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呪縛霊になって元カノに会ったら、シングルマザーだった

作者: 果実

 気が付くと、たかしの目の前に、汚らしいオヤジがいた。

どす黒い顔に禿頭。汚れたコートを裸に直に羽織り、丸出しの腹は真っ赤だ。

「よう」

 と色黒赤腹のオヤジが低いだみ声を発した。

 こいつ……。俺に何の用だ。

崇が無視して行こうとすると、オヤジは続けた。

「置かれた状況が分かってないようだな、崇」

 名前を呼ばれ、崇は戸惑った。

「何すか? おっさん……」

「まずはあれを見てみろ」

 オヤジは首を夜の車道に向けた。青いダウンを着た男――崇が、血を流して倒れていた。

「え? あれ……俺?」

「そうだ。あそこで死んでるのがお前。そしてここにいるお前は、まぁ幽霊、ってとこだ」

 オヤジは表情を変えずに言った。

「あぁ――俺酔っぱらってふらふらしてて、車に撥ねられて……そっか、死んだのか」

 崇は、不思議と自分の死を冷静に受け止めていた。もとより、生きていたところで碌なことはなかった。

「ひき逃げだ。哀れなもんだな」

 オヤジの声に同情の様子は全くなかったが、崇は少しも腹が立たなかった。

「……で、おっさんは誰? 死神?」

「覚えてないか。ま、そうだろうな。死神なんて立派なもんじゃねえ。死んじまったお前の死後の案内人みたいなもんとでも思っとけ」

 随分と汚い案内人だ。死後も惨めな扱いを受けるのか――崇はため息を吐いた。

「で、おっさん。やっぱ、俺は地獄行き?」

「残念ながら、お前は死後もしばらくここを漂うことになる。呪縛霊ってやつだ」

「は? ジュバクレー……って、何?」

 オヤジは煙草を咥えると説明をはじめた。崇のように、周囲の人間に恨みを持ったまま死んだ者は成仏出来ず、呪縛霊として現世に残る。ただし、期間はひと月。その間、崇が希望すれば2人までは姿を見せ、話すことぐらいは出来る。だが、絞め殺すといったように物理的に影響力を持つことが出来るのは、そのうちの1人――ということだった。

 なるほど。そいつは面白そうだ。殺したいほど憎んでる奴なら腐るほどいるが、敢えて2人というなら、こいつらだ――。

 名前を挙げると「ふん、お前らしいな。着いてきな」と言ってオヤジは背中を向けた。見ると、コートから黒い尻尾のようなものが出ている。どこまでも気味の悪いオヤジだ。


 多絵たえは、崇の初恋の相手だ。多絵とは高校2年で同じクラスになった。学生生活で、唯一崇に優しく接してくれたのが彼女だった。すらりとして脚が長く、ロングヘアの多絵。いつも明るく、しっかり者で、崇とは全く別タイプだった。すぐに多絵のことが好きになった。多絵は気軽に話しかけてくれるが、崇はそれに一言二言返すだけで精いっぱいだった。告白など、考えられない。多絵はいつでも、誰に対しても優しい。多絵みたいな人が、自分を好きになることなんて、あり得ない。ところが、奇跡が起きた。ある日、多絵に呼び出され告白されたのだ。夢のようだった。それからは、寝ても覚めても多絵のことしか考えられなくなった。いつも一緒に帰った。

「ど、どうして俺なんかのこと? ……」

 多絵みたいな可愛い子が……。そう続けたかったが言えず、いかにも自信なさげな小声で多絵に聞いた。

「私、崇くんって、カッコいいと思うよ? 崇くんこそ、私なんかのこと好きなの?」

「え? あ、うん……」

 歓喜のあまり、吐きそうなほどだった。

 ところが、瞬く間に多絵は暗くなっていった。一緒に帰る時も、あまり口を利かなくなった。崇は激しい不安に襲われた。

「ごめん……やっぱり、友達に戻りたい……」

 多絵はある日、突然泣き出し、そう告げた。付き合い初めて、わずかひと月だった。

 なぜ? なぜだ? 自分から告白してきたくせに……たったひと月で一方的にフラれた。

 許すことは出来なかった。憎い、憎い。多絵が憎い。残りの高校生活は地獄だった。顔を見るたびに胸が張り裂けそうだった。滅茶苦茶にされたのは高校時代だけではない。以後、崇は一層コンプレックスが強くなり、何をやってもうまく行かなかった。女性が、人が、怖くなった。定職にも尽けず、家を出され、ネット難民となり、車に轢かれて死んだ。多絵がきっかけとなって、自分の人生は地の底まで落ちることになったのだ。


