第十四話 私って転生者ですよ?②
「では、最後の証拠です」
これは何かと説得力があると思ってる。肝心な所は私も良く分かっていないけど
「それは……この私の異常な強さです」
そう、そもそもおかしいのだ。確かにこちらでは身体強化の魔法を使用することで人並み以上に活動することができ、私も度々使ってきた
しかし、地球では別。勿論、身体強化など無い。それなのにか弱い私はあの日、死んだ日の午前、あの時、虎を撃退した。あの時は興奮でよく分からなかったし、こっちに来た時も火事場の馬鹿力でも働いたんだと思っていた。
「確かに、ウェルリンテさんは私が保証するぐらいには強いですが、いつも身体強化魔法を使っていたのでは?」
「いつもはほとんど使っていないわよ。最近でいうと……貴方の背中を叩いた時以外は特に使ってない」
「え?レッドボアを倒したっていうのは……」
レッドボアとは、ファリシスを救った時にいたあの魔物である。食べかけている食糧を勝手にほっぽり出すとかいう、私の食べ物を粗末に扱わないという信条に真っ向から反対する様なことをやってたやつ
「あんなのに使う必要は無いわ……正確に言うとね、それが私の才能だと思うの」
「……才能?」
か弱い私が、何度だって言う、「か弱い」私があの時異常な力を手にした。そして、よく考えてほしい。虎を目の前にしたら誰だって命の危機を感じ取るものでしょう?つまり……
「ウェルリンテ嬢はペログリファである……と?」
太郎が正解を当てる。
そう、私もその結論に思い至った。元々ペログリファであった私は、あの時に才能が開花し能力を得た。後出しのようで悪いが、地球にいた時私には双子の姉がいた。とは言っても、その姉は産まれてすぐSIDSで死んでいるので成長した姿は知らない。一卵性双生児なので、まあそっくりだと思う
「才能が開花したの自体は異世界での出来事……です。私は逃げた虎から子供を救おうとして……あ、その『お前なら虎ぐらい一撃だろ』っていう目は止めてください。その時は本当にただの一介のか弱き女子でしたので。救おうとした時に能力が開花したのだと思います。その時は死ななかったのですが、その日の晩、牡蠣に当たって死にました。」
これで全部言い終わった。もう他に言うべきことは無い……はず。全部言い終わった後の皆の顔は、苦虫を噛み潰したようっていうのがちょうど合う。見ていて面白い
「つまり、ウェルリンテさんの発言を全て纏めますと……ウェルリンテさんは異世界の住人であり、気づいてはいなかったからけれどもペログリファでもあった。そして、虎を助けた時に、ペログリファが命の危機を感じた時に才能が開花するのと同様にウェルリンテさんも才能が開花した。」
一ついい忘れていたことに気づく
「私の才能は多分……『感情の強さに応じて身体能力が高まる』的なものだと思います。昔から感情が高まったときには力がみなぎる感覚がありました。直近の例でいうと、あの時投げナイフを防げたのもカイルス王子に対する怒り……というか、呆れからですし、トレイスチナの決闘に勝ったのも怒りを覚えていたから……まあ、別に怒ってなくても負ける気はしませんけど……兎に角、そういう才能だと思います。」
漫画、小説で定番の能力である。普通なら、仲間の誰かが傷付いてその怒りでこの能力が最大限使われるっていうシーンが多いと思う。
けれど、私の場合今までで1番この能力が使われたのは、前にも言ったと思うけどお父様が出来立てのクッキーを食べた時。あの時、力任せに殴った大木が折れた。中が腐ってたってことになっているけど、多分腐ってなかった
「……ウェルリンテ嬢の話を全面的に信用するとして、結局どうしたら良いのか考えはあるのか?」
ルーシュ様がこちらを見る。やっぱり王様っていうのは威厳があるね。思わず背筋をピンと伸ばす
「はい、一応……何故、ルーヘントはペログリファを狙うと思いますか?」
さっきから散々私に反論してこようとした研究員を指名する
「私の見解では、ペログリ……「答えは凄く便利だからです」おい、まだ言ってないだろう!」
羽虫がなんか言っていやがる。無視、無視……暖房つけなきゃ
「……便利とは?」
「つまり……あ、すいません。1つ言い忘れていました。先程見せた通り、転生者である私の魔力に応じてあの魔法陣は発動します。そして、私はペログリファです。偶然にしては出来すぎると思いませんか?」
流石に皆馬鹿じゃないからその事実に気づく
「……ペログリファは転生者であると?」
今の所は私もそうだと思っている。この世界に来ることが出来るのはペログリファである者だけ。だから、リシスがもしかしたら前世の記憶を持っているかもしれない。それを確認したかったが、生憎起きていないらしい。
「ですので、リシスも私と同じ様にあの魔法陣を発動させることが出来るとお考えください」
ずっと喋っていて喉が渇いた。極秘会議なのでお茶を出す侍女もいない。まあ、無いものはしゃーない
「そして、私が先程発動に使った魔力量は米粒……」
この世界に米なんてなかったわ
「……ハルスの実の10分の1程。私の魔力総量の一万分の一程です」
これで便利と言った理由をお分かり頂けただろうか?
「……生成方法は知りませんが、ルーヘントはこのアタッシュケースを無尽蔵に手に入るわけではなく、制限がある。しかし、ペログリファである者の魔力を使うことで大量にあの魔法陣を発動できる……と。魔法陣の方は大量生産が可能な訳ですし」
「それに、魔力なら使い尽くしても2日あれば回復するしね」
ルイラインの言葉に付け足す。
さあ、もう本当に言えることは全部言った。後のことを考えるのは、貴方達で頑張って下さい。私は知らないんで
太郎がさっと立ち上がり、ルーシュ様に耳打ちをする。大きく頷くルーシュ様
「これより、ウェルリンテ=タルイテ及びリシス=スクルビアを『国家重要人物最高警護対象Lv.5』に指定する」
………何かよく分からんけど凄いのが出てきたな