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私の魔王様!?─仇討ち少女は魔王を倒したい!─  作者: シギノロク
弐章 勇者様の憂鬱─囚われの幼なじみの救い方─
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五話 作戦会議をしよう2

 なるほど。

 人間と魔族が違うから人間は魔族を嫌っているんだと思っていたけど、そんな歴史があったのか。

 流石は眼鏡、伊達に長生きしてない。

 干物寸前まで生きてるだけのことはあるわね。


「分かって戴けましたか?」

 眼鏡が妖しく光る。

 背中にはどーだまいったか小娘と言う言葉が見える。

 なんだか無性にムカつくわ。


「うんちくばかりで長いわ! 要は、ドラゴンは保護されてるし、性格も悪いから頼みごとは無理ってことでしょ?」

 歴史的なことは知らなかったけど、この位は魔族にとっては知っていて当然だ。

 威張るほどのことでもない。


「長くて難しいお話で、正直、意識が飛びましたけど、お姉さまのお話でよく分かりましたわ」

 ジェスカちゃんが頷く。

 ほら、ジェスカちゃんだって意識飛ばしちゃって聞いてないじゃない。

 話は短く分かりやすく、要点を掻い摘んで話してよね。


「ですから、ドラゴンは捕獲どころか人間は会うことさえも不可能なんですよね」

 眼鏡は深いため息をつく。

 ジェスカちゃんに長くて難しくて意識が飛んだと言われていたのは丸無視である。

 神経は図太い。

 やはり、こっちの方が魔王に相応しいのではないかと密かに思う。


 しかし、眼鏡の言っていることは真っ当なものだった。

 ドラゴンに頼みごとができないのはどう逆立ちしても変わらないのだ。


 さて困った。

 交換条件は絶対満たせない。

 ニセモノなんてすぐにばれるだろうし。

 私たち、完全に行き詰まってしまったみたいだ。


 あー、どうするか考えなきゃ。

 思考停止させてはだめだ。

 絶対に方法があるはずよ。

 要は幼なじみを助けられたらいいんだから。


 助ける?

 そうだわ!

 そうよ!

 とっても簡単な方法があるじゃない。


「奪っちゃいましょう」

 私が言うより早く誰かが呟いていた。


「そうですわ。奪っちゃいましょう」

 ジェスカちゃんだ。

 確信を持って彼女はもう一度言った。


「え? ドラゴンから?」


「違いますよ。人質を奪っちゃえばいいんです。そうしたら、交換する必要もありません! ワタクシ、1人では無理ですが、力を貸していただけるなら不可能ではないはずですわ!」


 実は私もそう考えていたところだった。

 でも、そんなことしたら国際問題なんじゃ。


 確か、ユースティティアの剣がある街は聖都・ルドベキア。

 世界7大聖都の1つに数えられているほどの街だったはず。

 聖都ってことはそれだけ人間が沢山いて、影響力があるってことじゃない。

 魔王が介入なんてしたら、人間対魔族の戦争にもなりかねない。

 洒落にならないって。


「私も同感です」

 眼鏡はそう言いながら頷く。

 え、眼鏡って魔族側のお偉いサンじゃないの?


 いや、コイツの場合はきっと裏があるはずよ。

 私は訝しむように眼鏡を見つめた。


 魔王が立ち上がる。

「それが一番手っ取り早いだろう」

 魔王までそんなことを言っていいの?

 第一、魔王は魔族のトップのはずだ。

 あーおバカ。

 こいつら絶対にバカ。


「お姉様はどう思われます?」


「う……」


 ジェスカちゃんが瞳を潤ませて迫ってくる。


 見れば、魔王も眼鏡もこちらに注目しているではないか。

 卑怯者!

 魔王のバカ!


「私もそれしかないと思う…」

 言った。

 言っちゃった。

 阿呆どもめー!

 言ってしまいましたよ。


 私もバカ。

 充分大馬鹿だ。

 もう馬だろうが鹿だろうがドラゴンだろうが聖都だろうが来るなら来いだ。

 なんとか戦争にならない程度にやってやるわよ。


「忍び込んでがっつり幼なじみ君をいただくわよ!」

 九十九%やけっぱち。

 こうなったらしかたがない。

 どうにでもなってしまえだ。


「そうこなくっちゃですわ」

 喜んだように手を叩く、ジェスカちゃん。


 そうだ。

 いざとなれば魔王に全て責任をなすりつけたらいい。

 そうすれば仇討ちにもなるわ。

 題して一石二鳥作戦!


「ここから街まで何日かかる?」

 魔王は問う。

 早速やる気だ。


「えーと、十日間くらいさ迷っていたのでそのくらいあれば行けるかと思いますわ」


「そうですね。地図を見ないと分かりませんが、ここは魔王陛下の別荘で一番、聖教領に近い別荘なので、さ迷っていたことを差し引いて、さらに馬車で行くならもう少し早く……一週間くらいで着きそうですね」

 眼鏡が相槌を打ったときだった。


「ぶくしゅんっ」

 不細工なくしゃみが響いた。


 辺りを見回す。

 ジェスカちゃんじゃない。

 魔王でもない。

 眼鏡……は違う。


 私?

 勿論、違うわよ。


「陛下」

 眼鏡は何かを察知したらしい。

 魔王の顔を見て小さく呟く。


「ああ」

 魔王もその声に頷く。


 二人はおもむろにドアへと向かった。

 ギシッギシッと床が軋む。

 この別荘は相当古いのだろう。

 穴が開かないか少し心配だったが、二人は無事ドアの前にたどり着いた。


 これから何が起きるのか。

 私はドキドキしながら二人の行動を見守った。


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