20.ドクドク・ドクドク
ーー
一度は、撤退させられたエルフを撃退できた。
ゴムを使って一瞬で間合いを詰めるなんてどこの曲芸師だよ。
しかし、そこに獲物が来るまで待ち、一撃で仕留めるなんて、本物の狩人だ。
エルフは、さすがに森の狩人と言われるだけある。
ゴンボのパーティが今後何か仕掛けて来るかも知れない。
5人で一斉に来られたら、ガンを使わないと勝ち目は無いだろう。
まだ、使うには早い、対複数人戦闘を想定した戦える方法を考える必要があるな。
エルフが倒されたと認識するのに数日掛かるだろうし、おいおい考えて行こう。
ーー
また何時もの様にオークを狩りギルドに行く。
「お金も溜まったし、違う依頼も熟すかな」
そろそろ、新しい依頼を受け、もっと精進しなければ先はない。自分が知らない事は沢山ある。
F級、E級のクエストボードを見に行く。
E級ボードから一枚の依頼を受付に持っていく。
「今日は、オークを狩りにいかないの」
「ええ、森に入ると誰かに見られているような気がして、怖いから暫く行くのは辞め様と思いまして、何か問題でもありますか?」
「べ、別にないけど」
やはり怪しい。グルかも。エルフに確認すれば良かったな。
・
受けたクエストは、薬草採取である。
受付印を貰い、依頼者の薬師の元へ行く。
場所は、ギルドから南通りを真っすぐ行くと歓楽街がある。その手前の幅2m程度の石畳が200m続く。
ここが、薬師ギルドとその近隣が薬師の店街である。
怪しげな店が並ぶが、そこに看板があり、”ミケの薬屋”がある。
店の前には、”夜はギンギンドリンク”あり〼、”楽しい家族計画”とか怪しい赤い張り紙が斜めに張ってあった。
「おおー」
俺には未だ、お世話になる事はないな。
と思いながら店の扉を開けた。
”カラン・カラン”
「すみません。お話したいのですが宜しいですか」
少し間があって奥から20代後半ぐらいだろうか、猫耳がある妖艶な女性が現れた。
まずい、16才の俺には刺激が強過ぎる。
谷間が見える。谷間が見える。谷間が見える。
「どこ見てんの。お金取るよ」
必死になって目線を逸らした。(チラ見はタダだ。俺ルール)
「あの、外の看板を見たのですが、オークのァㇾは買い取っていただけますか」
「玉?いくつあるの。あるだけ買うよ」
玉とかやめて、縮んじゃうよ。
「とりあえず2個入り10袋?」
亜空間収納庫から麻袋に10個出し、それをカウンターに出した。
「え?そんなに玉持ってんの。捥いでから1日以内じゃないと買えないよ」
・・・捥ぐって・・・
彼女は、虫眼鏡を出して確認しながらモミモミして弾力を確かめながら匂いを嗅ぎ出した。
こちらから見ると谷間が大きなクレパスになっているその前でモミモミしながら鼻を近づけ匂いを嗅いでいるのだ。
・・自分の股間を両手で押えてしまった・・真っ赤な顔になってしまった。ばれてないよね・・・
「うん、1時間も経ってない。新鮮だね。全部買い取るよ」
2個組で銀貨二枚なので、金貨二枚になった。
未だ、在庫が数百個ある。収納庫は、時間が止まるので、捥ぎたて本生だ。
これでどの位で消費できるのか聞いたら2、3日で消費するようだ。あっという間に”売り切りごめん”の札を下げているそうだ。皆、隣の歓楽街に行く前に数本まとめて買っていくのだ。
16才の俺には、歓楽街について深く聞く勇気が未だなかったし、最初はやっぱり好きな人がいい。
とりあえず、何個でも持って来いと言われてしまった。
今後、小出しに卸しに来よう。
別にクレパスとモミモミを何回も見たいからじゃないよ。一度に卸すと普通は、一度にそれだけ倒したことになるから疑われないよう小出しにするだけだよ。本当だよ。疑いようのない決断だ。
ーーー エロ猿 ーーー
・
「それと、依頼内容を聞きに来たのですが」
懐から依頼書を出した。
「毒消し草だね。見本はこれだよ。ほうれん草に似ているけど葉っぱの後ろに黄色い斑点があるから判るよ。根はそのままにしておくとまた生えるから根元から2cmくらい残して刈ってきておくれ。
一本大銅貨5枚で、依頼は最低10本だけど100本でも1000本でも買い取るから」
毒消し草から解毒薬を作るそうだが、需要はお貴族様や大商人が買うそうだ。
効力が1か月しかないため、作っても作っても品薄なのだそうで、高騰している。
お金持ちって毒殺を盛られる事が多いんだって。
