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第十三話 私って転生者ですよ?①

「鎮圧完了との報告が入りました」


「……捕まえた数は?」


「112です。そしてその中にヤルデア公爵家当主のバルハンがいましたので、厳重に護送しております。」


「ご苦労様、何かあればまた報告を」


「はっ」


 遠距離での会話が可能な魔導具が切れる。ルイラインは1つの大きな溜息をつくとこちらに振り向いた。


「ヤルデア家は元々ルーヘントの暗部……つまりルイトにおける私の家(ガイルナ家)だと思われてきました。取り敢えず今からバルハンを使ってルーヘントの国王を引っ張り出します。話はそこからです。」


「ほんと、ギリギリだったわね」


 予想であるが、あと数日以内には戦争が始まれていたのではないかと思っている。


「そうですね……そこのところは本人に聞きましょう」



ーーーー

遡ること、ウェルリンテ達が研究施設からルイトに戻った時



「これがあの研究所に置かれていたものです」


 目の前の机に色々と物が置かれている。その中にはアタッシュケースと魔法陣の書かれた紙もあった。


「捕獲した研究員の口を割らせたところ、あちらではこの銀の箱とこの魔法陣を使って実験をしていたようです。そしてその実験というのは……こちらを見てもらったほうが早いです」


 そう言って机の上に置いていた記録用の水晶を起動させる。映し出された映像では、その紙に書かれた魔法陣の上にアタッシュケースを乗せる研究員とあたりには石で出来た物体がが映っている。次の瞬間、辺りにあったその物体は何かに切り取られたかのように消失する。


「……このように、空間ごと削り取る機能があるようです。そこで、その原理を聞こうと思っていたのですがいくら拷問しても吐かないので、おそらくあの施設は原理は聞かされず、軍事利用の為の実験場として使われていたのだと思われます」


 ここまで言うと、席に戻る。初めて見た人、国王のルーシュ様やら検証してもらう為に呼んだ魔術の専門家は驚きを隠せない様子で目を見開いて見ている。


 ルイラインが驚いていた人達の内、ある人の肩を叩く。すると、その人はハッと我に返った様子で立ち上がる。


「……取り乱してしまい申し訳ありません。私はルイト魔術第一専攻課所長ハーベスト=ギュリスチと申し上げます。」


 この人が前、ルイラインが「専門家に見てもらった」と言っていた人


「この度ルイライン様が持ち帰られた魔法陣を確認しましたが、以前持ち帰った物の魔力回路の循環が良くなった改良版ということが分かりました……肝心のその魔法陣の効果については分かっておりません。全ての魔法、固有魔法と照らし合わせましたが合致するものはありませんでした。ですので、いまだに分かっていないルーヘントの王族の固有魔法が関わっている可能性が非常に高いです。また、この銀色の箱についてですがこちらもあまり良く分かっておりません。ただ、特殊なことは確かで似たような材質、硬さ、重さ等色々な条件で確かめてみましたが、魔法が発動することはありませんでした。」


 大体聞いていたことと同じであった。というか、今発言してもいいのだろうか?皆押し黙ってしまい、言うタイミングを逃してしまった。


「……戦争が始まった際の勝算は?」


 ルーシュ様がルイラインのお父様に尋ねる。


「この魔法がどのくらい使われるかによります。ハーベストの話によりますと、魔法陣の方は大量生産が可能なようです。ですが、この銀の方はどうかわかりません……結論を申しますと、これ1つで中隊1つを崩壊させることが出来ます。研究施設にあった物だけでも10個以上あったので、実際に戦争に使われるのはその倍と思われます。ですので、勝算は低いかと」


 今度は重苦しい雰囲気が漂う。そりゃ、負けるって言われたらそうなるよ


「ああ、それとリシス嬢に関しては何故狙われたのか分かっておりません。捕まえた者達から聞いても皆一様にペログリファ(王の素質を持つ者)という言葉を言っていましたが、それが何かを聞くと具体的に分かっている人は誰もいませんでした。」


 ルイラインのお父様が付け足す。あ、ずっとルイラインのお父様って言っているのは本名を知らない……というか多すぎてどれが本名か分からないから


 ルイラインが救いを求めるような目でこちらを見てくる。この仮定を確かめる為に一度リシスに会いたかったのだが、全く起きる気配が無いらしいからしょうがない。


「……一つ推測がございます」


 ガイルナ家の関係者でもなく、魔法の研究員でもなく、おそらくこの場で最も場違いであると思われている人間。そもそも、緊急で集められたため私に気づいて無かった人もいるんじゃないだろうか?


