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32 .A級冒険者 死神ジョー


今日は、大毒沼から南にある草原にワイルドバッファロー狩りに来ている。見渡す限りの草原に黒い点が見えるので索敵する必要はない。

先客が居て、6人の冒険者が狩りをしている。

ワイルドバッファローは、B級モンスターで、突進する角の攻撃力が300を超える。防御力も200と高いが、腹、脇の下などが弱点だ。

土と水で揉んで泥濘を作る。二人が囮で、おびき寄せる役だ。

足が埋まって身動きが緩慢になった所を槍持ちが二人で急所を突いて仕留める予定のようだ。

残りの二人は、ポーターだ。

巨体は体高3m、幅2m,体長4mが平均で1トンを余裕で超える。荷馬車で来ているが、仕留められればその場で解体して荷馬車に積む。道が平らではないので押しながら帰らなければならない。

ーーー

 1頭のワイルドバッファローは、金貨5枚だが頭、皮、角、尻尾、蹄等は含まれない。

近年、ワイルドバッファローの角が、喉の薬になるとのことで1本銀貨6枚X2本で1体当たり銀貨12枚(無税:実際は薬屋直卸で脱税)のプレミアが付くようになった。(大きいともっと高い)

皮も穴がない状態のものを革職人に持っていければ、金貨5枚になるが、殆どの場合は戦闘で穴だらけになるため銀貨2枚だ。ギルドで皮を剥いでもらうと銀貨3枚なので誰も卸すものはいない。なので余計と皮の値段が上がるの繰り返しで値段が上がったのだ。今やワイルドバッファロー革の上下で金貨20枚もする高級品になってしまった。

ちなみにブーツは、金貨1枚だ。

ーーー

 泥沼に囮が追立てようとするが、中々入ってくれない。相手も泥沼が見えるのに入る奴はいない。

要は罠が下手なのだ。

泥濘の上に草を敷いてカムフラージュするとか、追い込み側から低いところに作って見えにくくするとか工夫が欲しい処だ。

ワイルドバッファローは、追い込みの誘導と逆方向に走り出した。狩りは、坊主(一匹も獲れない事)の時もある。


狩りを見ていたが、自分も頑張ろうと誰もいない場所に移動する。

ワイルドバッファローの前に立つ。

「おい、ちび。かかって来い。」

体高5mのひと際大きなバッファローに余裕の挑発。

”フー、フー、ブモォー”

物凄い勢いで突進してくる。

「ミスリルの大盾、2連」

いきなり、バッファローの前に5mの縦が二重に現れた。

”ガガガーガー”

1枚目の盾にくっ付けてあるつっかえ棒が、土に埋まっていく、盾が斜めになり、次の盾に頭がぶつかり止まる。

さっと横に周り、魔攻鉄の槍で喉を突く

”せいっ、せいっ、せいっ”

”どば、どば、どば”

血が地面を覆う。

魔力探知で周りに人が居ないのを確認したが、1km先に物凄い魔力を感じる。

速攻でバッファローを収納に入れ、魔盾を回収。反応の反対方向に逃げる。

俊速+直進ブーストで逃げる。

3分後魔力探知発動。700mに接近。

この魔力は、A級冒険者 死神ジョーだ。

8分後に追いつかれる・・・逃げ場がない。

時は、3日前に戻ったギルド長室。

「ジョー君。もう2か月以上この町にいるがそろそろ他に移動してはどうかね。」

「僕は、気ままな旅行中ですよ。何も悪い事してないでしょ」

「君が来てから何人殺した。幾ら金を巻き上げた。ギルドに苦情が殺到しているんだよ」

「みんな合法的に決闘してるんだ。お金を賭けてくれるだけだよ。合意の上だし立会人もいるんだよ。」

「君は、S級冒険者の実力があるのに素行が悪いからA級冒険者止まりだ。惜しいとは思わないかね。とにかく、ここに金貨50枚ある。これを持ってこの町から出て行ってくれたまえ」

「何言ってるの。僕は依頼は受けるが、干渉されるのが一番嫌いなんだ。決闘しようかこの町を出るか金貨50枚を賭けて」

「うう」

たじたじのギルド長。

「待ってください。お願いがあります」

「君、体は、大丈夫なのかね」

そこには、長期休暇中からつい先日復帰した受付嬢が入って来た。

「はい、ジョーさんにお願いがあります。」

「僕 安い依頼は、受けないよ」

「簡単なお仕事なのですが、報酬は私の体です。体力の続く限りご奉仕致しますのでお願いします。」

ジョーは体を舐めまわすように彼女を品定めした。

彼女は、来ている服を脱ぎ、ジョーの前に立つ。

「手を下に」

彼女は、顔を真っ赤にしながら胸を隠す手を下げた。

・・・

暫く堪能したジョーは、

「で、依頼は何」

彼女は、服を着ながら話始めた。

「ギルド長も知っての通り、エルフが疾走、B級冒険者パーティーが疾走する事件がありました。この人達に反抗する冒険者が居たのですが、証拠もなくお蔵入りになりました。

彼は、F級冒険者でクロの才能無しです。どんな汚い手を使ったのかは分かりませんが、当時受付をしていた私から見れば状況的に見ていざこざがあったのは彼しかいません。彼が殺したことは明らかですが森での出来事は、ご存じの通り誰にも罰せられません。

