29 .能力差別解放軍ー討伐①
ファントムバットの魔石は、水切り石のように平べったく丸い楕円の石だ。
これを、胴のMPチャージベルトに5個付けた。
魔石の貯蓄量は、平均10万、計50万の貯蓄量だ。
5個を収束して魔力を出力出来るように回路を作る。
チャージには、5個を並列接続させ、常に外界から自動チャージする。凄いのは、5個同時に魔力供給すると毎秒100MPチャージできる。
84分でMP50万が満タンだ。
これだけのMPは、大型ドラゴン級だ。
魔導回路をミスリルでファイアーストームを作った。
只の火炎放射だ。
森に行って、ファントムバットの魔石の魔力出力ノズルをファイアーストームの魔導回路装置に繋ぎ、実験を行った。
魔導回路は、魔鉱鉄を筒状にして、一番奥にミスリルの魔導盤が付いている。
筒の左手前に取っ手と下奥に握り取っ手と発射ノズルがついている。このノズルを握る程魔力が多く注入される。
岩場に向かって、「発射」ノズルを少し握る。
”ブフォーーーーー”
「熱ち、熱ち、熱ちーーーー」
筒が熱くて持てない。
焼けただれた大地は、真っ黒だ。
これは、このままでは使えないな。
>>>考察
まず、筒自体が溶けているし熱くて持てない。
これは、魔法陣移送回路で飛ばさないと無理だな。
それだけで威力が5倍はアップするMPも5分の1になる。
後は、発射したときこちらに熱風が来ないように風魔法で前に熱風を押し出そう。
これを、ノズルと連動して強弱を付けよう。
反動が大きいから、逆方向にも風魔法で反動を打ち消そう。
射出範囲も一点集中から放射拡大できる様にすれば臨機応変に使えるだろう。これは、高温度火炎放射器だ。
結果、作ってみたが回路は焼けこげるし、魔法陣が高出力で歪んで暴走するし、もう少しで消し炭死体になる所だった。
冷静に考えたが、一冒険者が持っていてもいつ使うんだろ。
とりあえず、没にしよう。
>>>
次は、ウインドスクレイバー乱れ打ちも作った。
”ズドドドドドーーー”
[あわ、あわ、あわわわ」
反動が凄くて照準が合わせられない。
岩山が粉々だ。
やっぱり、ドラゴンはあの体格だからブレス撃てるんだろうな。
結果、ファイアーストームと同じで、魔法陣が高出力で歪んで暴走するし、もう少しで爆散肉片死体になる所だった。
とりあえず、没にしよう。
次にストレージを作った。
8.5m四方まで大きくなった。1時間半でチャージ満タンに出来るから一日4個のペースで作ろうと思ったが、7.2m四方で5個作るようにした。
結果、MPチャージベルトから外した。
一度にMPを使うと石が高温になって、お腹周りに謎の丸い火傷をしました。凄い熱かったです。ホルモン焼きの匂いがしました。
挫けそうです。こういう時はフラウ成分が必要です。
出力を30万MPで少し暖かくなる程度だったので一度にはここまでのようです。
・・・フラウー会いたいよー・・・
―ーー教訓ーーー
高魔力で俺TUEEEは出来ません。
やっぱりクロの魔術師は、クロなんです。
人間、地道な努力が大事です。
ドラゴンてやっぱり凄いです。
すみません。調子に乗っていました。
自分はカスです。ミジンコになりたい。
ーーーー
・
・
次にエルフの里から頂いたユグドシアルの繊維だが、幅1mm長さ2mに魔力を通すと柔らかくなる。最初は茶色、MP50で白、MP100青色、MP150で透明、MP250で光り出した。
文献で微弱な雷で制御できると書いてあったので、微弱な雷魔法回路を魔鉱石で作り電流を通すと硬くなる。
オリハルコンのナイフで切ろうとするが全く切れない。
もう一度微弱な電流を通すと柔らかくなる。電流の強弱で硬さ伸縮が起こるが意味不明。
凄い素材だというのは分かるが、魔力を吸収すると数秒から数十秒で魔力は放逐され無くなる。すると少し茶色が強くなる。その数分後には、黒茶色になる。
これは、劣化だ。
1か月後には、灰になってしまうだろう。
このままでは、使い勝手が悪すぎる。使い捨てにするには勿体ない。
実用化は、相当難しいだろう。何でユグドシアルが持って行っていいよと光ったのかは、使い道が無いから?いや、意地でも何かに使ってやる。研究、研究だ。
今回は成果が無かった。
・
・
そんな研究をしつつ、10日が過ぎた頃、商隊を送り届けた冒険者グループが帰って来た。
ギルドで完了の報告を聞いていると、商隊は、無事送り届けたそうだ。
正直ほっとした。
「商隊は、無事送り届けました。これが、商人の完了受領書です」
冒険者は、その書類を受付に渡した。
「お疲れ様です。道中変わった事はありませんでしたか」
「そうですね。三日目の所で商隊に付いてきているグループの内2名が野盗に襲われたようです。おそらく才能差別解放軍だと思いますが、商隊を離れる訳にもいかず、また、任務外なので放置しました。」
