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40話 「再会」





私はまた、目隠しをされた状態で目を覚ました。今度も私の足は取り去られ、挙句には、両腕もだった。


もちろん私は、“自分は敵軍の捕虜になったのだ”とすぐに理解した。でも、まだ私にはメキシコ自治区民としての意識があり、ロペス中将の命令を憶えている。それはおかしな話だ。


兵器ロボットを捕虜として捕まえたなら、目覚める前に命令を書き換え、自軍の戦力とするだろう。


“もしかして、私にはそれも出来ないのだろうか?”


自分の特異な点についてを思い出して首を動かした時、傍でこんな声がした。


「おはようターカス。3時間ぶりだな」


それは、やや低いが快活な響きで、戦士たる一面を見せる、銭形氏の声だった。


私は、戦争という物が何を変えてしまうのかを段々と飲み込み始めていて、彼の声をそこで聴くのが意外だとはあまり思わなかった。


「銭形さん、ですか」


そう聞くと、「そうだ」と返事があった。でも、私達の立場はすっかり置き換わっていたので、その先のお喋りなど出来ないというのは分かっていたつもりだ。


小さく溜息を吐くのが聴こえ、私が確かめると、その場には2体のエネルギー体があると分かった。一つは銭形氏、もう一つは、誰かは分からないが、彼もロボットだった。しかし、そのロボットには妙な点が多かった。エネルギー供給は足からされ、腹部には大きな爆発燃焼室があるようだ。おかしな構造だった。


私がもう一体のロボットの様子を探っている合間に、銭形氏が喋るのが聴こえる。


「君には困った。君は、人からの命令を、全く自らの意思で選択するらしいな。今までメイドロボットとしてどう働いていたんだ?こちらで命令を書き換えようとしたが、君にはそのためのスペースさえなかった」


「そう、なのですか…」


私は、初めて聞かされた事に驚いていたが、“だとするなら、なぜ自分は破壊し尽くされていないのだろう”と不思議にも思った。とはいえ、この状態では、私は兵器として働く事は出来ない。それなら、合衆自治区軍にとっては、満足なのだろうか。


「そこで、だ」


急に目隠しが外され、アームスーツに身を包んだ銭形氏が現れる。すると、その後ろには驚くべき人物が立っていた。


「エリック!何をしているのです!」


私は思わず叫んでしまった。そうだ。あのエリックが、修復され、生まれ変わって私の前に立っていた。でも、彼は私を見ても黙っている。それに、ここは合衆自治区の軍内部のはずだ。彼がそんな場所に居るなんて、考えつきもしなかった。彼は私が全壊にしたはずだからだ。


私の様子を少し笑って、銭形氏がエリックを振り返る。


「彼には少し情報をもらって、こちらについてもらった。そうすれば我々にとって有益だ」


“卑怯にも!”


エリックには、抵抗が出来なかっただろう。彼は意思もなく裏路地に打ち捨てられていた。修復の合間にプログラムを書き換えれば、確かに合衆自治区の兵器ロボットに出来る。でも、そんな卑怯な手段が許されるのだろうか。


“いいや、私だって、自分の力を人々に向け、殺そうとした…”


もはや誰に文句を言えばいいのか、私には分からなかった。その間に、銭形氏はこう続ける。


「彼なら君について詳しいと思って、連れてきたんだ。これから彼に、君のシステムを書き換える事が可能か、調べてもらう。後から工学者も来る。よろしく頼むぞ、ターカス。私はこれから、メキシコへ飛ぶ」


私はそれを聴き、動かない体で叫んだ。


「待って下さい銭形さん!それはやめて下さい!」


“あなたが行けば、メキシコは終わりだ!”


私はそう言ったのに、銭形氏は高らかな笑い声を残し、廊下へと出て行った。


部屋の中には、黙ったままのエリックと私が残された。私はエリックを見詰めたが、彼はつまらなそうに俯いているだけに見えた。


“ああ、すべて忘れているのか…”


私は、かつての友と思っていたエリックを悲しい気持ちで見ていた。だが、彼はあるところですっと顎を上げてこちらを見下ろすと、にやにやっと笑った。


「よう。ヘマしたな?」


私は、エリックの様子があまり前と変わらない事に驚いたが、彼の記憶はすべて書き換えられていると思っていた。だから、彼が私の拘束バンドを解いているのを見ても、“これから解体され、私は研究されるのだろう”としか思っていなかった。でも彼はそのまま部屋を出て行き、すぐに戻ってきた時には、私の両腕両脚を持っていた。


「エリック!?」


私は驚き、そして喜んだ。


“私の腕と脚が揃えば、私は自由になれる。そうしようとするエリックには彼の意志が残っていて、軍に屈服などしていなかったんだろう!”


「大声出すんじゃねえよ、見つかるだろ。とは言ってもな、俺がお前の腕と脚を持ち出したのはすぐにバレる。早く抜け出すぞ」


「ええ!ええ!」


私は、エリックに早く話を聴きたくて、うきうきとした気持ちで二人で廊下へ出ようとした。エリックが本当は何者となっているのかも知らずに。





つづく

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