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62話 「中将の決断」





私は、ヘラ嬢からまた、「頑張ってらっしゃい。きっと帰って来るのよ」と言われ、頭を撫でられた。今もまだその感触をセンサーでもう一度蘇らせられているような気分だ。でも、不可解だった。


私はメイドロボットだ。私にはあの少女の気持ちは解らない。ただ、何か気になる事があるのだ。それを考えようとすると、いつも私の脳内にはエラー音が響き、その後私は自分を取り戻す。彼女と居ると、何か大事な機能を失くしてしまうような気がする。きっと私が知りたがっている事は、私にとって危険なのだろう。





「逃げたオールドマンですが、シベリアにも、アメリカにも居ないようです。そちらはロペス中将から報告を受けました。つい先程です。居室の捜索をしても何の妨害もされず、人の居住空間に必要な物と、豪奢な調度品、白い壁以外は何も無かったとの事です。外からの監視も可能でステルス化は施されておず、よって、オールドマンが今後シベリアやアメリカに行く事は考えづらいです」


シルバはそこまでを淡々と喋りながら、ワールドマップの中からある検索を続けているらしかった。私は彼にそれを尋ねる。


「今君は何を」


「無駄だとは思いますが、この間スキャンした“エリック”の識別番号をワールドマップで探しています。衛星が12機ありますが、どれも反応しません。やはりエリックはまた識別番号を書き換えられたか、ステルス化の施された新たなオールドマンの居室に居るのかもしれません」


「どちらの方が可能性が高いんだ、シルバ」


ロペス中将がそう言うと、シルバは検索を諦め、1秒程停止した。そしてくるりと中将を振り返る。


「居ました。恐らくエリックです。ターカスも」


その場が湧き、私が叫ぶ。アルバとメルバも立ち上がった。


「どこに居たんだ!」


「ここです」


ターカスが叫んだのを最後に、辺りには煙幕があっという間に広がり、部屋は暗転した…





「全員居るか!?」


明るくなってから私は人員の確認をした。その場には、ロペス中将と、ターカス、そしてアルバにメルバ、私が居たはずだ。


「中将を攫われたわ!」


アルバはそう言い、破壊され尽くした右腕をこちらに向けた。恐らくその腕でロペス中将を守ろうとしていたのだろう。ターカスがすぐに駆け出そうとするのを私は止めた。


「君のスピードを今抜かれたんだ!君一人が行ってどうなる!」


ターカスは悔しそうにしたが、「ではどうします」と私に判断を委ねてくれた。


「軍のシステムを動かせるはずだ。それから、シルバ」


私がシルバを振り返ると、「やっています」とだけ彼は答えた。しかし私はあまりシルバの位置検索をアテに出来なかった。何せ、周囲5メートルはステルス化を施せるGR-800001と一緒なのだから。


「やはり駄目です。見つかりません」


「つまり、ターカスは全力を使って我々からなぜかロペス中将を奪っていった。目的は…」


「わかりません。ターカスが攫われていない方が不自然な位です」


「そうだな…」


「ヒト兵器を作る為なら、もっと効率的で危険の少ない集め方があるはずですし、エリックの考える事は僕には完全には見通せません」


「そうか…しかし、中将が攫われたからには、これは明確に誘拐事件だ。そして相手はテロリスト。世界連に協力を仰ごう」


「それがいいかと」





「ターカス君。君の物分りを少々良くして頂きたいのでね。ちょっと失礼するよ、中将殿」


私の目の前で、縛り付けられた中将の首に刃物が突きつけられ、そしてその皮膚から少しだけ血が出る。


「やめて下さい!」


同じく部屋の反対方向に縛り付けられた私がそう叫ぶと、オールドマンは不敵に笑ったまま、ナイフに力を込めた。でもそこで、白い壁に縛り付けられて固定されたロペス中将は、笑ったのだ。


「なあにターカス。俺は軍人だ。利用されるくらいならな…」


「中将!?」


彼は大きく口を開けると、それをガチリと閉じ、それからぐったりと息絶えた…。





つづく

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