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魔王の血筋  作者: 黒白猫
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変異種


「ふぁー」


アルは起き上がり支度をする。支度が終わると昨日の依頼報告があるためギルドに向かう。

アルは空を見る。太陽は出始めたばかりだ。まだ店は開店していなく、人通りもすくない。少しばかり肌寒い。ギルドに到着すると扉を開ける。ギルドのカウンターにはまだ受付嬢はいないようだ。アルは一度外に出て建物の横を通り裏の訓練場に向かう。訓練場は其処まで大きくはなく正方形で50メートルぐらいだろうか。

アルは準備体操をして、身体強化魔法を使う。そして相手をイメージする。今回は剣が相手だ。速さはアルと同じにする。アルは超高速で転移を組み合わせて、イメージした相手と闘う。

もっと速くもっと速くとアルはギアを上げて行く。受け流し避け投げ飛ばす。もっと速くもっと速く。もし側で誰かが見ていても殆ど見えないだろう。1時間と少し経つとアルの探知が働く。(誰か来たみたいだな。せっかくのってきたのに)

アルは柔軟体操をしていると出入り口から20才前後の男性が来る。

(本当魔族の年齢は見た目じゃわからないよな)男性はアルを見た瞬間ピタッと止まる。

「あっもう終わりますんで」

何と無く訓練を見られたくないんだろうなとアルは思った。

「おっそうか。すまんな」

「いえいえ‥‥よしっ」

柔軟体操を済ませてギルドのカウンターへ向かう。「では、お先です」

と男性とすれ違いに言う。

男性は「お疲れさん」と言う。

ギルドの扉を開けてカウンターを見ると既に受付嬢が座っており数人掲示板を見ている。

アルはカウンターへ行き昨日対応してくれた受付嬢に話しかける。

「すいません。依頼達成しました。これが討伐部位です」

受付嬢は微笑みながら

「かしこまりました。では腕輪をお貸し下さい‥‥アル様ですね。あっアル様。アル様に指名依頼が来ています」

「指名依頼?」

「はい。こちらが依頼書です。あっとこちらが依頼達成料と腕輪です」

アルは銀貨2枚を受け取り依頼書を見る。

(Bランク依頼。転移で馬車10台と人20人を東の辺境アイリス領に運ぶ。依頼料金貨3枚)

「これBランクですけど」

「特例依頼ですね。アル様は昨日軽々転移していたでしょう。それをアル様の後ろに並んでいた方が見ていたみたいで護衛依頼から急遽アル様への指名依頼に変更しておりました。どうでしょうか?」

「明日なら受けても大丈夫です。というより明日しか無理です」

「たぶん大丈夫だと思いますよ。一応聞いておきますので今日の夜にギルド来れますか?」

「ええ、大丈夫です。そうしたら今日夜ギルドにきます」

「はい。宜しくお願いします」

アルはギルドを出る。アルの用事とは荷馬車の運ぶ先のアイリス領に行くためだ。まだ行った事がないため、転移は使えない。

アルは東門に行った事がないため1度北門に出る。少し離れた場所からアルは目に遠見の魔法を使い転移の距離を増やし連続で発動する。遠くを見て一回の転移で10キロ程かせぐ。

途中地図を見ながら方向を修正する。

今アルの目の前には森が広がっている。

(森の中は転移より空飛んだ方が速いか)

アルは身体強化魔法を発動して空気を蹴って空を走っている。空気を蹴る瞬間物理結界の魔法式を足の裏に発動しているのだ。超高速な構築技術はアルの得意技でもある。

(ん?)

前から何かが近づいている。

(飛竜か)

飛竜は小型の竜で細く手と翼が合体している。

飛竜はBランクの魔物だ。アルは進路変更せず真っ直ぐ進む。

「ぎゃぉぉぉぉ」

飛竜は高い声で鳴く。アルを獲物として狙いを付けたようだ。

飛竜はアルに噛みつこうと口を開く。もし誰か知らない人が地上から見ていたら、もし誰か知らない人が側で見ていたら、今まさにライバル達が決闘をしているような。お互いの力と力を今まさにぶつけ合うような。激しい闘いが巻き起こるだろうと予感したはずだ。

そしてアルと飛竜は今まさに衝突する。

「邪魔」

アルは手の平で上からハエを叩くように飛竜を叩いた。

「ぴぎゃゃゃゃ」

飛竜は地面にぶつかり大きい音を響かせ。首の骨が折れて絶命する。

しばらくすると森を抜けて連続転移でアイリス領を目指す。

(見えた!)

