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魔王の血筋  作者: 黒白猫
3/10

卒業と試験

それから4年後アルは9才になった。 魔族は成長が早いためアルは身長165センチまで伸びている。顔はまだまだ幼い。人間では成人は15才だが魔族の成人は13才だ。この5年でアルは母親に体術や魔法の師事をしてもらったり、魔物相手に魔剣の確認をしたりと忙しくも充実な日々を過ごしていた。


そして、今アルは魔王城訓練場にいる。訓練場はかなり広く近衛兵士の訓練場だ。今も兵士は訓練をしている。今からアルは母親と全力で闘うのだ。別に母親が憎いとかではなく、訓練として闘う所である。アルの母親は3年前に魔都に帰還したのだ。国境の魔族を鍛えていたらしい。


5才の時にエミルに気配察知を教わっていたアルは気配察知に関しては3カ月で終了したが、アルはそこで満足せず訓練した。今では半径1キロ以内であれば生物が一度でも会って気配を覚えたならば完全に気配を遮断されてもアルは見逃さずに察知出来る様になった。

魔力操作による魔力も倍に増えている。


さてアルの母親だが、名前はエレオローナ。親しい人からはエレナと呼ばれているがエレナは子供のように笑いながら闘うため【乱童】と呼ばれている。エレナは戦闘狂なのだ。


容姿は黒髪黒目で髪は肩より少し長く顔は小さく目は切れ長だ。可愛いと言うより美人だろう。身長160センチのナイスバディだ。


アルの母親は簡単に言うと魔族最強の魔族である。魔王が最強では無いのかと思うかもしれないが、それもまた間違っていない。アルの母親と父親が模擬戦をすると確実に勝つのは母親だ。魔法も体術も母親が魔族最強なのである。だが、殺し合いをすればどうなるか。そうなると父親が勝つのである。

それは何故か、父親には魔王の血筋でしか創れない【魔剣】があるからだ。

魔王と言うのは一番強くなくてはならない。魔王は戦争時常に前線に立ち武力によって士気を上げる。これは魔族では当たり前になっている。なぜ21代も同じ血族が一度たりとも反乱が起こらず代々血脈を維持できたのか。21代の中には魔力が少ない落ちこぼれだったり身体が脆弱だった魔王もいたはずだ。それはやはり魔剣があったからだ。


例えばアルの父親の手甲の能力は近接では無類の強さを誇る。手による攻撃は全て光の速さになるのだ。普通は光の速さで攻撃をすれば手が千切れるが、それら全て手甲が吸収するのだ。

それだけではない。光の速さで攻撃した時衝撃波がうまれるがその衝撃波の方向を凝縮して指定できるのである。仮に千分いや万分の一で避けたとしても衝撃波で相手は弾け飛ぶ。相手の攻撃を見てからゆっくりと防いでも充分間に合う攻防一体の武器なのだ。

こう言った武器を使えるからこそ魔王の血族が魔王たるのである。


「アル。この闘いが卒業試験だ。もう魔法はとっくに私を超えてる。身体強化や各種魔法式の出力魔力消費率の効率化。挙げ句の果てには新たな魔法式の作成。アルは私の自慢の子だ。あとは体術で私に勝ってみせろ。」

エレナは楽しそうに言う。

「わかりました」

「魔力の使用、魔法は一切なし。体術のみでの勝負だ。良いな?」

「はい。お願いします」

とアルは無表情で言う。

「エミル、合図しろ」

「はい、では私が審判をさせていただきます。両者準備はよろしいですね?」

エミルが2人の間から5メートル離れた位置に行く。

アルとエレナが頷く。

「‥‥‥‥‥‥‥‥始め!!!」


エレナは動かずアルは地を蹴る。アルはエレナの懐に入りジャブを打つ。エレナは左手でジャブを掌で受けたと同時に右手でフックを打つ。それをアルは軽く頭を下げて避ける。エレナは左でアッパーを打つ。それをアルは仰け反り避ける。少し距離が開くがアルは右足を踏ん張り距離を詰め右ストレートを打つ。エレナは右手でアルの拳の側面を掌で軽く添えエレナの左側へ受け流す。受け流したと同時にエレナは左で

