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父に報告が行ったのか父の方から私の部屋に来た。
「ヴェロニカ、犬猫以外を拾ったと聞いたが?」
「そうですね。散歩に出たところ踏んでしまったので治療も兼ねて。魔力は多いようだったので新しい事業を始めるので雇われ店長をさせようかなと思っていたところです。ただ気になる所があったのでお父様の意見も聞いた方が良いかなと。」
まだ拾って洗って怪我の治療と食事の提供と言う必要最低限しかしていない。必要最低限だけなのでまだどうとでも出来る。
特殊な彫り物が背中に施されていることで確信はあるけれど、断定したわけでもない。父は報告書に目を通して黙ってむにー。っと、娘の頬を引っ張る。
「いひゃいです。」
「話せるようになっているのか?」
父がメイドに聞くと食事をスープだけではあるが食べるようになった。と、報告する。本当に死ぬ手前だったようだ。担いだ騎士達が長くないかもな。
漏らしていたので私は命の恩人だ。恩を売れるなら高値で売りつけよう。
「なってるそうです。お父様は何方かご存知ですか?」
「まぁ、全て知っている訳では無いけれど……デオンとリオンに連絡しておけば久しぶりに帰ってくるだろう。」
「????わかりました。」
目を覚ました青年は視界に入ったのが父に驚いたのか、仮面を付けた娘に驚いたのか目を見開いていた。
「……あぁ、本人だな。ミハイル・アベイル…アレの1人目だ。」
「えと、王様が視察してお忍びで花街に遊びに行ってお持ち帰りしちゃった人の子供…」
「そういう事だ。後ろ盾が弱い、母親も権力闘争に敗れていない。色もないから後ろ盾になると囁いていた貴族にも切られたのだろう。」
父は彼の髪を撫でる。言葉も発することもなく泣き出してしまった。まぁ、死にかけていたわけだから泣きたくもなる……???という解釈であってるのかな??お父様はため息混じりにタオルを顔に押し当てていた。
「珍しくお父様が優しい……」
「…アベイルの中では希少種だからな。」
人格的に希少種ということなのだろう。いつも警備で王族に振り回されているらしいし。兄と年代が近いのだろうか。
「公爵…すみません。」
「礼なら娘に言うことですね。たまたまボロ雑巾を踏んだら貴方で魔力があるからと拾っただけですから。回復してからまた来ます。死にかけている人間に用はありません。死にたくなったなら何時でもお好みの毒を渡しますので。」
部屋から出るように父に促された。
「平民に落ちたのであれば雑にされるかと思いました。」
「中でそれなりの距離でアベイルを見ているとアレが1番マシだからな。」
猿しか残ってない。そんなふうに聞こえた気がする。父の部屋まで来てしまった。人払いもして2人と人造人間達だけになった。
椅子に座るように促されて言われるがままに座る。お茶などは自然と用意されるし、何も問題ない。
そして目の前に資料が置かれた。
「金の猿が産まれてから出された王族の経歴を私なりにまとめたものだから写本させなさい。」
「ありがとうございます?どうしてこんな出された王族の記録を?」
「ポンコツだった時の保険だな。死にたいと言うなら殺して構わない。」
「あ、はい……お父様、公爵としての判断をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「資料を読んでからもう一度来なさい。私が公爵をしているのはヴェロニカが成人するまでだ。」
父は決定事項のように断言した。
「ヴェロニカには早く爵位を継いでもらう必要がある。」
「……分かりました。流石に補佐とか付けないとか、ないですよね?」
「爵位を継ぐだけなら簡単だが、ラファエル以外にも領官を増やそう。私も隠居して娘の補佐が出来る。」
父が補佐をするのか。ヴェロニカはお茶を飲んでそれなら出来るのか???と、首を傾げた。
「お父様は今の仕事を辞めるつもりですか?」
「王宮内の情報を集めるためにそれは出来ない。辞める時は引越しする時だよ。」
パーシヴァルは娘の隣に座り顔を撫でる。そう言えば父は指輪をしていない。魔石の指輪がないということは礎に捧げたのだろう。婿入りしてきた配偶者はつけていない人ばかりだ。
「お父様……そうならないように致します。私だけでどうにかなるとは思えませんが……」
「全てできるとな思ってない。出来ないことを悟らせず人を動かす。全て1人でしろと言うつもりは無い。」
だけど、数打って生まれて捨ててるというのが生産性がない。残しておくのではなく放逐。自分の爵位よりこの捨てられた王族達の父なりの評価と追跡調査が書かれていた。
「姫様、レターセットをお持ちしました。」
「ありがとう。検閲されると思う?」
「素直に会いたいです。と、だけで効果があるかと思います。顔色があまり宜しくないですよ、姫様。」
「……兄達に速達で。」
会いたいと一言だけ。兄たちにはこれで十分だ。
それよりも……これ覚えないといけないのか。