遠くに街が見える。門は石造りで街の周りを高さ10メートル程の壁で囲んでいる。少し手前で転移して歩く。門まで行くと冒険者が多い印象がある。アルは列に並ぶ。しばらくするとアルの番になりアルは冒険者の腕輪の映像を見せて門を潜る。

(ほー魔都程ではないがかなり発展しているな)

整備された石畳みに露店が左右に並んでいる。露店を超えると鍛冶屋や武器屋冒険者ギルドなどが並んでいる。更に歩くと、此処が街の中央だろう。広場になっていて噴水がある。噴水の横には街の地図が描かれている。真っ直ぐ行くと学院。左と右は住民街になっている。

(良い街だなぁーそういえば母上がアイリス家は信頼出来るって言ってたっけ)

アルは来た道を戻ると冒険者ギルドに立ち寄る。扉を開けるとカランカランと鈴の音が鳴る。するとガラの悪い連中が一斉にこちらを向く。(おいおい、ガラ悪すぎるだろ)

魔都ではすぐ視線を外していたが、此処の連中はずっと睨んでいる。

アルは気になりながらも依頼書を見る。

(あー来たよー)

後ろから気配がアルに近づいてくる。

「おいっ」

無視する。

「おい!!」

無視する。

「おいっ聞いてんのか!!!?殺すじょ!!!」

(噛みやがった!!)

他の冒険者がクスクス笑っている。

それでもアルは無視をする。

そして我慢の限界が来たのかアルの後頭部に殴りかかってくる。アルは拳を紙一重で当たらない場所、15センチ左に転移する。側からはいきなり左にズレた様に感じただろう。そして振り向かず一歩左足を後ろに引き右足を伸ばしたまま足を天高く振り足の爪先で相手のアゴにピンポイントで軽くトンッと叩く。相手は膝から崩れ落ち気絶する。気配で背の高さは分かっていたのでアルは遊び半分でやったらできてしまった。

ここでアルは凄い振り向きたかったが振り向いたらカッコ悪いと思い、後ろに手を組んでそのまま依頼書を見つめる。

ギルド内がやけに静かだ。

(帰ろかな。気まづいし)

アルは帰る為始めて相手を見る。

第一印象はゴリラだった。浅黒く筋肉質で‥‥

(濃い顔だなー)

アルはそのままギルドを出る。出る時のチラ見が激しい。

外は薄暗くなっている。アルはギルドを出て直ぐに魔都の北門手前に転移する。

(やっぱりなんだかんだ言って魔都が一番落ち着く)アーチ型の北門を潜ってギルドに向かう。ギルドに入ると今日は珍しく空いている。真っ直ぐ受付嬢に向かう。

「明日の依頼大丈夫でした?」

「あっアルさん」

受付嬢は段々フランクになっていく。

「大丈夫でしたよ。明日北門の外に朝9時にお願いします。目印は馬車10台です。あっあと腕輪を貸して下さい。アルさんは次でランクアップですね」

「おっそれは嬉しいですね。それじゃー今日は宿屋でゆっくりします」

「はい。お疲れ様でした。」

アルは宿屋で晩飯を食べてから、湯浴みをして眠るのであった。


アルは6時頃起き訓練場に行き鍛錬をする。

今日のイメージは槍だ。今日は誰も来なかったため8時半まで鍛錬することが出来た。湯浴みをすると9時前で丁度良い時間だ。さっぱりした後、北門から少し離れた場所に転移する。

