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旧 ペットショップを異世界にて  作者: すかいふぁーむ
3章幕間

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冒険者の仕事

 ミーナが俺にやらせようとした使いっ走りだが、あれに関してはたしかに困る部分が出てくるだろうなと思ってはいた。

 なんせこの世界は情報伝達速度が遅い。

 突然、帝国側の研究者や軍が皇国領土に入り込んでいるというのは、それだけで戦争の火種になる話だ。一刻も早く事情を説明する必要があるのは間違いないだろう。


「あ、アツシさん!」

「久しぶり?でもないか」


 いつも通りの笑顔で、リリアさんがギルドへ迎え入れてくれた。


「久しぶりですよ!こんな大変なときに何してたんですか!」


 後ろでは他の職員たちがバタバタと走り回っている。

 やることは山積みだろうな……。


「なんも聞いてないのか?」

「何をですか?」


 俺、今回に関しては結構頑張ったと思っていたんだが……。

 この距離でこれなら、皇国側へ真相が届けられるのはいつになるのかという話である。


「まあいいか……。オルドル家のこととか、どうなったんだ?」

「あ、それは知ってたんですね!そう!それです!皇女様直々にこちらにいらっしゃって、ギルド職員全員にお怒りになられてました……。ものすごくこわかったんですよっ!」

「そんなこと言われてもな……」


 まあギルドからすれば国の要請で依頼を出しただけだしな。悪いのはオルドルだけ、むしろオルドルですら国の指示ありきで動いただけなのに気づいたら皇女への攻撃を行っていたという流れ ……そう思うと可哀想だな。

 まあうちの奴らに手を出したのはあいつの判断だ。それに関しては同情の余地はないが。


「それで、バタバタいろんな対応に追われてたんです。本国へはミーナ様がもう直々に向かわれましたけど、皇国側へも使者を出さなきゃいけないって話で、アツシさんなら適任だと話していたんです!」

「断ったやつだな」

「なんで断るんですか!」


 これ以上働かされるのはちょっと勘弁して欲しい……。


「ミーナ様が、頼もうとしたのに肝心な時に役に立たないって」

「あいつ……こんだけ働かせといて……」

「あ、やっぱりなにかしてらっしゃったんですね?」

「まあ、後から色々聞くだろ。で、ミーナが来たから慌ててたわけか?」

「それもありますけど、それよりアツシさんが受けてくれなかった件でバタバタしてたんですよ……」

「悪かった……いやこれ、俺悪くないよな?」

「まあ解決したから良かったですけど」


 ならこんなに責めなくても良かったんじゃないだろうか。


「それに、間接的にはアツシさんのおかげ?になるかもしれませんし」

「ん?どういうことだ」


 何か手伝った記憶はないが、何かしていただろうか。


「アツシさんのおかげで最近活躍中のお二方が抜擢されたんですよ!」

「俺のおかげ?」

「今回は何より、速さを求められますからね。一番速く動ける生き物といえばやっぱ」

「あぁ!あの2人か!」

「もう!途中で遮らないでください!」


 レオとソウ。確かにそれなら適任だ。

 竜使いはそもそも数が少ない、というより、実質国や上流貴族直属の側にわずかにいるだけで、冒険者が所有しているのはここ5年で俺以外に見たかと言われてもパッと思いつかないレベルだった。


「でも今回だと、帝国の使者か……ソウはバッチリにしても、レオは似合わないな……」

「そうでもないですよ?皇女様に直々に指名されたら、意外とソウさんの方が固まっちゃって……」

「意外な一面だな」

「レオさんの方がソウさんを引っ張っていくような感じでしたから」

「想像出来ないな……」


 普段の様子とはまた違う2人がいるわけだな。

 ただあの2人に関しては、今回の任務に当たって別の問題があったはずだ。


「国の使者って、基本的にはAランク用になるよな?」

「それはあくまで通例ですけどね。大切な要件ですし、ある程度の格は求められます」


 各国に中立なギルドでのランクは、世界共通の身分証代わりになる。

 国を代表するような任務に当たるのは普通、Aランクからというのが礼儀のようにもなっていた。


「特例措置として、今回の任務をAランク昇給試験として、暫定Aランクの称号と、ミーナ様直筆の書面を持って行きましたから、今回は大丈夫です」

「なんか、うまくまとまったんだな」


 俺が受けていたら2人のチャンスを奪っていたと考えれば、結果オーライだな。


「あ!なんかそれならいいだろって顔してますね!残った以上!しっかり働いてもらいますからね!」

「いや、俺は店のことをやらなきゃだから……」

「大丈夫です。アツシさんはテイマーなので、アツシさん本人がお店のことをしていれば大丈夫ですよね?」

「テイマーって本来そんな便利スキルじゃないからな?」

「アツシさんは特別ですから!はい、これとこれとこれと……えーっと、あ!これも!あ、こっちにもあるんだった……」


 次々と任務の依頼が書かれた書類が出てくる。

 確かに1つ1つは単純作業であったり、森の調査であったり、簡単な伝達任務だから、俺なしでもパートナーたちだけで動けるだろうけど、嫌がらせのように多いな……。


「そんなに人手不足なのか……」

「本来Dランク以下の冒険者さんたちに頼むものも、何故か普段活動が活発な方々が軒並み動けなくて……」


 これに関しては責任の一端がありそうだな……。


「なので、これは全部アツシが来たらやらせなさいって」

「結局あいつは俺に働かせるのか!」


 口調まで再現されたせいで一発であのお転婆皇女を思い浮かべることになった。


「伝言を追加すると、終わったら必ず登城すること、だそうです」

「それは……」

「嫌なら私からいくわ、とも」

「勘弁してくれ……」

「皇女様とこれだけ軽口が叩きあえるのって、本当にすごいですよね……登城なんてこんな名誉なことなのに断ろうとするアツシさんがわかりません……」


 まあ普通は登城も皇女直々の依頼もそうあることじゃないか。


「私たち一般市民からすれば!一生に一度あるかないかの夢のようなお話ですからね!」

「まあそうなんだけど……あいつに関わると、これだからな」


 書類の束を指して言う。


「あー……」


 リリアさんも、この量はどうかと思っていた節はあるらしい。

 何はともあれ、しばらくまだ、あの皇女様には振り回されることになりそうだった。

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