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魔王の血筋  作者: 黒白猫
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魔剣

アヴァナース魔王国魔都魔王城


「アル様‥今から魔剣創造の儀式を行います」

と言ったのはアルの教育係兼メイドのエミルだ。女性で背が150センチぐらいで可愛らしい顔している。可愛らしい顔と言っても歳は4千歳以上だ。外見は人間で言うと25歳ぐらいだろうか。


アルというのは21代現魔王の息子、アムルス・アヴァナー

親しい魔族からはアルと言われている。アルは黒髪黒目で長さは目の上ぐらいだ。切れ長の目をしていて整った顔をしている。幼いのに何処か大人の雰囲気がでている。

アルは誰にも言ってないが前世の記憶があるのだ。だが殆ど覚えていない国の名前が日本だと言う事、住んでいた場所が東京だと言う事、色々な建物の名称、日本語、そんなもんだ。

「わかった」


魔剣創造とは魔王の血脈のみが行える儀式で、

自分の魂の一部と魔力で魔神の子供、初代魔王から脈々と受け継がれた儀式である。魂を分けたものしか使えない唯一無二の魔剣だ。

魔剣創造は秩序のために王位継承権1位のみが行える。王族全員に魔剣創造の儀式をすると国を割ってしまう可能性があるからである。魔王の息子はアルだけだが。


魔剣には色々な能力がある。似たような能力はあるが過去同じ能力は発現していない。

魔剣創造と言っても形や武器の種類も違う。剣が苦手なのに槍が作られたりもする。


現魔王も剣と魔法主体だが魔剣創造で手甲が創られたらしい。現魔王は戦闘では手甲を使わないで鍛治師が造った魔剣を使っている。

だが魔王の魂、血筋、魔力によって創られた魔剣の能力は凄まじい。理由は分からないが初代魔王は魔神と仲違いし、魔神を魔剣で切って滅ぼした。

普段は剣主体で戦闘をする現魔王だが、本気を出す時は両手に手甲を嵌めて戦う。剣以外が苦手でも、最終的に手甲を使うのは凄まじい能力があるから使うのだ。そして、王族は魔剣を使うに当たって決まり事がある


一魔剣の能力は言ったり、見せてはならない。

二誰にも見られていない時のみ使う事。敵に見せたら必ず殺す事

三自分自身の力で倒せない時や誰かを守る時、戦闘の時間が限られている時は上記全てを破棄できる。

なんでも切り札は最後まで見せるものではないし、対策されないためだとか。


「アル様、魔剣創造を行う魔法陣は喝見の間にある陛下が座る椅子の裏に隠し部屋があります」

「父上から聞いてる。入った事は無いけどな」

「そうですか。既に陛下には言ってありますので参りましょう」

アルとエミルは椅子の裏に到着する。

「この壁にアル様の魔力をお流し下さい」

「わかった」

アルが壁に魔力を流すと複雑な魔法陣が輝き木製の両扉が現れる。

「ほーこうなるのか」

「はい、魔王様の血筋のみが魔力を流すと扉が出現します。扉に入ったあとは奥にある魔法陣にアル様が入り。少し魔力をお流し下さい。魔力を流すと魔法陣が必要分の魔力を若様から吸い出します。胸が苦しくなりますが、苦しくなるのは魂を分離しているからです。苦しくても決して魔法陣から出ないで下さい。無理に魔法陣から出ると魂が損傷しますのでお気をつけ下さい。魔力を吸い終わると魔剣が創造されます。創造されましたら魔法陣から出ても結構です。ここから先はアル様しか入れませんので一人で行って下さい」

「わかった」

アルが扉を開けて入る。


部屋の大きさは正方形で10メートルぐらいだろか。中央より少し奥の床に魔法陣がある。先程の魔法陣よりも複雑な魔法陣が黒い光を発している。


「ふぅ、なかなか緊張する」

ゆっくりと魔法陣に入ると膝立ちに座り手から魔力を流す。

「ぐっ」

胸が苦しくなり魔力がどんどん吸収される。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20分が経つ。

(まずい、魔力がなくなる。胸も苦しくなると言うより痛いぐらいだ)


アルは歴代でもっとも魔力があると言われている。それでも魔力が無くなりかける。

だがギリギリで魔力の吸収が止まる。


「‥‥危なかった」

アルは肩で息をする。

魔族は魔力が無くなると魔力が回復しても長い間動けなくなる。アルが危機を感じるのは当然だ。


魔力を流し終わると魔法陣から更に黒い光が溢れ出す。アルが目を細め光が収まると。水の中に石を投げ込んだ様な波紋が広がり波紋の中心から剣が出てくる。


アルが立ち上がると剣の握りがアルの頭上を超えた所で止まる。アルには大きすぎるが普通の兵士が使っているよりも少し長い剣、長剣だ。太さは普通の剣と同じぐらいだろうか。柄が十字になっている。色は柄も握りも刃も漆黒で刃には漆黒の煙が少しだけ出ていて禍々しい長剣だ。


(たしか剣を握ると能力が頭に流れ込むんだったか)


剣を握りたいが、アルはまだ背が低く握りに手が届かない。すると、剣が水平になり握りが目の前になる。


(おお、この魔剣は俺の魂と繋がっているからこうなったのか?)


