22.B級冒険者ゴンボの逆襲①
ゴンボ+4人にミキちゃんを人質に取られ、呼び出された。
途中で、魔物を誘導して攪乱しようかと思ったが、最初にミキちゃんを投げ入れそうなやつなのでリスクは冒せない。
”火中の栗”が欲しい。
森に入ると、ゴンボの取り巻きの一人がいた。
「何も持っていないようだな。念のため身体検査するから手と足を大の字に広げろ。へへへ」
体中を弄りだした。
「しかし、何だそのぶかぶかなブーツは」
「ああ、装備を外せと書かれていたんでな。目の前にあったどこかの親父のブーツを借りてきた」
「特に何もないな。頭の後ろに両手を上げて、まっすぐ歩け」
後ろから蹴られ、数分森の中を歩くと、ちょっと開けた場所があった。
真ん前に、ゴンボ、左側の少し離れたところにミキがいた。
手を縛られ、後ろから魔術士風の奴が後ろからナイフを首に当てている。
「タケオさん!」
ミキは涙目になりながらタケオの所に行こうとするが、
「おいおい、前に出るとナイフで奇麗な首が切れちゃうよ。ひひひ」
二人の戦士らしい男が出てきた。
「本当に、こんなひょろひょろのチビが天弓持ちを殺したのか」
・
こいつの話は無視し、問いかけた。
「おい、約束通り丸腰で来たんだ。その娘を放してくれ。それともB級冒険者ともあろう者がF級冒険者が怖くて人質がいないと何もできないのか」
「何、てめえ」
戦士が剣の柄に手をかけた。
「止めろ、手と足を縛れ。いちいち挑発に乗るな」
手と足を”ぎゅうぎゅう”に縛られた。
さすが、軽い挑発には乗ってくれないようだ。死亡率が大分上がったな。
しかし、腹が座ったのか、諦めたのか分からないが、一気に冷静になてきた。
「少し、生意気な口がきけないよう痛めつけてやれ」
戦士風とここまで連れてきた戦士の二人が近寄ってきた。
「ごふっ」
腹に一発貰った。
「ぼごっ」
顔に一発いいのを貰い。横に飛んで行った。
口の中が切れた。
腹を蹴られ、踵で踏まれボコボコにされた。
「ごぼ、ごぼ」
胃が切れたのか、口から血を吐き出した。
「止めろ。大分いい顔になったじゃねーか。
そいつを立たせろ。」
二人の戦士が腋の下に腕を入れ無理やり立たされた。
「お前をエルフが追っていたはずだが、お前が殺ったのか
答えねえと譲ちゃんを甚振らねえとなんねえが」
「止めろ、エルフなど知らん、だいたい俺よりよっぽど格上の男をどうやって殺れるんだよ。考えれば分かるだろ俺はクロだぞ」
「嘘だな。譲ちゃんをかわいがってやるか。スカートを剥ぎ取れ」
魔術師が服に手をかける。
「止めろ。本当に知らないんだ。知ってることはなんでも話す」
「じゃあ、何でお前は、毎回オークを4頭も狩ってこれるんだ」
「俺は、北の狩人の息子だ。罠を仕掛けて獲っている」
「そんな罠は見かけたこともないぞ」
「当たり前だ、見破られる罠など張ったら獲物にも逃げられる」
「本当に何も知らないんだな」
「ああ、本当だ。エルフが追ってきたなら俺のようなF級冒険者が気づくはずもない。ただ、”げほげほ” 数週間前、オークの集団を追って塒を探している時だった。罠はその近くに掛けるんで普通の奴には見つからないんだが、その時とんでもない魔力を一瞬感じた俺は、まず助からないと思いながら一目散に逃げ出したが、急に気配を感じなくなった。恐らく相当高いオークの上位種だったんだが俺以外に獲物がいたんだと思う。それがエルフだったかは、分からないが心当たりはその位だ。信じるか信じないかは知らないが、正直他に心当たりはない」
・
ゴンボは、少々訝し気な表情をしていたが、
「もういいよ お前」
”ドゴ”
前蹴りを喰らい、5m後ろに吹っ飛んだ。
「おい、そいつを木に吊り下げろ」
手首を長いロープに縛り直され、木に吊り下げられた。
「うううう」
「そこで、自分の恋人が女になるのを見ていろよ。
俺たちに回されると使い物にならなくなるがな」
「やめろ、止めてくれ、何でも言うこと聞くから」
魔術師は、ミキの手を縛るロープを切り、前に突き飛ばした。
「きゃー、いやー」
“今だ!”
皆がミキに集まりだし、ズボンを脱ごうとしている。注意が一瞬ミキに向く。
俺は、収納からナイフを取り出し、フォジックの魔法で足の縄を斬る。手の縄を切る。
木から落下しながら、魔導回路を取り出す。
「多重スパイダーシールド」6連 ”連結!”
ミキの四方、地面、天井の六面にシールドが展開され全てが連結され固まる。”シャキーン”
落ちた瞬間に自分の前にもシールドを展開。
既にMP7のシールドを7枚でMP49消費した。
「何だ、結界が張られてる。舐めた前を、小僧を殺せ」
さすが、熟練の冒険者だ。術者を倒すことを最優先にする。
魔導士が詠唱を始める。ゴンボと戦士たちが地面に置いた剣を取り出し俺に向け”斬撃!”を繰り出す。数秒後ファイアーボールがタケオに向かってくる。
”ボフッ””ボフッ””ボフッ””ボフッ”・・・”ボフン”
戦士たちがズボンを上げ、タケオに向かってくる。
・
◇数秒戻り
シールドを張った直後のタケオは、
”カスタムケース オープン”
フォジック魔法の移動を使い、見えない空間から次々と装備が飛び出してくる。
リングが指に、サクサクと装備される。
右手 人差指:弾丸発射 中指:ウインドウスクレイパー
薬指:ファイアーボール 親指:エアハンマー 小指:ウォータージェット
左手 人差指:弾丸発射 中指:ウインドウスクレイパー
薬指:ファイアーボール 親指:エアハンマー 小指:エアカッター
手甲装着、肩当て(ショルダーガード)、肘当て
MPチャージャーベルト、ぶかぶかブーツを脱いで膝当て付きブーツ装着。
その間、ざっと3秒、ぶっつけ本番だったけど、
”これかっこいいな”
◇
シールドに着弾し、迫る戦士たち。
魔術士は、杖を構え呪文を唱える。
体中が痛い。骨は折れていないが、胃の内部が切れたのと肋にヒビ入ってるな。
いじめられっ子だった時に蹴られ殴られたとき、いかにダメージを受けないかを考えていたっけ。
少しは役に立ったようだ。二度と経験したくないが。
ーーー
タケオがぶかぶかのブーツにしたのは、取り換え時にスムーズに脱げるようにするためだ。
エルフを知らないと嘘をついたのは、もし殺したと言ってしまうとタケオはあのエルフより強いとまでは思わないだろうが、殺せる手段を持っていると判断しただろう。警戒は一層上がり、隙は見せないとここへ来ながら考えた。
血反吐もわざと口内を噛み切り多めに出した。
蹴られる時もなるべく吹っ飛ぶ様にした。
ーーー
これで、必ず死ぬから、きっと死ぬ位になったかな。ははは。
いよいよ、第二ラウンドだな。