自分はレデーだって。

「それにしても凄い奴だとは思ったが、原生のオーガ族の牙を舐めるなんてオーガ族4千年の歴史の中でもタケオが初めてだぞ。こりゃあ子供がダースでチームが作れるな」

また、千年増えてるぞ。

子供がダース(12人?)って誰の子だよ。ん?誰の子?

ーーひょっとしてムークって婿のことーー

誰の子、俺の子、魔物のこー。って言ってる場合じゃないぞ。


「いや、俺には嫁がいる。だからお前を「良かったな―」嫁には・・・」

「オーキ、初めてのお前には経験者でないと任せられんと思っていたんじゃ。原生のオーガ族の娘は、上手くリードして貰わんと噛み殺したり、絞め殺したり、爪で心臓突き刺したり”まぐあい”も命懸けだからな。結婚して初夜に未亡人は良くある事だから」

くそ長老。絶対厄介払いだろ。


・・・逃げよう・・・

おい、オーキ。俺の胴に手を回すな。爪が腹に食い込んで血出てんだろ。逃げられんだろ。

しかし、助けて貰った恩は返さねば、作ったばかりの俺ルールを破る事になる。

今の俺は、満身創痍。町に帰ってもジョーに完全に殺される。


「分かった。しかし、ムークになるのは待ってくれ」

「何でだ、こんな相思相愛のカップルはそうはいねーべ。

愛し合う二人を引き裂く奴は、おらに蹴られて爆殺だべ」

「今俺は、A級冒険者に追われている。はっきり言って瞬殺される程強い。それに勝たなければ生きて行く事は出来ない」

「そっただ事、ここに居ればいいだ。おらが食わすから。なあタケオそれで解決だ。」

「じゃあ、オーキ、もし追って来たそいつがここに来たらどうする。村は全滅するぞ。」

「え、え、そっただ事・・・・」

「そこでだ、俺はこれから強くなる。そしてそいつを倒す。そうすれば問題ないだろ。協力してくれるか?」

「当たりめーだ、おらのムークの為なら何でもするぞ。毎晩でも一日中でも受け止めるぞ」

何か違うような。違わないような。まあいいか。

「だが、勝てるかどうかは分からない。勝負は時の運とは言うが、俺が殺されれば終わりだ。そんな状態で最初から未亡人にするような俺が、オーキのムークになれる自信が無い。だから、それまで待って欲しい。そしたらな」

・・・「そうだか、そこまでおらの事を・・・

分かっただ。おらは、そいつを倒すまで待つ」


・・・チョロイ・・・

まず、俺は死んでいる事になっているだろう。

体が回復するまですることが無いので、この村を観察することにした。

畑があるが、ちょっと紫色して土に元気がない。ジャガイモが全く大きくなっている感じがしない。

葉物は、黄色いままだ。麦は穂が小さい。


一日観察していると、やはり硫黄の匂いがする。これは、火山ガスが微量に飛んできて蓄積しているのだろう。

あまりにも微量だから人体には影響がないため、毒探知にも反応しないが、長年土に溜まれば弊害が出て来るのではないかと仮説を立て消毒石と毒消し石を出して3日間畑を隈なく消毒解毒して廻った。

 いつも夕方になると、50cmくらいの大蜘蛛が100匹くらい”わさわさ”と出て来て”ちゅー”と小便をして、出し終わると森に帰っていくのだが来なくなった。

村の人に聞いてみると。

 あれは、ジャイアントスパイダーの雄で、きっといつもと臭いが変わったんで来なくなったんだろうとの事。

 雄は、雌に捕まり無理やりお腹を足で踏まれて搾り取られ”チュー”と雌のお尻に掛かる。これが交尾らしい。そしてそのまま食われてしまう。

 だから大人になると雄は只ひたすら逃げ回る。死ぬまで逃げ回る。つまり長生きは操を守るしかない。

同じ雄としては、何と可哀そうな一生なんだろうと同情はする。


それから、町に買い出しに行く人にお礼の食料を買ってきて欲しいと金貨5枚を渡し、別に手紙とお金を頼んだ。

ここで助けて貰った御礼と暫くお世話になるその御礼だ。

買い出しの人には絶対俺の名前は出すなと釘を刺した。殺されると。

手紙と金は、孤児院へお願いした。

また、孤児院のシスター宛に中身にもう一通手紙が入っている。”針糸商人ミミちゃん”から中の手紙を宿屋の奥さんに送ってほしいと書いた。

※針糸商人ミミちゃん、28.29.能力差別解放軍を参照

―ー手紙の内容ーー

暫く帰れません。今、国境を越えて帝国にいます。

絶対、私が生きていることはミキちゃん、ベイヤ以外に話さないで下さい。

私を追っている冒険者に伝わるとそちらにも危険が及びます。いつも居なくても部屋をキープして呉れているのは知っています。必ず他の人に貸して痕跡を消してください。

では、また会える事を楽しみにしています。

T

ーーー

帝国に行ったのは嘘だが、もしこの手紙が見つかっても追っては来れないだろうと言う配慮だ。。

オーキに俺を運んだ日の事を聞くと、火山ガスが、夕方から1時間位晴れるそうだ。その時遠くから人影を見つけたのが俺だった。晴れているのを見つけるのも角度があって、山の上や俺たちが来た方向からは上にガスがかかって見えないそうだ。

あの男の事だ。再度確認に来ただろうがガスで中には入れない。死体を発見できないので絶対とは思わないのが一流だ。嗅ぎまわられるのも困るので用心には用心して手紙を送った。

それから暫く経ったある日の死神ジョー

 彼は、もし彼が帰ってきたら定宿に帰ると思っているので、何日か宿を張ったが何の反応もなかった。

業を煮やしたジョーは、直接宿屋に尋ねた。

「あのさ、ここにタケオって言う冒険者が泊ってないかい」

「いいえ、しばらく前にワイルドバッファローを狩りに行ったきり帰ってきませんね。」

「彼、定宿にしてたでしょ。彼の荷物とか部屋とか見せてくれない。」

「彼とそのような契約はしていないので二日待って帰って来なかったので他の人が泊ってます。後、彼の荷物ならこの洗濯を頼まれた袋一つですね」

「こんだけ?、ちょっと冷たくない」

「いえ、契約ですから。後でもしあったら洗濯代と帰り待ち契約の2日間の宿賃払ってくださいと伝えてくださいね」

ジョーはなんて冷たい宿なんだ。僕はこの宿は泊らないなと思った。もう追うのは止めよう。そう思い帰っていった。

「あなた、あの人きっとタケオさんを追ってる人よね。」

「雰囲気からしてそうだろう。彼奴は、死神ジョーA級冒険者だ。タケオはとんでもない奴に目を付けられたな。

ジョーが通ると死体が転がると言われる殺人鬼だ。

絶対タケオの話は家族以外しては駄目だ。ミキもいいな」

ミキも前に酷い目に合っているので、”コクコク”と首を縦に振った。




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