彼らが居なくなり依頼が滞り、ギルドは損失を受けました。これ以上、彼を生かしておけば今後ももっとギルドに損失を与える事になるでしょう。その為なら私の身の犠牲など大したことではございません」


「ふーん、いいよ受けても。ねえ、ギルド長。彼女の献身的な申し出を無碍には出来ないな。」

「分かった。あくまで素行調査だ。森での調査でお願いする。

依頼料は、F級者調査の5倍の金貨20枚でどうだ。

ただ、森で襲われる危険性もあるから、殺しても仕方がない。まあ、森の出来事で彼の安否を知る由もないがな」

「君の体の件は別途含むからね、彼の情報を聞くのに今日の夜お願いするかな」

「はい、彼は何か汚い手を使うはずです。話術も長けていますので絶対聞かないで下さい。」

そして今、タケオは追われているが、事情を知る由もない。


相手が単に話し合いをしたいなら、獲物を狩る為の猛スピードで接近しない。逃げれば追っては来ないはずだ。つまり殺しに来ている。

ーーー

ここで、逃げる相手に無作為に追ってくる者を希望的観測で待ち受けるのは、それに対抗する力が無い限りあり得ない。そんな考えをするものは、この世界では単なる肉塊に過ぎない。

ーーー


逃走経路を考えた。大毒沼に行けば追えないだろうが、進行方向と真逆だ。

エルフの森に行ってしまったら、あの殺人鬼の事だ。どんな災いを里にまき散らすか解かったものじゃあない。

このまま行くなら、今でも死の煙を吐き出す火山跡に行くしかない。

策はない。ある訳がない。普通の森の中で対峙したら瞬殺される。俺の最大火力は、弾丸だが、B級冒険者に簡単に避けられる。まず対抗策にならないだろう。

火山跡なら死の危険が誰にでも平等にある。負けるにしても道連れぐらいには出来るかも知れない。

こちらが準備できる時間があるなら方法も考えるが、問答無用では策は限られる。


タケオは死を覚悟した。


とにかく逃げる。風の魔法を後ろに噴射し、とにかく逃げる。10分以上は逃げたが追いついてきた。

接敵100m。

後ろ向きに魔攻弾を乱射する。ウインドスクレイバー・ファイアーボールも乱射するが当たった気配など全くしない。

毒蛇の毒も毒袋を絞り霧状に後ろへ噴射する。

森の木々にも毒が媚びり付く。”生きていたら拭くからね”


何とか火山ガスが吹き出す火山跡に辿り着いた。

「タケオ君、そんなに逃げないで話をしよう」

「話し合いなら、町で出来るだろう。なぜ追ってくる」

ついに、ガスが充満するエリアまでたどり着いた。ガスが濃くて先まで見えない。


この中に入れば確実に死ぬ。


ここで、ジョーと対面した。

「君、卑怯な手を使って冒険者殺してるんだって?」

「そんな事するか、降りかかる火の粉は払い除けるがな。お前だってそうだろ。ただお前のように気分で殺したりしないがな」

「えー、君への抹殺の依頼は、ギルド長と受付嬢の連名だよ。僕は正当な理由で、あ、しまった。依頼主の名前を言っちゃった。

まあいいか、どうせ君・・・・死ぬんだし」

物凄い何かのオーラが噴き上がった。

ミスリルの盾、多重スパイダーシールドを出す。毒霧を噴射した。

スパイダーシールドは”シュイン”と真っ二つになった。

返す刀でミスリルの盾を切るかと思ったが瞬時に避けた。

毒霧は、威圧のような圧力で吹き飛ばされる。


・・最早これまで、引き付けるだけ引き付けて火山ガスの中に飛び込んだ。

”スパパーン”

”うっ くっ”

右太ももを半分、腹を半分切られた。


口を押え、ジョーは、左足一本で後ろに30m一瞬にして転がりながら下がった。

「ちっ、ガスが近すぎて間合いが浅かったか」

”げほげほ”

「少しガスを吸ってしまった。あれより間合いを詰めたら僕も只じゃ済まなかったな。彼は敵わないと分かったから相打ちに持ち込もうと捨て身の作戦に出たのだろう。考えると手練れとも言える。あの胆力なら並みのB級冒険者なら倒せるかもしれない。