「これは、毒沼で採れると聞いたんですが間違いありませんか」
「間違いないよ。毒沼には、毒を持ったモンスターがいるから採りに行けないんだよ。モンスターが少ない場所にしな。確かにモンスターの多い場所には、一般の毒消し草以外にも高額取引される菌毒消し草、蛇毒消し草、毒消石、高毒消し石、万能消毒石なんかも採れるけど魔物の毒蛇、毒ガエル、毒キノコの近くになるから採るのは絶対やめた方がいいよ。」
「大毒沼に行けば全ての毒消し草があり、殆どの毒の魔物がいると聞いたんですが」
「行くなら東の毒沸き沼にしな。絶対大毒沼に行こうなんて思うんじゃなよ」
「そんなに危険なんですか」
「大森林を西に20㎞位行くと、大毒沼があるけどあそこは絶対行っちゃ駄目だよ。生きて帰った人は殆どいないんだ。帰ってきても全員3日以内に毒が廻って死んでるんだからね。」
結構危ないな。
けど今回は、わざとこの依頼を探して受けに来たのだ。
トウースの隠れ家で毒に関する本があった。魔道具にも防毒用の魔道具がある。また、毒探知もあるのだが、毒を採取して登録しなければならない。既にヒュドラ、ヒ素毒系、鳥兜系、幻視蝶毒などとんでもない毒は登録されているが、もっと普通にある毒素が登録されていない。
薬草の本はあるが、現物がない。
ポーションや治癒薬等は、廃棄賢者の森の薬草で錬金して持っているが、解毒薬に関しては持っていないのだ。
キュアの魔法を使えば軽いものは治るが、猛毒の類は治らない。キュアの魔法は、全身に隈なく繊細に掛けるのでMP消費が半端ではない。簡単なキュアでMP100使う。猛毒を治せるハイキュアは、魔導回路で作っても消費魔力がMP500とか掛かるらしいので、賢者の森に瞬時に帰り魔力タンクを使わないと死亡決定だ。
なので、ここで解毒薬を手に入れる事と魔物の毒を登録するのが今回のミッションなのだ。
行く決断をしたのは、偶然見つけた秘密兵器があるからだ。
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翌日、早朝
俺は霧のかかった毒沼の前にいる。
場所は当然、大毒沼である。
・
秘密兵器とは、ゴームの樹液を固めた素材である。
エルフが持っていた伸びる素材を使った防水スーツを作ったのだ。(死んじゃったら使えないから貰っていいよね理論)
この世界では、魔力と錬金術さえあれば色々な素材が作れる。
頭まで”すぽっ”と入り顔しか出ない。目には水晶を錬金してメガネのようにしたゴム枠付きゴーグルをし、口鼻には、防毒マスクを装着した。
(防毒マスクの弱点は、空気成分以外取り入れないので匂いが分からない。まあ、当然だが)
全身防水ピッチリゴムスーツの変なおじさんの出来上がりだ。
大毒沼の外周は、毒消し草が見渡す限り生えていた。
恐らく、沼の毒が外に行かないよう沢山生えているのだろう。葉っぱの裏に黄色い斑点があるのを確認しながら、間引きするように50本に1本だけ茎から2cmの所を刈り取る。
”サクッ””ヒョイ”・”サクッ””ヒョイ”・”サクッ””ヒョイ”・”サクッ””ヒョイ”・”サクッ””ヒョイ”・”サクッ””ヒョイ”・”サクッ””ヒョイ”・”サクッ””ヒョイ”・・・・と刈っては収納へを繰り返し、3000本採っても沼の外周の100分の1にもならない。
「ふう、腰が痛い。この辺にしておくか」
腰を”トントン”と拳で軽く叩きながら腰を伸ばした。
凄い汗をかいた。今はだいぶ寒いので助かったが、真夏の炎天下だったら1時間で気絶するよホント。
ゴーグルも曇るし最悪だな。
次に毒沼の方へ歩いていく、100m位近づくと沼が見えた。草は生えてはいるが、地面がぬかるみ、足が少しづつ沈み始めた。
”ぬぽ”・”ぬぽ”
「お、足が沈んで歩きにくいな」
ここで登場するのが、亀の甲型に作った木の板だ。
”スィーとは進まない。”ズズー”と言う感じだが、埋まってはいかない。
暫く探索すると、毒々しい倒木が沢山あるエリアにたどり着いた。
キノコが”ボフッ”と何かを吐き出しながら歩いている。きっと毒胞子だな。胞子を採取し毒登録をする
額当てに追加したサーチ・スキャンの魔導回路を発動すると人体に毒影響の紫が光ると自動的に毒登録される。
何か紫判定するなら登録しなくてもと思ったが、サーチ・スキャンはアクティブでパッシブじゃない所が問題か。
所々偶に青い草があるので、あれが菌毒消し草だろう。