北門へ歩きながら辺りを見回すと馬車10台と人が20人以上の大所帯を見つける。

それを見たアルは声を掛ける。

「馬車の輸送の件で依頼を受けたアルです」

「おお君がアルくんか。初めましてアドモンドです。今日はよろしくおねがいします」

全員が丁寧に頭を下げる

「こちらこそよろしくお願いします」

「それで大丈夫ですか?馬車10台と20人ですが」

「ええ、大丈夫です。馬車含め全員が繋がっている必要があります一気に転移したいので」

「なるほど。分かりました」

アドモンドが全員繋がる距離で輪になるように指示を出す。そして輪になった所で手を繋ぐ。隣に馬車がある人は馬車に触れる。

「アルくん。終わりました」

「了解しました。では転移します」

とアルが言った後転移する。

景色が変わりアイリス領の門の少し離れた所に転移しようとしたが転移位置に冒険者4人がいた為少しズレて転移した。冒険者は吃驚して硬直している。

「「「おおお」」」

初めての経験だからだろうか。商人の皆が驚いている。

冒険者4人はアルを見て。

「おい。あいつが格闘王だぜ。俺は見たんだCランクのガイオスが蹴り一発であの世に逝ったのを」

「俺が聞いたのは蹴りで首の骨折ったって聞いたぞ」

「いや、俺が聞いたのは蹴りで首の薄皮一枚しか繋がっていなかったって聞いたぜ」

「さっきそこでガイオス焼き鳥食ってたぞ」

と冒険者達が口々に言う。

「さて、アドモンドさん。これで俺の依頼は終了ですね」

「はい、アルくん本当に今回はありがとうございました。もしよろしければ、アドモンド商会で働きませんか?」

「いえ、今はそのつもりはありません。明日から学院ですので」

「学院生でしたか。それではお誘い出来ませんね」

「また時間に余裕があればアドモンドさんの依頼受けますよ」

「ありがとうございます。アルさんと知り合えただけでも僥倖です。また宜しくお願いします」

「はい。では俺は行きますので」

「はい。ありがとうございました」

アルは魔都の北門から少し離れた場所転移してギルドに向かい受付嬢に依頼完了をつたえる

「アルさん腕輪を返します。ランクはDランクになりました。おめでとうごいます」

「ありがとう」

「今日は依頼を受けられますか」

「んー見てから判断かなー。ちょっと見てくる」

アルは掲示板の前へ行く。

(Dランクは右から2番目かな‥‥討伐系が殆どだな‥‥これにするか。オークの討伐一匹。討伐部位オーク丸ごと報酬、銀貨1枚、追加報酬

銅貨1枚×オークの重量。依頼主、にくウマーマ、注意事項、オークが二匹以上の時は逃げる事)


オークとは簡単に言うと身長は170から180センチで人をブタにした太った全裸の魔物だ。旨いのが特徴?だ。


アルは紙をカウンターに持っていく。

いつもの受付嬢は対応中だ。

「これお願いします」

「かしこまりました。では腕輪をお出し下さい」

アルは腕輪を受付嬢に渡す。

「‥‥はい、受注完了です。腕輪をお返しいたします。それではお気をつけて行ってらっしゃいませ」

アルは腕輪を受け取り

「行ってきます」

と言い死の森に転移する。

アルは死の森ではまだ三分の一までしか行った事がない。今回はその三分の一の場所から先へ進む。奥に行けば行くほどモンスターのランクが上がるためアルにとっては良い鍛錬になる。学院卒業まで死の森を攻略するつもりだ。いつでもオークの生息地に転移出来るためオークは最後にするようだ。

興味のない敵は無視して行く。

基本闘った事がない奴かSランクしか興味がない。何度も敵を無視しつつ何時間も歩いたり走ったりしていると。

(1キロ先に未確認の気配!!)

アルは1キロ先と思っているが探知範囲は1.2キロに伸びている。

身体強化魔法を発動して走り数十秒で敵の前に到着する。

(んん?)

さてここでリザードマンと言う生物を説明しておく。リザードマンとは二足歩行で大人の身長で2メートルぐらい。猫背ぎみで全身に緑色の硬い鱗があり鋭い爪や牙がある。顔はワニの口を縮めて鱗を付けたような感じだ。顔の幅や高さは人より少し大きい程度。お尻には太い尻尾が生えている。この生物が面白いのは戦闘狂なのだ。弱い敵には見向きもしない。おまけに人の技を盗むのが得意だ。更に個体によってはブレスを吐くし、手に魔力を縫う。この技は魔力操作が上手くなければ出来ない。だがとある一匹は歪ながらもアルの技を戦闘中に使ってきたのだ。余りにも面白かったのでトドメを刺さず見逃したのだ。生きていたらまだ死の森にいてるだろう。流石に魔法式を使える奴には会った事がないが。リザードマンは人と同じで個体によって強さがSランクやBランクと様々だ。一応ギルドではBランクとなっている。それで話はもどる。


今目の前にいるのは確かにリザードマンだろう。顔、姿形は完全にリザードマンだ。だが身長が160センチから165センチぐらいだろうか。だが鱗の色が金色なのだ。

(変異種?の子供?わからん)

