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私の魔王様!?─仇討ち少女は魔王を倒したい!─  作者: シギノロク
肆章 勇者様はドッペルゲンガー
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五話 朝からにぎやかですね

 ***


 昨日は本当に疲れた。


 酔っ払いに絡まれるし、アスティアナさんとヴィニウスの会話を聞いちゃうし、そのせいでものすごく悩まなきゃいけなくなったし、ワイン漬けになるし、散々な目に遭ったわ。


 だいたい、私のワイン漬けなんて誰が喜ぶのよ。

 あ、魔王なら喜ぶかもしれないわね。変態だもの。

 嗚呼、城に帰ったらワイン漬けになった話を誰かが魔王にするわけでしょ?

 そしたら喜んじゃって、ワイン漬けにしたいとか言い出したりしないわよね。

 まさかそんな変態じゃないと思いたいのだけど。


 私はげっそりとしながら朝の身支度を整えていた。


 ノックの音が響く。


「どうぞー」

 私は扉の方を見ずにそう叫んだ。


「失礼いたします。お姉様、荷物が届いているみたいですよ」

 ジェスカちゃんが何やら箱を持って入ってくる。


「荷物?」

 私は訝しむようにその箱を見つめた。


 白い箱に鮮やかなワイン色のリボンがつけられている。

 ワイン漬けになった私へのあてつけかしら?


「ええ、お姉さまの部屋の前に置いてありましたの」


「なんだろう? 特に何か頼んだ覚えはないのだけど」

 普通、何か頼んだときは直接手渡しで持ってきてくれるはず。

 頼んだものじゃないにしても、誰かが手渡ししてくれるのが普通よね。

 そうじゃないということは、よっぽど急いでいたか、私が寝ていて渡せなかったか。


 いや、どちらにしても手渡しされないというのはちょっと怪しい。


「カードが付いてますわ。なになに? 『昨日は申し訳ございませんでした』ですって」


「昨日……ヴィニウスの母親からかしら?」


「さあ? お名前がないから分かりませんわね」


 私はますます怪しいと思った。

 とりあえず、アスティアナさんに相談してから開けようかしら。


「おい! スクルドいるか?」

 急に扉が開いてヴィニウスが顔を覗かせる。


「きゃあ! へ、変態さんです!!!」

 ジェスカちゃんは驚いたように大きな声で叫んだ。


 私もその声に驚いて飛び上がる。

 まさか女性の部屋にノックもなしに入る男がいるなんて思ってもみなかったものだから、驚くのも無理はない。


 しかも、今は朝。

 着替えている可能性もあるのよ。

 コイツ、私のこと女だと思ってないでしょ。


「お、おお? ごめん。着替え中だったか?」


「もう終わったから大丈夫よ。でも、一応、ノックをするのは礼儀じゃないかしら?」

 私はじっとりとした目つきでヴィニウスを見た。


「今度は気を付けてやるよ」

 ヴィニウスは反省の様子もなく、ズカズカと部屋に入ってくる。


 コイツ、私のことなんだと思っているのよ。

 本当に生意気な再従弟だわ。


「嗚呼、びっくりして箱を落としてしまいましたわ。申し訳ございません、お姉様」

 ジェスカちゃんは慌てて落としてしまった白い箱を拾おうとする。


「あの箱何だ?」


「さあ、部屋の前に置いてあったんですって」


「何でそんな怪しげなもの持ってくるんだよ。そういうものがあったら、まずはババアに相談して……」


「あら? あららら?」

 ジェスカちゃんが箱を持ち上げるとバラバラとカードのようなものが散らばる。

 ジェスカちゃんは慌てて中身を拾おうとする。


「おい、何があるかわからないから中身に触るんじゃない!」


 ヴィニウスがそう言うが、時すでに遅し。

 ジェスカちゃんはカードを拾っていた。


「月? 太陽?」

 ジェスカちゃんはそう言いながら、一つのカードを持ち上げて太陽にすかすように掲げていた。


 ボン!

 突然、ジェスカちゃんの持っていたカードが煙が上げて弾ける。


「きゃあ!」


 ヴィニウスが咄嗟に私を庇う。


 カードから上がったにしてはものすごい煙だ。

 あっという間に視界が真っ白になっていく。


「スクルド、下がっていろ」

 ヴィニウスは私をベッドの近くの煙が薄いところに押しやると、口に手を当てて、窓の方に向かった。

 そして、窓を全開にする。


 冷たい風が部屋の中に入ってくる。

 煙は徐々になくなり、視界はクリアになっていく。


「ジェスカちゃん!」

 私は恐怖のあまり叫んだ。

 体から力が抜け、カタカタと震えだす。


 どうしよう。

 どうしよう。

 ジェスカちゃん、どうか無事でいて。


「ジェスカちゃん!」

 私は祈るような気持ちでもう一度叫んだ。


「大丈夫ですわ、お姉様。びっくりしましたけど」

「そうそう、大丈夫ですわ。でも、何が起こったんですの?」

 二度、ジェスカちゃんの声がした。


「一気に換気するぞ!」

 ヴィニウスが叫ぶ。


 ブンという音とともに風が部屋の中に吹く。

 ヴィニウスの魔法だ。


 あっという間に視界が拓ける。


 晴れた視界の中には、赤い髪をした勇者が二人。

 きょとんとした顔をして私とヴィニウスを交互に見ていた。


「え?」

「は?」


「「どういうこと?????」」

 私とヴィニウスの大声がノショウの屋敷に響き渡った。


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