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私の魔王様!?─仇討ち少女は魔王を倒したい!─  作者: シギノロク
参章 将軍の苦境─正しいお見合いの断り方─
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二十二話 勇者の秘策

 ドラゴンたちと目が合ったような気がした。

 全員こっちを向かなくてもいいのよ!!


 私は全身の震えが止まらなかった。


 ヴィニウスの奴、余計なことをしてくれるわね。

 もしかしなくても、これってピンチじゃないの?

 私は冷や汗をかきながら、それでもジェスカちゃんの前に立つ。


 ヤバい。

 ヤバい。

 ヤバい。

 こんな人数のドラゴンの炎のブレスを受けたら骨だって残らないだろう。

 あの体力馬鹿のヴィニウスだってこんな人数相手じゃ無事に済むわけないし、どうしたらいいのよ。


 私はどうにか策はないかと考えるものの、いい手が全く浮かばない。


 はい。

 死にました。

 死亡確実です。


 私は親の仇も討てずに、死ぬのね。

 せめて、誰が犯人なのか、それだけでも知りたかった。

 魔王が何故それを隠そうとしているのかとか本当にどうでもいいことだったわ。

 さっさと無理矢理にでも聞き出して、脇目も振らずにソイツを殺してたら良かったのよ。

 でもね、そうしなかったからアスティアナさんやケイト女史と仲良くなれたし、ヴィニウスにも会えたのよね。それだけは良かったことだわ。


 もしも、もしもよ。生きて帰れたら、アスティアナさんもケイト女史もきっと怒るわね。無茶ばっかりしてって。

 それに、二人とも、きっとすごく心配したって言うに違いない。

 怒られるのは嫌だけど、そうだったらちょっと嬉しいな。

 嬉しい?

 嗚呼、そうか。

 私、やっと帰る場所ができたんだ。


 じゃあ、ここであきらめたらダメよね。

 私は、スクルド・A・シレーネ。

 諦めの悪い、好奇心旺盛な元お嬢様なんだから!


 そう言えば、もうそろそろジェスカちゃんの言っていた四十秒がくる。

 確か、いい考えがあるみたいに言っていたわね。

 私はもうジェスカちゃんに全てを賭けるしかなかった。


「お姉様、行きますわよ!」

 呪文を唱え終わったであろうジェスカちゃんが叫ぶ。


 私は祈るような気持ちで何かが起きるのを待つ。


 ゴロゴロ、と向こうで雷鳴が聞こえた。

 空を見上げると、黒く分厚い雲がたれ込めている。


 ジェスカちゃんが剣を振り上げた。


 ダアァァーン。

 尾を引く雷鳴と共に大粒の雨が降り注いだ。


「雨?」

 私はそう呟くが、雨の音に掻き消され、ジェスカちゃんやヴィニウスには聞こえていないようだった。

 なるほど。

 確かにこの状況なら、変な音ってやつも聞こえないだろう。


 ジェスカちゃんの狙いは上手くいったようだ。

 ドラゴンたちは正気を取り戻したようで辺りをキョロキョロと見回している。

 どうやら、ひとまず危機は去ったみたい。


 私は安心のあまり、地面に崩れそうになる。

 それをヴィニウスがさっと背後から支えてくれた。


「大丈夫か?」


「ええ、ありがとう」


「行くぞ」

 ヴィニウスはそう言うと、私を丸太を運ぶように担ぐ。

 いやね、確かに足腰立たないんだけど、もっと運び方があるでしょうよ。


「私は丸太じゃないわよ!」

 叩いても膝で蹴ってもヴィニウスは丸太運びを止めない。

 仕方ない。

 わずか数メートルの我慢だ。

 私は諦めてされるがままに運ばれた。


「どうやら成功したようですわ!」

 私の背中とヴィニウスに向かってジェスカちゃんが叫ぶ。


「ああ、ドラゴンたちは正気になったようだな」


「でも、この雨いつまで続くの?」

 私は大きな声を張り上げた。


 雨のおかげでドラゴンたちは正気を取り戻していた。

 しかし、雨が止んでしまったら、またいつ暴れ出すか分からない。

 それに、ジェスカちゃんは今日だけで大きな魔法を三回も使っている。

 魔力を扱える量がいくら多くても体力的になかなかキツいだろう。

 その上、断続的に魔力を使うであろう雨降らしの(この)魔法は特に身体に負担が掛かりそうだ。

 いつまでもできるものじゃない。


「この雨は暫く降り続けます。この感じだと三十分くらいは足止めできそうですわ」


「じゃあ、その間に音を出す装置を見つけ出して破壊してしなきゃな」


「でも、どうやって装置を見つけるの?」


「それなら大丈夫ですわ。相手方は雨を止ませようと魔法を使うはずですから」

 ジェスカちゃんがそう言った直後、雨の音が一瞬止む。


 そして、村の外れの方から何かが破裂するような音がした。

 ドラゴンたちがピクリと動きを止める。

 しかし、すぐに激しい雨が降ってきた。


「あれは……」


「魔法を使いましたね。おそらく、魔力量は私の方が強いので上手く操り切れず、行き場を無くした魔力が暴発したのですわ」


「じゃあ、あの音を頼りに行けば」


「おそらく、装置を守ってる誰かがいるはずです」


「よし、ぶっ壊しに行くぞ!」

 ヴィニウスは意地の悪そうな笑みを浮かべた。

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