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試作品を既に作っていたのか半年で教育済を持って来た。造形が整っていて人形のような成人男性と女性だ。寿命は魔力次第。心臓の代わりをする魔石に主が魔力供給し続ける限り動く。細かい設定とかもあるらしいが魔石の指輪ではなく直接魔力ではなく契約紋を結ぶ。これは魔獣や魔物を従える方法にに近い。実際に人的に作り出した獣なのだから間違っていないだろう。ヴェロニカはそう思いながら私用に用意された一対の人造人間を見る。美男美女だ。双子のように造形されているようだ。
「何故男女対なのですか?」
「何分試作のため要望を叶えるために男女で製造いたしました。公爵の要望は文官としての能力と執事としての庶務をフォローする能力。公女様へは護衛騎士と専属側仕えでありながら戦闘能力を
兼ね備えると機能が異なっております。」
「そうなのですね。個体名は……エメルとアンジュですね。」
鮮やかな赤い髪、琥珀色の瞳。気が強そうな色合いではあるけれど表情としては穏やかな感じだ。契約紋を施す。共に髪が長い。個人的には短くスッキリさせておきたい。メイドたちに作られた側近たちを紹介しておく。衣装は暗い緑を基調としたもので使用人たちもこれが魔術師と錬金術師の合作の人間なのか。と思いながら身だしなみを整えていく。
「扱いは通常のメイドなどと同様にするように。寧ろ私に全て報告するように命じたのでいじめてはダメよ。」
冗談を交えながら髪を整えられている彼らを見ながら釘をさしておく。一流の使用人たちなので問題ないのだろう。身だしなみを整えられて仮面をつけたまま人造人間を見上げる。
「基礎知識はあるのですよね?」
「はい姫様。」
「なんなりと命じてください。」
「わかりました。ですがとりあえずは習った通りではなく、メイドたちに従って習ってください。細かいことはラファエルに聞いてください。交友関係や情報を確認して頂戴。」
使ってみた結果だが、人の生活リズムは習っていなかったのか休む時には休むように。と、細かい人としての生活が身についていなかった。一般常識というものは少しずつ覚えて行くようなもので書面では載っていないのでメイドや執事、騎士たちがこうしておけば問題ないと教えていた。父が従えている人造人間は書類整理を執事たちと一緒にし始めており執事が優秀な補佐ができたと嬉しそうに広い屋敷を管理していた。
「お父様が中々帰ってこなくて不安?」
父の専属なので主人がいなくてしょんぼりしているように見えるので声をかけてしまった。
「姫様、失礼いたしました」
「お父様帰ってこないものね。忙しい時期だから帰ってくるのも遅いものね。」
「不要なのでしょうか。」
「必要だから作るように命じていたのだけれども?試験的とは言っていたけれど、邸の管理とか色々担ってくれているからお父様の睡眠時間は確実に増えているのでは?」
お父様が遅く帰って来ても整然と書類を並べられている。処理すべきことがわかっている状態はありがたいと思っていると思う。メイドたちが助かっているとかお父様がすぐに休んでいるのだから側において助かっているだろう。ただ、父がいないから実際に助かっている、または役に立っている感覚がない。元から家にいる人間からしたら明かりが早く消えている。顔色が良い。など色々改善しているのでありがたいと思っているがわからないだろう。
私が家にいて同期とも言える人造人間は主人にべったりできるから感じ方も違うのだろう。父に手紙ではあるが書いておく。必要とされているのか、役に立っているのか自信がないようだから父からも顔を見て感謝とかお礼とかこまめに声をかけてあげてほしい。睡眠時間増えているのでは?と、メモに近いけれどそれを渡すように命じた。出来立てほやほやの雛なのだし。私はいつも通りに仮面をつけたまま家のことを勉強したりしながら過ごす。
娘からの指摘に効果があったのか彼らがしょんぼりすることなく仕事をしていた。主人の顔をあまり見れない彼らも可哀想なのだろうか。これでの生活に慣れているし、どこで盗み見されているかわからない。そういう警戒心から外さないだけなのだが。
「姫様、蒸れないのですか?」
「認識阻害とかを織り交ぜた魔道具だから蒸れないよ。視界が狭いから見にくいけれど。お茶は飲めるけれど食事があるお茶会には参加するつもりはないから。食堂で外しているでしょう。」
自室でカーテンを閉めてから仮面を外す。家の管理だけでは大変なのに人造人間たちの寮も離れに作っている。使用人たちの寮と異なるのはメンテナンスが必要なこともあるだろうしそれは錬金術師と魔導士がすべきことなので建物を変えているが、設備は基本同じだ。戦闘で腕がもげても新しく腕だけ作ってつけるなんてことができるのは既製品だから。頭、顔の予備はないが、手足のストックがあるし、必要であれば修理可能らしい。非人道的なのか、人道的なのかだと、前者なのは間違いない。