「着いたぞ。ここが、今の多絵の家だ」

 翌日の早朝。色黒赤腹オヤジに連れられてきたのは、小さなアパートだった。オヤジは崇を尻尾でつついた。

「さて、どうする? 化けて出るのか?」

 何しろ多絵の姿を見るのは二十年ぶりだ。二十年間、愛憎を抱き続けた女がここに……。

「とりあえず、多絵の顔、見てくるわ」

 そう言うと、崇はふわりと浮きあがって多絵の暮らす部屋へ入り込んだ。

 いた――。16歳だった多絵も、いまや37歳。あの頃より痩せてやつれた感じもするし、髪も短くなっていたが、そこに座っているのは間違いなく多絵だった。体中を締め付けられるような痛みを、崇は感じた。

 多絵はせわしげに朝の準備をしていた。準備を終えると、多絵は寝室に向かった。

まさか……男か。崇は、傷つくまい、と身構え寝室まで着いていくと、赤子が寝ていた。

ゆう君。おはよ」

 多絵は赤子に呼びかけた。多絵のガキ……男の子か。多絵にそっくりだ。1歳か2歳くらいだろうか。ガキは、眼を擦ると、何が気に食わないのかもの凄い勢いで泣き出した。うるさい。やたらとでかい声だ。鼓膜が破れそうで不愉快だ。

「おーよしよし。悠君、おはよう」

 多絵はそう言ってガキを抱きかかえ、背中をポンポンと叩きながらゆすっていた。

クソつまんねぇ――そう呟きつつも、崇は様子を見続けた。多絵はガキをあやして着替えさせ、飯を食べさせるとコートを来て、ガキを抱きかかえたままアパートを出た。自転車でどこかへお出かけするらしい。

 ガキを乗せた自転車は街なかの小さな建物の前で止まった。保育園か――。

 多絵は、相変わらず喚いてるガキをなだめながら保育園に預けると、急ぎ足で駅へと向かった。専業主婦という訳ではないようだ。

「ストーカーか」とオヤジにからかわれたが、崇は多絵を追い続けた。夕方、仕事を終えるとまた多絵は慌ただしく保育園にガキを迎えに行き、夜も駄々をこねるガキの相手をしながら家事をした。それでも声を一切荒げず「おお、よしよし、悠君はいい子だね」などと言い続ける多絵。一体どういう神経だ。

 夜になっても旦那らしき男は現れなかった。翌日になっても、多絵は同じような1日を繰り返した。そして、その次の日も……。結局、崇はそのまま1週間、多絵の観察を続けた。シングルマザーなのか――崇はガキの寝顔を眺めた。寝ている時だけは静かだ。それにしても、多絵と似ている。多絵の横に、丸っこい小さな同じ顔――なんだか笑える。

「痛て」

 赤腹オヤジが尻尾で崇を小突いた。

「いつまでそうしてる」

「分かった、分かったよ。明日、多絵の前に出るよ。何で俺のことフったんだ! って、文句言ってやる」

 翌日。多絵は休日だった。うるさい息子が昼寝をしたタイミングに、崇は姿を現した。

「え? 崇くん?」

 多絵は見るなりそう言った。

「……覚えてる?」

「も……もちろん覚えてるけど。なんで? どうしてそこにいるの? っていうか、何か、半分透けてるよ??」


 それから、説明に1時間近く費やしてしまったが、何とか多絵は崇が死者であることを理解したようだ。説明を終えると、今度は多絵が自分の話をした。数年前、付き合っていた男性の子を身ごもった。ところが、それが分かると男は逃げた。多絵は傷ついたが、宿った命を愛おしいと思った。子どもは、独りで生み、育てることにしたのだという。

「悠君、凄く可愛いでしょ。確かに大変だし、お金も時間もないけど、結構幸せよ」

ひとり親だし、仕事でいないことが多い分、一緒の時は他の子の二倍、三倍、甘えさせてあげたい――多絵は笑いながらそう語った。話は尽きなかったが、気が付くと2時間が経っていた。寝室から、泣き声が聞こえてきた。

「大変だなぁ……じゃ、俺は失礼するよ」

 崇が言うと、多絵は「有難う、話せてよかった。また来てね」と笑った。

 姿を消すとすぐにオヤジが現れ、煙草の空き箱を投げつけてきた。

「同窓会か」

「いや……いざ久々に多絵と話したら、なんだか懐かしくなっちゃって、つい……」


 翌日。息子が寝ると、崇はまた多絵の前に現れ、自分を振った理由を尋ねた。

「恥ずかしいこと蒸し返すねえ」

 多絵はそう笑って説明した。多絵は本当に崇のことが好きだった。だが、付き合い始めると、崇は一度も多絵のことを好きだと言ってくれなかった。会話もぎこちなくなった。多絵は、崇は本当は自分のことが好きではないのではないかと不安になった。次第にそれに耐えられなくなり、以前の関係に戻った方が楽になるのでは、と考えたそうだ。