恐る恐る剣を握ると剣の名前と能力が頭に流れ込んでくる。なんとも不思議な感覚だ。

「【魔剣ベガトゥス】

能力は‥‥‥」

(へぇ凄い能力だ)


能力が流れ込んで来た時どう使えば良いか。どんな効果か。全て流れ込んでくる。

握った瞬間に、今までずっと一緒に居たような。この剣と離れたくない様な不思議な感覚がする。

(この剣を試したいしウズウズするが、まずは‥‥‥よしっ)

剣を離すと地面に波紋が揺らぎ吸い込まれて無くなる。

剣が創造された時その魔剣を入れる空間も一緒に創られる。

(今のままでは剣を召喚するだけで精一杯だな)


歴代一魔力が多いアルでもアルの魔剣は召喚するだけで口渇寸前まで魔力を消費するのだ。

アルは考え事をしながら部屋を出る。

「終わりましたか。お疲れ様でした」

「おう、無事魔剣を創造できたぞ。長剣だった」

アルは嬉しそうに言う。

「‥‥‥アル様‥‥魔力が口渇寸前ではありませんか」

「まぁな、魔力を少し流しただけで一気に魔力を吸われた」

「‥‥そうですか‥」

エミルが顎に指を当て何かを考える仕草をする。

「ん?どうした?」

「いえ、10代前の魔王様から魔剣創造は見て来たのですがアル様みたいに魔力が口渇寸前になったのは見た事がありません」

「えっエミル何歳?」

魔族は元々長寿で平均5000歳前後だ。

「3000歳以上ですが細かくは覚えておりません」

「ふーん、ちなみに歴代魔王で父上以外生きているのは?」

「いらっしゃいません、全員亡くなられております」

「やっぱりなー、寿命ではないんだろ?」

「はい。歴代魔王様は人族から出てくる勇者や神族に滅ぼされております」


人族とは人間、エルフ、ドワーフ、獣人の総称だ。寿命が長いのは魔族だけで子供は魔族同士でしか子供ができないため、この様に別れたと言われている。魔族は神族同様孤立した種族なのだ。


「人族や勇者は分かるが神族とはどんな奴なんだ?父上から少し聞いてるけどエミルから聞きたい」

「神族は私達と変わらない生物です。ですが、傲慢で陰気で狡猾な奴らです。人族達は嫌いでは無いですが神族は嫌いですね‥‥‥」

アルは苦笑する。

「ハハ‥‥もしかして歴代魔王って弱い?滅ぼされ過ぎじゃない?」

「そんな事はありません。勇者に滅ぼされた魔王様も中にはいらっしゃいますが歴代魔王様は負ける事は殆どありませんでした。只勇者は異世界から召喚した人族で神族の魔法で色々な力が宿っているそうです」

「神族って面倒臭いな」

アルは苦笑する。


「はい。問題は勇者が死ぬ事が天界を開く鍵になります。天界が開けば神族が襲ってきます。魔王様以外の魔族は勇者であれば渡り合えますが、神族相手では荷が重いです。今の世代で魔王様以外では妃様だけが神族と渡り合えるでしょう。歴代の魔王様は神族相手でも負けはしませんでしたが、奴らは天界から多数で魔王様を殺しにきます。多勢に無勢です。ですが神族は半霊体なので地上では少ししか居てられません。それに現魔王様は一度勇者を殺し神族も1人殺し退けています。昔は人族と魔族は戦争状態でしたが其処から1000年が経ち今では人族達と戦争もなく交流しています」


「なるほどな。流石父上だな‥‥‥わかった。ありがとう。そういえばエミルの血族は気配察知が得意なんだよな?」

「はい、私達種族は力はありませんが。諜報には向いております。気配察知、気配遮断が得意ですね。実際諜報部隊はほぼ私達血族で構成されております」


エミルの血族は歴代の魔王を裏で常に支えて来たのだ。魔族の歴史は魔王よりも知っている。


アルは天井を見た後エミルを見る。

「んーエミル。気配察知の訓練俺に付けてくれないか?」

「それは全然良いですがアル様は魔法の修行と体術の修行をする予定だったのでは?」

「うん、そのつもりだったんだがな‥魔剣を使いこなすには気配察知は必ず必要になる。魔力量を増やすには今迄通り食事中や湯浴み中の合間に魔力操作をすれば良いしな。今は気配察知に全て注ぎたい」

「魔剣が長剣ならば剣術の修行はよろしいのですか?」

「剣術の修行はしなくて良い。俺の魔剣の能力では剣術を覚えても意味が無いかな」

とアルが楽しそうに言う。

「そうですか。では気配察知の訓練をいつ始められますか?」

「んー今日から頼む」

「分かりました。ではアル様の部屋で待っていただけますか?魔剣創造の成功を陛下に報告した後お声掛け致します」

「わかった」

「では、失礼致します」


エミルはそう言うと小走りで喝見の間を出る


(さて、部屋に戻って仮眠とるか)


アルは喝見の間を出て魔力操作の鍛錬をしながら部屋に向かう。


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