「……続けてくれ」


 国王から許可が出たので大丈夫。出なくても喋ってたけど


「この魔法陣は異世界に関する物に対して反応し、あのような力が備わっていると思われます。」

 

 ここまで言って話すのを止める。この話は突拍子も無いことだから、ゆっくり話していかないと信じてもらえない。あと、私だったら信じない


 大方予想通り、ガイルナ家の人からは驚いた様子で見られ、研究員からはすっごい侮蔑を含んだ目で見てくる。いいよ、別に。こっちには決定的な証拠があるんだから


「何をバカなこ……」


「証拠は三つございます」


 研究員の一人が何か言おうとするのを遮って話す。取り敢えずそいつを睨んで黙らせておきながら、続きを言う


「まず、1つにこの銀色の箱、アタッシュケースと言うんですが……私がこの名前を知っている理由も後で話しますが、この存在をガイルナ家が把握していなかったことです」


 ここにいる人達は全員、ベジュンスナ=ガイルナ家と知っているので隠す必要は無い。


「もし、これをこの世界で作ろうと思えばそれなりの技術が必要ですし、作る過程なども記録するはずです。それなのに全く情報が出てこなかったのでしょう?」


 ルイラインのお父様……もう太郎でいい?太郎に視線を向ける。


「はい、我々はこれに関して何も存じておりませんでした。アタッシュケースという名前も初めて聞きました」


 さっきの研究員が凄く何かを言いたそうにこっちを見てくる。


「……お前が知っているじゃないか、って思いましたね?」


 驚いたような顔をしてこちらを向く。このまま私がこれについて何も言わなかったら、反論してきたのであろう。


「そう急かさなくても、後で知っている理由を言うって言いましたよね?ちょうど証拠の2つ目と被っているので言います」


 次に言うことは口に出すことなどないと思っていた。でも、しょうがない。絶対に最初は誰も信じないと思うけど、それでも今言わないともっと大変なことになる


「私は……異世界の記憶を持つ転生者です」


 さっき異世界に関する物に反応すると言った時は、驚きや侮蔑が向けられた。しかし、今は何も無い。黙って下を向いている者もいれば、虚空を見つめる者もいる。誰一人として感情を読み取れない。多分、全員自分以外が何を考えているか分からないだろうし、自分が何を考えているかも分かっていない。


「……証拠などは、ありますか?」


 ルイラインがこの空気を何とかしようと私に質問をする。


「まあ、一応。1つは私がそれの名前をアタッシュケースだと知っていたこと……です。異世界ではこれを書類やパソコン……簡単に言えばオルゴールの技術を1億倍ぐらいにした緻密なものを入れるための頑丈なカバンとして使われていました。」


 思わずいつもの調子で敬語で話すのを忘れそうになる。一応国王の前ではあるから使っておかないと


「そして、2つ目です。これに関しては、前提をたった今証明しているところなので何とも言えませんが……取り敢えず、見せておきます。ええと……こっちの机にその魔法陣を一枚置いてくれる?」


 数学の証明で言うところの、①という証明をするためにまず②を証明しなければならないのに、その②を証明する為に①を使う、という1番やってはいけないことなのだが、あくまで今回はこの可能性が高いよねっていうのを言いたいだけだから別に大丈夫(だと思うようにする)


置かれた紙の上に手をかざす。そして、一粒の砂をピンセットで取り除くような感覚で、極少量の魔力をその紙に垂らす。


 次の瞬間、その紙を中心に半径30cmくらいのがえぐれる。先程の映像と同じように、何かに切り取られたように


「異世界に関する物に反応するという推測が合っているのなら、私が転生者であるという証明になるのですが、そもそも異世界に関する物に反応するという推測を証明する為に転生者であるということがいるので、正確に言えば証明になっておりません。ただ、可能性として高まったと認識してください。」


 皆の反応を確認する為に顔を上げる。落ち着いた顔をしてはいるが、いまだに感情は読めない。


「では、最後の証拠です」

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