03
父が始まったばかりなのに笑顔で娘を抱き上げてスタスタと帰ることを選んだ。
「公爵!?」
「娘が体調不良のため帰ります。」
「ですが、陛下が…」
「どうせまた明日には城で顔を合わせるのだから問題ないでしょう。」
本当に父はスタスタと帰ることを選ぶのが強いと感じた。
「シュヴァリエ公爵、娘を抱えて何処に行く?」
パーシヴァルは足を止めて振り返ると国王が興味深そうな目で腕の中にいる娘に視線を向けている。
「娘の体調が思わしくないので帰るだけですが。今日の子供たちは賑やかな様で静かな環境を好む娘には合わないようですから。」
遠回しに子供がうるさい。どこの子供か知らないが。と、態とらしく言い放ってスタスタと帰ることを選んだ。
馬車に乗ると父は頭を撫でてきた。前髪も上げてもらう。モチモチとつつかれたり両手でふわりと顔を包まれる。
「良かったのですか??」
「子供のお披露目なんて学園で済むし正式なデビュタントは卒業式からの舞踏会だから。」
「そうなのですか???」
「問題ないよ。」
予定より早く帰って使用人を驚かせつつ剣等の訓練になっしまったので少し泣きたくなった。
騎士らしい戦い方だけなら頑張るけれど、父と手合せとなると生き残ることを1番に考えて騎士らしい戦い方何それ。と、いう戦い方で模擬戦をする。ひどい。体が傷だらけになってもひどいものは治して貰える。一応パーシヴァルを父と呼ぶことには抵抗が無くなったし、私は私には変わりない。魔女として何かしたいわけでもない。
兄達がたまに帰ってきてのんびりするけれど父から問答無用の稽古が待っている。
「ヴェロニカ、父上からの稽古は大変??」
「…父上からいじめられてる??」
デオンは所謂官僚よりの騎士、リオンは騎士という進路を決めていた。本人が向いている方向に進んだ。身体を動かしているとリオンが父の代わりに見てくれる。
「いじめられていないのですが、とにかく生き残るためになりふり構わない戦い方が大変ですが、頑張っていますよ。」
それから私は家で勉強ではなく遠方地に父が騎士団で出かける場合、私も連れて行くというとんでもないことが起きていた。ヴェロニカは怒られないのだろうか。と、思っていたが父は勉強だと言い切って馬車での移動を含め騎士扱いを受けることになる。
騎士ではないのけれどそういう扱いで自分のことは自分でできるように。獣の解体やら色々と教えられて貴族の御令嬢のすることではないと思う。気にしないけれど。
体力的についていけなくなると、父が責任を持って同じ部屋で色々気を使ってくれながらも叩き込まれた。社交会に全く顔を出さず、家にいるか、騎士団と稽古をする。華奢ではないし、しっかりと鍛えてきた。
社交ないけれど、どうしたものだろうか。と、思っていたが、兄達は気にしなくていいよ。と言っていた。兄達は騎士として、官僚として、後継として実務を勉強中。領地に行ったり城に行ったりと実践経験程勝るものは無いと。
そんな武芸と参謀の実戦経験しかない私は兄達とは違った方向に成長している。父には劣るが兄達より剣の腕は立つ。白金の髪だと悪目立ちするから認識阻害をかけた眼鏡をかけるようになった。眼鏡が外れたら自動で同様の姿を隠す認識阻害が一定の時間かかるように魔法が発動する。
「ヴェロニカは逞しくなったよね。」
「逞しくないですよ?図太くなりましたけど。」
兄達が部屋に来て両脇に座り妹が可愛いと髪を撫でる。部屋着でキャミソールを着ているだけで下着も丸見えではあるが…気にしない。眼鏡を外されて認識阻害も全て解除する。兄たちにもちもちと触られることは意外と好きだ。腕の中がとても安心するのは赤子の時からずっと世話をしていたからなのだろう。
「ヴェロニカ、暫くはこっち?」
「お父様がこちらに残られるならそうなります。」
「…妹が可愛すぎる・・・」
何を突然言い出した。言葉を覚え始めた時に?というより喋るように舌が動くことで1番練習したのはこの家族の呼び方。今は慣れたけれど…年下のヒヨコを父や兄と呼べるのかと思ったけれど、意外と行けた。
「家を継ぐのはヴェロニカだし、騎士になるか、領官するか…」
「え?お兄様のどちらかでは無いのですか??」
「ウチは女系だから爵位を次ぐのはヴェロニカ。と、その結婚相手。シュヴァリエの家の最初の当主は隣国の聖女様の弟だったとかで、姉が王女であり、聖女だから女系にするって決めたとか。嘘かホントか分からないけどね。」
隣国の聖女…その言葉が引っかかった。魔女の記憶もある。魔女ディアナリリス。その記憶はある。暴虐を尽くしおとぎ話で悪い事をしたとぼかすことしか出来ないほどに色々やらかした。