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魔王の血筋  作者: 黒白猫
2/10

初めての魔物


現魔王執務室の扉からコンコンとノックの音が鳴る。

「エミルでございます」

「どうぞ」

「失礼します」

エミルは執務室の扉を両手で閉めて魔王に体を向て顔を見る。

黒髪黒目で長さは目の上ぐらいで右から左に流していて、目が大きく優しそうな顔をしている。名前はユートゥトルム。親しい人にはユートと言われている。人間で言うと20歳ぐらいの若さだろうか。アルはどちらかと言うと母親似だろう。


「アルはどうだったかな」

と魔王は微笑みながら言う。

「無事魔剣創造は終わりました」

とエミルは無表情で言う

「どんな魔剣だった?」

「長剣と言っておりました」

「そっか。僕は剣が得意だから実に羨ましい」

「アル様は魔剣創造で魔力が口渇寸前になりました。」

「ほーあの魔力の多いアルがね」

少しびっくりした顔で魔王は言う。

「魔剣創造でそんな事があるのでしょうか?」

「んー聞いた事がないね。僕自身魔剣を創造するとき魔力の吸収は少しだったから。魔剣と言っても手甲だけどね、アルが扉から出てきた時どんな顔してた?」

ちなみに魔王の手甲はシルバーで所々黒が混じっている。

「興奮していたような嬉しいそうな顔をしていました」

「ハハ、なら心配要らないね。きっと良い能力だったのだろうね」

と嬉しそうに魔王が言う。

「それと、アル様が魔法や体術よりも先に気配察知を覚えたいと言っておりました。魔剣を使いこなすには必要だとか」

「そっか、それならアルの好きにさせて上げてよ。アルは賢いからね。魔族の成長は比較的人間より早いけど喋り始めたのも生後半年ぐらいだったし。あの時はビックリして本当に天才かと思ったよ‥‥舌足らずで可愛かったなぁ」

魔王は遠い目をして過去を思い出しているようだ。

「フフ、かしこまりました。それではそのようにさせていただきます。ではアル様がお待ちしておりますのでこれで失礼致します」

エミルは微笑みながら言う。

「うん。宜しく頼むよ」


アルのドアにノックが響く。

「エミルです‥‥‥失礼します」

エミルはドアを開けて部屋に入る。

(寝てますね‥寝かせてあげたいですが一応起こしますか)

「アル様、アル様」

アルの体を揺すりながら呼びかけける。

「んー‥‥」

アルは伸びをして身体を起こす

「寝てた‥‥もう報告は終わったか?」

「はい。気配察知の訓練どうされますか?お疲れでしたら明日でも良いと思いますが」

「いや、今日から開始しよう。どんな訓練をするんだ」

「とりあえず私達血族の訓練をそのまましていただきます」

「わかった、どうすればいい?」

と言ってアルはベッドから立ち上がる

「魔都を出て魔の森に行きましょう」

「魔の森か‥‥3才の時父上に連れて行ってもらった以来だな、歩いていくのか?」

「いえ、歩いていくとかなり時間が掛かりますので転移を使います」


転移とは空間と空間を繋げて瞬時に行く事ができる魔法だ。通常は転移に時間が掛かるが魔王や側近ぐらいになると瞬時に転移できるし戦闘にも使える。


「エミルは転移は使えるのか?」

「はい。時間は掛かりますが使えます。私の肩に手を置いて下さい」

アルはエミルの左後ろから肩に手を置くとエミルは目を瞑り集中する。1分ぐらい経つとエミルが「転移」

と言った瞬間目の前が一瞬白くなり目の前には

森が広がっていた。


魔の森とは魔都の西門から西に1週間歩くと森が広がっている。その森が魔の森である。

森を抜けると海だ。魔物は比較的少ない。

魔物とは簡単に言うと雑食であり凶暴だ。そして何より特徴なのが魔力を内包している事だ。


「アル様はこの布を目に巻いて目隠しをしてその場を動かないで下さい。私は気配を遮断して隠れますので私の気配を探って下さい。そして偶に石をなげますので防いで下さい。この訓練は対多数でも有効です」

布を差し出してエミルが言う。

「これが出来るようになれば次は目隠しをしながら私と模擬戦をしていただきます」

「わかった」

アルは布を目に巻き集中する。

(ん?エミルの気配が感じる)


アルは偶に飛んでくる石を避ける。そして、エミルは静かに移動し石を投げる。これを何度も繰り返すが全て防がれる。


(アル様‥‥流石です。魔王様でさえ最初は石が当たり怪我をしていました。これなら明日にでも‥‥‥)