ストレートを打つがアルは頭を右に振り避ける。エレナの伸びた左腕をアルは左手で掴み引っ張りながらエレナの横に移動する。エレナの側面からアルは打ち下ろし気味の右ストレートを打つ。エレナは拳が頬に当たる瞬間首をグルンと右に向けアルの拳を受け流す。アルは左手で顔に向かってフックを放つがエレナは仰け反りと同時にバク転を何度もして距離を取る。この間数秒だ。


この広場で訓練をしていた兵士達は訓練を忘れ2人を見入っていた。

「うぉぉぉ速すぎてなにをしていたか全然わからねー」

「エレオローナ様ぁぁぁ」

「エレオローナ様ぁぁ」

「俺達にもまた訓練つけてくださーい」

「本当エレオローナ様は綺麗だよなー」

「エレオローナ様見たいなお嫁さんほしいよなー」

と兵士達が言う。

「きゃぁぁぁ私の王子様ぁぁ超カッコいー」

「何を言ってるのよ私のよ」

「私よ」

「私だ」

「何よ私よ」

「俺だ」

「私よ」

と女兵士達が言う。1人変なのも混じっているが。

「ふっモテモテだなアル」

「母上こそ」

と2人は笑い合う。

「次は私から行くぞ」


それから20分は経つだろうか。

殴っては避け、殴っては受け流しとお互い一発もあたらない。

兵士達も2人の闘いに見惚れている。

ここでアルは闘いの型を変える。

アルはエレナを誘導する為エレナの右目を狙い右ストレートを放つ。エレナは左手で右に受け流す。ここでアルは更に右足を一歩踏み込み肘を曲げ右手を折りたたみ。頭突きをする。エレナは虚を突かれたが何とか両腕で十字にブロックする。だがアルは折りたたんだ右腕の肘で胸を狙う。

「ぐっ」

エレナの胸に肘が入りエレナは体制を崩した。

(好機)

アルは左手の貫手で喉を狙う。喉に当たる瞬間にピタッと手を止める。

アルは目線を下にすると、エレナの貫手がアルの心臓に当たる瞬間で止まっている。


「ふふ、私の負けだな」

「はい、俺の勝ちです」

側から見ていたら引き分けだが。アルが貫手を放つ時エレナは無意識に身体強化魔法を使ったのだ。この勝負は体術のみ。よってアルの勝ちである。

「勝者アルムス様」

とエミルが声をあげる。

わぁぁぁぁぁ兵士達やいつの間にか集まっていた城勤めの人達が大歓声をあげ訓練場は大騒ぎである。

「はいはい。見物は終わりだ。訓練を再開しろ」

と隊長が手を叩きながら言い兵士達は訓練を再開する。


「卒業おめでとう。アルはこれからどうするんだ?」

エレナは嬉しそうに言う。

「ありがとうございます。俺は10才になったら入学できるメレエーナ魔法学院に行こうかと思います」


学院とは魔都の最北端にある最先端の魔法や戦闘術を3年間学べる所だ。全校生徒数1万人を超える。魔都以外にも学院はあるが近くに学院があっても向上心がある人物はわざわざ魔都にまで集まって来るのだ。

兵士や冒険者に成りたい人は必ず何処かの学院に入ろうとする。


商人、文官、研究者、戦術、戦略などを勉強するのは最南端にある学院だ。ちなみに話しは変わるが魔都だけで日本の内陸2つ分はある。魔族領全てを合わせると中国大陸ぐらいあるだろう。


「おぉ、そうか。実は私も学院を勧めようかと思っていた。お前は同年代の友人がいないしな。実は少し心配してたんだ」

「はい。実は俺自身友人がほしくて」

「なら一つアドバイスしよう」

「何ですか?」

「王族と言うのは黙っている事だ。王族と知れば良からぬ阿保が沸く」

エレナは何かを思い出して遠くを見ながら言う

「ユートとも学院で出会ったんだぞ」

「そうだったんですか」

「ああ。まぁ私から言える事は1つだ。精いっぱい楽しめ!」

「はい!!」

「さて、久々に家族水入らずで晩御飯にするか」

エミル、アル、エレナは城内に入っていく。


「おぉでっかいなぁ」

今日アルは学院に入る為の試験だ。

宿屋の登録を済ませ学院門に来ている

(遠くから見えていたがこれ城より余裕で大きいぞ)