「今思うと可愛いくらい馬鹿馬鹿しい悩みだったなぁ。でも、当時は本気で悩んでた」

 ウケるよね。そう言って多絵は笑った。

 言うべきことが分からず黙り込んでいると、寝室から泣き声がした。

「じゃ、そろそろ消えるわ」

「あ、良かったら悠君、見てってよ」

 多絵はそう言い、ぐずる赤子を抱いて来た。

「どうせ消えてる間もその辺うろうろしてるんでしょ? だったら、ゆっくりしてってよ」


 崇は、多絵の家に居座った。家事・育児と仕事に追われ、多絵は1日中慌ただしく動き回っているように思えた。物に触れることが出来ない崇に、手伝えることはなかった。それでも多絵は「懐かしい友だちと話せるだけで気が紛れる」と崇を歓迎した。本人が気にならないと言うので、風呂まで一緒に入った。実際、それで崇がどうするということもない。息子は、自分のことは見えているのか……? 時々、崇のことを見ているようで、妙な気分になった。中年の体を恥ずかしげもなく晒す多絵。そして、同じ顔をした小さな生き物が、小指よりもちっぽけなおちんおちんを無防備に見せている……。


 オヤジに与えられた期限が、あと2日と迫った日。問題が起きた。多絵が職場でミスをし、急な対応をせざるを得なくなったのだ。

 かろうじて保育園の迎えにだけは抜けさせてもらったものの、すぐに職場に戻らなくてはならない。多絵は方々に電話をかけて、息子の面倒を見てくれる人を探していた。崇も焦った。何とかならないのか――。

「なぁ、おっさん。俺、明後日までに決めりゃ、1人に影響力持つこと出来るんだよな。その1人、あの子にできないか?」

 オヤジは煙草を口に咥えたまま答えた。

「お前、あのガキにゃ何の恨みもないだろ? 金井って奴はどうするんだ?」

 金井、というのは、前の派遣先で崇をさんざん馬鹿にし、苛め抜いた上司だった。

「もうどうでもいいよ。なぁ、俺があの子に触れるようになれば、面倒見れるだろ?」

 崇が必死に頼むと、

「いいだろう。俺の裁量で特例を出してやる」

 と言って、オヤジは黒い顔にニヤリとした笑みを浮かべた。


 崇は、泣き叫んでいる悠君を抱きあげた。自分の両腕に収まる、小さな多絵――。

「よしよし、悠君……」

 崇は小声で語りかけ、背中をポンポンと叩いてみた。状況の変化に驚いたのか泣き止んだ悠君が、不思議そうに崇の顔を見た。瞬きもせず、黒目がちの目で、ひたすらじーっと、見つめている。

「崇君……。何これ? キセキ??」

 携帯を片手に、忙しなく電話をかけまくっていた多絵も驚いて見ていた。

「多絵……俺、見るよ。悠君のこと」

 崇は言うと、多絵は少し考えてから「分かった。ごめん、任せる。何かあったら電話して」と言って、慌ただしく部屋を出て行った。


「お前、やっぱり俺のこと見えてたんだな」

 崇は悠君に優しく語りかけた。数週間、生活を共にしたのだ。勝手は分かっている。作り溜めしている離乳食をレンジで解凍して食べさせ、オムツも替えた。なんだか縁にあるヒレヒレが不恰好だし、少々まわりを汚してしまったが、問題はないだろう。何かを遠慮しているのか、悠君は大人しかった。

 夜10時を過ぎた。多絵からはまだ連絡がない。いつもなら、とっくに悠君が寝る時間だ。さすがに入浴は怖かったので、崇は絵本を読ませながら寝かしつけようとした。だが、寝る気配がない。悠君はイライラしたように手足をばたつかせ、絵本を手で除けると、とうとう泣き出した。オムツか? 慌てて替えを取ってくるが、暴れて上手く出来ない。悠君が転げまわり、寝室中が汚れた。おしっこが多絵の布団に染み込む。悠君は下半身裸のまま泣き続けた。オムツを諦め、汚れていない毛布で悠君を包んであやすが、どうにもならない。どこか悪いのか? 11時を過ぎた。1時間以上も泣き続けている――。

「おい、おっさん! 頼む。助けてくれ!」

 姿を消していた赤腹オヤジを探して叫んだ。

「仕方ない。もう1回特例を許してやる。だが、これで最後だ」

 オヤジは姿を現し、携帯電話を取り出した。


「ごめん。やっと今終わった。すぐ帰る」

 電話を掛けると、多絵はそう言って数10分後にタクシーで帰宅した。毛布にくるまれた悠君を抱きしめ「よしよし」とあやし、おっぱいを出すと咥えさせた。悠君はすぐに眠った。多絵は手際よく悠君を綺麗にして着替えさせ、ベビーベッドのシーツも替えた。多絵によると、崇のことは警戒してなかったと思うが、多絵の帰りが遅いことが不安で泣き出した。卒乳したはずだが、幼児返りし、おっぱいを吸って落ち着いたのだろう、とのことだった。安堵のあまり、崇はその場にへたりこんでしまった。

