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私の魔王様!?─仇討ち少女は魔王を倒したい!─  作者: シギノロク
参章 将軍の苦境─正しいお見合いの断り方─
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十六話 予感は的中する?

 ***


 ヴィニウスは速かった。

 足にそこそこ自信のある私ですら追いつけないほどに。


 逆にリザルトとジェスカちゃんは体力がないのか、途中で追い抜いてきたのだけど。


「待ってよ!」

 そう叫ぶが、ヴィニウスは止まらない。

 ヴィニウスの項目に「体力馬鹿」という言葉を足しておこうと私は心に決めた。


 目の前に人影とそれより少し大きい影が見えた。

 ドラゴンだ。

 二メートルくらいの小さめサイズの真っ赤なドラゴンは威嚇するように大きな咆哮を上げた。


 ヴィニウスは跳躍すると羽を二、三度羽ばたかせ、ドラゴンと人影の間に滑り込んだ。


 私は慌ててヴィニウスの後を追う。


「貴様ら、何をしているのか分かっているのか!」

 ヴィニウスの鋭い怒号。

 ドラゴンにその言葉遣いはまずいでしょ。


 私はなんとかフォローしなきゃと思い、更に加速した。


 ドラゴンがもう一度咆哮する。


「ヴィニウス! 待って、ドラゴンにそんな言葉遣いダメよ」

 私はようやくヴィニウスに追いつくとヴィニウスの前に立った。


「ドラゴン? 違う。そいつらに聞いているんだよ」

 ヴィニウスは人影の方を睨んだ。


 確かにドラゴンの方を向いて叫んでいたのではないようだ。


 相対するのは、三人の人間。

 杖やら剣を構えている。

 剣士、魔術師、魔術師という構成らしい。

 魔術師が二人もいるなんて贅沢ね。


 そこで私はドラゴンの方を見る。

 ドラゴンの影に隠れるように少女がいた。

 ラウラちゃんだ。


「お姉ちゃん……」

 ラウラちゃんはしがみつくようにドラゴンに寄り添う。

 今、お姉ちゃんと言ったわね。

 勘違いじゃなければ、このドラゴンはフローラちゃんということ?


「ドラゴン狩り?」

 私は少しパニックになりながらヴィニウスに尋ねる。


「馬鹿でも察しがついたか。少し下がってろ」

 ヴィニウスはため息を吐きながら、私を後ろに押しやる。


「警告する。直ちに武器を捨て投降しろ。命くらいは助けてやるぞ」

 ヴィニウスは邪悪な笑みを浮かべた。

 本当に悪い奴みたいな笑顔で話すわね。

 どちらが悪い奴か分からなくなるわ。


 ドラゴン狩りの三人は一瞬怯えたような表情をしたが、ヴィニウスを睨み返す。

 どうやら引く気はないらしい。

 それぞれ剣や杖を構え直す。


「警告したからな」

 ヴィニウスは腰に手をやる。

 が、そこにはあるはずの剣がなかった。


「あ、そういえば武器を持ってないんだった……」

 ヴィニウスが呟く。


 目の前の三人はニヤニヤと笑う。


 おいおい、優勢に見えたこっちが逆に万事休すだ。


 そのときだった。

「どいてくださーい!」

 ジェスカちゃんが後ろで叫ぶ。


 ドラゴン、私とヴィニウスはその声に素早く反応し、飛んできた大きな塊を避けた。

 その塊はものすごい速さで目の前を通過する。

 目の前の三人にぶつかる。そのまま、三人は為す術なく、二、三メートル後ろの木々の方に飛んでいき、強かに打ち付けられていた。

 塊は木に当たると、何本か大ぶりの枝を弾き飛ばして消える。

 と同時に、足元に水飛沫がかかった。


「水?」


「はい、水です!」

 ジェスカちゃんは倒れた3人を見て、満足げにそう胸を張る。



「大気中の水を集めて圧縮して、ある程度のところで一点だけ圧の弱い場所をつくってやると水鉄砲みたいに勢いよく飛ぶんです。その魔法の応用で、水の量を多く、通常より更に圧縮してみました!」

 丁寧な解説をしてくれるのだが、その説明でその威力の魔法が使える気が全くしない。

 やっぱり天才なんだわ。

 私は感心してジェスカちゃんを見つめた。


「なんだ、あの女は! 人間だよな?」

 ヴィニウスは青い顔をして喚き出す。


 私はジェスカちゃんがやばい魔法使いだと言うことを知っているので、「今更分かりきったことを何で言うんだ」と言う感じだった。

 目の前にいるラウラちゃんも同じことを思っているようで不思議そうに小首を傾げている。


「天才ウイッチの勇者様よ。天才だから誰にも理解できない領域なのよ」

 私はそう返した。


 ヴィニウスは一瞬、納得出来ないような顔をしたが、何かを思い出したかのような顔をして深く頷く。

「ババアみたいなもんだな」


 嗚呼、そうか。

 アスティアナさんも理解できないほどの化け物だったわね。

 普通は魔法も使わず戦艦を潰すとか造りの頑丈な城を素手で壊すなんてできないわよね。

 身内であるヴィニウスは身をもってその化け物っぷりを知っているのだろう。

 私は少し同情をした。


「なんだ。もう片付いたのか」

 リザルトの声がした。

 ようやく追いついたらしい。

 もう走る気もないのか歩いているのが気になるのだが。


「遅いですわ!」

 ジェスカちゃんは頬を膨らまし、愛らしく怒る。


「ジェスカたちは荷物がないけど、俺はこんなに荷物持ってるからそんなに速くは走れないんだよ」

 リザルトは困ったように背中を見せる。


 そういえば、リザルトはとっても大きな荷物を持っている。

 一人で旅をするのに確かにここまで多くの荷物は要らないように思っていたが、なるほど、ジェスカちゃんの荷物も全てリザルトが持っているのね。

 リザルトは本当にヘタレね。

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