表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Palette Ballad  作者: Aoy
第1章 盤上に踊るは白と黒
41/79

40. 戦う前の余興

「会いたかったぞ、坊主!」


 霧から現れた巨体、それはスピードを落とすことなく、リグレットへと衝突した。

 それは剣でも何でもない、己の身体という純粋な力。


「……こっちは願い下げだ」


 その突進を受け流さず、真っ向から手で受け止めてみせるリグレットを見て、グリーフはニヤリと笑う。


「この数日で強くなったな、坊主」

「それはどうも」


 普通、敵が強くなったのなら少しは残念がるだろうに、むしろ血を滾らせて喜ぶのがこの男――グリーフだ。

 受け止めたとはいえ、相手のように言葉を交わす余裕はない……適当な返事をして新たな剣である『無銘の神剣(ノル・クラレンツ)』の術式を起動する。


「おお! 新しい剣とは、気合いが入ってるな坊主」

「……あんたが折ったんだけどな」

「だがなぁ……坊主。剣以外にも余計なの者を連れ込んで……」


 その剣を見ても、グリーフは軽快だった。リグレットの話すら聞いていない余裕を見せつける。……が、その表情はリグレットの隣に佇むティアを見て、がらりと変わる。


「……私、ですか?」

「おいおい――この後に及んで他国の姫の真似事はやめな。アンタのやり方を知ってる俺に、通じんぜそれは」


 あくまでもエルメルアを演じるティアを、グリーフは軽く睨む。それだけでも並の人間は驚いて戦意を無くすだろうというのに、睨まれたティアは動じることはない。むしろ、ふふっと笑って見せたのだ。


「やはり貴方には通じませんか。流石、といったところですね」

「……どういう風の吹き回しだ? 少なくともアンタが、人間に手を貸す時はなんか裏がある時だ」

「気まぐれですよ、気まぐれ。というか、貴方からそんな評価をされているのが心外ですね。別に精霊は誰であれ手を貸しますよ。変にプライドの高い龍や悪魔と違って」


 リグレットがティアにした問いをグリーフも同じように問う。しかしティアの答えは変わらず「気まぐれ」と答えるだけ。


「態度からして、戦う気はないのはわかるんだがな」

「あくまで、今の主役は貴方達ですからね」

「……相変わらず何考えてんのか、さっぱりだな」


 本心を探ろうとする言葉を上手くはぐらかしていくティアに、グリーフは大きな溜息をつく。


「……大した理由はありません。貴方達2人……私の教え子達が戦うのです。眺めたくもなるでしょう?」

「どうにもそれだけには思えねぇが……まぁいいさ。お望み通り見せてやるよ、周りも始まった頃合いだしな」


 にこにこと笑うティアから、視線をリグレットへと移し背負われた大剣を構えるグリーフ。

 その姿を確認して、改めて構えを取るリグレット。


 四方からは剣が交わる音、そして風の爆発音……ロミとセアリアスが戦いを始めたのだろう。霧で見えないが、セレー二の慌てふためくような声も微かに聞こえる気がする。


 そして、それがシンクロするように一瞬……音が止まる。


 それが合図だった。


「行くぞ坊主!!」

「…………ッ!!」


 周りに遅れてはいる。しかしどこよりも激しい戦い。

 黒き獅子と白の狼……その両者が、互いの牙を再びぶつける。己が強さを示すために――。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