「そうですか残念ですが、依頼を受けていない人達を助けて本隊を危険に晒す事は出来ませんからね。お気の毒に。どのような方だったんでしょうね」
「針糸商人の母娘だそうです。娘が足をくじいて遅れてしまったようだと、付いて来ているグループの方が言っていました。」
ー 何? ー
タケオ「今、針糸商人の母娘と言ったのか」
「何だ君は、報告中にいきなり後ろから声を掛けるなんて失礼だろ」
「すみません。その針糸商人と知り合いだと思うので、つい割って入ってしまいました。ご無礼お許しください。娘は幾つくらいだったのでしょうか」
「そうか、そう言う事情ならしょうがないな。娘は7,8才くらいだそうだ。襲われたのはここから馬車で3日の森の横近くに大きな丸い石があるんだが、その直後に襲われたと思うが、こちらは、その姿を見ていないので後は分からない」
「何で、何で助けてくれなかったんですか」
「我々は商隊を守る任務でお金を貰っている。そこに只で寄生しているものを守る義務はなく、逆に助けて、本隊が襲撃を受ければ責任問題だ。君も冒険者なら分かるはずだが」
・
「・・すみません。その通りです。つい感情的になってしまって申し訳ありません」
「いや、気持ちは分かる。残念だ」
会釈をし、猛スピードで町を出て、俊足、ブーストを使って街道を走った。数時間で森の近くの丸い石を発見した。周りを隈なく調べた。
そこに色が変色した2人の母娘を見つけた。
息が出来ない。”オエッ”嗚咽が出る。
なぜ?
彼女が何か悪いことをしたのか?
彼女が気に障る事でもしたのか?
彼女が・・・・・
世の中はおかしい。こんな純真無垢な子がこんな目に合わされるなんておかしいだろ!
彼女にこんな事する権利が誰にあるんだ。
・・・・かわいい笑顔が浮かんでくる。・・・
お母さんも女手一つでこの子を育てこんな所で死ぬなんて・・・。
俺の周りの人がこんな仕打ちを受けるなど有ってはいけない。
でも起こる。どうしたら無くなるんだ。
彼女の体には、槍のようなもので刺された跡が3か所あった。
一つは、足が貫通していた。二つ目は腹に、三つ目は目に刺さり頭を貫通していた。
母親は、娘を守ったのだろう。背中に刀で7か所滅多切りにされていた。
痛かったろうな。辛かったろうな。必死だったろうな。
大きな丸い石の横に埋めた。
”いつもどんな理不尽に会おうと冷静であれ。”
・・父さんどうしても冷静になれないよ。許せない。絶対許せないよ。
どう見ても手慣れていない。新人に殺しをさせる才能差別解放軍の入隊試験だろう。
ここで俺が死のうが、殺った奴らに絶対この報いは受けさせてやる。
もう二度とこんな事が起きないよう徹底的に殲滅してやる。
・
・
俺は、宿屋に戻り作戦を考えた。冷静に冷酷に絶滅させてやる。
まず、誰かが国境方面へ出ていくのを観察していた。
2日後、男が来て、門番から何かを受け取っている。
渡した門番の顔を覚え、気配遮断のマントを羽織り、男を50m離れて尾行する。
念のため、魔力探知で魔力紋を覚え、はぐれても見つけられるようにした。
・
男は、結構な速さで森を疾走する。通常の人の3倍は早い。
森の途中で待ち合わせしていたのか、茶色い紙を黒い帽子を被った男に渡した。
男は、もっと奥の森に入って行く。
尚も尾行するが、気配遮断を使ってきたが、今の俺には通用しない。
1時間程行くと5mの木の塀で囲まれたアジトがあった。
門の中に入っていく男を確認し、このアジトを上から見える山に登り観察する。
観察できるアジトが見える位置と岩が多い場所を見つけたら、遠くの場所で夜を待つ。
夜に見つけた観察場所に行き、自分が寝ながら入れる大きさにフォジックで穴を掘り、土は遠くにばらまき、表面が掘られたのが分からないようにする。
寝袋を中に入れ、その中に入る。
穴を頭が出る位に小さくし、前には塞ぎ石を置く。
アジトの見回りは、必ずアジトを見まわせる場所を重点的にチェックする。入口が見つかると終わりなので塞ぐ石が不自然に見えないところで観察する。見回りが来ればフォジックで穴を塞ぐ。砦から見ても人の頭一個分ではまず見つけられない。
朝方、見回りが来たが、素通りして行った。
砦を遠目の魔道具で観察(ここからの距離約300m)すると、高さ5mの塀の中に12個の掘っ立て小屋がある。
朝飯を食っているようだ。大体小屋に20人が寝泊まりしているのが動きから分かる。多くても240人くらいか。
一番奥の建物が一番大きく、幹部たちが居るのだろう。
ここから見ている限り人質の姿は確認できない。
人質確認が必要だ。
次の日の夜、収納から干し肉とベイア特性スープを出し食べる。
中に侵入を試みる。まず魔力感知を掛け、魔力の飛びぬけた奴がいないか確認するが、ゴンボ以上が3人いた。