「ごめん……ガキの面倒くらい、出来ると思ったんだけど……ごめん」

 言いながら涙がこぼれた。

「ううん、有難う。こちらこそ、ごめん……」

 多絵は、本当にすまなそうに謝っていた。崇も手伝って寝室を片付けたが、多絵が寝たのは午前3時近くになっていた。多絵の話では、正社員でもないのに、子どもがいると残業も出張も出来ないし、急な休みも取ってしまう。その上今回のようなミスがあると、雇用契約の更新も難しくなってしまう――ということだった。それでも「悠君には私しかいないから、私が頑張らないとね」と、大したことでもないかのように多絵は話し、翌朝も早く起きて悠君を保育園へ送って行った。

 多絵を見送った後、崇はせめてもと思い、溜まっていた洗濯物を片付け、食器を洗った。

「吸うか?」

 オヤジが煙草を勧めてきた。

「いや。いい――」

「今夜、お前は消える。悔いはないか」

「悔いしかねえよ」

崇は小さく苦笑した。

「ガキの相手すら、碌に出来なかった……」

「だろうな。小さな命も大切に出来ないお前だ。他人の子の世話など、出来る訳がない」

「悪かったな、おっさん――やっぱり、まだ俺のこと……憎んでるのか?」

「ようやく思い出したか……ああ、憎んだぜ。呪い殺してやりたいくらいな」

 オヤジが笑った。

「だよな……ごめん、じゃすまないよな……」

「30年間、お前を見てきた。お前の人生は惨めなもんだった。殺すまでもない気がしたな。そのうち、勝手に死にやがった」

「……そっか。そうだよな。俺、ほんとバカだよな。なんで死んじまったんだろう。多絵のことも、何で憎んでたんだろう――。見ろよ……多絵のやつ、全部1人で抱え込んで。すげえよなぁ。強いよなぁ。なんで、そんな頑張れるんだよ……。俺……やり直してえよ。なぁ、おっさん。俺、消えたくねえよ。死んだ時は何とも思わなかったのによぉ。今は、つれえよ。もっと早く気づきたかったよ」

 そう言って、崇は喉が痛くなるほど泣いた。


 その日の夜、崇は多絵に別れを告げた。

「そっか――ずっと居てくれたら心強かったけど。キセキなんて、そう続かないよね」

「多絵……お前は、強いな。幸せになれよ」

「大丈夫。結構幸せだから」

「――だな」

 多絵が、崇の手を握りしめた。

「来てくれて有難う。また会えるかな?」

「多絵が死んだらな」

「私、100歳まで生きるよ。60年以上先だね」

 多絵はそう言って笑い、手を離した。

「じゃあ、悠君に次会うのは、もっと先だな」

「そう。22世紀だね。見守ってね」

「――有難う。あと――ごめんな……」

 多絵は、優しく笑ってひとつ頷いた。

「じゃな」

 そう言うと、崇の体は多絵の前から消えた。


 屋上へ登ると、オヤジがまた煙草を吸っていた。

「案外あっさりしたもんだったな」

「かな。なぁ、最後にひとつ教えてくれよ。俺はひと月しかないのに、なんでおっさんは30年もただ俺のこと見てたんだ?」

「イモリと人間じゃあ、生き方が違う。死に方も違う、ってことよ」

 オヤジは煙を吐きながら笑った。

「ま、クソ野郎だったお前が、ちったぁ改心したんなら、死んで良かったんじゃないか?」

「キツいこと言うねぇ」

 崇は伸びをしながら思い出していた。かつて、自分も小さな命を育てようとしたことがあった。子どもの頃飼っていた、アカハライモリだ。最初は甲斐甲斐しく面倒を見た。だが、すぐに餌やりも適当になった。気付くと、汚れきった水槽の中で、イモリは死んでいた。このオヤジは、その時のイモリだ。

「憎んだけどな、随分とお前のことを。最後に少し、面白いもんを見せてもらった。俺もそろそろ成仏するぜ」

「……そっか」

「じゃあな。お前も、成仏しろよ」

 オヤジは携帯灰皿で煙草の火を消すと、掌サイズのイモリになり、尻尾を振ってすいすいと泳ぐように夕空へ消えて行った。

 崇は、最後にもう一度、多絵と悠君を眺めた。有難う、多絵。頑張れよ。もっともっと、幸せになれよ。悠君、元気でな。俺みたいになるなよ――。

 そう願ってから、崇の姿も意識も消えて、彼は無となった。


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