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死神と姫  作者: 御子柴 奉リ
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従魔術の姫


通り過ぎた風に

木々が葉っぱを揺らす。


流れる雲。


鳥のさえずり

道行く人々の何気ない会話


そんなあまりにもありふれた日常の中で

何度目かなど気にもした事もない

いつも通りの登校。


制服に身を包んだ彼女は歩いていた。


肩にかかる程度に切り揃えられた栗色の髪

綺麗な二重瞼にくりっとした大きな目

その整った顔立ちは、誰が見ても可愛らしいと印象を受けるだろう。


彼女の名前は詩月叶芽(しづきかなめ)

王都白桃魔術学院の一期生である。


「おはよー!かなちゃん!」


「あっ!おはよ!りこぽん!」


腰辺りまで伸ばした綺麗な白髪を靡かせ

元気に駆け寄ってきたクラスメイト

絹星璃子(きぬぼしりこ)と挨拶を交わし

一緒に校門をくぐる。


ここ、王都白桃魔術学院は

ルポルト王国でも有数の魔術学校であり。

その中でも、世に名を残す偉大な魔女を数々輩出してきた

名門校である。


元々は貴族の通うイメージが強かった魔術学校だが

新しい国王の意向により、身分制度は廃止され

実力や特殊能力など、魔法に特化した様々な種族がこの学園に身をおいている。


「〜であるからして、かつては地球と呼ばれたこの星は、魔力の発見や魔法、魔術の発現により環境問題は大きく改善され、今のナフカと名称も変わり、今日まで素晴らしい発展を遂げたと言われておる。えー、ここまでがテスト範囲になるからして、よーく覚えておくように!」


歴史担当、足利薫(あしかがかおる)

生徒から上様と呼ばれているこの教諭の授業は

セイレーンの歌声と揶揄されているが

内容が内容なだけに、仕方がないのかもしれない。

すでに叶芽の隣で璃子は静かに寝息を立てている。


「・・りこぽんっ!りこぽんっ!上様にまた怒られるよ!」


璃子からの返答は当然ない


「・・次に、種族について!教本28ページ!」


歴史の授業は続く


内容はこの星ナフカについてだ

かつて環境汚染が深刻だったこの星は約600年前

地球と呼ばれていた。


今のように魔法を使わず

化学の力で発展を遂げたとされている。


しかしその力の代償はあまりに大きく

この星は消滅の危機に瀕していた。


魔力が発見され環境問題が大きく改善され

今の自然豊かな星、ナフカへと生まれ変わったとされているが、その多くは謎に包まれたままであり

今でも学者達を悩ませているのだとか


その進化の過程で人類も多数の種族へと変化した。


今、教卓に立つ足利薫も叶芽と異なる種族だという事は

姿を見ればひと目でわかるだろう。


深い緑色の肌は硬そうな鱗で覆われ

大きな口からは鋭そうな牙が見えている

薫の種族はバスティスのリザードマン。


ノゥヴァンのヒトである叶芽とは種族が異なるのである。


種族は大きく分けて三つ


かつての人類に限りなく近いと言われる種族

ノゥヴァン


魚類や爬虫類の性質が色濃く出た種族

バスティス


獣や鳥など、かつて獣人と呼ばれてきた種族

イースラー


この三大種族の中でも細かく派生し名称も異なる。

例えるならば、バスティスのフィッシュマンやリザードマン、フロッグマンなど、それぞれ見た目も特性も違うと言う訳だ。


叶芽は隣で寝息を立てている璃子へ視線を移す。

机に突っ伏した璃子の頭には髪と同じく真っ白な二つの耳が生えている。


フワフワで柔らかそうな尻尾が

彼女の寝息と同じリズムでゆらゆらと左右に揺れ

叶芽は触れたい衝動をグッと堪えた。


入学式の自己紹介で話していた通り

彼女はイースラーの狸人属(りじんぞく)


所謂タヌキの耳と尻尾を持ったケモ耳少女と言う訳だ

可愛いものに目が無い叶芽が息を荒げてしまうのは仕方のない事だろう。


このようにクラスを見渡しても

たくさんの種族が見て取れる。

この世界にはたくさんの種族が共存していると言う訳だ。


「〜このように全ては現ルポルト国王、ロト・ハイル・ルポルト様の王政により自由で幸福な毎日が現在に至るまで・・っと時間だな・・それではしっかり覚えておくように!」


終鈴と共に薫が教材をまとめて立ち上がる。


クラスメイトが一斉に立ち上がったことに驚いたのか

璃子の尻尾がピンッと跳ね上がった。

そんな璃子を見て叶芽の頬は綻ぶ


長く感じた歴史の授業も終わり

少し照れた様子の璃子が声をかけてきた。


「もーっ、かなちゃん起こしてよーっ」


「何言ってるの!りこぽん、何度も起こしたけど起きなかったんだから!」


「えっ、そうなの?ゴメンゴメン!でも上様に見つかんなくてよかったー!」


少し口を尖らせた表情の璃子を見て

叶芽は笑う


「もー、そーゆー問題じゃないでしょー!今日の授業テストに出るって言ってたよー!」


「えーーっ!?かなちゃんノート見せてーーっ!」


「しょうがないなぁーりこぽんはー」


仲良く談笑している二人に数人のクラスメイトが声をかける。


「かなー!りこー!お昼いくよー!」


「「はーーい!」」


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