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45話 「アメリカへ」





「お前さんらには何も知らせてないからな。初めから話そう」


そう言ってロペス中将は、威勢の良い身振り手振りをまじえながら、こんな話をしてくれた。


中将曰く、ターカスは軍での作戦行動中に敵軍の捕虜となった。でも、ターカスを奪い返しに敵軍司令部に攻め込んだ時にはターカスは居なかったのだと。中将がホワイトハウスに攻め入った時、初めてターカスが姿を現し、彼は自治区大統領に熱線を向けていたと。


私は、それらの話を、ターカスの身に起こった事として飲み込んでみたけど、やはり戦争とはあまりに日常を壊すのだと思わざるを得なかった。平然と話し終わったロペス中将がまるで悪人であるかのように見えた程だ。でも、私はすぐに気を取り直して、こう言った。



「つまり…ターカスはどこかへ消えた時があったという事でしょうか…?」


中将は細かく一つ頷く。


「そうだ。そして、その時に敵軍からもう一人人員が消えていたと、ターカス奪還に向かった班からの報告があった。その事は記録に残ってる」


私は、そんな話を聴いて良かったのかと危ぶんだが、中将が話しているのだから大丈夫だろうと思っていた。


「そのロボットの名前は“エリック”。型番は知らない。ただ、敵軍のロボットから聞き出したらしい」


「えっ…エリックですって!?」


中将はまだ驚いてはいなかった。ありふれた名前だからだろう。


「なんだ、知ってんのか?そんなはずねえよな?アメリカ自治区軍だぞ?」


私は「まさかそんなはずがない」と思いながらも、ターカスのこれまでの話をしようとして、少し身を乗り出した。


「実は、中将…私達も、まだ話していない事があります」



“ターカスは恐らく自由意志を持つべきロボットであろう”


“亡くなったヘラお嬢様の弟の代わりにするつもりでプログラミングされたロボットだ”


“ごく最近、“エリック”というロボットに連れ去られてテロリズムに巻き込まれ掛けた”


私は、以上の事をロペス中将に話した。中将はとても驚いていたが、納得出来なくはないようだった。



「はあ…まさか、そんな事情の深いロボットを借りたなんて思ってなかったぜ」


「す、すみません…」


訳も分からず、私は謝った。でも、彼はこちらの話に大いに関心を示したようで、自分の膝に寄りかかって、こちらへ近づいた。


「そいじゃ、“エリック”の型番は分かるか?以前の居住地や、スタイル、設計図なんかは?」


あまり期待をしていなかったのか、私が次にこう言っても、中将は落胆もしていなかった。


「さあ…それは、ターカスを捜索してくれていた、捜査員の方しか、ご存知でないと思います…」


「そうか。捜査員の名前は憶えているかな?」


「え、ええ。ジャック・アームストロング氏、アルバさん、メルバさん、シルバさん、銭形氏だったと、記憶しています」


私がそう言うと、ロペス中将は突然額を片手で押さえた。なので私はこう聞く。


「どうしたのですか?中将」


極まり悪そうに話したがらなかったが、中将は私から目を逸らすためのように俯き、こう言った。


「銭形は、ターカスの仲間達が破壊した。アメリカ自治区軍に徴兵されていたよ。アメリカ自治区出身だからな…」


「そうだったのですか…」



その後、中将は「俺が責任を持って調べて、また連絡する」と言ってくれて、ホーミュリア家を去った。私はターカスにどんな気分かと聞いたけど、「別段、何もありません」と言われただけだった。





“これだ”


ホーミュリア家に赴いて得た情報に、俺の頭に引っかかっていた心地悪さが、答えを得たように思った。要は、“カン”ってやつだ。そんなのはジンクスだとみんな信じないが、この世を全て科学で説明出来るなんて思ってる訳でもねえ癖に、何を抜かしやがる。


と、言う訳で、捜査員を全員集めた訳だが…


「ねえ!ちょっとメルバ!何するのよ!」


「うるっさいなー、さっきから。ちょっとエネルギー借りてるだけだろ。俺はさっきまで出先だったんだよ」


「携帯用のチャージャーを使いなさいよ!」


「わざわざそんな物持ち歩かねえよ!たった3地区先だぞ!?」


「ふ、二人とも、少し静かにした方が…」


二人の子供ロボットが言い争っていて、後の一人は止めたそうにしているのに、なんの役にも立っていない。俺はそんなのに付き合うのが面倒だったので、黙って“アームストロング”を待っていた。そこへ、子供ロボットがやっと俺に構う。


「ねえ、ところでロペスさん、今日は何の用なの?」


思わず俺は子供ロボットを睨んだ。


「あ?」


少したじろいだように見えたが、アルバは臆せず俺に話し掛け続ける。


「だから、何の用?私はアームストロングさんに呼ばれただけよ。あなたもそうなの?」


ポリスを代表する武力の高いロボットである“アルバ”、“メルバ”などは、国の共有財産かのように扱われている。だから俺達は何度か会った事もあったし、こいつらは鼻っ柱が強くて癇に障るんだ。


俺は、だーっと大きく溜息を吐き、そいつらにこう言ってやった。


「俺がアームストロングと君らを呼んだんだ。“ターカス”について、君達に二、三、質問をさせてもらう」


「えっ?ターカスって…」


驚いているアルバを放っておいて俺は端末を取り出し、レックのメニューで録音を始める。


俺達は互いに、まず自分の名前をレックに吹き込んだ。それから話が始まる。俺は、“ターカス”と“エリック”が、アメリカ自治区軍でどんな動きをしたのかについて話した。子供達はみな、驚き、意外だったようで、頬を引きつらせていた。


「エリックの情報をお伝えすればよいのでしょうか」


そう言ったシルバは、仮想ウィンドウを片目の前に映し出し、手元に出現させたキーボードに、パスコードを手入力していた。俺はこう言う。


「そうだ。一緒に司令部を出たかは判然としないが、元から繋がりがあるなら、何らか、二人が何かを示し合わせた可能性は高い。それについての情報を知りたいんだ」


すると、シルバは一度息を吐く。眠らせていたシステムの起ち上げだろう。


「承知しました。それでは、まず、“エリック”の正式名称です。「Ψ-AH56602」。こちらが設計図。彼は全く一般的なメイドロボットです。だから僕達は驚いたのです」


そう言ってシルバがこちらに見せたのは、確かに何の変哲もない、ヒューマノイドタイプの設計図だった。


「どういう事だ…?」


「これは僕も疑問でした。エリックは、戦術ロボットのターカスを連れ去る事など出来ないはずだった。その謎の究明を待たずして開戦となったので、訳は分かりませんでした。今、それを明らかにするべきかもしれません。あるいはエリックは、軍事的改造を施されたのかもしれないと、僕は思っていたのです」


「一般のヒューマノイドロボットに誰がそんな事を?」


そう言って凄むような目を作ってみても、シルバは薄く唇だけで微笑む。


「それをお調べするのが、貴方の仕事かと思います」


「参ったな…」





俺はその晩、アメリカ自治軍を監視させている子飼いへと通信をしていた。向こうさんが気付かない内に終わらせるため、いつも2分に限っていた。


“アメリカ自治区軍所属、“Ψ-AH56602”について、情報求む”


すると、こう答えがあった。


「その者、12月23日、合衆自治区軍、退役」


俺は、その次の休暇を利用し、アメリカに飛んだ。





つづく

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