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旧 ペットショップを異世界にて  作者: すかいふぁーむ
二章幕間

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24/59

【挿絵有り】ペットショップ改善計画その2

時系列がずれますがほのぼのパートの挿入です。

挿絵はペケさんから頂きました。ありがとうございます。

「営業時間とかも、もう少しはっきりさせるか」

「してなかったんですね、今まで……」


 そもそも時計もなく、正確な時間で動く世界でもないため気にしたこともなかった。


「私に元の世界の感覚が残っているうちに、改善できそうな点は改善していきましょうね」


 誰も来ない店内で、しばらく店のことを語り合った。

 思えばこの世界に来て、真面目に店のことを考えたことはなかったかもしれない。いや、考えていなかったわけではないが、こうして人と店のことを語り合える機会がなかったことは確かだ。

 一度はほのかのおかげで、柵を作ったり店先に積まれていた荷物を整理したりという動きをつけたこともある。だが、あの時はほのかの勢いに押されるだけで話し合うという感じではなかった。

 話せば話すほどに、改善点は出てきた。


「アツシさん、この店のメインは外の魔獣たちって言ってましたよね?」

「そうだな。値段的にも需要的にも、そっちが主力になってる」

「それなのに、放し飼いで自由奔放にしてるだけで、そもそもどの子が商品でどの子がアツシさんのパートナーかもわからないって言うのはどうなのかなと思うんです」

「あぁ……」


 外のやつらに関しては、どうせ俺が召喚してやればいつでも見られると思っていた部分もある。


「私がお客さんなら、店員さんに声をかけて商品を見せてもらうのはなんとなく気が引けます。見える範囲にものがあって、それが気になったらお願いするというのはできますが……」

「なるほど。言われてみれば、店員に頼むってそれだけで面倒だよな」


 常連しかいないこともあって完全に頭から抜けていた部分だ。

 店員に頼んだ時点でなんとなく買う方向に流れが傾くプレッシャーがあったなと、元の世界のことを思い出す。


「これから新しいお客さんが増えるなら、その辺のことも考えていかなきゃですよね」

「その通りだな」


 柵もできたことだし、もう少し外の魔獣たちについても、展示を意識していこう。ここでもまた営業時間を明確化する意義が生まれた。彼らにもその時間はここにいてくれという指示を出しておく必要がある。


「もう一つですが、そもそもペットという概念が浸透していないってことは、必要な道具とか、世話のやり方とか、何もわからないんですよね?この世界の人って」

「そうだな」

「元の世界にもありましたけど、飼育セットみたいなものを用意して、飼いやすいものから勧めていったりしませんか?」

「あぁ、考えたことはあったな」

「ぱっと見てこれだけのものが必要だと目処が立っていた方が手は出しやすいと思います。そうじゃないと、お客さんが増えても動物園感覚で終わってしまうんじゃないかなって」