今回は採取しない。
大きなキノコモンスターがいたので、ガンで速攻倒す。弱点は、傘の付け根を破壊するだけだ。
もう一つミッションがあるとすればレベル上げだろう。毒モンスターは、物理攻撃に滅法弱いが、魔法攻撃は殆ど効かない。物理攻撃すれば毒を貰う確率が非常に高いので共倒れか負ける。ここで有利なのが弓矢だが、俺にはガンがあるし、ここには人間は誰も来ないから撃ち放題でばれないのだ
毒モンスターは、毒自体が攻撃なので、レベルが頗る高い。大きいキノコでレベル60もあるのだ。
キノコの魔石を取り出すと青い石なのだが、実はこれが”高毒消し石”なのだ。(事前に本で確認)これにより、彼らは毒が効かないのだ。暫く狩り、レベルが上がっていた。
毒消し石を3個取得した。
ここで沼を出た。宿に帰らず野宿する。レベルが31になったので、MPチャージをフル回転し、土魔法で穴を掘ったり、とにかく魔力消費とチャージを十回以上繰り返した(5時間位かかる)。こうしないと直ぐレベルが上がるとMP5のボーナスが貰えないからだ。
魔攻は、格上なので2増えるから問題ない。
夜は、ひたすら増えた魔攻による魔力循環の乱れが無いように訓練した
2日目は、カエル狙いだ。
浅瀬に1mはある黄色いカエル、赤と黒のストライプ色のカエル、黒いイボがあるカエル等30種類ぐらいいたが、登録した毒の種類は、溶解毒、壊死毒、硬化毒の3種類だった。
大きいのは6匹いたので、毒消し石を6個取得した。
レベルが32になった。
昨日と同じように魔力ドーピングと魔力循環を行って就寝。
3日目は蛇ゾーン
こちらは、2,3mの蛇たちだ。種類が多くて数えていないが100以上いる。
5,6mの大きい奴を4匹倒し、毒消し石を4個取得した。
そのうち一個が高毒消し石だった。
一匹に万能消毒石が別途出てきた。こいつからは、色々な食中毒を引き起こす何かが含まれていたようだ。
これは、疫病や集団食中毒を引き起こす病原の元かも知れない危険な毒だと思う。
ーーこの世界では、まだ病原菌の概念は確立してない。全ては毒素と考えられていたーー
レベルが33になった。
毒の増えた種類は、幻視毒、狂乱毒、神経毒、ショック死毒、各中毒、溜まり毒など多種多様の毒だった。
昨日と同じように魔力ドーピングと魔力循環を行って就寝。
沼の中心付近に行くとレベル100越えの魔物がいるようだが、さすがに怖くて行かなかった。
タケオ君子 危うきに 絶対近寄らず。家訓だ。
沼付近には、毒持ち昆虫も居たので採集した。
キラービーからは、ショック毒だったので被りだ。
他も被りだったので止めた。
4日目 トワールの町へ帰った。
ミキちゃんには、3日間遠出すると告げていたので”知り合いの農家の鶏が卵を生まない”嘘は必要なかった。
(あの時は本当に危なかったんよ。嘘ついてごめんなさいBYタケオ)
疲れたので宿屋で就寝した。
翌日、ミケさんの薬屋へ行って、千束の毒消し草を渡したら
、凄いビックリされて金貨50枚の現金がないから明日となった。
オークの玉を2組取り出して銀貨4枚貰った。…福眼、福眼
翌日金貨50枚を貰い、
オークの玉を2組取り出して銀貨4枚貰った。…福眼、福眼
―ーームッツリ猿ーーー
毒消し石は、キュアストーン、高毒消し石はハイ・キュアストーンと呼ばれているが、キュアの魔法では各中毒、ショック毒、幻視、幻想、硬化の毒等は、治せない。
別の魔法があるが、一般にはあまり知られていない。
ストーンの大きさは、直径13cmの球体。
消毒ストーンは、体内に入る前に毒を消してしまう。
パッシブ魔石だ。置いておくと勝手に半径2mの範囲が対象になる。
魔力充填は、MPチャージ回路で出来る。使われないとMPは減らないので充填を忘れそうだ。
ほかの石は魔石に魔力を充填し、ストップした時点で発動する。
キュアストーンで半径1(MP10)ー5m(MP50)の範囲だ。
ハイ・キュアストーンで半径1(MP100)ー20m(MP2000)の範囲だ。
MPチャージ回路で充填できる。
ハイキュアだけではヒュドラの毒は1日緩和は出来るが消せない。
エクストラが必要だが、レベル100超えのとんでもない毒魔物を倒さないと出てこない。
これで、タケオの毒に対する備えは出来たと思う。ヒュドラに会ったら即逃げの一手である。毒が無くても絶対勝てないから逃げるしかないのだが。