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私の魔王様!?─仇討ち少女は魔王を倒したい!─  作者: シギノロク
肆章 勇者様はドッペルゲンガー
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六話 帝国の病院

 ***


 ここは帝国の病院。


 集まったのは事情を知る、私、ヴィニウス、アスティアナさん、リザルト。

 それから、国際問題になりかねないということで魔王、グィールも来た。

 あとはこういうことに詳しそうなケイト女史、ヒルデさんも呼ばれた。

 合計8人が、とある病室のとある人物を囲んでいた。


「うーん、検査の結果、お二人とも異常はありません」

 ヒルデさんは紙と睨めっこしながらそう言った。


「つまり?」


「驚くところなのでしょうね。検査では、お二人とも本物。人間のようです」

 ヒルデさんはそう言いながらアスティアナに検査の結果用紙を渡す。


「どうやらそのようですね。このような状態は聞いたことがありませんが」

 アスティアナさんは渡された紙を見ながら頷く。


「いえ、将軍。このようなケースはドッベルゲンガ―と呼ばれる現象に似ております。まあ、幻覚だとか、見たら死ぬとか言われているらしいのですが……」

 ケイト女史はそう言いながら、とある人物ことジェスカちゃんをじっと見つめた。


「「ワタクシたち死んでしまいますの?」」

 二人のジェスカちゃんは驚いたように目を見開く。

 同時に同じ仕草をするジェスカちゃんは傍から見ればただの双子であるが、そうではない。

 謎の爆発によって1人が二人になってしまったのだ。


 おいおい、何の冗談なのよ。

 1人の人間が二人になるはずないでしょ。

 そう私も思っていた。


 でも現実はこれだ。


「「お姉様、助けてください!!」」

 二人のジェスカちゃんが私に縋り付く。


「きっと大丈夫よ」

 私は無責任にそういうことしかできなかった。


「解決方法は?」

 アスティアナさんはケイト女史に問う。


「ありません。死ぬまでドッペルゲンガーに付きまとわれ、何度も転職しなければならなくなったという方もいるそうですよ。その場合なら結構な年月生きているようですね」


 アスティアナさんはそれを聞いてため息を吐いた。


「まあいいじゃねえか。強い奴が1人から二人になっただけだろう?」

 ヴィニウスは呑気にそう言う。


「馬鹿ですか? 勇者様といえば、帝国では魔族やドラゴンを守った英雄、聖教国では圧政をする悪徳領主を倒した英雄です。二人も増えたら色々と混乱するでしょうし、聖教国の人間が帝国でこんな目に遭ったと知ったら国際問題ですよ! 貴方は何もわかっていない。それでよく、軍に入るとか言えますね。もう一度教育をし直してあげましょうか?」

 アスティアナさんは苛々としながら、ヴィニウスに向かってお説教を始めた。


 教育をし直すと言ったところ、ヴィニウスの顔は見る見るうちに青くなる。


「いやいや、それはいいです。わかりました。すみません。本当に大丈夫です」

 ヴィニウスは平謝りする。

 敬語を使って謝るだなんてよっぽどのことが何かあったようね。


「ごほん」

 魔王が咳をする。

 魔王の方をちらりと見ると、魔王も僅かに眉を顰め、渋い顔をしていた。

 こっちにもアスティアナさんの「教育」に心当たりがあるようね。


「聞いておきたいのだが、そもそもなぜ二人になった?」

 魔王が問う。

 もっともな疑問だ。


「「ワタクシにもよく分からないんです。お姉様の部屋に箱が届いて、ワタクシがそれを落としたせいで中身が出てしまったんです。その中身はカードのようなもので、それを拾ったら、爆発してこんなことに……」」


「私もその現場を見ていたわ。爆発物らしきものがなかったのに拾ったカードから煙が出てきて爆発したのよね。そして、煙が晴れたらジェスカちゃんは二人になっていたのよ」


 グィールとリザルトは何言ってんだコイツらという顔をして私たちを見る。

 いや、アンタらの気持ちはよく分かるけど、事実なのよ。仕方ないじゃない。


「そう言えば、カードを見て何か呟いていなかったか? 月だとか、太陽だとか」

 ヴィニウスがそう言うと、ジェスカちゃんははっとした顔をする。


「「そうです、そのカード可愛くないカードだったんですの。可愛くない犬が二匹いて、上の方には黄色い顔みたいなのがあって太陽や月のような形をしていました。それで、これは太陽なのか月なのかわからないなーと思って、思わずつぶやいてしまったんですわ」」


「太陽や月の絵の描いてあるカードですね。じゃあ、そのカードについては私が調べておきますね」

 ケイト女史は頷く。


「あとは何か思い当たることはないか?」


「カードの入っていた箱なんだけど、白くてワイン色のリボンがついていたわ。あとカードが付いていて『昨日は申し訳ございません』って書かれていたの。だから、ヴィニウスの母親が置いて行ったのかと思ったんだけど……」

 私は煙とともに消えてしまった箱のことを思い出す。

 あれも重要な手掛かりになりそうだ。


「あ? そりゃ無理だろ。あのクソババアと俺は1晩中ずっと一緒にいたんだ。あのクソババアが寝てからようやく動けるようになって、お前の部屋に行ったんだぞ。間違いない」


「つーか、なんでコイツの母親がやったと思ったんだよ」

 リザルトが庇うようにそう言う。

 あのパーティですっかりマブダチになっていたらしい。

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