二十三話 装置を探そう
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雨は止むことなく、降り注いでいる。
魔法を使って雨を止ませようと何度も試みては失敗しているのだろう。
あれから何度も破裂音を聞いた。
何度も失敗してるんだからそろそろ諦めなさいよと思うのだが、あちらの魔法使いはよほどの頑固者なのか、阿呆なのか、何度も魔法を使っているようだった。
また、近くで破裂音がした。
「近いようですね」
ジェスカちゃんが声をひそめて言う。
私とヴィニウスは相手に気付かれないよう声を出さずに頷いた。
私たちは木々に隠れ、こっそりと音のする方を覗き込んだ。
そこにはローブを纏った女がいた。
「なんで雨が止まないのよ!」
苛立つようにそう言いながらもう一度、魔法を放つ。
魔法は破裂し、光になった消え去る。
それを見た女は苛立ったかのように地団駄を踏んでみせる。
どうやら、雨を止ませようとしているのはこの女らしい。
矢庭に、ヴィニウスは私たちのいるところとは全く別方向に石を投げた。
女はすぐさま、石の落ちた方向に注意を向ける。
ジェスカちゃんはこの隙を逃さなかった。
女の後頭部めがけて詠唱なしに素早く魔法を放った。
「ぎゃあっ!」
バチンとはじけるような音と共に女は崩れ落ちる。
こいつら、今日が初対面のくせに恐ろしく連携のとれた攻撃ね。
「電気ショックです」
ジェスカちゃんはウインクをしながらそう言った。
いやいや、その可愛らしい笑顔が怖いわ。
さらっとやってるけど、離れたところから一瞬で気を失わせる魔法ができるなんて本当に規格外の勇者様だ。
ジェスカちゃんを怒らせないようにしようと私は心に誓った。
そうこうしている間に、ヴィニウスは真っ先に女のもとに近寄っていた。
そして、女の意識を確認するように顔を近付ける。
「息はしているな。気を失っているだけのようだ。近くに来ても大丈夫だぞ」
そう言ってからヴィニウスは抵抗できない女をロープでぐるぐる巻きにし始める。
「何してるの?」
「ん? 念の為。暴れられても困るだろうが」
ヴィニウスは解けないように念入りにロープを結んでいた。
「さすがですわ。聞きたいこともありますし、さくっと起こしてしまいましょう」
ヴィニウスの作業が終わったと同時にジェスカちゃんは指を軽く鳴らした。
すると、女の顔の上にバケツ大の水が集まる。
そして、次の瞬間、それが一気に落ちていく。
が、女は起きる様子がない。
「あら、電撃が強かったんでしょうか? 仕方ありませんわ」
ジェスカちゃんはもう一度指を鳴らした。
今度は女の足元に水が落ちる。
「あっつっっ!」
女は慌てて目を覚ますが、ぐるぐる巻きで身動きがとれない。
芋虫のようにのたうち回ることしかできないようだった。
「やっぱり、雨に濡れてるから水より熱湯の方が分かりやすいですわね」
にっこりと微笑むジェスカちゃん。
怖い。
怖すぎる。
本当にジェスカちゃんは怒らせちゃダメだ。
「おい、女。洗いざらい話してもらおうか?」
ヴィニウスがメンチを切りながら女に向かってそう言った。
女は真っ青な顔になり、首振り人形のように首を縦に降り続けた。
嗚呼、嫌な相手に捕まっちゃったわね。ご愁傷さま。
私は密かに心の中でそう独りごちた。
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余程ヴィニウスの顔が恐ろしかったのか、ジェスカちゃんの魔法が恐ろしかったのか、もしくは両方かもしれないが、女は饒舌だった。
こちらの知りたいことは自らペラペラと喋ってくれたので、聞き出す手間が省けた。
「情報提供ありがとうございます。それではおやすみなさいですわ」
ジェスカちゃんは女の後頭部に電撃を放った。
「ぎっ!」
女は短い悲鳴をあげると失神した。
「さて、予備も入れて装置は三つ。場所も分かったことですし、さっさと壊しにいきましょうか!」
「よーし、じゃあ、三人いるし、手分けするぞ!」
「いやいや、どんな敵がいるかわからないんだから順番に! 順番にやっていきましょう!」
ノリノリのジェスカちゃんとヴィニウスに私は慌てて叫んだ。
ヴィニウスやジェスカちゃんならある程度の敵なら簡単にどうにかしちゃうだろうけど、か弱い私には無理だ。
魔法も使えなければ、体力も普通の女性より少しあるくらい。
あるのはスピードと軽やかでしなやかな動きくらいだ。
敵を撹乱することができても、決定打がないので倒すことができない。
もしも、ドラゴンがまた向かってきたら確実に死ぬ自信がある。
「そうですわね。よくよく考えたら、ワタクシも魔力の残量があまりないみたいですし。何かの為に魔力温存はしておきたいところですわ」
ジェスカちゃんはあっさりと私の意見に賛同する。
そう言えば、ジェスカちゃんは今日だけで大技を何度も繰り出しているものね。
「そうか。勇者がそう言うならそうしよう」
ヴィニウスは残念そうに頷いた。
この体力馬鹿。
残念そうにするんじゃないわよ。
アンタ基準で行動してたら、いくつ身体があっても足りないわよ。




