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今年中に完結します。
夕暮れに差し掛かりポツポツとかがり火が灯される。次々と燃え上がる炎が蔦がビル群を飲み込んだ巨大なホームツリーを照らしだした。幹の上では子供を抱えた女衆が石鉢で木の実を擦り、長い針で繊維を織っている。木の根元では男衆が巨大な焚き火を囲い吊るされた獲物を解体している。
男は眼下でまわる村の日常を眺め、ホームツリーの最も高くに作られた一室で空に奔る一条の光を見やった。それは数瞬前に突如として現れ眩い光と共に大地へと降り注ごうとしていたが男は特に動じることなくただ光を目で追っていた。
コンコンと木の扉を叩く音と共にひとりの少女が部屋の中に入ってくる。
「お父様。罠屋の平一さんが大鼬を捕まえたそうなので今日の晩御飯は豪勢になりそうですよ」
少女は村民に貰ったであろう果物を腕に抱え嬉しそうに微笑んだ。
「いい時に来たなうるはよ、あれを見るんだ」
男はうるはと呼んだ少女に空の光を目で示した。
「わー綺麗ですね。なんですか?あれは」
「さあ、分からん。長いこと生きてきたが私も見たことがない。ゆえにうるは、日が明けたらお前が見てきなさい。あれもそお遠くないところに落ちるだろう」
虚をつかれたように目を丸める少女。
「村の皆もあれに気づき始めたようだな。騒ぎが起こる前に安心させて来い、うるは」
うむを言わさず言い放つ男に少女は慌てて部屋から出ていった。
しばらくし、男は少女の置いていった果物を両手に取るとおもむろに齧り付いた。
「ほほう、邑台や。お主も娘に酷なことをするのう」
開け放し扉から目を細めた老人が顔を出した。
無言の男に対し老人は続ける。
「この村で唯一外を見たことがあるお主ならばあれが何か本当は分かってるのではないか?」
空を奔る光は刻一刻と大地へと近づき、眼下では先ほどの少女が人々を集め何かを話しているようだった。
「あの娘は優しすぎるからのう……ワッチョッ!?」
男の拳ほどもある柘榴の赤い果実が老人に投げつけられる。
「やれやれ、本当にお主は父親に似ているのお……」
足下からは喧騒が聞こえてくる。焚き火を囲う男衆は光のことは忘れたかのように飲んで食って騒ぎ、焚き火からから離れた木の根元では女衆が寄り掛かり少女を中心に話をしていた。
「皆をまとめる才はある……」
男が果実を食べ終えた時には老人の姿は消え失せ、床に転がる柘榴だけが残っていた。
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