「!!?アル様!!!」

エミルが焦った声で言う。

「どうした?」

アルが目隠しを外しエミルを見る。

エミルはアルの元に行きアルを庇うように立ち、前を見る。

「約100メートル先に巨大な魔物の気配がいます!!すごいスピードで近づいています!!」

5秒もしないうちに姿が見える。

「あれは!!!アル様お逃げ下さい!!!アイアンベアーです!!!何でこんな森にっ!」


アイアンベアー、魔物で全長3メートル。熊の様な姿だが目が血のように真っ赤で耳がなく耳の場所に左右2本づつ黒いツノが生えている。皮膚も毛も硬いためアイアンベアーと呼ばれている。


アイアンベアーは獲物が逃げても捕まえる自信があるのだろう。20メートル先でノソノソと警戒もせず涎を垂らして歩いている。アルとエミルの事は唯の餌なのだろう。


エミルは焦燥にかられるが、次の瞬間エミルの横に影が走る。

アルは一瞬で魔物の鼻先に踏み込む。魔物からするといきなり現れた様に見えただろう。

鼻先に踏み込んだ勢いでアルはアッパー気味のストレートを「ふっ」と息を吐きながら放つ。

アルの右腕はエミルからすると消えた様に見えた。右手が見えるとパンっと破裂音がし既に魔物は吹っ飛んでいた。

魔物は木を一本へし折り更に奥の木にぶつかり前のめりに倒れる。

「えっ‥‥」

エミルが唖然とした顔でアルと魔物を交互に見る。

「身体能力だけで首を引っこ抜くつもりで殴ったんだが、今の俺じゃまだ無理だったか‥‥‥」と独り言をアルが言う。

「エミル喜べ!!」

と満面の笑みでエミルに振り返る。

「今日は熊料理だ!」

唖然としていたが、アルに声を掛けられエミルは正気に戻る。

「........はっ.....あれは熊ではなく魔物ですよ」

幾分か落ち着き呆れたようにエミルが言う。

「そうなの?食べられない?あれ?」

と指を指しながらアルが言う。

「ご安心下さい。あれは熊より断然美味しいですよ。それよりアル様、魔物はまだ生きています。トドメをさして下さい」

「わかった」

アルは手に魔力を縫い指先の魔力を刃物の様に尖らせる。

(魔力操作も素晴らしいですね)

とエミルは思う。


魔力操作とは魔力を体内で動かすのだが体外で魔力を操作し刃物の様にするのはかなりの熟練度がいる。だがアルにとっては毎日魔力を増やすために魔力操作を怠っていない。今のアルは呼吸をするように簡単な事なのだ。普通はそれでもアルみたいに魔力操作はできないはずなのだが‥‥‥それに魔力を刃物みたいに切れる様にするには莫大な魔力を指先に集める必要があるのだ。

魔力の無駄使いである。


アルは魔物の側まで行き気絶している魔物の頭に貫手を振り下ろす。

名刀の様な切れ味で手首まで一切の抵抗なく刺すと魔物はビクンビクンと身体を跳ね絶命する。

「お見事です。今まで魔物を相手にした事があるのですか?」

と近づきながらアルに聞く。

「3才の時父上と魔の森に来た時父上が弱らせ生物にトドメを刺した事はあるけど魔物は今回が初めてだな。父上には生物を殺す時の感情の切り離し方を教わった」

(最初はゲーゲー吐いたっけなぁ)

「そうでしたか。では今日は城に戻りませんか?このまま時間が経つと味も落ちますし。それにアル様の気配察知は1段階終了です。明日は目隠しで模擬戦をしていただきます」

「そうか。それじゃあ今日は戻るか」

「はい。では私の肩に手を置いて魔物を触っていて下さい。魔都は出る時は転移できますが、入る時は非常に強力な結界が展開していて転移出来ませんので西門に転移をした後、門を潜り、城門前に転移します」

「わかった」

そう言い1分後転移する。景色が変わると巨大な石造りの西門がみえる。多数人が並んでいるがエミルは王族の特権を使い魔物の運搬を門番に頼み最優先で門をくぐる。

更にもう一度城門前に転移する。


城門前の2人の警備隊が一瞬身構えるがすぐに解き敬礼する。

「ご苦労様。申し訳ありませんがこの魔物を料理長にもっていただけませんか?」

エミルが魔物に指を指しながら言う。

警備隊は魔物を見て息を呑む。

「はっ!了解しました!おいっ人を呼んで来てくれ」

と警備隊がもう1人の警備隊に言う。

「了解しました!!」

エミルはアルに振り返り

「ではアル様参りましょう」

アルが頷きながら

「エミル少し疲れたから部屋で休むわ。晩飯が出来たら呼んでくれ」

「かしこまりました。ではゆっくりお休み下さい。私は魔物を運ぶ手伝いを致します」

「わかった」

と言いアルは部屋に行き眠る。

晩飯の準備が出来て起きた後魔物の肉を食べて満足すると、また眠るのであった。

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