変異種の存在は聞いた事があるが会った事がない。突然変異がそうそう生まれるわけがない。だからこそ珍しい。まさに珍獣。アルは非常に今ワクワクしている。もし、魔王の息子に生まれていなかったら珍獣ハンターになっただろう。そんな職種はないが。

アルは手に魔法式を発動させて魔力を手に縫う。

変異種はその場から一瞬で消える様に移動し右手の鋭い爪を貫手にしてアルの喉を狙う。確かに通常のリザードマンより速いが、アルは冷静に貫手の側面に右手を添え左側に受け流す。受け流している途中に左拳で変異種の胸に叩き込む。変異種は木々を破壊しながら水平に吹き飛ぶ。アルは転移で先回りし魔力と手で頭を掴み地面に叩き付ける。足にも魔法式を展開して魔力を縫い。軽くジャンプをして背中を踏み付けようとするが変異種は横に転げまわり立ち上がる。その時既にアルは接近し右足のハイキックを放つ。変異種は反応し左腕を顔の横で防御しようとする。アルの右足と変異種の左腕が当たる瞬間にアルは変異種の背後に転移して繰り出していたハイキックを変異種の右顔面に打ち付ける。変異種は吹っ飛び木々を破壊し太い木で止まる。アルは変異種の10メートル開いた場所に転移する。変異種の身体を見ると無傷。攻撃した本人は何となく分かっていた。

(鱗一つ一つが魔力を帯びてるな)

正直魔剣を使えば一瞬で勝負は着くだろう。だが流石にこの場では無粋だし。アルの魔剣は強力だが1度使うと1週間は使えなくなるのだ。人生何が起こるかわからないため極力は自分で対処するべきだろう。魔剣はアルにとっては正真正銘の切り札なのだ。ここに大切な人がいたなら話しは別だが、アルも母親に似て戦闘が好きなのだ。それにアルにはまだまだ手札がある。

先程の攻撃を警戒してるのか変異種は動かない。

(てか木々が邪魔だよな。場を整えるか。)

アルが目線を少し変えた時変異種はアルの懐に入りハイキックをしてくる。

(おお?)

アルは転移し30メートルの距離を取る。

「おい金色、死んでくれるなよ」

アルの足下に最初からあったかの様な速度で魔法式を構築する。

アルを中心に半径50メートルの黒い光を発した複雑な魔法陣が出来ている。持続魔法【黒上炎】アルが創った魔法だ。

アルを中心に半径50センチの円があり。その円以外の魔方陣の中から40メートルの高さまで黒い炎が吹き上がる。吹き上がる炎の時間は込めた魔力により変わる。今回は場を整えるだけなので5秒だ。

外側の円とアルの周りにある円は40メートルの高さの結界だ。転移も遮断する。敵は空を飛ぶか空に向かって転移するしか逃げる方法はない。

黒い炎が消えると魔方陣も消える。

探知で分かっていたが変異種は相当暴れたみたいだ。アルの左後ろで真っ黒で倒れている。魔方陣のお陰で地面は融解していないが、直径100メートルの円がポッカリ森の中に開いている。

アルは変異種に近づく。

(気配が死んでない。よしっまだ生きてるな)

アルは待つ。

(お?)

黒焦げの所々から金色の鱗が見え出す。その金色がゆっくりだが徐々に広がっていく。

(だよな。普通のリザードマンでも少しだが再生能力あるんだから変異種はあって当然)

【黒上炎】を普通のリザードマンに使うと塵となるだろう。

アルが考え事をしてる間に変異種は身体の全体が金色に戻る。

「さて、勝負再開といこうか」

そして変異種はゆっくりと起き上がり、アルは構える。

そして変異種はアルに背中を向け全力で走って逃げる。走り方が凄く綺麗だ。

「‥‥はっ!!ちょっとまてーーい」

とアルは追おうとしたがやめた。

(相手も消耗してたし気配も覚えた。

次会った時殺す。)

「オーク狩って帰るか.....」

アルは変異種に会ったため機嫌良くオークを狩り丸ごと担ぎ転移で北門に行く。北門を潜りギルドに持っていく。

カウンターにオークを持っていったが、ギルドの隣が解体倉庫だったらしく。そこに持っていき。ギルドで討伐完了の報酬を貰い今日の仕事は終わりである。

アルは宿屋でご飯を食べ部屋のベットに転がる。

(明日9時から試験発表か)

アルはそのまま眠りに落ちる。

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