回りには同じ受験生だろうか、学院内や学院門はまるで祭りのような人混みである。

アルは受け付けの行列に並びアルの番になる。


「こちらにお名前、生年月日をお書き下さい」

と受け付けの人が言う。

アルは名前と生年月日を書く。

「はい。こちらが受験番号と試験についての用紙です。今から訓練場に行って下さい。場所は用紙に書いています」

「了解です」

用紙数枚を渡されアルは用紙を見る。

用紙には注意事項や学院の見取り図などが書かれている。学院は兎に角大きく広大な訓練場と決闘場がある。学院だけで1つの街みたいだ。

アルは上を向くと、上級生だろうか。窓から大勢が受験生を見ている。

アルは一切前を見ず用紙を見ながら人混みを避けて訓練場に行く。

受け付けの人に番号札を渡す。

「978番ですね。お名前はなんでしょうか?」

「アル・ボンベです」

アルは偽名を使う。既に学院長には話しを通している。

「では今他の受験生がしている様に的に向かって魔法を放って下さい。試験管には受験番号を必ず言って下さい」


訓練場もかなり大きく。受験生が並びそれぞれ50メートル先の人型の的に魔法を放っている。

受験生の後ろには試験管だろうか。真剣な目で何やら手元の紙に書いている。受験生が魔法を打ち終わると「次」はい「次」と機械的に試験をしている。

そしてアルは定位置に付き。試験管に番号を言う

「では、あの的に自分の得意な魔法を放って下さい。威力、命中率、魔法陣構築の速さを見ます」

(んー得意な魔法か。回りに被害が出ないように打たなければ)

アルはこの学院では自重するつもりはない。

次期魔王だし、後々わかる事だから。


「はいー。はじめてくださーい」

試験管も何人も見ていたからだろうか、疲れが見え始めてる。

大概の受験生達は的に手の平を向け手の平に直径30センチ前後の魔法陣を構築している。構築速度も10秒は掛かっている。10才ではその程度だろう。試験管も種類は違えど同じ様な魔法ばかり見て飽きが来ているのだろう。


アルは的に手の平を向ける。すると直径3メートル程のビッシリと描かれた複雑な魔法陣を一瞬で展開させる。そして、魔法陣から直径3メートルの黒い雷が的に向かって飛び出す。

【黒雷砲】アルが創った最上級魔法だ。

爆発的な音がして的を黒雷が飲み込む。

アルは黒雷が的をある程度過ぎたら消滅するように魔法陣を描いたので被害はない。

黒雷が無くなると。黒雷が通った後には真っ黒に焦げた地面。的自体まるで転移したかのように消えている。的はチリになったのだ。

シーーン

会場では先程までザワザワと騒がしかったのに今ではお葬式の様な静けさだ。みんながアルを見ている。アルは後ろを振り返って試験管を見る。試験管は的の方を見て口をあんぐりと開けて放心している。

「あのー」

とアルは試験管に声を掛ける。

試験管は、はっっとして

「ご、合格!!」

普通合否は試験が終わって数日後にわかるのだが、試験管は動揺しているのだろう。つい口走ってしまった。

「あっ違う!!成功!!」

と訳が分からないことを試験管が言う。

試験管としての誇りもあったのだろ。

アルの魔法も気になったのだが。それらを無理矢理抑え込み。

「つ、次」

といつも通りにする。既に遅いが‥‥。


アルは番号札を返してもらうために受け付けに歩いていく。わかっていた事だが周りからの視線痛い。

受け付けの人の前まで行きアルは言う

「終わりました」

苦笑しながら受け付けの人が

「え、ええ、しかし、あなた凄い魔法を使うのね。魔法には詳しくないけれど、あんな魔法初めてみたわよ」

「自分で創った魔法ですからね。知らないのも無理はありません」

魔法を創る事がどれほど凄い事なのかは受け付けの人にはわからない。

「へーそうなのね。はい、これ受付番号。次は座学の試験ね。応援してるわよ」

「ありがとうございます」

アルは用紙を見て座学の試験場所へ行く。

(場所は室内訓練場か。んっ近いな)