まあこれなら彼奴は絶対助からないから会う事はないけど」

 彼は身震いしながら、思った。

必殺の間合いに入れば確実に殺せるがこちらも濃密のガスの中に入る。相当危うい位置だ。一瞬だったが、死を感じさせられた。この感じは、剣聖と対峙した時以降初めてだった。

圧倒的力量差が有っても油断は禁物だと心に刻んだ。


”ぐっ”・・・”はあー、はあー、はあー”

右太腿の筋肉の殆どが千切れた。右腕が逆方向に曲がっている。

踏み込みの間合いを動作の途中でほんの少し後ろにずらしたため、プログラムがヅレたのだ。

ジョーはエクストラポーション(金貨10枚)を飲み暫く転がっていた。

「後で、必要経費として金貨十枚請求しよう」

ーーー

 彼が、使った技は、”誘閃黒風斬”と呼び最高剣技の一つである。魔法の世界でしか存在し得ない技だ。オーラのように見えるのが黒い閃光のように一気にターゲットに広がるのだが、見ている方は、黒い光のように一気に広がる。その時持っている剣が全く同色の黒に変わる。

剣には、突風魔法が仕込まれていて剣を一気に押し出す。

普通、突風魔法など使えば勝手に飛んで行ってしまう。

0.0数秒の刹那に行われるので、見ている側は、剣閃が見えない超高速の剣が来る。

この剣技の難しい所は、突風を起こす急激な直進加速にさらに加速させるための筋力と筋速と魔力攻撃力と攻撃速度。切る行為は、直進を円の軌道に修正する筋力と魔耐が必要だ。それをシンクロさせ、一部の狂いなく全身を使って振り出す。

それは、剣の才能があって尚且つ血の滲む努力の賜物で完成する。この動作を最高剣士たちは、プログラムと呼んでいるのだ。

今回タケオが、間合いに入るギリギリで後ろに飛び退いた。普段であれば、位置を修正するなど絶対しないのだが、火山ガスの霧が目の前に迫っている中、修正すれば自分がガスの中に入ると判断したジョーは無理やりプログラムを変更したため、無理が生じたのだ。

ーーー

エクストラポーションが効き、動けるようになったのは3時間後だった。

「あれ、そう言えばミスリルの盾があったな。金になるから持って帰ろう」

だが、そこには何も無かった。

「幻覚系の魔法だったのか?いや、あれは間違いなく魔力の籠った盾だった。なぜ、一瞬にして現れ、一瞬にして消えたんだ」

釈然としないが、俺の危機感知が間違いなく俺のミスリルの剣と同等のものと認識したんだ。あのまま切り捨てれば俺の剣も只では済まなかった。

しかし、当事者は死んで盾も無い。誰かに話しても誰も信じてくれないだろう。俺を欺く魔法があるのかも知れない。もっと勉強が必要だ。


 彼は、不思議に思いながら、来た道を帰っていった。


◇ 火山ガスに消えたタケオ


火山ガスの霧の中に飛び込んだタケオは、

腹を半分、太ももを半分切られ瀕死の重症だった。

息を止めながら防毒マスク、ゴーグルを着用し、ミスリルの盾を収納した。

とにかく、このガスを抜けたいが、体が持ちそうもない。

体全体に大きめの多重スパイダーシールド6連を張り密封する。

消毒石を出すとガスを毒と認識したようで浄化されていく。


 実はここに着いた時、後ろのガスが浄化できるか試していたのだ。もう一つは、逃げる時、空気を袋に詰め収納した。ゴムの変なおじさんスーツに風魔法で目一杯空気を入れ膨らませ、先を結んで収納しておいた。

逃げ場所が無かったので、この火山ガスに飛び込んで去るのを待とう作戦に出たのだが、お喋りしなけりゃ切られなかったな。

前回、娼館前で切る時の踏み込み位置は見ていた。だが奴は、それより前で切りに来た。だから真っ二つにはならなかったとも言えるが、だから切られたとも言える。

本当に甘ちゃんだ。絶対にそこで剣を振るとは限らないのに。

あまりの痛みに気絶しそうになるが、必死に耐える。

傷口を水で洗い治癒湿布を張る。ハイポーションを飲む。

傷口を洗う時、自分の腸が見えた。変なおじさんスーツの風船を開け消毒石で減ったガス分空気を補充する。

また、痛みに気絶しそうになるが、必死に耐える。


死にそうになるのも何回目かになると慣れるもんだ。

生き残れるかは分からないが最善を尽くすのみだ。

オーク上位種の魔石を5,6個スパイダーシールドに転がす。

これで、半日は魔力を吸ってシールドは持つ事は実証済みだ。


ほっとすると父さんと母さんの顔が浮かんできた。ミミちゃんもいるお迎えが来たかもしれない。

・・・それでもいいか、、、

いや駄目だ!フラウに会いたい。フラウー絶対生き残るからな。フラウー・・・・

・・・・フラウ・・・



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