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私の魔王様!?─仇討ち少女は魔王を倒したい!─  作者: シギノロク
肆章 勇者様はドッペルゲンガー
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七話 二人の勇者様!

「アンタが酔っぱらっている間に、私はヴィニウスの母親にワインをかけられたのよ。そのときの私のドレスの色が白だったから、白とワイン色でそうかなって思ったの」

 私はリザルトに向かって状況を説明する。


「それだけじゃ分からないじゃん」

 リザルトはため息を吐く。

 

 確かに、リザルトの言う通りだった。

 それだけでは証拠にならない。

 せめて箱かリボンがあればよかったのだが、両方ともカードと同様にあの騒動のときなくなってしまったのだ。


「そうね。よく考えたら、あのパーティ会場にいた人だったら起きたことも知っているわけだし、魔王城みたいに兵士がたくさんいるわけでもないし、割と誰でもできることなのよ」


 そう。

 呼ばれていないはずのヴィニウスの母親があそこにいたんだもん。

 アスティアナさんがいるとは言え、あの日とその翌日の警備はゆるゆるだったに違いない。

 アスティアナさんは騒ぎを収めるため忙しく動き回っていたし、ヴィニウスも母親につきっきりだった。

 あの日は、復旧に携わっていた軍の兵士はもちろん、警備の兵士も、お祝いだからと、お酒を飲んでいた。

 自然と警備が緩くなっていたんじゃないかしら。


「はあ、なるほど……概要が分かってきましたよ」

 不意に病室の扉の方から声がした。


 やばい。

 勇者が二人になったことが一般人にバレたら一大事よ!


 先程、アスティアナが言っていたことが頭を過ぎる。

 もしもよ、『勇者、二人になる!? ニセモノはどっち?』『魔王、勇者を改造?』なんて新聞記事が出たら、帝国と聖教国の戦争どころじゃないかも……

 魔王が勇者を改造して増やしたなんて誤解されたら、国内外から非難されるかもしれないわね。

 

 魔王が困るだけならいい気味で終わる話。

 でも、私たちは既にこの事件の目撃者になってしまったわけ。

 こちらまで被害を受けるかもしれない。


 そうなったら、仇討ちできなくなる!

 それは困る!


 どんな奴か見極めて、最悪、記憶を消させてもらうしかないかもしれない。

 私はそんなことを考えながら扉の方を睨みつけた。


 すると、扉の前にひらひらと手を振る少年がいた。

 黄緑色に近い金髪をした宗教画の天使のような少年が微笑む。


「貴方は……!」

 私は驚いたように叫んでしまった。


「教皇庁のリュウです。お久しぶりです、みなさん」

 相変わらずの首までしっかり覆われた鼠色のローブと手袋を身に着けている。

 お馴染みの中二病スタイルだ。

 流石、ぶれない中二病キャラね。


「知らねえよ」

 ヴィニウスが呟く。


 そうだった。

 ヴィニウスは天使様に会ったことがないんだった。

 そうだとしても、もっと言い方があると思うのだけど。


「聖教国のお偉いさんよ。お願いだから喧嘩を売るのはやめてちょうだい」

 私はヴィニウスを腕を引っ張って、コソッと耳打ちする。


「うわっ、分かったよ!」

 ヴィニウスは驚いたように叫ぶと、私を突き飛ばす。


 何よ。

 失礼しちゃうわ。

 せっかく親切で言ってあげたのに。

 でも、これは分かったってことでいいのよね。


「「で、天使様がどうしてここにいらしゃるのですか?」」

 ジェスカちゃんの声がユニゾンする。


「私がお呼びしました。ご足労いただきありがとうございます、リュウ様。」

 グィールは立ち上がると恭しく頭を垂れた。

 腹黒眼鏡もそんな殊勝な態度が取れるのね。

 魔王を取られると思っているのか、私にはいつも嫌味な態度で威嚇してくる。

 あまりに嫌味を言われるもんだから、てっきり嫌味の権化か何かだと思っていたわ。


「いえ、呪いの可能性があると聞いたら伺うしかないでしょう」

 天使様はワクワクした顔で答える。


 そう、「呪い」というワードは天使様の中二心をくすぐるものだった。

 確か、決めゼリフは「呪いを一つ、貴女に移させていただきました」だっけ?

 天使様は身体にいくつもの呪いをかけられていて、その影響から呪いを他人の体から自分の体に移すことが出来るらしい。

 勿論、逆に自分の受けた呪いを他人に移すこともできるそうだ。


 じゃあ、全部、他人に呪いを移せばいいじゃない。

 そう思うのだが、聖職者である天使様の矜恃がそれを許さないらしい。

 呪いを移すのは悪い奴だけと決めているそうな。

 うーん、流石、中二病ね。


「で、どうなんだ? 呪いなのか?」

 悪気がないのだろうが、いつも通り、お口の悪いヴィニウスが天使様に尋ねる。


 お偉いさんだって言ってるでしょうが!

 私はそう怒りたい気持ちをぐっと我慢した。


「そうですねぇ」

 天使様は手袋を外し、ジェスカちゃんに向かって手を翳した。


「呪い……というより魔法に近いものですかね。いや、色々と混ざっている……複雑な造りですね」

 天使様は独り言のように呟く。


「うん、僕にはこいつを引き剝ぐことは出来ないですね。単純な願いや魔力による呪いなら簡単なんですが、これはすでに彼女の身体の一部になっているようです」


「じゃあ、一生このまま……俺は二人もジェスカ相手にしなきゃならないのか!」

 リザルトは絶望したように叫ぶ。


「うーん……お姉さまなら何とかしてくれるかもしれないんですが……」

 天使様は言いにくいことを言うように呟く。


 お姉さまと言った瞬間、アスティアナさんとグィールは何だか気まずそうな顔をする。


 何故?

 そんな顔を?

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