 なるほど。確かにそういう面はあるかもしれない。見て楽しむものから飼育して楽しむものという方向に現実味を持たせていかないと、いつまでも買ってもらえないか。


「ただ、うちはやたらと種類も多いし、どの子でも今の所、飼育の手間は大きく変わらなくてな……」


 飼育セットを作るにしても、売れ筋が読めない。


「なら、何種類かの飼い方をまとめたり、必要なものの予算とかだけでも書いておいた方がいいかもしれません」


 ほのかの指摘はもっともだ。客目線って大事だなと改めて実感する。いざ店を出してしまうと、どうしてもその視点が薄れていってしまっていた。


「そもそもこの世界でこういうお店はアツシさんしか出してないんですよね?」

「俺の知ってる限りでは、そうだな」

「だったら、どの子を売りたいかで決めちゃえばいいんですよ」

「どの子を売りたいか?」

「向こうの世界でもよく見るペットとか、売れ筋とか、あったじゃないですか?」

「そうだな」


 犬猫が圧倒的な人気を誇り、小動物ならハムスター、鳥ならセキセイインコといった代表格があった。


「あれって、飼いやすさとか懐くかどうかとか、いろんな要素もあったと思うんですけど、一番はお店にいるかいないか、一般的に認知されてるかしてないかだと思うんです」

「ほう……」

「このお店でお世話し始めて気づきましたけど、犬なんか特に、世話の手間、ものすごくかかりますよね?」

「まあ、散歩も必要だし手入れしてないとすぐに臭ったりするな」

「それでも人気だった理由って、なんですか?」

「ある程度賢くて、人に馴れるところかな……あとはやっぱり、どの店にもいて、みんなが飼ってる分、敷居が低かったか……」

「私もそう思います。それで、アツシさんのテイムした子たちなら、前半の部分って、同じ条件になりませんか?」

「前半?」

「賢くて、人に馴れる」

「なるほど……」


 確かに元の世界ではしつけに限界のあった小さな動物や鳥まで、放し飼いでもなんとかなる範囲になっている。


「みんなが飼ってるから敷居が低い、っていう部分は、むしろこれからアツシさんが用意してあげればいい条件です」

「おぉ……」

「どうですか?」

「つまりあれか。流行りを作るってことだな?」

「そういうことです!」


 こんな発想、まるでなかった。

 ペットの文化がないことはマイナスだとばかり思っていたが、そうではない側面もあるんだな……。


「飼いやすくて、馴れてくれて、後は……」

「犬なんかは、同じ犬でもたくさんの種類がいましたよね」

「そうか、同じ飼い方でもバリュエーションがあった方がいいか」

「何かいますか?」

「色々いる」


 居すぎて困る程度には候補が浮かぶ。

 ぱっと浮かんだのはフェリス。耳の大きなネズミだが、もう少しサイズ感があってもいいかもしれない。

 アランさんに売ったウサギはどうか?あれなら種類も色々いるし、すでに家族に馴染んだ成功例もある。

 他にも似たような動物はたくさんいる。


「そしたら、値段とか、仕入れやすさとか、ある程度アツシさんの都合に合わせて選んでいくのもいいかもしれませんね」

「そうか……そうだな……」


 ほのかがいてくれてよかった。

 頭に無数のアイデアが流れている。早く形にしたい。


「後は、その種類が決まったら絶対に欲しいものがあります」

「欲しいもの?」

「例えば犬を飼うのに、必要だったものはなんですか?」

「そうだな……リード、餌入れ、水入れ、トイレ、ケージ……あとはおもちゃとか」

「一番大事なものが抜けてますよ」

「大事なもの?」

「ドッグフードです」

「あぁ……!」


 ほのかの言いたいことがわかった。


「みんなが飼ってる動物がどうして飼いやすいのかといえば、私はこれに尽きると思います」


 人工飼料の有無。


 確かにそうだ。たとえば爬虫類。見た目やイメージで敬遠されることも多かったが、一番のハードルの高さは生き餌だった。見た目だけなら人気の女優が飼ってる可愛らしい種類もあったんだ。それでも受け入れられなかったのは、どうしてもコオロギをあげる必要があった部分が大きいだろう。


「人工餌を作りましょう。場合によっては、人工餌を作れる種類を選んで、お店のオススメにしてもいいと思います」

「そうだな」


 これで店の大きな目標が決まった。


「ちなみになんですけど、この世界にもともとそういうのがあるような種類っているんですか?」

「家畜だった王ウズラはそれ用のものがあったけど、あれも色々混ぜただけだからな」


 鳥の餌は穀物を何種類か混ぜたものが一般的だ。与えた餌の中から、鳥が選んで食べるような形になる。好き嫌いをされると栄養バランスが崩れることもあり、元の世界では全てを一粒にまとめたようなペレットタイプの餌が開発され、徐々にその勢力を伸ばしていた。


「ドッグフードみたいな、保存しやすくて栄養バランスの取れたペレットタイプの餌を作れるものか……」

「アツシさん、爬虫類の餌に使ってたパウダーは自分で作ったんでしたよね?」

「あぁ、そうだな」

「あれってどうやって作ったんですか?」

「卵の殻を洗って砕いて作ってる」

「そういう知識って、どこから?」

「元の世界の記憶をたどって、だな」

「じゃあ、ペレットタイプのフードを作るってなると……」

「調べたことはある。できるかはわからない」

「なるほど……」


 ただ、この世界だからこそできる要素もある。

 魔法の存在が大きい。ほのかの力を借りれば、きっと上手くいくだろう。


「基本的には必要になる栄養分を砕いたり絞ったりして、水分を加えて混ぜて、乾燥して水分を飛ばすって感じだったはずだけど」

「かなり曖昧ですね……」

「トライアンドエラーでやっていけばいいと思う。見返りも大きいし、作業は人を雇ってもいいと思う」

「こういうところで魔獣たちの力を借りようっていうのは、やっぱりないんですね」

「前回は単純な作業だったからいいけど……いやそうか、こっちで手順を単純化すれば手伝ってもらえる部分もあるか」

「魔法を生かしたりは?」

「それに関しては、最後の最後で絶対に必要になる」


 トライアンドエラーと言ったが、エラーを確認するために毎回動物実験をしたいと思えるほど、俺は科学者向きの性格をしていない。それに、データを取るにはかなりの数と、それに応じた年月がかかる。気が遠くなる話だ。


「エリスがやったような、鑑定の魔法を使えば、できあがったものが使いものになるかはわかる」

「そうなんですね!」

「だからまぁ、色々作ってみて試せば、そのうちできるとは思うよ」


 分量を少しずつ変えたりといった細かい作業は、もちろんボーンソルジャーには任せられない。その辺は色々考えて行く必要があるな……。


「とりあえず、少しずつ動いていくしかない」

「そうですね。これに関してはゆっくりやりましょう」


ーーー


 話が途切れたところで、ふとほのかの服装に目がいく。


「そのセーラー服、こっちの世界では珍しいよな」

「その辺は私では分かりませんが……見ないデザインですよね」

「実は店の制服を考えようかと思ってたんだけど、もうそれならセーラーでもいいかと思ってきてな」


 この格好なら客に囲まれても十分に目立つ。


「私、基本的にこの格好で動くつもりですよ?ずっと一緒だとそのうち慣れちゃいませんか?」

「まぁそれはそれでいいと思うけど、じゃあエプロンくらいつけるか」

「あ!ペットショップっぽくなりますね!」


 そのくらいならギルドにあったはずだ。


「お店の制服、いいですね!でもそうなると……アツシさんもいつも同じような服装ですよね」


 俺は自分の服を魔法で調整できるほど器用ではない。ギルドで一番安いコーナーから、適当にTシャツのようなものと下に履けるズボンを買ってきて、破れたら買い換えるような生活だった。

 他の服は森に入るための装備品くらいだ。


「俺は別にいいだろ?」

「ダメですよ!あとほら!バアルの分も用意してあげなくちゃ」

「あぁ……」


エプロンをつけたガイコツを想像する。


「シュールだな……」

「きっと似合いますよ!みんなでお揃いにしましょう!」


ほのかがここまで乗り気なら、まあやってもいいか。


「ギルドに頼んで、店のデザインでもいれてもらったエプロン、つくるか」



 目の前ではしゃぐほのかがエプロンを身に付けた姿を想像する。


挿絵(By みてみん)


 こんな感じだろうか?セーラー服にエプロン。何とも言えない魅力があるな……。

 すぐにでもギルドに注文しておこう。



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