アルは室内訓練場に到着する。

扉の前にはこちら座学試験会場。席順は受験番号順にお座り下さいと書いてある。

会場に入ると約三千席はあるだろうか。机には番号が振ってある。

( ‥974、975、976、977、978っと、ここか)

アルは席に座る。

辺りを見回すと試験会場にはもう殆ど席に受験生は座っているようだ。

「ねぇねぇ」

と横から声が聞こてアルは左横を向くと、髪はショートカットで目は大きく吊り目で気が強そうな女の子がアルに声を掛ける。

「ん?」

「さっきさ、そとの訓練場から凄い音がしたけど知らない?」

「あぁそれは‥‥」


『お静かに』

とアルの声を被せ拡声魔法を使った声が聞こえる。

2人は席を座り直し前を向く。

壇上で先生だろうか。女性の人がいる。


『今から試験を行います。今から試験管が用紙を配りますので用紙を裏側にし、見ないようにして下さい。見た場合失格となります。時間は2時間です。』


試験管が用紙を配り終わると


『全員にいきわたりましたでしょうか?用紙がない人は手をあげて下さい‥‥いないようですね。では終わった人は用紙を裏側にして帰って下さってもかまいません。盗み見は試験管がしっかり確認しています。では、始め』


受験生はいっせいに問題を解き始める。

(試験内容は魔法陣の基礎構築式や応用か)

アルはスラスラと問題を解き始める。

下の方になると問題が難しくなるがアルに取ったら魔法式は大得意だ。

(最後の問題は‥‥紙に魔法式が途中まで書かれているこの魔法式を完成させよ‥‥‥んーこんな魔法式は見た事ないな。一部は最上級魔法式の治癒魔法式に似てはいるが、俺が知らない魔法式だな‥‥さすが最先端な学院なだけはある。予想するしかないか‥‥たぶんこの数式と形を左下に入れて)

既に試験は1時間半が経ち殆どの受験生は帰っている。アルはあーでもない、こーでもないと魔法式を書きあげる。

(できた!!)

残り10分になるとアルはペンの先で自分の腕に傷を付ける。そして、できた魔法式を指先5センチに展開して傷口に当てる。すると傷口が逆再生するように治っていく。

アルはふぅーと息を吐き出し前を向くと受験生はアルだけになっていて試験管達が口を開けて見ている。

(あっもしかして魔法使ったらダメだったか?いやいや、そんなん聞いてないし)

アルは一人と言うのもあるだろう。気まづくなり静かに席を立ち早歩きで歩き出す。

「ちょ、ちょっとまてーぃ!!」

と試験管がアルを呼び止める

「え?」

「あっいや何でもない。行って良いぞ」

アルが会場から出た瞬間に試験管達はアルの席に一斉に集まり出す。試験管達はアルの用紙を見る。

「この最後の問題って1000年以上前から研究者達が考え始め完成しなかった魔法式だよな」

「そうそう、それで毎年最後の問題をこの魔法式にしてて今も完成させた人はいないし、研究者達も完成出来ていない」

「しかも彼奴この魔法式何の苦もなく使用してたぞ」

「彼奴は何者だ?名前は‥‥アル・ボンベ‥‥」

「これは、世紀の大発見だぞ」

「理事長にすぐに報告しろ」

「私書き写しさせてもらおぅ」

「お、俺も」

「俺も俺も」

試験管達が騒いでいたのをアルは知る由もない。アルが完成させたのは、再生魔法である。

複雑な魔法式で展開自体難しく限られた人にしか使えないが、腕の欠損、血の損失などを回復再生出来る魔法だったのだ。

アルも魔法式を書き上げる時にそれは分かっていたが、城の図書室の魔法書全て見た訳ではないため既存していると思っていたのだ。


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